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2023.02.11
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カテゴリ: 映画/TVドラマ
【刑事コロンボ 刑事コロンボ 〜死者の身代金〜】
「(真相は)些細なことをつなぎ合わせると見えてくるものなんですよ。(そこでたどり着いた答えが)この誘拐は妙だ、ということです」

突然だが皆さんは「ウーマンリヴ」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
これは、1960年代から70年代前半にかけて、一世を風靡した女性解放運動である。
主にはアメリカやヨーロッパなどが舞台となっていて、日本にも多大な影響をもたらした、性差別撤廃を目指した運動だった。
、、、と、こんな偉そうに解説しておきながら、私はリアルタイムはまだ幼少だったので、ろくにその本質を知らない。

敬虔なクリスチャンであったかどうかは推測に過ぎないけれど、聖書に則り、聖書とともに生きて来たごく一般的な女性がぼんやり物思いに耽っていたとき、とある矛盾に気付いてしまったのだ。
それは、平等を説くキリスト教でありながら、その実は男性優位であること。
基本的にキリスト教圏である欧米は日本と違い、女性の立ち位置は深刻な社会問題を引き起こす引きがねとなるのに充分な条件が揃っていたと思われる。
とにかく女性は慈愛に溢れた母性の塊でなくてはならず、夫に尽くしてこその存在であった。(良妻賢母というやつである)
それは、キリスト教における唯一絶対の神が「そうあるべき」と言うのだから、簡単に覆すことなどできない。

なんとキリスト教者は、たとえレイプによる妊娠でも中絶してはならないのだ・・・!
(これに関しては様々な見解があるため、クリスチャンでもない私がとやかく言うべきことではない)
その後、女性解放運動の成果の一つとして、妊娠、中絶を決定する権利を与えられた。(だが、すべての国ではない)

これがものすごくざっくりとした「ウーマンリヴ」の一端である。
さて、なぜ私がこんな話題を持ち出したのかと言うと、『刑事コロンボ』においても、その世相がチラリと見え隠れしているからだ。
〝死者の身代金〟において犯人であるレスリーは女性弁護士だが、秘書は男性である。
コロンボはその秘書に、上司が女性というのはやりづらくないのかと、聞くシーンがある。
男性秘書は一蹴するが、今なら間違いなく〝セクハラ〟で訴えられてしまうかもしれない、、、
このように、時代背景を軽く知ってとくと、また一段と『刑事コロンボ』を楽しむことができると思い、ほんの少しだけ「ウーマンリヴ」について語らせていただいた。あしからず。
あらすじは次のとおり。

ある晩遅く、レスリーは万全の準備を整えて、夫の帰宅を待ち構えていた。

夫は資産家で名声もあり、今離婚を切り出されたりしたら、女性弁護士として仕事もプライベートも高く評価されている自分の名誉にキズが付いてしまう。
どんな手段を使ってでも阻止しなければと思った。
そこで思いついたのが、誘拐殺人トリックである。
小型のピストルで夫を殺害すると、弾が貫通せず死体が大して傷つかないのを良いことに、死体を現場から動かし、さも身代金目的の誘拐のごとく、新聞の切り抜きを貼り付けた脅迫状を、自らに送りつけた。
一報を受けたFBIは、逆探知などを設置し、犯人検挙に躍起になるが、ようとして知れなかった。


童話の世界において継母というのは冷酷非情で容赦のない性格である。
だが今回私が見た〝死者の身代金〟では、被害者の実の娘が留学先のスイスから帰宅するやいなや、後妻のレスリーを徹底的に糾弾するシーンがある。
継母に対して負けるものかという意地が垣間見える。
犯人は間違いなくレスリーであるが、いくら小娘が泣き喚こうとも証拠がない限りは検挙できない。
ましてや相手はインテリな弁護士である。
すわ泣き寝入りかとあきらめかけていると、コロンボの存在が急に際立つのだからニクイ。

この作品の受け止め方は視聴者の自由だけれど、私は製作者の、半ばうんざりした、この当時の世の中の動きに対する反感を見たような気がした。
犯人のレスリーは女性弁護士として地位も名声も手に入れているが、その実、夫に対して不誠実だし、継子を蔑ろにしている。こんな輩が女性の権利を主張するのは一体どういうことか、けしからん、、、という辛口のメッセージが伝わってくる。
そんな成功した勝ち組の女性を犯人役に仕立てた製作者サイドの本当の意図はわからないけれど、少なくとも当時の「ウーマンリヴ」への反駁が理解できるのではなかろうか。

悪役に徹した犯人役のリー・グラントだが、さすがハリウッド女優、この作品でエミー賞主演女優賞にノミネートされている。
ちなみにリー・グラントは、’51公開の『探偵物語』にも出演し、高い評価を受けた女優さんである。
とにかく粒ぞろいの役者が揃っての好演なので、悪いはずがない!
これが50年も昔に放送されたなどと信じられない名作刑事ドラマなのだ。

1971年放送
【監督】リチャード・アーヴィング
【キャスト】ピーター・フォーク、リー・グラント



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最終更新日  2023.02.12 02:26:56
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