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2012.10.03
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カテゴリ: 医療_糖尿病
私はヒューマログという超速攻型(速く効いて、速く効果が薄れる)のインスリン製剤を注射して血糖値を管理しているが、この前、半年ごとの糖尿病の定期健診に行った時、主治医がビクトーザという新薬を薦めてくれた。ここ5年ぐらいの実績があるという。こちらも注射式で、見た目も打ち方もヒューマログのペン型注射器とほぼ同じ。インスリンの場合は、食事に合わせて1日3回打つが、これは決まった時間に1回打てば、24時間作用が持続するとのこと。


ちなみに私の一日の血糖値の目標値はこんな感じ(単位:mg/dl)。
(1)朝食前 75(基準値は110未満)
(2)朝食後2時間 140以下
(3)昼食前 110以下
(4)昼食後2時間 140以下
(5)夕食前 110以下
(6)夕食後2時間 140以下



インスリンの量は、食事前に、これから食べるものに含まれる炭水化物の量に応じて計算して決めて打つ。だいたい、毎回の食事の炭水化物量が一定になるようにはしているが、どんな食べ物に、どれだけ炭水化物が含まれているかについては、基本的なものについては覚えるか、食品表示ラベルを頼りに判断する。自分で作った時は計算しやすいが、外食や、人に作ってもらったものについては全て経験による目分量。

たとえば朝食。8枚切りパン(アメリカだとよくある正方形の小さめの食パン2枚)にスクランブルエッグにハムにサラダ、みたいな献立だと、私は食前にヒューマログを2単位打てば、2時間後の血糖値(2)は140以下に収まる。この後、1時間ぐらいしてちょっとお腹がすいたらクラッカーでもつまんで、その後1時間ぐらいして(3)昼食前に100以下になっていれば万々歳。その後は昼食も夕食も、朝食と同じようにして、食べる炭水化物の量に応じてインスリンの量を計算して打つ。

要するに、1日3回打つ。おやつにケーキとか炭水化物(砂糖・粉)の多いものを食べる時は、さらにその前に打つこともある。で、いちおう食事の15分前に打たなければならない。いちおう、と書いたのは、そんな、普段の生活ではぎちぎちと時間通りには行かないからである。
それから、上記の(1)から(6)の目標値を達成しているかどうかについては、血糖値測定器で確認するしかない。自分の感覚は、極端な低血糖の場合を除いて、あまり当てにならない。私は血糖値測定は1日6回ではなく、多くて4回ぐらいであるが、血糖値を測定して、インスリン注射をして、15分待って、食べる、というのをやるのは至難の業。特に、子供達がお腹をすかしているところにわーっと食事を作って、さあ、食べましょう、という状況の中で、こんなことをしようと思ったらストレスたまってかえって血糖値が上がりそうだ(笑)。

だから、そういう意味では、1日1回決まった時間に注射を打てば終わり、というビクトーザは画期的だった。この1日1回というのを忘れやすいのが欠点であるが(インスリンの場合は、「食事の前」というのがきっかけになるので忘れにくい)、朝起きた時とか、夜寝る前と決めて、アラーム時計をセットしておけば忘れることもない。しかも、家にいる時間帯に注射時間を決めておけば、注射セットを持ち歩く必要がない。これも荷物が減って便利。あとは、急いでいてとにかくパッと食べたい時にすぐに食べられるのも便利。

また、ビクトーザは基本的に血糖値が高くなった時だけに作用するらしく、インスリン注射の最大の副作用である低血糖の心配がほとんどない。低血糖は、主に、食事の量に対してインスリンの量を間違って過剰に打ってしまった場合に起こる。私は、外食した時に、炭水化物の量を過大に見積もってしまった時や、食事前の血糖値が、それまでにダラダラ食べしまったとかで100以上になってしまっていた場合、いつもより多めにインスリンを打つことで次回の食後の血糖値を調節できるのだが、その見積もりを誤ってしまった場合に起こる。落ち着いて計算すればまず間違いはないが、何か他のことに気をとられていたり、忙しい時など、診察直前で検査の値を良くしようというプレッシャーを感じている時(笑)などは、つい見積もりを誤って低血糖を起こしてしまう。だから、低血糖から解放されるというのもすごく画期的。

