森田理論学習のすすめ

森田理論学習のすすめ

2024.04.17
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岩井寛先生のお話です。
入院中のある高校生が、作業時間中に自室に閉じこもったきり外へ出てこないで、看護婦が促しても一向に言うことを聞かないと言うので、岩井先生がその高校生と面接をすることにした。
彼は次のように言った。「先生、僕は先生の言われたあるがままに忠実に従っているだけですよ。
僕は対人恐怖症だから、他の人と一緒に卓球をやったり、 中庭で雑草を抜いたりすることが嫌なんです。
だから 1 人のときにはきちんと仕事をやっています。
看護婦さんに非難される事はありません。
僕は自分の気持ちに忠実に行動しているんです。
人と会って緊張するのが嫌だから、おしゃべりをしながら一緒に作業はしたくない、という気持ちは僕の本心であり、その本心をそのままに認めるのがあるがままじゃないんですか。
だから僕は自分の心をあるがままに認めて、それに沿った行動をしているだけです」(森田療法岩井寛   講談社現代新書  ページより引用)

この高校生は、「あるがまま」という森田のキーワードについて、自然に沸き起こってきた感情のままに行動することだと理解されています。
一見して正しい考え方のように見えます。
不安や不快感などが沸き起こってくれば、逃避欲求のままに行動しても構わないと言われています。
今まで不快な感情が沸き起こったとき、多少うしろめたさを感じながら逃げていたのかもしれません。
それが森田理論学習によって、不快な感情が沸き起こったとき、逃げてもよいのだとお墨付きをもらったと言われています。
でも何か違うようにも思えます。どこが違うのでしょうか。

この高校生の考え方は、面倒なこと、嫌なこと、苦痛なこと、時間がかかること、ハードルが高いと思うようなこと、能力の限界を超えていると思うようなこと、目的が達成できないかもしれないと思うようなこと、やる気が湧き上がらないことはすべて回避してもよいということになります。
実践や行動は、楽しいこと、面白いこと、成功することがあらかじめ分かっていること、最初からやる気が持てるもの、本能的な欲望が中心になります。
エネルギーを必要とすること、努力を要することは回避する。
効率第一、楽をして果実を手にすることばかりを考えるようになります。
自分では努力をしないで、他人から与えられる刺激や快楽を追い求めていくことになります。これは森田先生の言う「気分本位」な態度のことではないでしょうか。
「気分本位」の行動はそのうちむなしくなってきます。

本来「あるがまま」というのは、不安や恐怖などがわき起こったとき、それらをやり繰りしたり逃げたりする事ではありません。
取り除いたり、逃げたりしないでそのまま受け入れるということです。
不安や不快感に対して価値批判をしないできちんと向き合うということです。

次に不安の裏には欲望があるわけですから、生の欲望に沿って目の前のなすべきことに注意や意識を向けて行動・実践していくことです。

さて、「あるがまま」になろうとすると、「あるがまま」にはなれないと言われます。
これは不安をそのまま受け入れるというところが難しいのだと思います。
今まで不安と格闘してきたわけですから、理解しただけで実行はおぼつかない。
「あるがまま」を身に着けるとき、ここから入るのは難しいと思います。
私の経験では、「あるがまま」を身に着けるには、生の欲望に沿って目の前のなすべきことに注意や意識を向けて行動・実践していくとうまくいきます。
その中でも、規則正しい生活習慣を身に着けるというのが一番効果がありました。
ルーティンワークの確立のことです。特に起床時間を毎日一定にすることです。
形を整えることができると、「あるがまま」の態度は比較的早く身についてきます。
それは頭で考える前に、すっと体が動くようになるからだと理解しております。








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Last updated  2024.04.17 06:38:51
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