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さて、喫茶篇も無事に岐阜巡りを終えたようなので、続いては東海道線で大垣駅に向かいます。大垣駅は、鉄道好きの人なら好き嫌いに関わらず何度となく列車の乗降をしているはずです。ご多分に漏れずぼくも嫌になるくらいこの駅は利用していますが、下車したのは数える程度に過ぎません。それも随分前のことになるので、まったく初めて訪れたかのような気分であり、ときめくのを抑えるべくもありません。何はともあれひとまず旅館にチェックインすることにします。大垣の目抜き通りをひたすら直進しますが閉まっている店も多く、酒場探しには難渋することが予想されます。交差点の地下遊歩道が邪魔臭いなあ。やがて行き着いた大きなビルは銀行なのでしょうか、やけに鳩の糞が地面を惨たらしく白に染め上げていて思わず息を止めてしまいます。その先にある宿はまさしく古式ゆかしい日本旅館のそれで当初岐阜と大垣のことごとくのビジネスホテルに振られたことに怒りすら覚えたことなど忘れ、大いに満足したのでした。しかし、日本旅館の佇まいに酔いしれている暇はありません。ひとまずは酒場放浪記に出ている酒場を訪ねることにしました。 「大衆酒場 盛枡」に辿り着き、灯りが漏れているのを見ると心底ホッとします。事前に調べるのは保険としてありだと思いますが、それに執着し過ぎると、仮にやっていなかったりすると虚脱感に晒されることになるので、事前調べも程々にということでしょうか。まあそれが旅の愉しみ、時には実際の旅よりも楽しかったりするのだから大目に見てください。それても電話して確認するまでの気合いはなくて、今回は例外的に一軒だけ事前に問合せしたのは、可児の「ミロ」なのです。さすがに往復40分歩いてやってないと絶望的な気分になりますから。ともあれ大垣で最初の一軒は、まあ一度は行っておきたい店に入れたのだからまったくめでたい心持ちです。他にもチラホラと酒場はあるようで、旅館からの道行きでもずっと注意を払って来たのですがどうも気乗りするほどのお店はありません。店内は細長いコの字カウンターが特等席で奥には脇には小上がりもありますが、店を取り仕切るおっかないオバちゃんは一見の我々を見ると胡散臭いと言わんばかりの視線をあからさまに顎でカウンターの空席を指し示します。注文の際も何だか嫌味らしいことをグズグズと漏らすのを隠そうともせず、徐々に不快な気分になるのですがまあせっかく旅先の町で呑んでいるのだからと努めて感じよく振る舞うことにします。チューハイは量り売りのスタイルというのはなかなかいいですね。ただし値段はいささか高いように思われます。ところで隣席で呑む初めてらしい若い客が肴をほとんど手付かずで残していて、しかもわれわれが頼んだら品切れと言われた鮎の塩焼きなどはひと摘み程度しか摘まれていません。それを見てぼくもおばちゃんも憤慨したところで、にやりと笑みを交わし合ってからは心無しか話しかけて来たり、薄い笑いを浮かべてくれるようになったのでした。周囲の客はかなりやさぐれた人も混じっていて、水商売風のオバちゃんたちは、やはり入り浸っているらしきじいさんを虐めて嬉しんでいたりと、まあそんな場末の光景が繰り広げられているので、そんなの慣れっこで平気な方は一度は行っておいてもいいかも。 さて、次に旅館へと引き上げつつ横道脇道を彷徨いてみたもののこれといった酒場が見当たりません。ホントはバラックのような酒場が2軒ばかりあったのですが店を閉めたところです。なのてまさほどこだわらずに「八盛」というちょっと古そうな店に入りました。カウンターだけのこぢんまりした雰囲気の悪くないお店でした。女将さんに迎えられて日本酒に移行したところまでは覚えています。ところがさほど酔っていたとは思えないのですが、ここでの記憶はこの程度しか記憶にないのです。何にしろここで案外長いこと過ごしたようです。この旅における相棒はすっかり気分良くなったらしくこの店での記憶はないらしいーでも宿のお風呂は満喫したようなので酔っ払いもそうですが記憶ってのは出鱈目なものです。そうそうS氏にも翌日確認したのですがやはりまるっきり覚えていないみたいです。そりゃまあ、岐阜から大垣に移動したからハシゴ感覚も麻痺してしまってもしようがないのかもしれませんが、すでに4軒目だからなあ。
2015/08/31
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酒場篇ではすでに岐阜の町を駆け足で立ち去らんとしておりますが、実はその前にあと数軒の喫茶店に立ち寄っているので今しばらくお付き合いください。 岐阜では一番のお目当てである「純喫茶 甍(いらか)」は、伺っていた通りお休みです。ここに訪れるために非効率極まりない旅程をこの先辿ることになるのですが、それは捨てておくことにします。やって来たのは繊維街の外れにある「ムーミン」でした。青いシンプルなテント看板が綻びかけているのがちょっぴり悲しい。店内は店名から想起されるムーミン一家ーアニメーション版のそれーのお家のような牧歌的なものではなくて、簡素でシックな内装でした。まあ、普段使いにはこの上なくとも奇想に満ち満ちた空間を熱望する観光客には物足りなくもあるのでした。店主は寡黙そうですが、実のところお喋りがお好きなようでシャッターで閉ざされた繊維街もかつては日本一の地代だったこともあったが、今ではすっかり寂しくなった、高島屋も名古屋にできてますます人手が減ってしまい、喫茶店もさっぱりですよと語りながらもどこかあっけらかんとなさっているのでした。 高島屋の裏手、柳ケ瀬の劇場通りなどの商店街をぶらぶらします。「コーヒー・サンドイッチの店 ロンドン」は、人通りの疎らな商店街にあって、普通のお店ですけれどお客さんでいっぱい。映画館では古い任侠映画を上映していましたが、今時見に来られる方などいるのでしょうか。すでに店は閉められているようですが「コーヒー専科 河」なんていう身震いするほどカッコいい喫茶店もありました。 そんな商店街の片隅で古いお店の多い通りでもことさらに古びた風情のお店がありました。「喫茶 軽食 田中家」です。こういうお店にありがちではありますが、とにかく散らかっているのが気になります。せっかくのセンスある店内がこれでかなり印象が悪くなるのは致し方ありませんが、それに抗うようにレンガと黒の鉄棒の組合せによるパーテーションや茶をベースにしたソファなどの調度の素敵さが救っています。きっと柳ケ瀬が賑わっていた頃は、このハイカラで大人っぽい店で若い女の子たちがパフェなんかを精一杯気取って食べてみせたりしていたのではないかと空想するのでした。 さて、時系列は無視してこの2日後に早起きしてやって来た「純喫茶 甍(いらか)」について書いておくことにします。開店の7時過ぎには到着、もしやまだ開店しておらぬのではないかという不安も先日は閉ざされていたシャッターが開いていることを遠くから確認できて一安心です。ところで甍という店名については、正直気になりながらもその意味を調べてさえいないのですが、少なくとも読み方だけは予習の効果もあってばっちりマスターしました。そんな文字の浮き出しやこぢんまりした和の植え込みを眺めながら店内に入ると早くもモーニングを食べ終えて店を出ようとする方がおりました。その後は店内を独り占めーゆで卵は店の外のどこぞで作っているのか、柔和な女性店主もしばらく席を外されていましたーてす。仄暗い店内の奥には金色の壁に黒の甍の文字が浮き出しになっていて、店の方からすると本意ではないでしょうがヤクザ事務所のような硬派な印象を与えています。これが一文字だけだからヤクザなストイックな印象をもたらしているのでしょうか。マス目状にデザインされた金壁のマス目一つ一つに黒の甍を埋め尽くしてみる。それは何とも禍々しくも魅惑的な夢想で、蜂の巣の中で蜂が蠢いでいるようで、背筋がゾワゾワしてくるのでした。それはともかくとしてそうして店名をこれでもかと全面に押し出すのはどういう思想なのか、宣伝と考えれば理解できなくもないのですが、それならわざわざ普通読めそうもない漢字を当てることもなさそうだし、甍教という宗教でもあるのでしょうか。どうにも適当な解答が出てきそうもありませんし、お尋ねしようにも主人は出たり入ったり忙しそうでとてもお話を伺えそうもありませんし、第一残された時間も少ない。この謎は謎のままに放置しても何ら問題はありません。なんせこれでぼくはこの喫茶のことを忘れることはないでしょうし。
2015/08/30
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もう何度も言っているので一言だけ言わせてもらうと、ぼくは渋谷が好きになれないと述べるだけで片付けることができます。なのでこれ以上は繰り返しません。渋谷には面白いところがいっぱいあります。なので身勝手ながら好きな場所は結構あります。その好きな場所への道中には息が詰まりそうになることもありますが、好きな店でしっぽり浸るとここが渋谷であることを忘れそうになります。なので他の町でそうするようにはあちこち無節操に動き回ることはしません。いつも決まりきった酒場やら喫茶店にすぐに避難してしまうからです。それじゃイカンと急遽奮起することを決断したのでした。きっとこれからは頻繁に渋谷が登場するはずです。きっと、いやまあ半年に一回くらいかな。 一大決心を遂げた今、とりあえずは未訪の「多古菊」を訪れておくことにしました。店の構えはピカピカでどうこういうようなものではありませんし、店内も表から見通せるので、きっとそれ以上のものではなさそうです。時間は早いのに結構繁盛していて、なんとかかんとか店内中央に置かれた島テーブルに着くことができました。まあ、しばらく様子を見ていると案外客の出入りが頻繁なのでいずれそう待たずとも入れそうです。この先何を語るべきか、かつてはどこにでもあった大衆居酒屋ーあえて大衆酒場と書かない辺りのニュアンスをなんとなくご理解願いたいーというのが結論ということになります。大衆居酒屋と言ってもチェーンのチープさと個人営業の気安さといか常連至上主義的な一面が良かれ悪しかれ感じられ、ぼくにとっては嫌いにはなれないものの通い詰めるほどには到底なれそうもありません。それでもこの立地でまずまずお手頃な値段で居酒屋を続けるのは並大抵の努力ではないと好意的に語っておくことにします。 続いては「大衆立呑酒場 富士屋本店」にやって来ました。この辺りはそう遠くなく再開発で一掃されてしまうということなので、機会があれば通いたいと思っています。ここで働くけして感じがいいとは言えぬおばちゃんたちがこの先どうするのか気になるところです。ここは価格は良心的とはいえ、何よりも戦後を感じさせる無頼なまでの雰囲気が持ち味なので、仮に移転してもうまく行くのだろうか。ところで混み過ぎなこと以外にさして不満のなかったこのお店ですが、不快な出来事に遭遇しました。たまたまお隣で呑んでいた可愛らしい女性2名が呑みきれぬ焼酎ボトルをいかがですかと差し出してくれたので、有り難く頂けたのですがそれを店の人に取り上げられたのです。そりゃ、残ったのを黙って拝借したら問題でしょうが、直接ご馳走になったのを取り上げるのは正当なんでしょうかね。もしかすると店で他の客同士で酒や肴の遣り取りを禁止することもあるのでしょうが、それならそうと貼り紙しておくべきと、まあ軽く憤慨したのでありました。しばらくは近付くまい。
