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2023.03.04
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カテゴリ: 映画/TVドラマ
【刑事コロンボ 刑事コロンボ 〜構想の死角〜】
「(何度も)しつこくて申し訳ありません。(あなたのおっしゃりたいことは)わかっています。根ほり葉ほり伺ってしまい・・・本当にすみません。(でもこれは)私の性分でしてね」

人にはそれぞれ役割というものがある。
例えば漫才師などは、ボケとツッコミという役割があって、どちらか一方でも欠けたら漫才は成立しない。
たいていはコンビのどちらかがネタを考える役割を担っている。だからネタを考え、台詞が書ける側というのは、ある意味、漫才コンビを存続していく上での要でもある。
そんな、マルチな才能を持つ芸人なら、漫才師という枠に留まることなく、放送作家や脚本家などに転身することが可能であろう。
しかし他方で、漫才師のボケ役、あるいはツッコミ役としてそこそこの芸を持っているとして、ネタを考えない側、台本を書かない側はどうなんだろう?
〝つぶしがきかない〟と言われるが、仕事を選ばなければ何とかなるようだ。
コンビを解消したあとなど、飲食店を開業したり、介護ヘルパーになったり、ハウスクリーナー業を営んだりと、いろいろだ。
それでも一度は華やかな芸能界の空気を吸った人にとっては、一般人のレベルにまで落ち着くのは、なかなか勇気のいることなのではと想像してしまう。

そんな折、私は『刑事コロンボ』〜構想の死角〜を見た。

ストーリーは次のとおり。

ベストセラー作家として大成功をおさめたケンとジムは、表向きは二人で推理小説のネタを考え、完成させていると思われていた。
だが実際にトリックなどを考え、文章として書き上げているのはジムだった。
一方、ケンはその明るく社交的な性格から、マスコミの取材や、出版社との交渉など、営業面を担当していて、小説は1行も書いていなかったのだ。
ある日、ジムはコンビを解消したいと言い出した。
ケンはそれに対し、素直に頷くわけにはいかない。
ジムの書く小説のおかげで、これまでの贅沢三昧な生活ができたわけで、コンビが解消されてしまえば、ケンの役割は一切なくなる。
つまり、身の破滅を意味するのだ。
ケンは、別荘やら車などの購入に金づかいが荒かった。借金もあった。
ここは一つ、ジムに多額の保険金をかけて、死んでもらうしかない。受取人はもちろん自分である。
ケンは、一世一代のトリックを仕掛け、ジムを殺害するのだった。


もし自分が誰かの才能や技術に依存して成り立つところにあるとしたら、一刻も早く、己の立ち位置を見直さなくてはならない。
あるいは、自分の役割を相手の才能の一部として組み込んでしまう仕組みを作ることだ。
そうすることで、いざ相手が独立を目論んだとき、一人ではどうすることもできない状況となる。
つまりは二人がお互いに足枷となり、故障のない限り、半永久的に歯車となって動き続けてゆくのだ。
だが、たいていの人間は欲の塊であり、業の深い生きものであるから、利益は全て我が物にしたい。


例えばドラマ中に殺害されてしまうジムは、作家として成功したし、結婚もして前途洋々。
だが、このままの状態が続けばギャラは相変わらず折半だし、もう我慢の限界に近いところまで来ていた。小説は全て自分が書き上げていて、ケンは一行だって書いていないのに!
今後独立しても、書ける自分は何も問題ない。だが、書けない彼はどうなる? そんなことはどうでもいい。生きるためなら何でもするだろう。仕事は選ばなければ何でもあるーーと、思ったに違いない。
その傲慢さ、いや、本人はそんなつもりは毛頭なかったであろう。
だが結果として、コンビ解消を望んだジムは殺害されてしまった。
じゃあ殺されないためには一体どうしたら良いのか?

これは極端な例えかもしれない。
しかし教訓として心に刻みつけておく必要があると思う。
身の丈を超える欲を出したときこそ、人は己の危機を感知するべきだ。
この作品は、人の深淵を覗くドラマとなっている。
メガホンを取ったのは、スティーヴン・スピルバーグである。
まだ若くて無名だったスピルバーグの、渾身の作品なのだ。
一見の価値あり。オススメだ。

1971年放送
【監督】スティーヴン・スピルバーグ
【キャスト】ピーター・フォーク、ジャック・キャシディ



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最終更新日  2023.03.04 08:00:08
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