以上まとめると、一日に1回、食事時間とは関係のない時間でも注射可能なので注射一式を持ち運ぶ必要がなく、食事前にいちいち注射する必要もなく(家ならいいけど、外出先だと注射を打つ場所を選ぶ。私はいつもレストランのテーブルの下でこそこそやっているが 笑、テーブルのないところ、たとえば日本語学校の運動会で屋外で皆でゴザを敷いて座っているという場合なんかだと、やっぱり人前で服をめくって注射をするのは気が引けるのでわざわざトイレに行ったりすることになる。で、トイレの前が長蛇の列だったりすると。。。)、さらに、低血糖の心配もない。要するにQOL(生活の質)は大幅に向上する。

糖尿病を持つ人にとって、このQOLというのは非常に大切だ。一度なってしまったら基本的には完治しないので、治療も一生続く。一時的な病気なら、ある一定の期間、少々日常生活が制限されたとしても集中的に治療するということも出来るが、糖尿病の場合は、日常の生活を続けながらの投薬や注射となるので、その日常生活が脅かされるほどの不便さを伴う治療方法では困るわけだ。

だからこそ、主治医はこの薬への切替を薦めてくれて、それまでは特に不便を感じていなかった私も、実際に使ってみたらそのQOLへの効果を思いのほか実感できて、この薬を使用する方向に大いに気持ちが傾いた。こう、今まで使ってた普通のケータイでも別に良かったんだけど、iPhone試しに使ってみたらもう便利で今さら元に戻れない、ってそんな感じ(iPhone持ったことないから分からないけど)?

ところが、この薬を継続するには大きな壁があった。吐き気と食欲減退という副作用だ。私が食欲をなくしたらこの世は終わりと豪語してもいいぐらいの食欲旺盛なこの私が、本当に食べられなくなった。多分、普段の半分ぐらいの量だったと思う。朝はそれでもお腹がすくが、残りの食事はとにかく必死で食べる、という感じだった。それで週2回のズンバは欠かさず行っていたので、この薬を試している20日間足らずの間に6ポンド(約2.7キロ)痩せた。これも画期的!と言っている場合ではない。私は、もともと2人目の妊娠中に太ったものが完全には戻り切れていないまま現在に至るので(何年経ってるんだよ!)、今回その分が減っているだけなのだが、夏の間に食事の量に気をつけてズンバに週2回行って、2ヶ月かかって3ポンド痩せたそのペースから比べたら、ちょっと早過ぎる。しかも、今の体重でもBMI値は正常範囲内なので、主治医からはこれ以上痩せなくても良いと言われている。私の昔を知っている人(というよりは、主に親)から太った太ったと言われるのが煩わしいので、もう少し減らしてもいいかな、と勝手に思っているだけである。だいたい、昔の私は薬物に頼らず食事の量を極端に減らして血糖値を管理していたので、痩せすぎだったし、お腹がすいてすいて惨めだった。

で、空腹感から解放されたのは快適だったけど、あまりに長時間食べなくても平気だったのはちょっと怖かった。よく、痩せたくて違法薬物に手を出す人がいるという話を聞いたことがあるが、その気持ちが初めて分かったような気がした。



その間、私の加入している保険会社がこの薬には保険を適用しないとの判断を下した。理由は要するに他の安価で実績のある経口薬を先に使えと。私はこれは数年前に試して効果がなかったので、これを不服として申し立てする機会も与えられたのだが、仮にそれが通ってこの薬に保険が適用されたとしても、この副作用が消えないままなら使いたくないし、その他にも、これまでごく一部のネズミには出ているが人間には出ていないという少々気になる副作用もあったこと、昼食前の血糖値が戻りにくいこと(これは薬物を使わない時の私の問題点。インスリン製剤を使っていると、ほぼ戻るし、戻っていない場合は、その時点でインスリンの量を調整して打てば、その後の血糖値を目標値に収めることができる)もあり、やはり実績もあり、血糖値管理の小回りも利き、(少なくとも私にとっては)重大な副作用のないインスリン製剤の注射に戻ることにした。

インスリン製剤に戻った途端、胃のつかえが嘘のように消え、いつもの空腹感が戻ってきた。そして、食べずに痩せた分は、食べることで順調に戻りつつある(笑)。いやー、薬は本当に怖い。また、食べて運動して痩せるという、地道だけど確実なダイエットのやり直しだ。

まあ、ちょっと残念、というか、ちょっと夢を見させてもらったというか。でも、この30年間で糖尿病をとりまく環境は薬もQOLも含めて飛躍的な向上を見せている。私が今後100歳まで生きるとして(笑)、その間に、また何か便利で副作用の少ない治療方法は出てくるだろう。それまで、また、適当に息抜きしつつ、ぼちぼち頑張って行こうと思う。





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最終更新日  2012.10.03 21:30:17


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