2015/08/28
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突如として大雨に見舞われるというのは、昨今の日本にあってはさほど珍しい自体ではなくなっていますが、いざ遭遇すると困惑し身の振りように困るというのが学習能力の低さの表れであります。それでも慌てず騒がずを装えるのは単に年の功というもの。早速知人を探し出し適当な駅まで送ってもらう段取りをつけたのです。何駅か通過して降ろしてもらうことにしたのは北小金でした。これより自宅から遠ざかっては面倒なのと何より柏方面の空が真っ暗なのです。随分と遠ざかっていたのでたまには良いでしょう。降りたのは駅の東側で、以前その一軒にお邪魔しているうらぶれた呑み屋街は未だ健在のようで一安心します。こうした悪所は地元の方にとっては目障りでしょうがないとそれまた不健全なものです。でも雨降りしきる中、これといった酒場を見いだせず西側に移動。線路沿いの数軒のちびた小汚い酒場の何軒かは以前お邪魔していますし、どうやら混んでいるようなのでパスします。紫陽花で知られるという本土寺に向かう整備されていない通りを歩くと立派な蔵造りの居酒屋がありますがひとまず通過します。値が張りそうです。そうするとすぐに喫茶店らしい店がありましてのでちょっと休憩。「憩いの店 スバル」というお店でまあどうということもないのですがー喫茶店というよりはレストランに近いのかなー、感じの良いお店です。 さて、通りの突き当りまで来てしまったので先ほどの店に引き返すことにしましょうか。「居酒屋 狐狸庵」という何だかカッコつけた店名が引っかかります。思い切って店内に入ると奥に狭い座敷はありますが照明は落とされております。基本は頑丈な造りの立派なカウンターでなかなかに気分がいい。品書は生ビールなどしか貼り出されておらず、肴は奥の厨房近くに吊るされたボードの両面に6品程度づつ計十数品だけとごく慎ましい。お通しの小松菜と菊のおひたしがどうというものではないのですが、美味しく感じられるのは年のせいでしょうか。高い天井を見上げながら随分と贅沢な作りだなあと感嘆しながら気付いたのは、ああ、ここはもとは炉端焼きの店だったんだろうなというどうということもない結論でした。だったらこのカウンターも判ると独り悦に入っていると、急に呼び出しあり。もっとここの落ち着く雰囲気に浸っていたいところですがそうもいかないようです。慌てて勘定を済ますと、次なる町へと呑み屋を移すことになるのでした。
2015/08/28
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北千住には近頃めっきり足を運ぶのが億劫となり、下車することも少なくなってしまいましたが日光街道より先の方面はかなり散策したつもりでいるものの、まだ取りこぼしがあるような気がしてなりません。が、まだとても徒労に終わりかねない散策をこの暑い中で決行するもの気が乗らない。同じ歩くなら極力知らない町を歩くのが意欲も湧いてこようものです。なのにどうして北千住に来たかと言えば答えは簡単なこと、待ち合わせのS氏との合流に北千住が適当な場所にあったからに過ぎません。 西口は避けたいので自然脚は東口に向かうことになるのですが、東京電機大学ができてからというもの、若い連中が我が物顔に町を闊歩するのは気分の良いものではありません。つい学園通りを逸れてしまうのですが、こちらも先に進めどこれといった酒場があるわけではありません。近場で方をつけるべきとお邪魔することに決めたのが「名月」でした。珍しいことにお好み焼の店なのです。居酒屋ではたまにお好み焼を食べることはありますが、こうした専門店に来るのは極めてまれなこと。どうしてってまあお察しのとおりなのですけどね。しかもS氏もぼくをさらに一回り横着にしたような人なので、もんじゃもお好みもぼくが世話せねばならなくなるはずです。実際そうなったのですがまあ久しぶりにやってみると案外楽しいものです。客席は何処も一杯でなんとか座敷の隅っこに押し込んでいただきます。一通り注文を終えて店内を見渡すとサイン色紙がほうぼうに貼られています。どうやら結構有名なお店のようです。味はそこそこなのにどうしてかなあ、まあお値段がお手頃という辺りがその理由なのでしょうか。これなら三ノ輪や三河島あたりにもっと安い店はあるのになんて意地の悪いことを思ったりもしますが、まあ久々の粉物呑みに案外満足したのでした。 さて、学園通りは見ぬふりをして牛田駅または京成関屋駅に向かって歩くことにします。あちら方面も5年位前には足繁くと言っていいほどに歩き回ったものですが近頃はすっかり飽きてしまってめったに来ることもなくなっていました。ずっと気になっていたもつ焼き店はやはり閉まったまま、もう確認する必要はなさそうです。それにしてもここら辺まで来れば大した変化もあるまいと思っていましたが、随分と気取った大人のための酒場でございとすかした雰囲気のお店が何軒ができていました。そんなぼくらには場違いな酒場と一線を画す気さくそうなお店がありました。「おでん なか田」で、どうやら静岡おでんがいただけるみたい。今でこそ全国区になりつつおる静岡おでんですが5年前には東京で食べられる店はまれでした。思い出すのは池袋というか雑司が谷に近い明治通り沿いの地下にある小さなお店でこのおでんと富士宮ヤキソバが頂けたのですが、いつの間にか店を畳んでしまったのでした。それはともあれ、こちらのお店、おでんは自分で鍋から取るスタイルというのがちょっとだけ楽しい。他の酒の肴も品数こそ少ないもののちゃんとツボをおさえていてなかなか良いセンスです。味もいい。場所は駅から遠いけれど健闘して続けてもらいたい1軒でありました。
2015/08/27
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田端といえばもういつも決まりきった酒場にしか足が向かなくなっていて、マスコミ受けのいい恥ずかしい店名のお店は代替わりして以降も何度かお邪魔したものの、その度毎に不快な応対をされたことに嫌気が差し、しかも同行者がそれに対して報復まで企てるー報復するのはけしてぼくではないーようになってしまってはもはや見てみぬふりをして通過するしかない。通過するのは決まっていつものあの店ですが、田端の立派な架線橋を渡るとにわかに尿意を催したので公衆便所に寄り道したのでした。いつものあの店、店内に便所はありますがぐるっと回り込んだ常連さんの背後を遠慮しつつ通り抜けねばならないのです。そんなわけでこの便所には度々お世話になっていて、こによった場合はほんの少しだけいつもの経路から逸れることになるのです。それが幸だったかはともかくとして、道路を渡った先に随分と控えめな看板が出ています。 「惣菜バル おためし屋 田端店」です。看板にはただ「おためし屋」とあるので、これだけではここが一体何の店かは全くわかぬようになっています。不明な案件は直ちに解決すべしのモットーを活かしすぐさま駆け寄ります。おお、店先に生ビール250円と記載があるではないですか。でも自動ドアの向こうに見えるのは違うことなく惣菜店のそれです。よくよく覗き込むと惣菜店の対面、入口から死角となるスペースが飲食できるようになっています。どうやら惣菜を選びそれを持ち込んで呑めるという寸法のようです。というか近頃見かけるコンビニ併設の飲食コーナーをより拡張して、効率よくしたということでしょうか。100円からある惣菜はパックだけでなく小鉢に盛りつけてあったりして一膳飯屋風でもあり、店のスタイルとしては大いにあって然るべきに思われます。しかもいつもの店は冷房は自然風と効き目があるのだかないのだか高い天井から吹きつけられる年代物の扇風機だけなので、ここで一息ついてからっていうのは、もしかして今後利用の価値ありかも。ただなんせ客が少ない、ってかぼくしかいない。次来る時まで壮健なることを祈念します。 でも最後はやっぱりこうなっちゃうんですね。
2015/08/26
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またまたやって来ました。馬橋です。以前訪れた際看板に吸い寄せられるように店の前に立ってはみたものの、営業しておらず入れなかったお店です。店からは現役であるかのようなオーラが醸されていたため、改めて訪ねてみたのでした。「カフェ・ド・ブバリア」という喫茶で、やはり今回も拒絶されてしまったのですが、それよりも馬橋にはいつもさり気ない驚きを与えられます。どういう事かと言えば、寂れきってちっとも賑やかじゃないのに、駅から相当離れてもとにかく侘びしいなりに商店街がたらしなくズルズルと連なっていて、散策の足を止める気になかなかなれないのです。しかもようやく途切れたと思って引き返そうと行きとは違う道を歩いていると、飛び地のような商店街があるのです。北松戸なんかもそんなところがありますが、これはそう驚くようなことではないのでしょうか。ともあれそうして回り道して歩いていたらこれまで気付きもしなかった呑み屋が唐突に現れて、しかも悪くなさそうなので立ち寄ることにしました。 場末の食堂のような風情の「家庭料理の店 ちぐさ」にお邪魔することにしました。とびきり寂れきった感じもありませんが、周辺のくたびれ切った町並みで見るとそれなりの味わいがあります。店内は町外れの流行らない中華料理店といった感じでまあどうってことないのですが、しんみりした気分になれるのが悪くないなあ。焼鳥を5本ばかり注文、つくねの70円は特別安いにしても大抵100円のその焼鳥のなんとデカイことよ。正直これだけで満腹するほどのボリュームです。特に鶏皮などは間に正肉が挟まって、これなど脂の乗った皮と合わせて食べればいくらでも酒が進みそうです。そんな焼鳥の凄さを知ってか、テイクアウトのお客さんが多いようです。直接店に来られる方もいれば、通りかかりに買い物最中に焼いておいてもらう方もいる。こんなよそ者にとっては場末と言ってしまうような場所にも庶民派の焼鳥の名店があったのですね。テイクアウトなんておおっぴらに宣伝しなくともしっかり良いお店には客が来るのです。 駅をわたって東側へ。出先の北松戸の勤務地の従業員の方から串揚げ屋がオープンしたと聞いてどれほど経ったことか。「串あげ しぶや」というのがそのお店。店構えはまあ特に語ることなし。店内に入ってみたところでその印象に変化はなし。それなりに混み合っているー「串カツ 田中」みたいな感じーを予想していたので思ったより空いていて意表を突かれますが、さりとてそれが何らかの感慨を呼び起こすこともなく、セットメニューがある事を確認しつつ席に着きます。セットの呑み物は瓶ビール以外オッケーとのことなのでホッピーを頼むと店主は明らかに虚を付かれたかのような薄い泣き笑いの表情を浮かべつつ、承諾してくれます。中が150円とお得なことからくるぼくの瞬時の判断でしたが果たして本当にお得だったのか。串揚げは、美味からず不味からず、まあホドホドの味なのですがサイズは立派で特に中国産に違いないとしてもタケノコはもしかしてと思ったもののこの値段でよもやそれはあるまい、ハンペン辺りだろうと思ったらなんとしっかりタケノコでした。まあ味はうっすいですけど。ちなみに客はみな顔見知りとこうした店ではあまり好もしくない状態に早くも陥っているようです。常連と油を売ってるようではこの先大丈夫とはとても思えないのでした。
