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今年の秋、 佐々木幹郎
という 詩人
の エッセイとの出会い
が、ボクにとっては
事件!でした。最初に 「アジア海道紀行」(みすず書房) という 紀行エッセイ でハマって、 「東北を聴くー民謡の原点を訪ねて」(岩波新書) という 津軽三味線の高橋竹山さん と東北震災の被災地を回る 民謡の旅 の話、 群馬県の嬬恋 にある 山小屋での暮らし を綴った、数冊、やめられなくて、次から次という勢いで読みました。読んだ本についてはそのうち読書案内したいと考えていますが、なんとしても、今年中にご案内したいと思ったのが本書、 「瓦礫の下から唄が聴こえる」(みすず書房) に収められている 「 声たち(大船渡市・下船渡)」 という この詩 でした。
思潮社 の 「現代詩手帖」 の 2012年 の 1月号 に掲載されたようですが、ボクは本書で初めて読みました。 佐々木幹夫 の 山小屋だより の シリーズ は 2007年 くらいから、 みすず書房 のPR誌である 「みすず」 とかに連載されていたものを中心に編集されているようですが、 本書 は 2010年の7月号 から 2012年の4月号 に掲載された文章で、 2011年の3月に起こった東北の震災 を間に挟んだ時期の エッセイ群 です。詳しく説明できませんが、本書の中盤から文章のトーンが変わります。ボクには、その変化がとてもスリリングでしたが、まあ、そのあたりは、本書を手にとっていただく他ありません。で、ほぼ、巻末に収められた この詩 を読んで、胸うたれるとともに、なんというか、佐々木幹郎という詩人の文章の良さについて納得がいきました。声たち(大船渡市・下船渡)
歩きで山を回って、この下船渡まで来たんです。わが家が気になって、気になって。壊れた家を乗り越えました。見てきました。
ほんとうに修羅場を見てきました。
わたしが歩いている近くで、亡くなった人が二人、ドタンと出てきたり。
潰れた家の下から手をあげていたのがチラッと見えたりしたけど、わたしはほんとうはこの人達を助けたいな、と悩んだんです。
困ったな、困ったな、でも、神様助けてください、わたしの主人は心臓の手術をして入院しているし、わたしの家には動物がいる。
わたしは子どもがないから、拾った猫とか犬を育てましたので、どうかな、どうかな、うちはどうかな、駄目かな、と思ったり。
高台から妹の家の方を見たら、もう家は無くなっていました。津波がものすごい勢いで流れていまして。
妹は逃げたんだろうなと思いながら、そして、修羅場を越えて、山、山、山と選んで、
どうか神様わたしを許してください、わたしは我が家に行きたいんです。我が家がどうなったか、たぶん駄目かもしれないけれど、行きたいんです。許してください。
今日だけわたしは悪い人になっています。すみませんって、神様にお願いして、
わたしを許してください、なぜかというと、わたしは元看護婦の仕事をしてましたので、そこは一昨年定年になりまして、あとは寮母として働いていました。
それで、津波になったので神様許してくださいと、許してください、許してくださいと言いながらも、
聴こえたんです。
助けてください、とかいう声と、ショックで頭が・・・・、年老いた方かな、
唄うたってる声が聴こえてきましたよ。
潰れた家の下から。
でも、わたしはそっちのほう見ませんでした。
見ませんでした。声だけ聴きながら。いま思えば、それは民謡じゃなかったかな、と思ったんですよ。
八戸小唄だったと思いますよ。
なぜ民謡かとわかったかと言うと、うちのお姑さんも青森の八戸なんですよ、生まれが。
お義母さん、八戸小唄が好きで、うたっていたんです。ちょっと、そう聴こえた。いろいろうたっていました、その方は。
明るかったです。三時半頃です。津波が来ている最中でした。来てましたよ。
来てましたよ。だってわたしは高台で、津波を見てから我が家に向かったんですから。
第一波、第二波って。夜も来た。それで、あの船、大きいのが上がったって聞きましたね。わたしが渡ったときは、陸に船、いなかったんですから。
潰れた家の下で、唄、一生懸命うたっていたのは、かなり年とってる方で。
助けを求めていたんではなかろうかと思いました。見ませんでした。つらかったです。かなしかったです。
泣き泣き歩きました、山を。
そしれ、やっと我が家にたどり着いたんです。やっぱり、我が家は壊れていたけど、かろうじて流されずに残っていました。犬猫はどうなったのかなあって。子どもがいないから、わたしたち。
猫二匹、流されました。
三日目に行ったら、猫三匹だけ高いところにいて助かってました。犬は倒れた家具と立ち上がった畳との間に挟まれて生きてました。
ええ、まあ凄い津波が来たんだな、とわたしは思いました、ほんとう。
夫・畑中靖(七十歳)妻・畑中みつ子(六十三歳)(P200~P206)
追記
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