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永井荷風 なんか、もう読まない! と思いこんでいたのですが、長年続けている 本読み会 の課題になって読み直しました。
蓮の花に吹き寄せる風 というようなニュアンスのようですね。で、まあ、
「蓮」って? なのですね(笑)。彼が、この雅号を名乗ったのは学生時代のことのようですが、雅号の向うに人影があるようで、
栴檀は双葉より芳し というわけのようですよ(笑)。
だめトラ・ タイガースが初めて優勝した年ですね(笑)。 覚えやすいでしょ(笑)。
「一体、どうしたの。顔を見れば別に何でもないんだけれど、来る人が来ないと、なんだか妙に淋しいものよ。」 主人公 が、散歩と称して通っている、川向うの街、 玉ノ井 で暮らしている女性 「お雪」 との会話です。
「でも雪ちゃんは相変わらずいそがしいんだろう。」
「暑いうちは知れたものよ。いくらいそがしいたって。」
「今年はいつまでも、ほんとに暑いな。」と云った時お雪は「鳥渡(ちょいと)しずかに。」と云いながらわたくしの額にとまった蚊を掌でおさえた。
家の内の蚊は前より一層多くなったようで、人を刺す其針も鋭く太くなったらしい。お雪は懐紙でわたくしの額と自分の手についた血をふき、「こら。こんな。」と云って其紙を見せて円める。
「この蚊がいなくなれば年の暮れだろう。」
「そう。去年はお酉様の時分にはまだいたかも知れない。」
「やっぱり反保か。」ときいたが、時代が違っている事にきがついて、「この辺でも吉原の裏へ行くのか。」
「ええ。」と云いながらお雪はチリンチリンとなる鈴の音を聞きつけ、立って窓口へ出た。
「兼ちゃん。ここだよ。何ボヤボヤしているのさ。氷白玉二つ・・・・・それから、ついでに蚊遣香を買って来ておくれ。いい児だ。」(P69)
いかがでしょう、この場面!。 実は、この日をかぎりに訪ねることをやめた 「お雪」 という女性との回想シーンなのですが、なんというか、 小津映画 の会話シーンが浮かぶような・・・・。
お雪はあの土地の女に似合わしからぬ容色と才智とを持っていた。鶏群の一鶴であった。然し昔と今は時代がちがうから、病むとも死ぬような事はあるまい。義理にからまれて思わぬ人に一生を寄せることもあるまい…。 後日、 お雪 が病に倒れたらしいという噂を耳にした主人公はこんなふうに記し、
残る蚊に額さされしわが血汐 という、一句で始まる詩のようなもので作品は締めくくられるのですが、ボクにとっての発見は、引用個所をはじめとした会話シーンの、
しみじみとした見事さ! でした。
追記
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