2015/08/25
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呑みの振り出しは「水谷 本店」に決めていたのでした。貧乏性のぼくのこと、ある程度は事前調査はしております。まあ大抵の場合いい気分で調子に乗って予定にない酒場で空振りを続けるというのがお決まりになっていますー稀に大当たりの店もあるー。岐阜では、実際のところ大垣に泊まるつもりだったということもあって、ここ位しか調べていなかった。ところが真っ昼間っから営業していると云う冷房などとは無縁のこの店、到着した頃にはすでに店じまいの真っ最中。何たることか。柳ケ瀬方面にも足を伸ばして物色するものの実は通りがかりに一軒の酒場に目星を付けていたのであります。 柳ケ瀬散策は置いておいて、お邪魔することにしたのは「一品料理 ポパイ 三平の店」という、何だか得体の知れない屋号のお店。いかにも枯れた風情で酒場好きの琴線をくすぐらずにはおられぬ構えでありました。静まり返った店内に入るのは幾分の気合を要求されますがこの構えの素晴らしさを見た以上避けて通るわけにはいかぬ。物音ひとつ漏れぬ森閑としたところは老舗らしさの表れとも取れます。ガララっと開けて入った店内は、理想的な酒場そのものなのでありました。仄暗い裸電球の明かりや使い込まれた木製のコの字カウンター、控え目で丁重ながらも矜持ある態度の女将、そしてお喋りな客たち、この空間で彼らを眺めて呑む酒の何と旨いことか。たまたま通りがかってこのような素晴らしい酒場に出会えたことを自ら讃えてみせたものの、A氏の表情は至って冷淡。名物という鳥タタキなどを頂きつつ、至って気さくで陽気な清水健太郎似の常連などと旅の途中で立ち寄ったことを告げると、ここは素敵だろうとみな我が事のように嬉しげな表情を浮かべ、誇らしげですらあるのでした。レバーならぬ紐式の水洗便所などはドアの建付けが悪くて締まりにくくなり、輪ゴムでバネ替わりとしていたりするのですが、そうした不便さまで愛おしく感じられるのです。そうそうコンパクトな家庭用レベルの燗付け機で作ってくれる岐阜の名物ーホントかな?ーアゴ酒を頂いていると、もうこのまま今晩はここだけで過ごしてしまおうかと心から思うのでした。ちなみにこの手の酒場、勘定を見て先までの感嘆が失せることもままあるのですが、こちらの場合はさらなる喝采を浴びせたくなるはずです。 誘惑を振り切ってそろそろ大垣に向かうことにしましょうか、と歩き出すとそう進まぬ内にこれもやはり先程見掛けていた「やき鳥 家康」の灯りが目に留まりました。これで立ち寄ったりしたらさっきの店への愛が偽りでしかないような気持ちに思われ、しばし躊躇しますが、結局は入ってしまうという節操のなさがぼくにはあります。入ってすぐに真っ直ぐなカウンターがありますが生憎すべて塞がっています、あっ丁度お帰りになるお客さんがいて空きができました。奥がテーブル席になっていますがーこれが不自然なくらいにゆとりがあるー、こちらも埋まっています。タイミングが良かったようです。ところでこちらのお店について早速に結論付けると大層焼き鳥がうまいばかりでなく、でかくてしかも大変安いのです。これと言って変哲のないお店ですが紛れもなく良店です。この後駅に戻るまでに多くの酒場を通り過ぎましたがどこも大した繁盛振りでしたが、先の店もそうだし、こちらもそうですが、駅に近い洒落た雰囲気の酒場を岐阜の若者たちは好むのでしょうか。都心部では若者が分不相応にも枯れた酒場で悦に入るといった様子が垣間見られ、時折不快な気分になるものですが、そうした背伸びするという気風が岐阜の方にはあまり見られぬように思いました。その分われわれにとっては気分よく過ごせますが、先のことを考えるとそうも言ってられない焦燥すら感じます。
2015/08/24
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今回の岐阜の旅は、かなり効率の悪い同じ経路を行きつ戻りつの行程となってしまいましたので、はじめにその道程をメモしておきます。目的の喫茶が土日は休みというのがこの複雑かつ面倒な旅程となった理由のすべてであります。 山手線で品川駅に出て,東海道本線を熱海駅・静岡駅・掛川駅・豊橋駅と経由し、金山駅にて中央本線に乗り換えます。さらに多治見駅で太多線に乗り換え、ようやく辿り着いたのが、美濃川合駅です。美濃川合駅に下車したのは、たった一軒の喫茶店のためなのでありました。 後述する喫茶を出ると再び美濃川合駅から太多線に乗り込み、美濃太田駅にて高山本線に乗り換え、岐阜駅に到着。夜までの時間を喫茶及び酒場探索に当てます。 岐阜駅では宿を確保できず、この夜の宿泊は大垣です。岐阜駅からは東海道本線に再び揺られ、日も暮れた頃に大垣駅に到着し、唯一空室のあったきみ松旅館に投宿。喫茶はすでに店を閉めているはずなので,この夜は酒場巡りで締めくくりました。 翌朝、早朝に起床し大垣駅から東海道本線に乗車、名古屋駅から中央本線に乗り換え、中津川駅にて下車し昼食を兼ねて散策することにしました。この夜は多治見駅の付近に宿泊することになっているので、まだ早かったので多治見駅の途中にある瑞浪駅まで中央本線にて引き返します。瑞江では七夕とよさこい祭りが行われており大変な賑わいでしたが、一軒の喫茶店に立ち寄ることができました。さらに中央本線に引き返し,夕方前には多治見駅に到着。何軒かの喫茶店を訪ねますが、酒場巡りは大不調。もともと少ないところに日曜ということもあり営業していない店も多かったのです。夜は駅前のホテルトーノーに宿。無料のレンタサイクルのサービスはありがたいもののさほど役に立ちませんでした。 最終の月曜日は、未練のある岐阜駅、大垣駅に再び向かうことになります。ホテルの無料の朝食サービスも投げやり、多治見駅から始発の中央本線で名古屋駅に出て、東海道本線で岐阜駅に下車、目当ての喫茶店で寛ぎたい誘惑に後ろ髪を惹かれつつ、東海道本線で大垣駅へ向かいます。大垣の喫茶巡りを終えると、再び東海道本線と中央本線を乗り継ぎ、今朝の出発駅である多治見駅にて下車。目当ての喫茶店に寄った後、次は中津川駅で40分近い待合せのため、昨日はやっていなかった喫茶店にお邪魔しました。そうそう今回の旅のお伴であるA氏とは最終日は別行動を取ったため、時間調整で中央本線の坂下駅に下車し、昼食兼喫茶巡りをしました。木曽路巡りをしたA氏とは南木曽駅にて合流し、その先はひたすら中央本線に揺られることになります。途中塩尻駅で長い待合せがあったので、しばし散策する予定でしたが列車に遅れが生じたため、ひたすら乗りっぱなしとなります。大月駅―この数日後に再び訪れることになります―、高尾駅を経由し、まだ時間も早かったので八王子駅にて下車、居酒屋をハシゴして、帰宅の途に着いたのでした。 長くなりましたが以上が今回の旅の経路となります。まあ経路は過程でしかなくてー実際には鉄道好きにとってはその過程こそが重要で、この旅でも結局一冊の本も読み終えることなく、ひたすら車窓の眺めが移ろうままに時を過ごしたのでしたー、現地での散策こそがメインイベントです。めっきり時間の確保がままならなくなって、本当なら新幹線を使いたいところですが思うようにならぬ懐事情があるのでした。 ともあれ向かったのは可児にある「ミロ」という喫茶店です。ここは信頼する喫茶好きの方の折り紙つきなのでいかなる犠牲を払ってでも駆け付けるつもりで今回はスケジュールを立てたのでした。教えていただいた交通手段はぼくにはちょっと贅沢に思われたのでやはり歩くことにしたのでした。地図で眺めると美濃川合駅が近いようですが、ざっと3km程ありそうです。水力発電所を眺めつつ歩いたのですが、その辺をつらつら書いているといつまで経っても肝心の喫茶に辿り着けぬのでそこら辺の苦労話は割愛し、遠目に徐々に近付いてくるネットで見ていた奇抜な外観が迫ってきます。いくらか退色してはいるものの地方都市の外れに斯様なサイケデリックな建物があることに地元の方は困惑しなかったのでしょうか。店内も奇抜なデザインの照明などが飽きさせることなく目を楽しませてくれます。そんなマニアには垂涎の空間でありながら、他の客たちはそんな異空間にいるとは全く感じていないようで、ごく有り触れた光景でしかないようにあっけらかんとした態度を崩さぬのでした。この上なく大胆な装飾を身に纏っているにも関わらず、あたかも秋葉原でメイドを見るかのような無関心振りが寂しく思われるのです。ともあれ、ここは確かに店の雰囲気は最高ですがそればかりでなくランチも凄い充実しています。この日のランチは味噌カツとエビフライ、心が揺れますがさほど空腹でもないので当たり障りなくコーヒーにしたものの同行したA氏のサービスランチを見ると、エビフライが添え物に思われるほどの充実振り。これには頼まなかったことを後悔しました。地元の方にとってはこうした素晴らしい建物もじきに視界からは風化してしまうようですが、こと食事については妥協しないようです。ところで滞在中、テレビゲーム機の集金人ーそんな仕事があるんですねーが三台程ある機械から集金していましたが、それは驚くほどの小銭が集金袋に落ちていく音が響き渡ったのでした。未だにゲーム機は現役のようです。 岐阜ではまず、駅南口に向かいました。この辺りは地方都市としてはかなり規模の大きな風俗店街となっていて、日中ながら多くのソープランドが呼び込みを立てていて、婦女子が散策するにはいささかの困難と誤解が切り離せなさそうです。事前調査で「花泉」という凝りにこったテント看板を掲げる喫茶が目に付きましたが探せど見つからず。風俗店に紛れ込むように数軒の喫茶が見当たりますが、幾分距離をおいた場所にある「喫茶 むらやま」に入ってみることにしました。正統派でまあ穏当なお店といった印象でしたが、出勤前の女性たちが勤務前のひととき、なんてことがあれば印象はぐっと隠微なものになったかも。 この風俗街には「喫茶・食事 いわなが」、「Coffee House フルーツ」、「ポニーなどがありました。 風俗店を密通の場であると言わんばかりに、堂々と店を構えるのが「喫茶 軽食 F.B.I」でした。当たり外れはともかくとしてこんな危う気な店名としただけで入って見る価値がありと伺ったのでした。外観からは喫茶好きの琴線を揺さぶる何物も感じられません。いささか地位の失墜した現在のそれを思わせるように乱雑な散らかった印象はありますが、緑の鮮やかなソファを軸に思ったよりずっと純喫茶の趣きがあります。必要以上物を語らぬ女性店主にひと癖ありそうな客たをち眺めているとここを舞台にしたドラマのストーリーが浮かんできそうです。 急に消防車のサイレンが響き、気になって飛び出すものの、店主も客も気にした風もない。実際大変な火事でオオゴトとなっていたのですが、彼等が関わっていたのではという懸念が拭えずにいます。駅の北口に向かい「喫茶 らんぶる」、「COFFEE HOUSE SNOOPY」、「談話室 きんこんかん」などを見掛けますがまあ寄るまでもあるまいーこの見切りが誤りであることしばしー、「ひかり」という喫茶店後には心が震えるのを感じました。
