日本人に対する偏見が、さらに強まっていた。アメリカの新聞は、愛国同盟とその機関紙・第十九世紀を改題した愛国を槍玉に挙げて攻撃していた。配達されるアメリカの新聞の見出しは、さらに厳しくなっていた。 Put Up the Barsユ Says Our Working People (追い払えと労務者は言っている) Immigration on the Increase (増加する移民) What Collector Phelps Says of the Outlook (税関長フェルブスの将来の見通し如何) Bad for Our Boys and Girls (少年少女に害) A Street Filled with Japanese Sirens(街路に聞こえる日本人売春婦の呼び声) Anarchists from the Mikadoユs Realm(日本帝国からやってきた無政府主義者) それを読んでいた富造は、なんとかこの偏見を取り除けないものかと考えていた。最初にサンフランシスコに上陸したとき世話になった愛国同盟とその機関紙が、「無政府主義者たちにより組織されており、団員たちはこの地から日本に向かって政治活動をしようと目論んでいる。ほとんど毎日発行されている「愛国」と呼ばれる新聞は、無政府主義者の機関紙である。赤旗を振りかざし、日本人に忠告を与えているが、これまでに帝国政府当局は幾度かこの新聞を発行停止の処分に科して、新聞が日本に送付されるのを差し止めている」と決めつけていた。愛国同盟の新聞・愛国は米紙に無政府主義者と攻撃されるようになったように、当初の自由民権的風潮から離れ、国粋主義的主張をするようになっていた。