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前回、踊り手の心情がわからないのは作者が踊らないから云々と書いたので、これを読んだ方は「あれっ」と思われたかも知れない。川端作品には所謂「踊り子もの」というべきカテゴリがある。有名な「伊豆の踊り子」もそうだし、前回の「舞姫」も、今回の「花のワルツ」、さらにレビューの踊り子たちを描いた「浅草紅団」など。なかには快活に踊る踊り手の高揚感がきちんと描かれているものもある。 前回の「舞姫」は踊り手である必然を感じない物語だったが、今回の「花のワルツ」はバレリーナ、それも踊ることに取り憑かれたバレリーナが登場する。 物語は竹内舞踏研究所の発表会から始まる。チャイコフスキイの「花のワルツ」を踊り終えた二人の花形バレリーナ星枝と鈴子。だが天才肌の星枝は何かが気に入らなく「一生踊らないわ」などと鈴子を困らせながらも、アンコールで再び舞台に立つと、すっと踊りきってしまう。これに鈴子は踊らないと言ってたくせにと逆に怒る。この辺りなんだか少女小説っぽいが、舞台裏を覗いているようなリアル感があるのは川端の筆力なのだろうか。 こうして鈴子と星枝を中心に物語は、渡欧留学していた期待の星南条の帰朝を契機に、踊ること(=芸術)の恐ろしさや孤独、悲しみなどを語っていく。また踊り手の高揚した気分もうまく描写されていて、これを読んで踊りを習いたくなる子がいるんじゃないだろうか。 ただ、リョウマチを患い踊りどころか歩くのさえ不自由になっていた南条が星枝の踊る姿に感動し一緒に踊りだしてしまうシーンは、川端の芸術礼賛とも思われるが、星枝の天才ぶりを表現するためだとしたらちょっとやり過ぎかもしれない。(とノーベル文学賞作家にケチをつけてしまった) さて、天才でありながら気難しくついには踊ることを止めてしまう星枝に、私は亡き指揮者カルロス・クライバー(昭5~平16)を重ねながら読んだ。 カルロスは天才と言われながらも完璧主義なのか気に入らないことがあると平気で本番をキャンセルしてしまう(82年のウィーンフィルとの「テレーズ事件」が有名)、お騒がせな人だった。が、一度振り出すとたちまち会場は彼の魔術にかかってしまい、彼の音楽に酔ってしまう。 それは空を翔るような軽やかなスピード感と、しなやかで力みの無い一筆書きのようなカンタービレ、絶えず沸き起こる生気溢れる演奏だった。レパートリーは極めて限られていたが、一度その魔術にかかると何度でも聴きたくなるのか、彼のチケットは高額で常に売り切れ状態だった。 このように彼は生前からすでに伝説となってしまったのだが、その最良の形はウィーンフィルとの1989年ニューイヤーコンサートだと思う。決してシリアスな作品ではないJ.シュトラウスのワルツやポルカでのしなかやかさ、リズムの軽やかさ、漂うような夢見るような無重力感から一転してリズミックな場面へ移る転換の早さ。これはもはや曲芸に近いと思う。他のどの指揮者からもこんな演奏は聴けないし、ウィーンフィルだってやらないだろう。彼だからこそできたのだ。彼の残した録音はライブでの凄さの何分の一しか伝えていないだろうが、一度は聴いておきたい。 晩年は滅多に人前へ出なくなり、その頃の海賊録音(盗み録り)では生気のない何か空回りな演奏になっていて、正直驚いてしまった。 ところで星枝がなぜ踊りをやめたのかというと、「芸術なんて、私はなんだか恐ろしいわ。私は直ぐ夢中になるの。夢中になって踊ってると、その時はずいぶん楽しいけれど、こんな天を飛ぶみたいないい気持で、いったい自分はどこへ行っちゃうんだろう、どうなっちゃうんだろうと、なんだか不安だわ。夢で空を飛ぶ、あんな気持よ。つかまるものがなんにもなくって、ずんずん飛んで行っちゃう。止そうと思っても、まるで人の体みたいに飛んで行っちゃう。私は自分を失いたくないの。なににだって私は夢中になりたくはないの。」「こんなことをしていたら、なんだか自分がちがったものになって行きそうで、こわいからですわ。踊っていると、つい真剣になっちゃって、そのあとが寂しいのよ。」 晩年のカルロスも同様に「自分を無くすような寂しさ」を感じていたのだろうか。89年のニューイヤーコンサートのDVD。最上の演奏です。 92年にニューイヤー再登場したときのDVD。上の演奏より勢いが無くなった分、エレガントになったとの評あり。カルロスはやっぱりオペラ!最高のR.シュトラウス「ばらの騎士」。70年代の勢いと煌くような美しい音色に酔いませう。