2015/08/23
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いや、正直この居酒屋があったことは当然知っていたわけだし、今頃になってことさら再発見したかのような物言いをするのは気が引けるわけなのですが、このまま書かずに置くとそのままになって放り出してしまいかねないので、思い付いた今こそ一言書いておくべきなのでしょう。 「大衆酒蔵 日本海 金町店」がそのお店です。東葛地域には中規模チェーン店がいくつか展開していて「しちりん」や「鳥幸」がその代表的な店舗になるのでしょうが、この日本海の系列もそのひとつです。駒込に飛び地のようにその一店があったりしてなんとも不可思議なのですが、昨日報告したとおり「鳥幸」は装いはそのままに屋号を変えてしまいましたが、恐らく同じ系列の「大衆酒蔵 日本海」は現役で営業しているはずです。そちらの店舗はビル地下にありながらもかなりのオオバコで、比較的高級感のあるお店の多い界隈にあって、大衆酒蔵の名に恥じぬサービスぶりで活況していたことを記憶しています。さてこちら金町店ですが、これという理由もなく縁がありませんでしたが、この度入店することになったのは近頃登場の機会が増えている同僚のS君が一緒だったからです。少し後輩の彼にご馳走しようなんてつもりはさらさらなくて、この彼氏、大変な呑助なので腰を据えて落ち着ける店を探っていたところここを思い出したのでした。店に入ってみると大変なオオバコでまさに大衆酒蔵というのが適切に思われます。品書も居酒屋の定番がずらりと貼り出され、圧巻される程です。ところが不可解なことに空いてるんですね。いや実にもう寂しいくらいに閑散としていて、店の方たちの方が多いくらいです。松戸店は盛況なのにこの差はどうしたものか、訝しく思われるのです。酒も肴もこれぞと言う美味からず不味からずですが、ボリュームは文句なし。じっくり腰を据えて呑むという目的にも適って好感が持てるのですが、今時はこうした居酒屋然とした店は人気がないのでしょうか。
2015/08/22
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大山のこれから報告しようという酒場2軒については、メモに残っているので幾度も目にしていたし、思い出そうとまでしてみたものです。それでもどうにも思い出せないものだから、消してしまおうと思っていたところ、酔っ払った弾みで突如記憶に登ってきて、その勢いで書いてしまおうというのでありますが、そうそう呑みながら書き物をするのは容易でないし、第一つまらないことこの上ない。正直せっかく嫌々ながら写真も撮っているのだからそれを見ればヒントとなることは分かっているのですがそんな面倒なことはするはずも無し。 で、向かったのが「立ち呑み喰い処 どんぱ」 です。特に目当てがあったわけでなくたまたま見掛けたので寄ってみただけのこと。この日は今は亡きかつての上司と一緒になる予定で落合うまでの時間潰しに寄ったと言っては失礼か。次に行く店は決まっていて、そこで肴は貰えば良いことと、立ち呑みだったのは好都合であります。これまで見たことがないからできたばっかりであることは違いないものの、それなりに常連が付いているようです。その理由ははっきりしていて、感じのいい女性2名が出迎えてくれて、彼女たちとの交流を求めて通っていることがよくわかる。かと言って肴がお座なりということもなく、しっかりした品も揃っているのです。ただし、若干の下心ありの客の心理を見通すかのように価格設定も案外しっかりしているのでした。 元上司ー当時は現役ーと落ち合い向かったのが「海鮮・旬菜料理 和匠 大山店」でした。これといった特徴のない品のいい気取ったカップルなんかがしっぽり呑むのに似つかわしい感じの店で、いい歳のオッサンが肩を並べて呑むようなタイプの店ではなさそうです。実際にサラリーマン風の客は皆無で、カップルや女性同士の呑み会が目立ちます。かと言ってまあそこは居酒屋なので変に浮くということもないのは救いですが、まあ少なくともぼく向けの店ではなさそうです。そしてかつての上司はどうしたものか、魚介がメインのこのお店で矢継ぎ早に頼んだのがサラダ系ときたものだからます
2015/08/21
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本来の目的は、JR横浜線の喫茶巡りであったので本当ならこのブログでは番外篇的な立ち位置にある毎日曜の喫茶レポートで報告するべきなのでしょうが、この日は喫茶には全く持って恵まれなかったのでした。ただ一軒だけあまり知られていない様子の喫茶については、何も触れぬままに放置してしまってはもったいないという貧乏根性もうずいているので、橋本で出逢った素敵な大衆食堂とともに、合わせ技で書き留めておくことにしました。 相模原駅で下車したのは、一体いつ以来となるのか町の様子などまるで印象すらなく、それでも少なくとも味気のない町であったことは薄っすらと記憶しています。イメージ通りの大造りな風情の欠片もない駅前に降り立ち、この熱中に歩く回るのはこの上ない苦痛に思われますが、事前に調べておいた喫茶店位はその外観だけでも眺めておくことにしようと努めて裏通りを通りながら店に向かいます。思いもかけぬ場末の風景と日陰を求めての行動ですがその効果は無益なものでした。でも眼前に現れた立派なロッジ風の建物を見つけると瞬時に気持ちが高揚するのだから喫茶好きなど御しやすい。ここは「珈琲館 樹里」で、都内では郊外にー武蔵境や清瀬にも同タイプの店舗がありますーポツポツとあって、まあどこも似たりよったりであることは否み難いのてすが、実のところこういう店って結構好物なのです。地方を旅しているとこうしたオオバコ喫茶っていうのが街道沿いにドンと店を構えていて、これだけの店を維持するまでに需要があるのか不思議に感じるものです。ともあれこうした喫茶って大抵2階は喫煙席となっているわけですが、当然ぼくは店を俯瞰できる2階席を選びます。昼下りということでお客さんも少なくのんびりとしたひと時を送ることができます。そして、思うのはこれが喫茶だから興味を持つけれど、宿泊先がこういうロッジであってもきっと少しも興趣を感じないんだろうなあと、余計なことを思うのです。良くも悪くもこうしたオオバコではあまり無茶な冒険的な装飾は避ける傾向にあるようです。無論、オオバコであっても過剰な装飾への異様なまでの情熱が実在することはよく知ってはいます。 駅の西側にはウンザリしたので東側に移ってみたものの事態は一層悪化するばかり、やむなく橋本駅に向かって歩き出しました。その道程は只々退屈でいい加減嫌になったのですが、そんな退屈極まりない場所にもオアシスがあるのです。遠目にもよく目立つ立派な建物で、屋上には「よしの食堂」という看板が出ています。一見してこりゃイカンと通り過ぎそうになりますが、見事な暖簾を見ると一気に気持ちが高まります。そそくさと取って返し、暖簾をくぐります。おお、店内は思った以上に大衆食堂しています。デコラ張りのテーブルにパイプ椅子、昼飯時を外したせいか店の方たちは憩いきっていて、母娘は奥の座敷のテレビで刑事ドラマを眺めています。肴はこれでもかと充実していてあれこれ頂きたくもなりますが、残念なことにお値段はそこそこ。空腹ですがそうは食べれないので野菜炒めをもらうとこれが大変なボリュームです。ビールの大瓶では足らず、ついつい日本酒をいただいてしまいました。こんなにリラックスしてしまうと悪いかとつい箸が早まりますが、死角に呑んでる人もいましたし、遅れて時間外れの昼食を取る方もおられて、地元の方には確固たる役割を担っているようでした。
2015/08/20
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秋葉原とはどうも相性が合わないらしく、たまに訪れている割にはいつの間にかハシゴするうちに御茶ノ水に移動していたりして、何としても急いで立ち去りたいという気分を拭えないようです。無論、数軒は気に入っている酒場もあるのですが、たまにしか訪れないとなると、当初の想定ではかねてから狙っていた酒場に立ち寄ってから昔馴染みの酒場へとハシゴするというつもりでいるのです。いるんですが、どうしても見知らぬ酒場を見掛けてしまうとそちらを優先してしまいがちになるのでした。 東池袋のサンシャインシティアルパの地下飲食店街にある(あった?)「万世橋酒場」にはお邪魔しているのに、本家本元には幾度も機会があったにも関わらず訪問のチャンスを逸していたのてす。大体において万世ビルにすらもう10年近くは行っておらず、その際連れて行ってくれたご老体も九州の田舎に引っ込んでしまい再開を約しながら未だその約束を果たせておらず、同行した生涯付き合えると思っていた後輩くんともパッたりと没交渉ということに相成ってしまいました。そんななんだか心の痛くなるような思い出があるものだから、なかなか万世橋そばにあるこのビルに近付かずに過ごしてきたのでしたーところで余談ですがここから「近江屋洋菓子店」に向かって歩いていくとかつて「とん吉」という渋い名店があったのですがそこも再開発で店を閉めて久しくなりましたー。さて、思い出に浸るのはこの程度にしておき、肝心の立ち呑みですが、長い真直ぐなカウンターだけと外見から思い込んでいましたが、店内奥深くに通された所にあるコの字にぐるりのカウンターはなかなか雰囲気は良いし、唐揚げも味はともかくすごいボリュームで悪くありません。でも飽きられてきたのでしょうか、思いの外、客の入りが良くありません。万世びるならもっと肉に特化した酒場の方が人気が上がるのかもしれません。 続いて通い慣れた酒場に向かって歩いていくと、あまり見覚えのない酒屋さんがあって、しかも多くの人で賑わっています。そこは「アキバの酒場」というなんだか捻りの一つもない店名のお店でした。日本酒の銘柄も数多く取り揃えていて、さすが酒屋直営と言いたいところですが、実際には町の酒屋よりそこらの居酒屋の方がずっと日本酒の品揃えが多いものです。ともあれ、駆け付けて買ってもわからぬのでとりあえずウーロンハイをもらい肴もポテサラといい加減に選んでしまい、ああ日本酒にポテサラはないよななんて思いながら、これが結構上手くて、しかも日本酒にも案外合うのでした。で、振りの文章に戻っていくのですが、実はこちら、以前訪れたことがあったようです。悪くないのですが店の雰囲気に個性がなさすぎてまるで印象に留まらないのです。記憶力の欠如と言われるとそれまでですが。あと、やけに混雑しているのと、必要以上に常連ヅラをする愚かな客がおおいのも気分を萎えさせます。
