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2014.08.02
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カテゴリ: 読書案内
【勝海舟/第一巻・黒船渡来】
20140802

◆ピカレスク小説の筆頭、幕末大河ロマンはコレだ!
幕末を舞台にした歴史小説を書く著名な作家と言えば、たいていの人なら司馬遼太郎あたりを思い浮かべるかもしれない。
もちろん、それはそうだが、その司馬でさえ執筆のための資料を求めて頭を下げた人物がいる。
それが子母澤寛である。
子母澤寛は明治大学法学部卒で、もともと弁護士を目指していたが断念し、何度かの転職を経て読売新聞の記者になる。
『勝海舟』は、その子母澤が“戦中戦後と6年を費やした大作”なのである。
司馬は、自身の執筆に子母澤の所有する資料が必要となったため、譲ってくれるよう頼んだようだ。
子母澤は快諾し、後に司馬の子母澤へ送った礼状が発見され、「うれしさ、感激でいっぱいであります」という内容の文書が残されていたと。
そういう交流一つを見ても、いかに子母澤が後進にあたたかな手を差し伸べていたかがうかがい知れる。

さて、『勝海舟』だが、この近代日本の運命を背負った人物を語るには、その父について少し知る必要があるだろう。

人情あつく、義理堅い小吉は、チャキチャキの江戸っ子らしく、宵越しの金は持たない。
金に困っている仲間がいれば、貧乏の自分を顧みることなく有り金すべてくれてやるお人好しである。
正義感が強く、曲がったことの大嫌いな男だ。
身分は四十俵の小禄だが、一応は徳川の御家人で直参である。
この小吉の息子・麟太郎(後の海舟)は、そんな父の、金こそないが愛情だけはいっぱいに注がれ、開明的俊才を身につけていくのだ。

「江戸の海は、そのまま世界の隅々までつづいているのだ。云わばすぐ棟つづきのお隣に、顔も着物も食うものも違った得態の知れねぇ奴が住んでいるのと同じだ。油断も隙も出来ないこと故、先ず、奴らがどんなものか、それを知るにゃあ奴らの学問をやらなくちゃあいけない」

こうして麟太郎は、剣術の稽古以外に蘭学も学びつつ、徳川三百年の泰平の夢を破り、危機的な日本の置かれた状況というものを肌で感じていく。
一方、麟太郎の妹・お順は、佐久間象山から見初められ、年の差婚をしている。
象山が42歳でお順は17歳である。
その象山が麟太郎に「海軍をやったらどうか」と勧めて来た。
それが“海舟書屋”と象山の書いた横額で、麟太郎の雅号はここから“海舟”と名付けたようだ。


嘉永6年に、浦賀沖に来航したペリー率いる四隻の黒船により、日本は度胆を抜き、いよいよ動乱期に突入する。
幕末・維新の混迷期を語る時、やはり勝海舟その人なくしては語れない。
何を置いてもこの長編小説を読了し、近代日本の成り立ちを漠然とでも知っておくべきだ。
必読の書と言っても過言ではないだろう。

『勝海舟』~第一巻・黒船渡来~ 子母澤寛・著





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★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2014.08.02 05:59:18
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