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2015.11.22
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カテゴリ: 読書案内
【見延典子/もう頬づえはつかない】
20151122

◆貧困女子大生の恋愛事情
70年代は、いろんな意味で新しい風の吹いた年代であった。
小説はそれが顕著に表れているのだが、たとえば村上春樹が登場したり、三田誠広や中沢けいなんかも産声をあげた。
中でも見延典子は女子大生のゆるい日常を俗っぽく描いていて、本人の体験手記なのではと読者をハラハラさせるリアリティーさが受けた。
当時ベストセラーとなった『もう頬づえはつかない』は、著者である見延典子によると、「これは大学に提出した卒業論文」であるとのこと。
そのわりに文体は堅くないし、臨場感はあるし読み易いので、ごくごくフツーの小説として楽しめる。

見延典子は札幌市出身で早大第一文学部卒である。
最近では『頼山陽』で新田次郎文学賞を受賞しているが、いつから歴史や伝記文学へと転向したのであろうか?
代表作の『もう頬づえはつかない』は50万部を超える大ベストセラーとなり、1979年に桃井かおり主演で映画化もされた。(ウィキベディア参照)
今回、当ブログの管理者の一人が『もう頬づえはつかない』の単行本を持っていたため、私は遅ればせながら一読させてもらう機会を得た。


貧乏女子大生のまりこは印刷工場でアルバイトをしていた。
そこで知り合った同じく貧乏学生の橋本と、ずるずるとした関係を持つようになったまりこだが、実はまりこには同棲している恒雄がいた。
だが恒雄は風来坊で、すでに1年近くも音沙汰がなかった。
恒雄はまりこと同じ大学の法学部生だったがすでに退学。愛嬌のある橋本とは対極にあり、無愛想で無口でそれでいてまりこには抗えない魅力を感じさせる男であった。
まりこは自分のアパートに住み着いてしまった橋本をキープしつつも、心はいつも恒雄の帰りを待っていた。
そんなある日の深夜、ふらりと恒雄がまりこのところへ戻って来た。
だが部屋には橋本が寝ているため、まりこは恒雄を中には入れず、場末のスナックへと誘った。
後日、橋本が帰省のため鹿児島へと帰ってしまうと、まりこは待ってましたとばかりに恒雄のもとに出かけた。
新宿のホテルで恒雄に抱かれ、快楽を貪った。
感動的とも思えた再会と抱擁はつかの間だった。
まりこは妊娠したのだ。

まりこは愛する恒雄の子を宿したのだと思い込み、恒雄のアパートに何度も足を運ぶのだった。

言うまでもなく結末は陰惨で、後味は悪い。
こういう小説が当時のベストセラーだというのだから、おそらく時代性もあると思われる。
私の好きな書評家である斉藤美奈子が、『妊娠小説』という抱腹絶倒の著書の中で、この手の小説をバッサリと斬っている。
「未知なる妊娠に対する率直なおどろきである」と。

青春の苦悩とか何とかを表現した小説には違いないのであろうが、ひょんなことから妊娠→中絶というプロセスは、いつの時代にもごく当たり前のように存在した。
娯楽の少ない時代には、肉の悦びもスポーツやゲームの一つだったかもしれない。
だが今後はどうなるか?
昔はこういう小説が世間をあっと驚かせるものだったのだと若い人に教えてやりたい気がする。
この小説を読んで衝撃を受けるかどうか分からないけれど、ちょっと試しに読んでみてはいかがだろう?
女子高生、女子大生の方々、ぜひどうぞ。

『もう頬づえはつかない』見延典子・著



コチラ から
★吟遊映人『読書案内』 第2弾は コチラ から



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最終更新日  2015.11.22 07:14:41
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