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2014.06.29
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テーマ: コラム紹介(119)
カテゴリ: コラム紹介
【産経新聞 産経抄】
20140629

~晶子に賛成
先日、愛知県津島市で未発表の短歌が見つかり、歌人の与謝野晶子が再び脚光を浴びている。晶子は実は、100編近い童話も残した。

▼「ほんとに貧乏でしたから、玩具は買ってもらえなかった」。長男の光さんは、幼い頃をこう振り返る(『晶子と寛の思い出』)。夜、子供たちが寝る頃になると、床の中に入って即興のおとぎ話を聞かせてくれた。翌日それを書き直して、作品にしていたらしい。

▼晶子には、光さんを頭(かしら)に11人の子供があった。それでも、仕事のペースが落ちることはなかった。「やは肌のあつき血汐(ちしお)にふれも見で…」。一世を風靡(ふうび)した名歌の数々は、今も輝きを失わない。詩や小説を書き、「源氏物語」をはじめとする古典の現代語訳に取り組み、評論活動にも力を注いだ。八面六臂(ろっぴ)の活躍で、収入の少ない夫の鉄幹(寛)を助けて、火の車の家計を支えた。

▼「お札の顔ぶれをそろそろ変えてみてはどうか」。正論欄で、文芸批評家の新保祐司さんが提言していた。五千円札の肖像に、今の樋口一葉に代わって晶子を採用するのは、大賛成である。

▼平成26年版「少子化社会対策白書」によると、25~29歳の未婚率は30年前に比べて男性は16・7ポイント、女性は36・3ポイントも増加していた。また結婚しても出産に踏み切れない女性の多くが、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」ことを理由に挙げている。子育てと社会進出を両立させようとする、女性たちの応援団長として、晶子ほどふさわしい人物はいない。

▼光さんによると、夫に先立たれた晶子は、毎日泣き暮らした。世の中の男たちは、お札の晶子の肖像を目にするたびに、こんなメッセージも受け取ることになる。「私のような女に、惚(ほ)れられてみなさい」
(6月20日付)

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漱石の俳句(詳細は コチラ

「くれなゐの 牡丹咲く日は 大空も 地に従へる こゝちこそすれ」
「春の夜の 波も月ある 大空も ともに銀絲の 織れるところは(ところぞ、とも読める)」


晶子の歌は、内容もさることながら、文字にしたときに「綺麗」なのが特徴である。文字が実に見目麗しいのだ。もちろん口に出して読んだときの綺麗なことは言うまでもない。それが晶子の短歌であり、文学を芸術の域まで高めている。
蛇足ながら、優れた短歌を詠んでも、芸術の域まで高められた方はそうはいない。小説、俳句もまたしかり。

晶子はまた、自己の短歌を確立したように、自己の生き方も確立した。コラムから晶子の生き方を垣間見るのだが、自伝や文学アルバムを紐解くと、彼女の圧倒的な人生が満載である。そこに晶子の凄味を感じないではいられない。
しかしそう思うと、そう簡単に「私のような女」がいるはずはない。そしてまた、そういう女性に愛された与謝野鉄幹という男性も、それはそれは飛びぬけて魅力的な人であったのだろう。つまり、お互いそうざらにはいない人であり、芸術同様に眺めているに限る域なのだ。

ところでコラム中にある五千円札の肖像の件である。論文を抜粋した。

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(前略)~お札の顔ぶれをそろそろ変えてみてはどうか。今、日本は大きく変貌しようとしている。政治や外交の面を見ても、第2次安倍晋三政権の誕生以来、日本の在り方が様変わりした感がある。それに伴い、日本の経済や社会の雰囲気もアベノミクス効果もあり、ずいぶんと活気と自信を取り戻しつつあるようである。日本の再生を象徴するものとして普段使っている紙幣の肖像が変わることは、人心に訴えるものがあるではないか。

2020年東京五輪の開催も控えている。これを機会に世界中のさまざまな国から大勢の外国人が日本にやってくる。そして、彼らは日本の紙幣を手にすることになる。その時、このお札に描かれている人物はどういう人間であるかと思うこともあるに違いない。

その問いに対して、日本人が誇りを持って説明できる人物であることが望ましい。もちろん、現在の野口英世、樋口一葉、福沢諭吉もそのような人物ではあるが、今後の日本の国家、あるいは国民としての進む方向性というものを勘案して、人物を一新することもいいことではないかと思う。

あえて私案を示すならば、千円札は後藤新平、五千円札は与謝野晶子、一万円札は内村鑑三でどうだろうか。まず、千円札の後藤新平だが、後藤は満鉄初代総裁や内務大臣・外務大臣などを歴任した近代日本の大政治家である。東京市長にもなり、特に関東大震災直後、内相兼帝都復興院総裁として復興計画を立案した人物である。現在の東京という都市の骨格はその復興計画によるところが大きい。五輪の開催に当たって、今日の東京の基盤を作った人物として回想されるべきであろう。

後藤は東北・水沢の出身で、東日本大震災からの復興という観点からも、注目されるべきだ。自治三訣(さんけつ)として「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そしてむくいを求めぬよう」という言葉を遺(のこ)したこの人物は、日本人に「自治」の精神が求められる、これからの時代に偉大な先人として歴史に刻まれるべきである。



一万円札の内村鑑三には、明治41年刊行の『代表的日本人』がある。札幌農学校の同期生、新渡戸稲造の『武士道』や岡倉天心の『茶の本』などとともに、近代日本の代表的な英文著作である。この本は、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人の人物をとりあげているが、上杉鷹山については、ケネディ米大統領のエピソードを思い出す。~(後略)

(文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司)
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新保先生の発想は見事である。私は、内村鑑三に関してかねて新保先生から学んだ。万札の内村鑑三は大賛成である。諭吉翁にはそろそろお退き願い、内村鑑三に載ってもらいたいと思う。デフレも脱却したことだし、万札の貫目が上がることであろう。
そして樋口一葉にかわる与謝野晶子も大賛成だ。自身の生き方を確立した晶子は、まさにこれからの女性の手本ともなろう。願わくは、肖像画の脇に短歌の一つも載せてほしい。札の格調もあがるのではないだろうか。



鎌倉や

御仏なれど

釈迦牟尼は

美男におはす

夏木立かな


釈迦牟尼仏を「美男」を言い切るところが晶子らしいのだが、その胸中は、

『でも我が鉄幹の方が美男よ』

といったところであろう。晶子という女性はそういう人なのである!


今日は雨の日曜となった。見ごろの紫陽花でも眺めながら晶子の歌に興じたいと思う。


20130124aisatsu





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最終更新日  2014.06.29 06:04:03
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