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2015.03.29
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カテゴリ: 読書案内
【梅原猛/学問のすすめ】
20150329

◆知識の習得は退屈、だが必要不可欠なもの
個人的な嗜好で恐縮だが、私は梅原猛が好きだ。
私が高校生の時にハマった『隠された十字架』に始まり、『水底の歌』『笑いの構造』など、どれも楽しく拝読した。
今回再読した『学問のすすめ』は、すでに再版はされておらず、古書店などで手に入れるしかないものだが、ぜひとも若い人たちに読んでもらいたい良書である。
著者がてらうことなく、「若い時には、学問が必ずしも面白くなかった」と語っているのには、つくづく共鳴した。
こんなに立派な著名人でも、若いうちはイヤイヤ勉強していたのか、、、と思うと、何となくホッとする。

『学問のすすめ』は4章から成っている。
第一章 生い立ちの記
第二章 創造への道
第三章 新しい認識への旅


私がとくに秀逸だと思ったのが、第一章と第二章で、自叙伝のところなど燃えたぎる熱情にあふれている。
梅原猛は仙台市に生まれ、京都大学文学部哲学科を卒業している。
代表作に『隠された十字架』や『水底の歌』『仏教の思想』などがあり、研究は多方面に渡っている。
もともと著者は西洋哲学に造詣が深く、そこから東洋の仏教思想へと研究の幅を広げて行く。
ニーチェの説く精神の三つの段階、『ツァラトウストラはかく語りき』など読んでもさっぱり頭に入って来ないところ、梅原猛の解説により、なるほどと分かったような気になるから不思議だ。

ちょっとここでニーチェの“精神の三様の変貌”というものをご紹介したい。
これは、人間の一生を通して考えた時、三段階の変貌を遂げなければ、真の人生とはなり得ないという思想だ。
第一段階・・・ラクダ=忍耐
重い荷を背負って黙々と砂漠を歩くラクダの姿は、人間があらゆる困難に耐え忍ぶ精神をたとえている。
第二段階・・・ライオン=勇気
百獣の王であるライオンは、ドラゴンと闘う。それは必死の勇気なくしては挑めない相手であり、それだけの価値がある闘争だからだ。

子どもは無邪気に好きなことを楽しむために、一からスタートし、一からつくり出す。創造とは、子どもにのみ許された特権である象徴。

このラクダ→ライオン→小児というプロセスは、あくまで理想論かもしれないが、それだけに示唆的でもある。
この考え方は、若い人にはちょっとだけ励みにならないだろうか?
若いうちに長く、辛い修練の時が必要なのは、やがて手にする創造の秘儀のためだと考えれば、少しは精神にゆとりが持てるかもしれない。
※ここでいう創造とは、梅原解釈によれば、「家庭をつくり、子供を生み、子供を育てる。それもまた大きな創造なのである」と述べている。


知識の習得というのは、ホンネを言ってしまえば退屈である。
役に立つかどうかも分からないのに、本を読んだり勉強したりすることに、一体どんな意味があるのか?
だが、『学問のすすめ』を読むと、ニーチェのことが書いてあったり、万葉集のことが書いてあったり、仏教のことが書いてあったりで、知らず知らずのうちに、ほんのわずかでも知識の習得に成功していることに気付かされる。
これからを生きる若い人たちの中で、このブログを読んで少しでも興味を持ってくれたら、ぜひとも図書館に足を運んでもらいたい。
そしてできれば梅原猛の『学問のすすめ』の一読を推奨する。

「真理の探究は全く孤独な仕事なのである。全世界を敵にしても、あえて戦うことのできる孤独な勇気を自己の中にもたねばならない」

『学問のすすめ』より梅原猛・著


☆次回(読書案内No.159)は未定です、こうご期待♪


コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2015.03.29 07:10:11
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