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「海を抱いて月に眠る」
(文春文庫)
という、父親を書いた作品をなんとなく読んで以来、 深沢潮
という、この女性作家の小説とかエッセイを飽きずに読み続けています。
こんな書き出しです。書き手は小説家になりたいという夢を追っている三十代の会社勤めの女性です。名前は 河合葉奈 だったと思います。私はどこにいるのだろう。なにも見えない。墨で塗りつぶされたかのような視界は、まぶたを閉じても開けても変わらない。閉じ込められてしまったような心もとなさがある。自分の居場所を見失いそうになる。そのうちに、私という人間が、いる、という実感までもが持てなくなってきた。まるで肉体が消滅し、意識だけが残っているかのようだ。こんなところに長くいたら、生と死の区別がつかなくなるかもしれない。(P3)
わたしは、ただただ、穴にされる。(P20)この 作中小説 の語り手である 「わたし」 は 「コハル」 という名で 慰安婦 として働いている 朝鮮人の女性 です。もちろん時代は1940年代から敗戦、戦後にかけての10数年間、稼げる仕事と南の島を連れまわされて、からだを奪われ、名前を奪われ、故郷を奪われた女性の、その時、その時の、 独白体 です。
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