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2008.04.30
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カテゴリ: 映画/アニメ

「剣なしでも(おまえを)殺せる。」
「(フフフ・・・)そう、剣など必要ないわ。あなたは息子(の命)を奪った。だから(私に)息子を授けて。・・・私を抱いて・・・愛して。代わりに目もくらむほどの富を授けてあげましょう。きっとあなたを最も偉大な王にしてあげる。」

イギリス文学に限らず、欧米文学に馴染みの薄い日本人にとっては、モラルや宗教や民族の絡み合う諸外国の作品を理解するのはもともと不得手だ。
だからと言って無理に理解する必要もないと思う。
ただ、“井の中の蛙”丸出しでこの作品を酷評するのはいかがなものかと。
「ベオウルフ」を鑑賞する上で必要なのは、限りなくリアルに近いバーチャルな世界観を堪能することではなかろうか。

舞台は6世紀のデンマーク。
フローズガール王の催す盛大な酒宴の最中に、その怪物グレンデルは現れた。

この醜態は、吟遊詩人たちによって一斉に各国へと広められた。
見かねたフローズガール王は、グレンデルを倒す勇敢な戦士を募集。
そんな折、ベオウルフが長旅を経て怪物撃退のためにやって来る。
勇者ベオウルフは怪物を倒すのに鎧も剣も必要ないと言い捨て、全裸でグレンデルを仕留める。
しかし戦勝祝いも空しく、翌朝目にしたのは虐殺された兵士たちの無惨な姿だったのだ。


この作品は英国文学最古の英雄叙事詩がもとになっている。
だが原作は作者不詳で、かなり大雑把な内容に完結しているため、ゼメキス監督がそこに緻密な描写を脚色することでこのような大作に仕上げられたわけなのだ。
日本文学に置き換えたら、そう、「大和の大蛇伝説」みたいなものかもしれない。
脚本としておもしろいと感じたのは、“英雄”が必ずしも“清廉”ではないことだ。
たとえどんな魔物を退治し、勇敢であっても、その一方で色と欲に負けてしまう弱さを抱えている。
この、モラルに欠けた勇者を描くというのは、非常に難しい作業であり、視聴者を敵に回しかねない設定なのだ。


「ポーラー・エクスプレス」でも定評のあるゼメキス監督の、CG技術を駆使したアニメ大作「ベオウルフ」を存分に楽しんでもらいたい。

2007年公開
【監督】ロバート・ゼメキス
【出演】レイ・ウィンストン、アンソニー・ホプキンス

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。





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最終更新日  2008.04.30 06:44:05 コメントを書く
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