inti-solのブログ

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2023.03.30
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テーマ: ニュース(100303)
生活保護の扶養照会、「仕送りした」親族は0.7% 朝日調査


今回の調査で、各自治体が照会対象としてリストアップした親族のうち、実際に照会した割合(照会率)を計算すると、数%から約8割まで差があることもわかった。
照会では、仕送りのほか、定期的な訪問や電話などによる「精神的な支援」が可能かも聞く。
親族に知られることを理由に申請をあきらめる人がいるとして、生活困窮者の支援団体などの間では批判の声が強い。
朝日新聞は扶養照会について、全国の県庁所在市、政令指定市と東京23区の計74市区にアンケートや情報公開請求を実施し、今年1月までに回答を得た。調べたのは、20、21年度に保護の開始が決まった世帯に関し、照会した親族の数▽照会を受けて仕送りした親族の数▽仕送りの金額など。
74市区では、両年度に開始が決まった計20万6513世帯について、親族のべ22万7984人に扶養照会をしていた。その結果、仕送りをした親族はのべ1564人(約0・7%)だった。1千人への照会で、仕送りにつながったのは7人に満たない計算になる。両年度に74市区で保護の開始が決まった世帯数は、全国の5割強にあたる数字になる。
照会したうち仕送りが得られた割合を自治体別にみると、全体の8割にあたる60市区で1%未満だった。うち水戸市など8市区は、2年ともゼロだった。

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福祉事務所関係の知人に聞いても、「経済的援助」(仕送り)を受けている受給者など、まあまあ100人に一人、という話で、0.7%という数字はそんなものだろうと思います。保護を受けるまでは援助していても、受け始めた途端に安心してやめてしまう、という例も少なくありません。もともと親子兄弟と完全に縁が切れているという例も非常に多いようです。

ただし、経済的援助は100人に一人でも、精神的援助はそうではありません。親子兄弟との縁が完全に切れている人が多いとは言っても、それでも多くの受給者は親族との何らかの交流があり、引用記事にあるように、福祉事務所的には「定期的な訪問や電話」のやり取りだけでも、十分に「精神的援助の範囲に入るのだそうです。
当然のことながら、福祉事務所のケースワーカーだって、経済的援助が受けられる受給者が極めてまれ、なんてことは承知しており、そんなものに何の期待も抱いてはいませんが、それでも精神的援助には多少の期待を抱いて扶養照会を送るのだそうです。
何度か紹介した「健康で文化的な最低限度の生活」という漫画(ドラマ化もされた)には、ビリビリに破いた後、それをセロテープで張り合わせて「援助不可」と書いた扶養照会の回答が遅れてくるシーンが描かれています。知人も、おおむねそれと同様の回答を受け取ったことがあるそうですし、知人の同僚にも、大筋似た経験をしたケースワーカーはいるそうです。

それでも扶養照会を送るのは何故か。そういう決まりになっていて厚労省が求めているから、ということもありますが、それがすべてではないようです。万が一の際、というのは、受給者が入院したり亡くなったとき、ということですが、親族の連絡先が分からないと非常に苦労することが多いそうです。

例えば受給者が入院する、親族がいれば親族が入院の手続きをしてくれますが、いなければケースワーカーが病院から呼び出されて手続きを求められる、のみならず保証人欄に署名を求められる場合すらあるそうです。ケースワーカーは入院の(に限りませんが)保証人になってはいけない、というのが鉄則ですが、書かないなら入院は無理です、などと言われることもあり、そうでなくても言外のプレッシャーもあって、署名せざるを得ない場合もあると言います。姑息な手段ですが、欄外に「××福祉事務所誰それ」と書くこともあるとか。
入院だけでなく介護施設も同様です。
残念ながらケースワーカーをやっていれば、そのような事態をゼロにはできないようですが、それでも極力そんな場面を減らしたい、連絡が付く親族は把握しておきたい、とは考えるものだそうです。


更に言えば、今は室内で孤独死した人の身元確認も、歯形記録の照合がDNA鑑定が必要です。鍵のかかった室内で死んでいたら他の人の可能性なんかないだろうと思うのですが、警察は身元確認ができない限り死体検案書に名前が入りません。歯科通院歴がなければ、親子兄弟の誰かとのDNA鑑定しかありません。

まあ、最後の手段として、届出人になる人がまったくいない場合の死亡届け出のやり方はあるにはあります(本当に身元不明の行き倒れの死亡届に準じる)。しかし、それはその後の「火葬の費用は誰が、どう出すか」ということにつながるのですが、諸事情から極力避けたいことだと聞きます。

行旅死亡人

端的に言って、届出人がまったくいない死体検案書では葬祭扶助の対象にする余地がなく墓地埋葬法の行旅死亡人の扱いになるけれど、その場合費用は全額区市町村の持ち出しになってしまう、ということです。

というわけで、親子兄弟誰も連絡先が分からない、という受給者が入院したり亡くなると、ケースワーカーがひたすら苦労することになるようです。それぞれの個人にとっては、死は生涯に一回ですし、入院も健康であればそう頻繁なことではありませんが、元々高齢者、障害者、病人が多い生活保護受給者100世帯を受け持つケースワーカーから見れば、受給者の入院も死も頻繁です。それが全部ケースワーカーの肩にのしかかってきたらとても保たないのです。

だから、福祉事務所から見れば親族の緊急連絡先を少しでも把握するために、扶養照会は必須なのです。
もちろん、全部が全部ではありません。DV逃げ母子の虐待元夫とか、そういう場合は扶養照会はしないのも鉄則だそうです(現実問題として、高齢単身者と比べれば母子世帯が入院したり亡くなる可能性は圧倒的に低いです)。また、長期間交流なく扶養期待性が著しく低い場合も扶養照会はしなくて良いし、現実問題として受給者が強く拒否する場合は扶養照会はしないそうですが、それでも、ケースワーカーとしては、経済的援助など期待はしていないけれど、せめて緊急連絡先の電話番号だけでも書いて返信を下さい、というのが本音だということです。

扶養照会が保護申請の足枷になるというのも分かるのですが、それが必要な理由もあるわけです。





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最終更新日  2023.04.14 08:20:22
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