2015/08/19
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一昨日、昨晩と続いた深酒で京橋で2軒ハシゴしてもなかなか調子が出ません。若い頃は多少呑みすぎても、翌日の昼前には臨戦態勢が整ったものですが、年は取りたくないものです。これで己の年を知った呑み方でもできてくればそれはそれで中年らしい呑みのスタイルも育まれようものですが、とにかく今時のオヤジたちーぼくの幼い頃は還暦を迎えたオヤジたちはみな老人めいて映ったものですーは、ぼくらひと世代、いや二世代近く歳も離れたわれわれと変わりない呑みっぷりを見せるものだから、こちらも負けて折れぬ何クソという無意味極まりないのは分かっていても、張り合ってみたりするものだから始末に置けない。ともかく、時間は迫っているものの都島に寄ってぜひとも一軒の酒場を訪れておきたい。そんな訳で、京橋から都島へと向かう術を瞬時に検討してみたのですが、自らの脚力を考慮してみても歩いた方が早く現地に着けそうです。しかし事はそううまく運ばぬようなっているようで、京橋はあまり駅から離れたことがなかったので知らなかったのですが実に魅力的な商店街が続いていて、途中途中でそれはそれは楽しげな酒場や全く持って未知の喫茶店もあり、心が揺れること止め度ありません。ここをみすみす見逃しては愛好者として如何なものかと延泊する誘惑を打ち消すのが困難となるのでした。 それでも何とか危険地帯を突破して辿り着いたのは、「酒の大丸」てす。古いタイプの低層公営住宅風の建物の一階にこれでもかとデカデカと暖簾をひらめかせています。表から見る風情は抜群です。暖簾をくぐって店内に入ると思いのほか広いのですが、やはりここは巨大なコの字を描くカウンターに着くことになります。内側は常連さんたちの定席のようです。控えめに向かいの隅の席を選びました。実はここが店内を一望できる絶好の席なのでした。剽軽でドジっぽく誰にも好かれるタイプの(恐らく)中国人の従業員はモタモタしているわけではないもののなんだか手際の悪い様で、ブツブツと何やら呟きながらもとこか楽しげなのが微笑ましいのです。肴はありとあらゆるものが揃っていて、日替わりの品書きだけでも迷ってしまうほど。とびきり手が込んでいるわけでもないもののちょっと気が利いてるとこも良いのです。残念なことといえばいくらか大阪としては値段がお高めなところですが、客たちは気にする風もなく次々とでものんびりと注文を重ねて、間もなく席を立たねばならぬ身のぼくをして悔しい思いをさせてくれるのでした。 都島駅から市営地下鉄を乗り継ぎ、新大阪駅に到着。この駅はまさに新幹線の駅といったよそよそしい表情で、ここに着くと一刻も早く新幹線に乗車して帰京したくなるのだからうまく出来ています。K氏とはホームで何とか落ち合うことができましたが、ともにへたばりきっていて、キオスクで買い込んだ缶チューハイを2本づつ呑み干すと、東京駅までぐっすりと眠り込み、当初東京駅で呑んで帰ろうと打合せていたことも忘れ(た振りをし)て、それぞれの自宅に向け別れたのでした。
2015/08/18
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最終日の呑みは、やはり京橋で始めたいと思っていました。喫茶篇で書いたとおり「スワン」の素晴らしさに時間の経過さえ忘却の彼方となりそうになるのでしたが、まだ十分抜けきってはいない酒が恋しくなってきました。大阪を知り尽くしたとは到底言えないぼくではありますが、観光地と化した新世界は置いておくとして、天満から京橋に掛けてがその代表的な土地であることに異論を唱える人は、それが根っからの大阪人であっても恐らくほとんどいないのではないでしょうか。 京橋駅を出てすぐの「スワン」を過ぎると幾軒もの立ち飲み屋が軒を連ねていて、正直どこに行ったか行ってないかなど忘却の彼方なのであります。なのでなんだか入ったこともありそうですが、「岡室酒店 直売所」にお邪魔することにします。この並びでもとりわけ人気の一店です。まあみかけはごくありふれた立ち呑み店でしかありませんが、流石にこれだけの入りがあるはずとにかく酒と肴の充実は羨ましくなるほど。さすが大阪。まあ都内で頻繁に通い詰める立ち呑み店のお得差に比べればまあ劣るでしょうけど。雰囲気も格段に上だしね。何で、意味不明な競争意識を東京人ーウソ、単に人生で一番長く住んでるだけの田舎モンーとしては訴えたい。いや、大阪の人は聞く耳がないから訴えてもしょうがないかなどと無為な挑発もしたくなる。実際、羨ましい、このレベルの酒場が幾軒もあると思うと移住して、大阪弁をマスターしたくもなる。まあ、大阪の人たちはこんなにも大阪に愛を捧げるぼくにさえ手きびしい仕打ちを見舞ってくれそうです。 同タイプではあるものの店の風情は格段上の「まるしん」にお邪魔しました。ここは間違いなく初めて。一見の態度を示すととたんに冷たいのは、都内の酒場より実際は大阪に多いと感じています。それはまあどうでもいい、とにかくここは親近感というか店主のナツっこさに最大の持ち味があるように思われます。兄ちゃんー大阪のおっちゃんはやけに人の事を兄ちゃん呼ばわりするけれど、ぼくより年下に思えることがままあります、まあそんなに気にはなりませんけどー初めてか、ほならこれうちの名刺、と似顔入りの名刺とともにゲソ揚げを出してくれて、これ食べてやと至ってフレンドリー、肴をくれたからという訳だけでは消してありませんがこういう一面も大阪らしくていいですねーちなみにカッコいいマッチもありますので、マッチ好きな方もどうぞー。大阪の酒場って、先にも書きましたが湯豆腐が美味しいですね。とろろ昆布がまぶしてあって出汁で食べるのがとても良い。これなんかは手軽なんだから東京でも真似ればいいのに。
2015/08/17
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これがホントの喫茶篇最終回。昼過ぎとなりそろそろ呑みの方もフォローしておかねばと焦る気持ちを抑えつつ、いつしかJRの環状線を迂回していることに気づくのでした。このまま線路に沿って歩いていけばやがては京橋にたどり着けるはずですがその距離感がどうも掴めない。それを確認するため立ち寄るのはやはり喫茶店なのでした。 寺田町駅のそばにある「喫茶 軽食 ジュン」に入ることにしました。というか他にこれといった喫茶もなしなので選択の余地はありません。ガード下に純喫茶然とした店舗もありますがもはや廃墟化しつつあります。店はそこそこに混んでいて、そこそこに純喫茶のエキスを染み出していて悪くはありません。大阪の人は食事するにせよ、憩うにせよ、歓談するにしてもとにかく喫茶店という媒体が必要なようです。どうでもいいようなおしゃべりであっても、さほど笑えるわけでもない笑いを散りばめて、気の利いた喋りをすることがアイデンティティを支えてでも言わんとばかりです。ぼくは知っています。大阪の人は一人だと滑稽なほどに押し黙ってしまい、そんな自分を嫌ってむりくり見知らぬ他人にコミュニケートを図らんとすることを。孤独と沈黙に耐えられぬ大阪人は今持って少しも都会人ではないのですーもちろん皆が皆、喧しい訳ではないー。と毒を吐いてみたものの、ぼくにしたところで和歌山での生活はけして短くなくて、同じ関西圏の一員だと思っています。思っていますが、どうも大阪の人は奈良や和歌山を小馬鹿にする性癖があり、滋賀など水溜としか思っていないようで、そんな発言をしても少しも悪びれないのだからー県民ショーを見よー、一言言わして頂きたいのです。まあ、そんな大阪人には「ヒスイ」を見よ、と一言呟いてみせればそれで良かったのでしょう。返す言葉で「マヅラ」はどうだ、と問われれば言い返すすべはありませんが。ともあれ、喫茶店国と信じて疑わなかった大阪も環状線の東側は見る影もなく、僅かに残る残滓をスナック化したカラオケ喫茶に見出すしかなさそうです。そんな中でこんな普通の喫茶が残っていて入れたのは運の良いことでした。 落ち着いて調べると京橋まではまだかなりの距離があります。残り時間も少なくなっているのでここで環状線に乗り京橋駅を目指します。かねてよりその存在を認識していた「純喫茶 スワン 京橋店」にお邪魔することにしました。今朝行った天王寺の店舗に落胆したばかりなので、ノルマのつもりで片付けておくつもりでした。でもこちらは全然違いますね。照明と鏡がこれでもかと全面に張り巡らされていて、目も眩むばかりです。鏡張りのパーテーションをちょっと足してやればブルース・リーも幻惑されるような気がします。このテンションの高さこそが大阪喫茶の極北です。松虫の「ゆうなぎ」のアンニュイとこちらのアヴァンギャルドが共存するのが大阪の懐の深さです。と、先の文章とは真逆の発言となるのもやむを得ないことてす。だって大阪も大阪の人も変だから。 好悪入り交じったなんだかよく分からぬ結論で今回の和歌山の旅のおまけの大阪喫茶巡りは終了です。
2015/08/16
