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もう、そろそろ大丈夫やろ?まあ、この映画は出かけてみようかな。 やってきたのは 十三第七芸術劇場 、映画は ジアード・クルス―ム という監督の 「セメントの記憶」 です。
「さあ、始まったなあ。この岩山なんやねんやろ?」 穴の底のようなところから高層ビルの工事現場が上むきに映し出され、下に戻されると工事用のエレベーターに乗り込む労働者が穴倉から出てきて並んでいます。エレベーターがゆっくり上昇し、カメラの視線も上昇して風景が変わります。
「この高さ、この距離。この隔絶感。ふー」 こういう映像に「迫力」などという言葉は、なんだかやはり違うと思うのですが、催眠術のように、朦朧とした世界へ誘う力があります。あまりにも、遠く、 青い のです。
「眠い!アカン!眠い!」 久しぶりの映画だから、というわけではないのです。目の前には、文字通り 「目の覚めるような青空」 の光景が映し出されているのですが、とりあえずぼくはとても眠いのですのです。
うつら、うつら・・ ・ 突如の爆発音、立て続けに起こる大音響が響きわたりました。悲鳴。叫び声が飛び交っています。
ナッ、なんなんや。空爆かよ。どこやここは。わーえらいことになってるやん。ベイルートって戦争中?えー、ちがうやろ。シリア? 間抜けな驚きで目覚めると、壁が崩れ落ちて生き埋めになっている人もいるようです。爆撃された建物の中でしょうか?戦車も出てきます。砲撃するきます瞬間のシーンもあります。
ここはどこ?これは現実なんか? 再び工事現場の穴の底です。働く人々の食事が映し出されています。
最初に封を切った缶詰のイワシはどこに置いたんや?アカン、関連がようわからん。 コンクリートの床に段ボールを敷いて毛布をかぶって寝ている男がいます。テレビがズット映っています。どの男なのか、目は開いていて、その目にカメラの焦点が合わせられているようです。誰もしゃべりません。灯が消されます。
朝か? 今日もエレベーターが上昇し、摩天楼の世界が映し出されていきます。仕事の現場が映っています。
何日目や?眠い! 水の中にカメラは深く潜っていて、魚の影が見えます。沈んだ戦車もあります。上に向けたカメラがとらえるのは小さな気泡と光っている水面です。カメラは水底を漂っているかのように、偶然目の間に浮かび出るものを映し出します。
狙いは鏡に映る像か?ここは前後も上下も左右もみんな逆か?あの水は、水中映像は何なんや。あかん、眠い。アカン、映像のつながりがわからん。 高層ビルの現場で働いている男たちが、夜になると地下のコンクリートの床に直接横たわり、毛布にくるまって眠ります。夢を見ます。爆撃機の爆音や生き埋め、悲鳴や、怒号が夢の中で響き渡ります。その夢を補足するように水没した戦車が映し出されて行きます。
阪急
の 十三駅前
で今日のお土産 「柏餅」
を買いました。ぼくは、五月には 「柏餅」
を買って喜ぶ世界にいることを、不思議なことなのかもしれないと思いました。
監督 ジアード・クルスーム Ziad Kalthoum
製作 アンツガー・フレーリッヒ エバ・ケンメ
トビアス・ N
・シーバー
脚本 ジアード・クルスーム アンツガー・フレーリッヒ
タラール・クーリ
撮影 タラール・クーリ
編集 アレックス・バクリ フランク・ブラウムンド
音楽 セバスチャン・テッチ
原題「 Taste of Cement
」 2017
年
レバノン・ドイツ・シリア・カタール・アラブ首長国連邦合作
88
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