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2013.08.08
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テーマ: コラム紹介(119)
カテゴリ: コラム紹介
20130808

【北國新聞 時鐘】

連載小説「親鸞(しんらん)」の挿(さし)絵(え)を描く山口晃(やまぐちあきら)さんの筆が、また楽しくなってきた。物語の一場面を切り取る絵のほかに時々、思わぬ「遊び心」が登場する。

きのうの絵も愉快(ゆかい)だった。「ため息」とは、頭でっかちのナメクジや芋虫(いもむし)みたいな生き物で、突くと「はあ」と情けない声で鳴く。巨大な胴体の頭部から大きな目が生(は)えた珍獣(ちんじゅう)が「目頭(めがしら)」で、押さえるには相当の力と根性がいる。

「いかほどの銭(ぜに)」とは、イカの身(み)の丈(たけ)ほど積んだ金という絵解(えと)きには、うなってしまった。富山湾のホタルイカから深海(しんかい)の巨大なヤツまで、イカは大小限りない。金銭欲(きんせんよく)も同様だろう。われらの心の中には、山口さん描く化(ば)け物(もの)じみた生き物がうごめいているのだろう。

昨今は、つかみどころのない言葉が、やたら飛び交う。「けじめをつける」「反省とおわび」「歴史認識(れきしにんしき)」などの正体(しょうたい)を、現代の絵師(えし)と呼ばれる画伯(がはく)の筆なら、どんな化け物に仕立てるのか。

「ため息」の絵だけでも勉強になった。こんなヤツを口から吐(は)き出して暮らしたいとは、誰も思うまい。「ため息は命を削(けず)る鉋(かんな)かな」。じっと、こらえてみようではないか。


~~~~~~

幸いにして、連載小説「親鸞」は私の定期購読している新聞にも掲載されており読むことができる。
山口晃さんの絵に唸った翌日に「時鐘」が触れており、思わず声を出してしまった。いよぉ~ご同輩!

日常的に落語に親しむ身としては、「命を削る鉋」は深酒の戒めであっのだが(笑)、ため息もそう心得て『じっと、こらえてみよう』と思う次第だ(^^)v
ちなみに落語では「百薬の長」の対比として「命を削る鉋」をつかう。マクラの定番であり、先代の小さん師はよく使っていた。「ホドホドがよろしいようで」と結ぶのだ。

それにしても『つかみどころのない言葉』とはシャレたことをいうものだ。このへんの妙がコラム氏は実にうまいのだ。酸いも甘いも噛み分けた大人の筆である。
だからコラム氏の行き着く先を、そんな「化け物」みたいな言葉に踊らされるのはいかにもヤボというものだ、と推察する。

ま、とりあえずはコラム氏同様に「じっと、こらえてみよう」。

智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
夏目漱石「草枕」より

20130124aisatsu





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最終更新日  2013.08.08 05:40:22
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