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近頃仲良くしているSくんと呑みに行くことにしました。彼は金町駅で乗り換えなので金町にお付き合いします。彼氏は実によく喋り楽しいし何よりこちらがリップサービスする必要もなく楽ちんなのが有り難いのでありますが、呑ませ上手なのとついつい互いに喋り好きなのが災いして、ちょっと一杯と言いながら終電間際となることがお決まりで正直言うと要警戒人物でもあるのでした。 そんなこともあるので酒場探しはさておきなるべく手早く店を決めてさっさと呑み始めるが得策。京成の呑み屋街をふらっと歩き、すくに店を決めました。久し振りの「大松」にやって来ました。随分前に一度訪れたっきりなので、店の印象はともかく、かなり記憶も不鮮明なのでした。いずれそうそう変わることあるまいだろうと訪れた印象は、やはりというべきか一寸お高いなという印象、確かにそれなりの肴を取り揃えていて食道楽をそれなりには満足させるはずですが、もっぱら呑みに徹する体質のわれわれには少しばかり贅沢に思われるのでした。京成金町の呑兵衛横丁の酒場の多くは独りのみ客向けのカウンター主体だったり、精々が狭めのテーブルがある程度ということが多いこともあって、座敷なんかもあるこのお店は重宝らしくて、サラリーマンやアベック客なども多く入っています。これは逆に捉えれば一人では使いにくいということにもなるのであって、前回も人と一緒だったのが好印象に繋がったようです。総じて大衆酒場よりは値段もするけど、質は良いというごく当たり前の感想を漏らすことにもなりますが、使い方さえ考えればやはり悪くなさそうです。 横丁の入口にある 「よっちゃん」にお邪魔しました。こちらにも以前一度だけお邪魔しました。カウンターに5席ほどのホントに狭いお店です。威勢が良くて適度に客の相手もこなす、まあ珍しいというほどではないもののいてくれるとホッと和む店主が出迎えてくれます。席に着くとぼくを見て、お客さん以前来てくれたよね、と嬉しいことを言ってくださる。これって客商売のイロハのイ位の初歩的な顧客掌握術のような気がしなくもないのですが、それでもちょいと嬉しいものなのです。狭い壁面にはベタベタと手作り短冊が張り巡らされ変わり種のメニューも並びます。この変わったのが何であるかを報告するのが常套的な語りであるわけですが、メモするわけでもないため残念ながらすっかり記憶の埒外となっています。オヤジさんと時折言葉を交わしながら翌日の予定ー仕事なんかではなく、遊びの予定、しんみりといったムードになれる酒場ではないーでものんびりと建てたり、旅のプランを夢想したりするのがよろしいようです。
2015/08/15
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駒込にやって来ました。この町もこのブログではお馴染みの町となっています。と言ってもこの町の酒場は大体知り尽くしていて、小洒落た店やお高そうな店を除くともう巡るべくもないと考えるのが傲慢だと知ることになるのです。 駅から出てすぐの場所に「龍馬 軍鶏農場 駒込東口店」ができたのはいつのことだったでしょう、大体ここには以前何があったのか。ああ、こう書いていて思い出しました。輸入食品店があったはずです。いかにもチェーンという構えのお店でちっとも魅力を感じませんが、くたびれていたのでまあ良しとしよう!一人でなかったのも怠けた理由です。この夜一緒だったのがお馴染みのわがまま上司T氏ということあります。長々と店選びに迷っていたりすると躊躇なく帰ってしまうという困った人です。ただ皆さんはこのおぢさんのこと優しく見守ってあげていただきたいのです。というのも実質には降格人事に近い左遷の身と相成ったのです。異動の命を受けてからのその落ち込みようはそれは凄まじいものがあって、人はこんなに脆いものかと触れるのもおっかなびっくりの日々でした。この夜が別れの盃ということになります。そんな暗く挙動までもが怪しくなってしまっている痛々しくも滑稽なおぢさんは、とっとと酔わせて帰してしまうのが得策というもの。さて、やはりいかにもチェーンという店内は全席空っぽ。こりゃイカンなと思いますがあとの祭り。しばし茶を濁して引き上げることにしましょう。ふと品書きを見ると名刺交換をすると焼酎がボトル一本サービスとあります。これは見過ごすわけにはいきますまい。うら若く明るい女性店長と首尾よく名刺交換を終えー日頃まず持ち歩くことはないのですが偶然持ち合わせがあったのですー、もらったボトルはちゃんと720ml入った芋焼酎なのでした。これで本腰入れて呑むことは欠しました。サービスで半額の鳥刺しやチキ南蛮、果ては鍋までをぼくは箸をつけただけだというのにまたたく間に平らげる元上司をぼくは怯えて見つめるのみなのでした。どうもまともに食事も取らず睡眠もままならなかったようです。いずれにせよこの居酒屋さんは、チェーンとしては検討していて味も良かったのですがあまり食べられなかったなあ。おぢさんは一人でおじやまで平らげたというのに。 ここでおぢさんは退場。今度は一人で駅東側のアザレア通りの裏手を歩いてみるとあまり見慣れぬ酒場がありました。韓国料理店ということは見て取れましたがめんどうなのでこれで良しとします。「奉仙」という名の店で、安普請ではあるもののこれといった特徴もありません。女将さんもちっとも愛想がなくてまあ別に今夜は呑めさえすればいいので一向に構いません。沈黙の中ー他に客もなし、テレビや有線すらなしなので徹底して静まり返っています。これが妙にいい。孤独さなどは微塵もなく不思議と充実した気持ちになります。一人グラスを傾けつつ去りゆく上司のご多幸を祈ったかというとさにあらず、何と言ってもうちからおぢさんの異動先はずっと近くて便利なので、ぼくからすれば羨ましい限りなので、惜しい人物を亡くしたと悼む気にもなれないのでした。
2015/08/14
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中央線に揺られて初めての東小金井駅にやって来ました。東京都下の大抵の駅では下車ないしは歩いていると思っていたのでしたがーいやいやそんなことはないかー、ここで降りるのは恐らく初めてです。土曜の昼下がり時間を持て余したので来てみることにしたのでした。東小金井駅といえば、最近カサハラテツローという漫画家が描いたロボットみたいなのにヤクザの娘たちが乗り込んでレースしたり、恋愛したりという面白くなりそうでいながら尻すぼみで終わってしまった作品があって、この舞台がここ東小金井なのでした。だからということではないのですが、ちょっと親近感が湧いています。 実のところ目指したのは「純喫茶 毬藻(まりも)」があるからでした。ところが何ということか、またしても出遅れてしまったようです。七月中旬から店を閉めているようです。 本当なら東小金井で呑むつもりでいたのですが、まだ何処も開店までは時間がありそうです。駅前にド派手な中華料理店があって、妙にそそられたのですがこの日はダラダラ過ごしてしまい、ちょっとは体を動かしたほうが良いと考えせっかくなので武蔵小金井駅まで運動がてら歩くことにしました。この駅は何度か降りています。勝手知ったるとまではいかぬまでも、駅に着くとすぐに町の記憶が蘇ります。「喫茶室 たきざわ」でお茶を飲んでー普通なので写真なしー、まだ陽は高いものの呑みに向かいます。 「壱番館」です。和風の立派な居酒屋でかなりの収容力がありそうです。でも正直好みの店でないことは一目瞭然、実はこの後、2軒ばかりハシゴすることになりましたがそちらの方がずっと好みです。といきなり決めつけるの申し訳ないのですがこればかりは好みというものがあるのでご勘弁いただきたいのです。それにしても記憶というのはいい加減なものです。小規模ながら武蔵小金井にこんな味わい深い呑み屋街があったとは、これを記憶していなかった自分の記憶のダメっぷりに嫌気が差します。そのどんづまりにあるスナックビルの妖しさ、裏にある共同便所のうらぶれっぷりはなかなかのものです。さて、肝心の「壱番館」ーそれにしてもこの店名はどうしたものか、どう考えても喫茶店そのものですーは、魚介系を中心とした肴とそれなりに揃う日本酒が売り物のようですか、どうというものでもないとしか思えません。大人数で腰を据えて呑むにはいいのかもしれませんが、少なくとも今のぼくにはその良さが今ひとつ感じられないのでした。
2015/08/13
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さて、先般東松戸駅で呑んだことを出先の方にお話して、その際に見掛けたオンボロ酒場のことを話したら、そんな店あったっけと興味深そうてす。その夕方には早速連れて行ってやるよと言ってくれたので喜んで帰宅の車中に便乗させていただいたのでした。出掛けに落として貰う場所を調べるためストリートビューをじっくりとチェック、昨日目にしたのは開店準備の最中なのか扉が開け放たれたまんまを見たので印象が一致せず、どうもはっきりした位置が同定できません。確か「やきとり 大将」とかいう酒場の松戸よりにあったのでおおよその目測で近くのコンビニ前で落としてもらうことにしたのでした。 これが大正解、松戸方面の車線に沿ってその店はありました。やはり扉は開け離れたままです。これはたまらなく暑そうだと躊躇しつつもつ焼やらと書かれていたことがぼんやり確認出来るだけの退色しきったテント看板を眺めてそのオンボロぶりに後押しされて入店していました。カウンター5席だけの狭小店舗で、奥には自宅兼用となっているのか居間らしき部屋も覗かれます。店舗の脇には畑があってどうも店主のオヤジはここで野菜を作っているようです。その読みは的中し、虫食いが目立つものの出された枝豆は確かに美味しかった。また、この畑とやたらと飛ばす車通りもあって風通しが大変よく、暑いのに汗は出ず、案外快適だったのでしたー汗は単に蒸発していただけかもしれんー。もつ焼を中心に煮込みやホルモン焼きなどごく限られた品とトマトなど簡単な日替わりの品があるだけというのも場末酒場らしくて悪くないな。壁にはホッピー社の水着カレンダーや年代物のヌードポスターが貼られていてなんとも楽しい。そうそう営業許可の認定証でこの店の店名が知れました。「りき商」というらしい。と酒場気分を堪能したものの知り位の段になって心担寒からしめられるのてした。それなりの落胆で何も言う気力をなくしたのはまだまた修行が足りぬということか。返す返すも無念であります。 さて、新京成線のみのり台駅が、最寄りというものの駅までは1.5kmの道中が残されています。まあ初めての道ですので楽しく歩けると信じ熱波まだ止まぬ中を歩き出すのでした。途中古くさい酒場が軒を連ねていたり、小規模ながら商店街もあったりして、思いの外あっという間に駅前に到着しました。駅前に着いてようやく以前呑みに来たことを思い出しました。迷うこともなく「台湾料理 百楽門」というどうということもない中華料理店に入っていました。海鮮水餃子180円に惹かれるなんてぼくには珍しいことです。味付け卵も80円だし、この日のサービスで梅酒ロックー仄かに紹興酒の香りがして甘さ控えめーが240円とお手頃なのも結構なことです。広い割に閑散としているのは、こうした中国人コックの中華酒場ではよくあること。恐らくは深夜近くなってから地元に住む中国人で賑わうのでしょう。 それにしてもこの辺り、古い酒場が何軒か残っていて面白そうなので近いうちにまた来てみることにします。
2015/08/12
