吟遊映人 【創作室 Y】

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2009.01.17
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カテゴリ: 映画/ヒューマン


幸いにして自分は健常者であっても、家族の誰かが闘病中であったり、ハンディキャップを背負っているなどの当事者の方たちは、この作品をどのような思いで鑑賞されたことだろうか。
吟遊映人の父親はすでに亡くなっているが、肺に黴ができるという稀な奇病に冒され、その晩年は本人も家族も非常に苦悩した。
毎晩のように激しい咳込み、コールタールのような血の塊を洗面器に吐くのだから、それはそれは壮絶な闘病生活だった。
「潜水服は蝶の夢を見る」も、ファッション雑誌“ELLE”の編集長が実際にその身に起きた体験談を手記にまとめたものである。
ある日突然の発病から、それまでの一切合切の自由を奪われた男の、ただただ生かされるだけの人生に対する自虐的な、あるいはあきらめの境地とも言える自己反省録なのだ。

病室でおぼろげに光を感じた。
ぼんやりとした意識の中で、看護士らしき人物が慌てて医師を呼びに行くのがわかった。

ジャン=ドーは、意識が回復して初めて自分の置かれた立場を認識した。

それまでのジャン=ドーは、雑誌“ELLE”の敏腕編集者で華やかな世界にどっぷりと浸かっていた。
だが今の彼は、唇の端から流れるヨダレさえ拭くことのままならない状況であった。

スペイン映画「海を飛ぶ夢」が尊厳死をテーマに扱っていたのに比べ、「潜水服は蝶の夢を見る」はもう少し穏やかなテーマかもしれない。
“希望を捨てない”とか“夢をあきらめない”とか、そういう人間的な彩りが感じられる。
時折、氷山が音を立てて崩れ落ちる映像が出て来るが、この描写も言葉に出して表現できないジャン=ドーの心情だったのかもしれない。
このような重厚な作品を観るにつけ、ふだんは忘れがちな健康のありがたみをつくづく感じさせる。
そして、生きていくこととは一体何なのかを考えさせられる。

2007年(仏)、2008年(日)公開
【監督】ジュリアン・シュナーベル
【出演】マチュー・アマルリック

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。





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最終更新日  2009.01.17 06:32:15


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