2007年06月27日
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小澤さんの新譜情報が出ていますので、まとめておきます。○モーツァルト: 交響曲第36番ハ長調 K.425『リンツ』 交響曲第38番ニ長調 K.504『プラハ』 モテット『エクスルターテ・ユビラーテ(踊れ、喜べ、幸いなる魂よ)』 K.165 森麻季(ソプラノ) 水戸室内管弦楽団 小澤征爾(指揮) ライヴ録音 録音時期:2004年12月(第36番)、2005年7月(第38番)、2003年2月(モテット) 録音場所:水戸芸術館 SACD Hybrid CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD SURROUND 5.0(交響曲第36番、第38番のみ) 発売日: 2007年07月18日 カタログNo: SICC10047 レーベル: ソニーミュージックエンタテインメント ○ショスタコーヴィチ:交響曲第5番ニ短調 op.47 サイトウ・キネン・オーケストラ 小澤征爾(指揮) 録音:2006年9月9日、11日、12日 長野県松本文化会館(ライヴ) 発売日: 2007年08月22日 カタログNo: UCCP1129 レーベル: ユニバーサル ミュージック ○ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調 録音:2006年5月27日 ベルリン、フィルハーモニー プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番ト短調 op.16 録音:2006年5月24-26日 ベルリン、フィルハーモニー(ライヴ) ユンディ・リ(ピアノ) ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 小澤征爾(指揮) 発売日: 2007年08月29日 カタログNo: UCCG1361 レーベル: ユニバーサル ミュージック ---------------------------------------------------------------------------- どれも注目盤ですね。個人的にはショスタコが聴きたい。先日亡くなったロストロポーヴィチの演奏を聴いて以来ずっとショスタコーヴィチを避けてきた(ぐらい感銘を受けた)小澤さんが満を持しての演奏ですから。 ユンディ・リとのラヴェルも聞き物。特にラヴェルは1970年のワイセンベルクとの共演盤(EMI)以来実に37年ぶりの録音となります。ワイセンベルクの機械的で味もそっけもない演奏とピアノ中心の録音で小澤=パリ管のセンシティブな伴奏(木管の音色がいい)が台無しだっただけに、今回の録音では期待したい。繊細さ極まるラヴェルになっていますように! いやあ怒涛の新譜攻勢に萌えますなぁ。
2007年06月23日
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まずはYouTubeのこれを見ていただきたい。 ・・・どうでした?何だか凄くなかったですか? じゃあ同じ曲をあのペライヤで、どうぞ。凄みが全然違うと思います。 これに似た衝撃はブーニンのショパン・コンクールのときか、小菅優のTV番組のときぐらいです。テクニックが単に凄いというだけでなく、何やら途轍もないものを聞いてしまった、そんな感じです。バカテクだけれどもポリーニのような冷たさはないし、美人(写真によって印象違うけど)だけど演奏に「女」を感じさせない。 特に音楽が盛り上がってくるときに口を開けてどんどんのめりこんでいく様子は、音楽を小綺麗にまとめて済ませる昨今のピアニストとは違う、彼女のなかの狂気を感じさせます。急カーブが目の前に迫ってきているのにさらに加速して突っ込んでいくような、危うさ。 ピアノのテクニックについてはよくわからないけど、ふわっとしたタッチから物凄い音が鳴っています。