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振替休日の取れたとある平日の昼間、突如思い立って両国駅に向かったのでした。久しぶりにしばらく行っていない古い喫茶店に行ってみるつもりです。 土日祝日と休みで営業は日中の短い時間だけいえば、喫茶好きの方ならすぐにお分かりでしょう。向かったのは「ホルン」です。ここは何度も空振りしてようやく入れたという因縁のあるお店です。そういうお店は得てして2度目は呆気なく入れてしまうものですが、さすがの手強さ、しばらくお休みにさせていただきますと貼り出されていました。 先日閉店したというでまかせをどこかで見聞きしたはずですが単なる勘違いだったのかもしれません。「純喫茶 ヒロ」は、以前と変わらず昔ながらの情緒を残して営業していました。あっさりとし過ぎに思われるほどののっぺりした店内を典型的な喫茶照明と合皮張りのソファで他にはない空間を生み出せるのだから不思議なものです。純喫茶はソファと照明と味のある店主が揃いさえすれば成り立つことの証左とすべき一軒です。むろん、それだけじゃ寂しすぎますけど。 道を渡るとこれまで気が付かなかったのですが、「ミチ」という廃業喫茶がありました。この磨りガラス扉の喫茶入りたかったなあ。ご存知の方がおられたら情報をください。「静」は、やってませんね。大丈夫でしょうか。 あと一軒、ダメそうだなと思いつつ「Coffee & Snack ドリーム」に入りました。う〜ん、やはり。改装前はどんなだったんでしょう。 さて、お腹も空いてきたので以前夜中にはしごしていて気になっていた「お食事処 あづま家」にお邪魔します。広い土間にはテーブル席もありますが、独占するのは図々しいというもの。昼下がりでお客さんも大分はけているので、軽く呑ませていただいても迷惑にはならないだろうと自分に言い訳してみせてチューハイをいただくことにします。作り置きせず母子?お二人が調理の手を休めぬ姿に若干の後ろめたさを感じながら呑むのも昼酒の醍醐味ではあります。ちまりちまりと肴にお願いしたサバの煮付けがドライなチューハイを進ませます。手頃な酒の肴が多くて酒場としてもとても使い勝手がいいなあ。今度は夜来たいものですが電車の便が悪いからなあ。そんな浮世離れしたことを思いながら優雅な昼餉を頂いたのでした。 この先まだまだ散歩を続け最終的には豊洲に至ったのですがそれはまた機会があれば。
2015/08/11
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もう少しだけ呑んでからホテルに引き上げることにします。ただし呑み過ぎは厳禁、なんせそこらの女子高生の家庭より厳格に門限が定められているのです。そんなこともありホテルの近くで呑むのが良いと考え、ちょっと危ない気もしますがドヤ街の只中で呑むことにしました。 まず入ったのが「八仙桜」というお店でした。アジア系の女性二人で切り盛りしています。この界隈は山谷同様にカラオケのあるスナック寄りの店が多いのです。幸いなことに歌の好きな客はおらず歌声に苦しめられることは当面はなさそうです。もともと結構な大きさのあるカウンターには2,3名がいるばかりなのでした。肴は中華以外にも居酒屋メニューの定番が揃っていて、混んでさえいなければのんびりと呑むことができそうです。店のお姉さんたちも感じが悪くないし、何よりお値段の安さは嬉しいものです。大阪だからと気張ったりせず、身構えもせず、自然体でいれば、通い慣れた馴染み深い山谷の町で呑んでるような気分になってくるのでした。大阪まで来て山谷を感じてみても虚しいだけなんですけどね。 とうとうホテルに辿り着いてしまいました。てもまだ物足りない。かといって一日随分動き回ってこれ以上動き回ると最終日に差し障ることにもなりかねません。お誂い向きにホテルのとなりはやはり酒場なのです。今後大阪での定宿になるかもしれぬので、お隣の酒場を見ておくのも悪くはないでしょう。「焼肉 福家」とあります。焼肉とあるのはちょっと気になりますが、まあ何とかなるだろうと楽観的になれるのは大阪の空気がそんな緩さを許すからなのか。実際店の方は陽気なオバハンーこれは行為を表す言い方とご理解くださいーは、実に気さくで楽しい。この陽気さは関西の方のそれとは一風違って感じられ、そんな女将さんの明るさに群がるようにおっちゃんたちも本妻の前では晒せぬようなたるんだ表情でだらけてみせたりして、門限なしに呑める幸せを羨んでみたりもするのでした。座敷にはどうしたことか一人暗い表情を隠しもせぬ若者がいて、何が楽しいんだか、黙々とスマホなどいじる姿は都内の若者と変わることなし。聞くとこれが女将の息子とのこと。こと若者にあっては都内も府内も状況はさほど変わらぬようです。
2015/08/10
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まだまだ大阪の喫茶巡りは続きます。今いるのは松虫停留所付近です。夕方には新大阪駅から新幹線に乗らねばなりませんし、それまでに京橋辺りで何軒か居酒屋も回りたいと思っています。このまま悠長にしていていいものか、勝手知らぬ町なので判断の下しようもありません。まあ義務ではないのだからあまり力まずに愉しめばいいじゃないかというご意見ごもっともではあるのですが、ちょっとしたニアミスで今生の別れとなってしまうことも経験を重ねてきたものですから、どうしても休んでなどいられません。普通なら休息の場であるべき喫茶店や居酒屋もそれを趣味というか生き甲斐に近いものとして位置付けてしまうとそうも言ってはおられません。 ともあれ、セピア色とはこれであると言い切ってしまいたくなる「ゆうなぎ」 ー余談ですが古民家で行われる燻蒸処理の役目を喫茶店ではタバコこそが担っているのではないか、あの切なくなるようなセピア色(もともとはイカ墨のことのようです、モノクローム写真の現像に使われたとか、今では時を経て褪色した様を指すようです)に彩られた空間はすっかり嫌われものとなったタバコこそがもたらすと考えてみるーを出ると、電車通りを越えて「喫茶 憩」に向かいます。外観はとてもいいのですが、内装は表ほどにはかつての姿を留めることに成功していないようです。 東方向に向きを変えしばらく歩いていくと「ニューホワイト」がありました。なかなか趣のある渋い建物ですが、店内はいくらなんでもちょっと散らかりすぎていて、さらには思いの外にこだわりが感じられず純喫茶はこうした些細な綻びの積み重ねで、純を失っていくものなのでしょう。 文の里の辺りにこんなにも物悲しいアーケード商店街があるとは知りませんでした。「COFFEE HOUSE 再會」は、できることなら表通りから見つけるのではなく、雑居ビルの薄暗い入り口を通り抜けて入りたいところです。これだけで随分印象が違って感じられるはずです。華族のサロンのような豪奢できらびやかな空間は、この界隈に必ずしも似つかわしいとは思われず、そのギャップが極端なためかよその喫茶店では騒がしくてかなわぬ大阪のおばはんたちもここでは、いくらか窮屈そうではありますが澄まし顔で気取ってみせるのを楽しんでいるように思われます。ここにいるひとときは日頃鼻持ちならぬといった言い方で腐しもする銀座マダムに変身するようです。
2015/08/09
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北松戸はこれまでも散々登場しているのでもう言ってない店などなかろうというのは大間違いで、まだ何軒かの訪問していない酒場があります。たまたまいつもの出張先の方が先に行って呑んでてくれと軍資金を授かったのいいことに、未訪の店に行ってやろうという魂胆なのです。 駅東側のロータリーを越えてすぐにある「お食事処 味さわ」にお邪魔することにしました。お隣が「居酒屋 ひなげし」で、随分以前に一度伺ったことがあります。この二軒、表から見たところから受ける印象では、前者が酒場、後者がむしろお食事処に見えます。店内はカウンターばかりだったはず、地元の方に違いない高齢者が客の主流です。酒の肴もごく最低限で、やはりこちらの方がずっと酒場らしいと感じられます。そんな面子の中にあっては若く見える女将さんですがどうもぶきっちょらしくて仕事もモタモタして感じられます。カツオの刺し身をもらうとなぜだか時間が掛かると言うので嫌な予感に襲われますが、なんのことはないお隣から刺身が届けられました。どうやら経営が一緒のようです。この刺身は切身の数から考えると少々お高めですが、新鮮で美味しい。こちらの女将さんは基本的に酒の世話だけする雇われ女将らしいのです。まあ愛嬌あるからいいんですけど。同行した若者ともどもにやがてじいさん、ばあさんの適当な酒の肴とされ始めました。あまり長居しても面倒ですし、スポンサーも間もなく到着とのことなので店を移ることにしました。(とここまで書いて見直して、手帳と突き合せてみたら「お食事処 味さわ」と「居酒屋 ひなげし」を逆に思い込んでいたようです。これで書き直すのも面倒なのでこのままで押し通させていただきます。) 向かったのは久しぶりの「しちりん 北松戸店」です。北松戸に通うようになって初めの頃はここにボトルキープして、えらく安い日替りのオススメで髄分安く呑ませてもらったものですが、このところはめっきり来ていません。そういえば来たての頃は七輪で手頃な肉なんかを一人焼いて呑んだものですが、めっきり七輪とはご無沙汰しています。一人で来ることも少なくなりかつての定席であったカウンターーここが案外居心地が良いのですーにもとんと縁がなくなりました。独り呑みをしなくなった酒場は、なんだかよそよそしく感じられるのは致し方ないことではありますが、なんとなく寂しいものです。かといって東葛地域にはびこるこの系列を贔屓にすることはもはやなさそうです。もちろん全然悪いお店じゃないんですけどね。
2015/08/08
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西荻窪という町、好きな喫茶店や甘味処があってちょくちょく通っていたこともありますが、こと呑みに関してはどうも気乗りせず敬遠してきました。いつも似たようなことを言ってますがこの西荻窪はわが家からちょっとばかし遠くて、帰りのことをどうしても考えてしまい億劫に感じられるのでした。実際に来てみるとどうということもないのですが、心理的な距離感は否めません。意を決して訪れることが叶ったのはつい先頃、還暦を迎えたというKおぢさんが中野で呑もうというのをいやいやだったら西荻窪にいい酒場があるよと誘うことで、嫌でも行かねばならぬよう自らを追い込んだからでした。そんなこんなで西荻窪駅着。何度も来ているのにいつ来ても初めて来たかのようによそよそしい印象があります。西荻窪のランドマーク的な存在である「こけし屋」さえもがぼくの心を和ませることはありません。 何も知らぬK氏を伴い北口をひたすら北上します。なんのことはない東京女子大学に続く女子大通りを辿りさえすれば否が応でも辿り着けるはずなのにそれでも迷ってしまうのを相性が悪いだけで片付けてしまうことにします。とまあぼく一人であればそれで済みますが、うるさ方がやがて怪訝な表情を隠さず文句たらたら。そしてようやく遥々歩いて汗だくになったのに「OHWADA」は、無慈悲にもお休みのようです。ってそりゃないよな、定休日でもないし、呼び鈴が壊れてるから声をかけてって書いてあるから何度も声を掛けたのに全くの無反応。K氏の不満は留まることを知らずやれバスに乗るだの、吉祥寺に行くだのとやかましいことこの上なし。次に向かうは「やきとり 雅」。ご存知の方は早くもぼくの愚かさを嘲笑される事でしょうか、以前見知っていたので記憶のままに店に向かったもののどういうわけか見つからぬ。さんざん探しても見つからぬので、タバコ屋さんにお聞きすると移転したとのこと。場所は荻窪だそうな。さすがにK氏の愚痴には怒気が含まれてきました。 最後の望みと目指したのが「風神亭」でした。「こけし屋」を越してすぐのところに看板が見えています。そこから脇に逸れた細い路地を進むと目当ての酒場がありました。K氏などは満席で入れないとかじゃないのか、などと嫌味の一つも言ってきますが確かにそれはあるかもしれん。幸い入ってすぐの大きめのテーブルも空いていますし、奥のグループ用の席もまるまる空いていました。お客さんはみなさん落ち着いた世代の方たちが多く、女性の割合がむしろ多いようにも思われます。そんな客層のお店なだけにお値段は大衆酒場のそれとはいかず、いささかお高めです。サモサや揚ワンタンなど見覚えのある肴が揃っており、確かになかなか気が利いていますが空腹なわれわれはなんとか言う揚げ餅をいただく事にしました。見たまんまのお味ですが、イカのゴロ焼―この店ではワタ焼と称してましたか?―のイカワタを絡めるとまた違った味わいで悪くないのでした。お隣のOLさん達のようにたまにゆったりと呑むには悪くなさそうですがせっかちなわれらはまだその境地には至っていないようです。
