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2021.11.30
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カテゴリ: 読書
このあいだ20年の積ん読してた短編小説集『賊将』を解消した僕だけど,このたびやっぱり10年くらい積んでた『幽霊塔』を読み切った。
この作品についての自分語りなどしながら可能書いていく。なお,『幽霊塔』はミステリなのだけれど,オチもラストも結末も,容赦なくネタバレをしていく。


幽霊塔【電子書籍】[ 黒岩涙香 ]

『幽霊塔』を知ったのは大学生のころだと思う。
たしか,当時の僕はアレクサンドル・デュマの小説にはまっており,黒岩涙香の『巌窟王』に興味を持ち,その流れで同じく黒岩涙香の『白髪鬼』や『幽霊塔』に興味をもった。
ただ,文語調の小説はなかなか読めないので,当時は諦めたはずだ。時代が最近になって,kindleで無料版のを手に入れたけれど,たしか3章くらいで力尽きた。

その後の話なんだけど,漫画化の乃木坂太郎先生が,本作のリメイク版として2012年から2014年にかけて『幽麗塔』という作品を執筆している。
こっちの漫画は読みやすいので読んでいたが,本家の方はしばらく放置していた。聴く読書オーディブルを使ったとはいえ,聴き終わったので『幽麗塔』も含めて感想書いていく。


幽麗塔(1)【電子書籍】[ 乃木坂太郎 ] ​​

まず,舞台なのだが,イギリスっぽい日本である。
本作は翻案というやつで,ただ文章を日本語にするだけではなくて,登場人物を日本人に,その他文化風俗も日本にしている。
それがなんとも言えない独特の世界観を作り出していて,僕は結構好きだよ。

まず,あらすじなのだけど,けっこう複雑である。
大きく,①莫大な財宝が隠されている幽霊塔の秘密,②謎の怪美人・松谷秀子の秘密,③8年前に幽霊塔で行われた殺人事件の秘密,など,様々な秘密がある。
さらに,密室から突然消えた主人公の元婚約者だの,その元婚約者の失踪と同時に発見された女の首無し死体の謎だの,細かな謎を数えるとキリがない。
前半は,その世界観と古めかしい文体に慣れるのが大変だったが,終盤,怒濤のように謎解きがされるのは爽快感があった。

主人公もミステリなのに頭よりも腕力の方が自慢というキャラで,何かあると腕力を誇ったりする。
謎解きも,幽霊塔のギミックだけは主人公が暗号を解読したものの,だいたいの謎は主人公が思索の結果として真実に到達すると言うより,ヒントをもとに足で稼ぐことが多かった。
また,主人公はヒロインの怪美人・松谷秀子を無実と信じて動き回るのだが,根拠としては「彼女が美人だから」という一点に由来しているのが楽しい。


本作が一人称小説ということから,この男は「どことなく嫌な奴」なのだが,どこか義侠心に厚いところがある。
中盤は「かなり嫌な奴」に成り下がったが,ラストでその義侠心を発揮するところは感動した。めっちゃいい奴じゃないか,と。

しかし,どうしても明治の作品だから古い。
前述の,「密室から消えた主人公の元婚約者」について,これは「密室に隠し通路があった」というやり方で解決している。
これは,「ノックスの十戒」の3番目に明確に反している。それが作品を損なうわけではないにせよ,近代のミステリでは許されんだろう。


この整形手術というの,恐らくはこの時代だと科学の最先端だったんだろう。
いのミステリで「整形手術で顔を変えて別人になっていた」というのがトリックというか,謎の核心であったというのはなかなか成立しないだろう。
なお,この作品の中の整形手術については,髪の色についても単に染めるだけではなく,薬品を頭皮に塗って,永久に変色させるという技術が使われていて,令和の整形手術すら凌ぐ技術になっている。

最後に,乃木坂太郎の漫画版『幽麗塔』(以下「乃木坂版」)との比較をしよう。
乃木坂版では,やはり幽霊塔に隠された財宝探しが1つのテーマになっているが,LGBTやマイノリティの性愛がかなり大きなテーマになっている。
また,本家にあった「整形手術で他人に成り代わる」というアイディアを改変したのか,「男装または女装によって性別を偽る」だとか「脳移植によって他人に成り代わる」という工夫がされていた。


幽麗塔(9)【電子書籍】[ 乃木坂太郎 ]

これら工夫を良いとみるか,悪いとみるかは微妙なところだ。
「幽霊塔の財宝」というギミックは使っているものの,別に「幽霊塔」のリメイクと名乗らなくても,普通に1つの作品として成立しているように思う。
本家の主人公は情熱的で活動的だったのに対し,乃木坂版の主人公は暗い性格である。
たとえるならば,『西遊記』をアレンジして生まれた『ドラゴンボール』くらい関連性は薄い。
それはそれ,これはこれで楽しむべきなのだろうなぁ。


黒岩涙香全集 5作品(幽霊塔、無惨 ほか)【電子書籍】[ 黒岩涙香(Kuroiwa Ruikou) ]





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最終更新日  2021.11.30 16:57:15
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