しなやかでありながら鋼鉄のような音。 呆気に取られてネット検索してみました。YouTubeにはいろいろ動画ありますね。 ラフマニノフの第2協奏曲もなかなかいいです。テンポは速め。が歌うところは随分テンポを落とします。この辺り、かなり自在に弾いているなという印象でした(特に第3楽章)。バックのオケが日本っぽいけど、来日してるのかな? この人、Valemtina Lisitsaさんはキエフ生まれで現在はアメリカ在住のピアニスト。年齢は30歳くらい、既婚です(残念?)。・出身:ウクライナ、キエフ・学歴:キエフ音楽院卒・受賞歴:'91 The Murray Dranoff Two Piano Competition(第1位)・レコーディング: AUDIOFONレーベルより7枚、DVDが3枚、 VAIレーベルよりイダ・ヘンデルとのリサイタル('00)盤あり。・特殊能力:速読?とphotographic memory(見ただけで記憶しちゃうってことかな)・ベーゼンドルファー・アーティスト 3歳より始め4歳でソロリサイタルを開くも、小さい頃はチェスのプロプレーヤーになりたくて、ピアニストへの道は考えていなかったらしい。またphotographic memoryの能力で少ない練習時間でキエフ音楽院に入学できたとのこと。 そのキエフ音楽院でAlexei Kuznetsoff(ピアニスト)と出会い、それがきっかけでピアニストへの道を歩き始めた(二人はその後結婚)。 上記コンクールで受賞したのを機にアメリカに移住。モストリー・モーツアルト・フェスティバルへの出演やDuo活動を通じて徐々に人気を博し、ソロ活動を開始。他に、イダ・ヘンデルやリン・ハレル、ヒラリー・ハーンらの伴奏も務める。 ざっとこんな具合です。ご興味のある方は彼女のHPをご覧ください。 それにしても、ピアノがうまいのにピアニストになろうとしてなかったとか、凄まじい記憶力にバカテクとか、音楽学校での彼氏との出会いからピアニストに目覚めたとか、ついちょっと前に流行ったあのマンガ(ドラマ)に似てませんか。(笑 彼女の演奏をもっと聴いてみたいと思っても、日本ではCDもDVDも売ってませんでした。(もしどこかで売ってたら、ご一報のほどをよろしくお願いします) 日本に来てくれないかなぁ。
2007年06月17日
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オーストリアのシュミード教育科学文化相は6日、2010年に任期が切れるウィーン国立歌劇場の総監督イオアン・ホーレンダー氏と音楽監督の小沢征爾氏の後任人事を発表した。 総監督には、パリ・シャンゼリゼ劇場総監督ドミニク・マイヤー氏(51)、音楽監督にはスイス・チューリヒ歌劇場音楽監督を務めるオーストリア人指揮者フランツ・ウェルザー・メスト氏(46)を起用する。 Yomiuri Onlineより ついにこの日が来ましたね。ホーレンダー氏の退任とともに小澤さんの退任も決まりです。 もっとも2007年にご本人は辞めるつもりだったのが、ホーレンダーの任期延期に伴ったわけですから、ある意味折込み済なわけで。。。 ウィーン歌劇場内部では軋轢もあったでしょうけど、これだけ長期にわたって務められたのも、小澤さんならではではないでしょうか。カラヤンだって56年から64年の8年だったのを、小澤さんは02年から10年の同じく8年間。ヨーロッパ人でない人がここまで勤めて立派でしょう。(途中、休養したけど) これからこそ、ほんとうにやりたかったことができるのではないでしょうか。日本での教育、サイトウキネンフェス、客演など。これも師レニーと同じですね。 ところで後任のウェルザー=メスト氏は46歳ですか。若いなぁ。いや、批判的な意味でなくて。たぶんウィーンは新しい血を求めたんでしょうな。小澤も年齢はともかく、彼の持つ新鮮力は欧米人には求められない、新しい魅力だったのでしょう。 2チャンでは相変わらず的外れな論議が多いが、着任すれば退任するときもある、当たり前のことではないでしょうか。(笑
2007年06月07日
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