2015/08/07
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松戸について愚痴ることはやめるとかつて誓ったので、またまたやって来たからには褒めるところを見つけ出さねばなりますまい。駅の東口を出て、つけ麺の有名店のある方向にずっと歩いていきます。この夜は松戸在住の御老女と久々の逢瀬ということもあり、暑い中をあまり歩かせては済まないと愚考したわけです。常日頃食料品から日用雑貨まで幅広い品揃えと客の離れぬのが不思議でならぬイトーヨーカドーからご自宅が近いこともあり、そのお向かいに見慣れぬ酒場を見かけたのと、店先の看板にほろ酔いセットがあったので、ここで待つことにしたのでした。 そのお店は、「めだか組」といいました。お隣は間違いなく経営も一緒と思われ、店名は「子組」とあります。ウインドー越しに店内を眺めると、一言で表すと前者が前者はムーディー、後者がカジュアルな雰囲気です。もともとどういう店だったかまるきり覚えがないものの、それぞれに営業していた店舗をまとめて借りると割り引いてもらえるとかいう約束がまずあって、改装して繋げてしまえばいいところをそんな費用を払う位なら姉妹店としてそのままの造りで営業してしまえといったところでしょう。店内に入るとカウンターだけでせいぜい10名入れるかどうかで思った以上に狭い。奥の席は水商売のやたら下ネタの好きな外国人女性とそのカモにされたおぢさんがいて―これを瞬時に嗅ぎ分けたのだから日頃の修練の賜物か―、鬱陶しいことこの上ないので入り口前の厨房を仕切るガラスの遮蔽板の前に立つと、これが凄まじい熱気を放っている。どうやら鉄板焼きも看板商品らしいのだがこれは明らかに設計ミス。どんなに空調を強めてみたところでおっつかない。セットをいただくぼくに続いて、なんだか太鼓持ちのようなやけに調子が良くて必要以上にハイな兄さんが入ってきて、客なのに営業トークを炸裂させて嵐のように去っていきます。そうこうする内に店の前をデートのお相手が通り過ぎたのが見えたので慌ててお勘定するのてした。 店の脇に佇む彼女と無事遭遇。以前一度来たものの貸し切りとかで入れなかった店に行ってみることにしました。実はその店のことなどすっかり念頭に浮かびもしなかったのですが、店の前に来てようやく思い出したのでした。町外れのビルの2階にある「つづく」てす。図らずも一階ではお洒落な雰囲気のお店がオープンしたばかりですが気分ではないのでパスします。店の前に立つとちょっと気取っていて案外高そうてすが、今晩はお財布の心配もなし、ってたまにはご馳走しないとね。手内に入ると4人掛けのテーブルが壁面に配され、中央に大きなテーブが置かれています。この大テーブルがカウンター替わりのようです。これは案外いいアイデアではないでしょうか。メニューを開くとチューハイなどが280円からと大変お手頃。焼鳥では爆弾つくねとか言うのがあって辛いのかしらと想像していたのですが、さにあらず沢山のニンニク片が練りこまれているのでした。他の肴もちょっと気が利いていて、悪くありません。ここも若いスタッフが多いのですが、健闘していると感じました。
2015/08/06
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初めての土地に行くのはいつでも心浮き立つものです。今回向かったのは東松戸駅です。と申し上げてもピンとこない方が多いのではないでしょうか。ぼくも仕事で松戸に度々訪れていなければまず持ってやってくる事のない駅だったのではないでしょうか。でもぼくには幸か不幸か松戸に仕事もあって少なからず知人もおります。この日の夕暮れ時には船橋在住の方が車で途中まで乗せてってくれるということになり、通りがかりであれば好きなところで降ろしてやるよと有り難いお言葉を頂いています。途中寄り道して貰えそうなのは新京成電鉄の駅か、JR武蔵野線の駅ということになります。もとより普段使い混んでいる常磐線には考えも及びません。そんなこんなで決断したのが東松戸駅だったのでした。東松戸駅は、JR武蔵野線と北総鉄道の北総線か交差する歴史の浅い駅で果たしてこんな所に目指すべき酒場などあるのでしょうか。 実はすでに聞き込んでいたのですね。列車の中から見えるようです。プレハブ造りのぼく好みの店というので早くも期待でいても立っても要られなくなります。その酒場は「一休」というらしいのです。狭い店であっという間に満席ーなんせ他に酒場らしい店は余りないーなんてことになると悲惨なので、気持ちは焦りでいっぱいです。ところが辿り着いた店はなんのことはない新しい立派な建物でどうやら建て替えになったようです。店にとってはめでたいことですがぼくには残念至極なことてす。せっかくなので入ることにしました。客はまだあまり入っておらずちょっと店舗を広げ過ぎた印象ですが、都心からの帰宅者が増える頃になると賑わうのでしょうか。だとすればもっとカウンターを充実させるべきだろうと思っているうちに、お願いしてあった焼き鳥が到着します。おや、これはなかなか美味しいじゃない、サイズも大きいし。これはもしかすると家族連れなんかが重宝にしているタイプのお店かもしれません。 とまあ東松戸での呑みは極めて呆気なく幕を閉じることになったのですが、実は車中からとてつもなく琴線をくすぐる酒場が目に飛び込んできたのでした。どうやら、新京成線のみのり台駅が最寄りのようですが、駅からはかなりの距離がありそうです。果たしてその酒場に訪れる機会は得られるのでしょうか! ってまあ実はもう行ってきたのですがその報告はまた後日ということで。
2015/08/05
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近頃、足繁く通っている木場ではありますが、けして気に入っているというわけでもなくて、かの名酒場が休業状態とあってはそれこそ勤勉に通うべき理由もありません。この夜はいつものTさんが付き合ってくれることになったので、彼の指定する木場向かうことになったのでした。駅の近くまで来るとちょっとばかし趣向がある方が面白かろうと先に呑み始めているTさんはほっておくことにして、しばし木場を散策します。木場といえば須崎パラダイスがよろしかろうと偵察のつもりでとある酒場に潜り込むことにしたのでした。 薄汚れた小汚い、でもぼくにとってはこれ以上ないほどに嬉しくなる建物があります。歴史はありそうですが、正直万人が好むような店ではないことは一見しただけでも見て取れます。雑居建築なだけあって何軒かの酒場がそこにはありますが、その中では比較的無難な屋号を持つ「にこみ屋」にお邪魔することにしました。って言ってはみましたが、屋号はともかく間口の狭さがもたらす怪しげなムードはここが並びでは最たる店かもしれません。実際それは紛れもない場末酒場の様相を呈していたのでした。カウンターだけで10席ほどもないだけの狭い店に常連度の異常なまでに高い客ばかりがすし詰めになっているのです。でもそれは極めて想像通りの光景であって、まさに須崎パラダイスで呑むには相応しいのでした。排他的な印象のあるオヤジたち、実はよそ者のことが気になって仕方ないらしくやたらとちょっかいを出してくるのがそれはそれで愉快なものです。結局お替りを2、3杯もご馳走になりながらお勘定はきっちり呑んだ分だけというのもまあなんたかおかしな話しではありますがそれもお愛嬌というものです。女将さんによるとこちらは須崎パラダイスの当時から開く最後のお店だとか、単なる壁にしか見えぬ共同の小便所がそれを物語るのかもしれません。常連の一部はわれわれ部外者の出入りを気に入らぬふうに思っていると勘違いしましたが、曲は忘れてしまったものの彼らの歌うカラオケの画面にはまごうことなく川島雄三の名作が映し出されるのでした。ちなみに店の脇にある男性用共同便所の潔さは見ものであります。 気分良くなったついでに須崎パラダイスの今はなきアーチを越えた辺りに「おけさ」というお店がありました。赤提灯がなければとても酒場とは思われぬ構えなのであります。きっと古くからやってきた店なんでしょうが建替えをされたんでしょう。古い家屋を維持するのは大変な苦労が伴うに違いありませんが、町の中でこの酒場自体も居住まいが悪そうです。地元の常連さん相手に最低限の実入りで十分といった女将さんの割り切りは、一見のわれわれに対しても変わることがなく、肴としてお願いしたお新香は大変な量でこれだけでも持て余すほど。しかもおけさという店名が想像させる北国らしくやたらと塩っ辛いのですが、それもまた店の個性です。木場らしさなど微塵もない酒場で北国の酒場にいるような気分になりました。いつしか常連たちがカウンター背面の大きなテープルに集い出しました。よそ者はそろそろ引き上げることにしましょう。
2015/08/04
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Kさんはそらそろお疲れの様子なので、ここでひとます解散することにします。新今宮の駅前で別れを告げ、ぼくは再び新世界に引き返すことにしました。すると早速立ち呑み屋に行き当たりました。 「のんべえ」というお店で、新世界の呑み屋がどこかしら観光客目当てのこずるい商売をしているという印象を晒していたのに対してーこういう感覚ってアウェー感ってうのでしょうか、多かれ少なかれどこででも感じるものではありますが、大阪ではとりわけその印象が強く感じられますー、この立ち呑みはいかにも地元に根付いていて、親し気な印象の陰によそよそしさを隠そうともしない人気の串揚げ店とは違ってよそ者であっても一人の客として受け入れてくれるような気がします。実際店に入るとまさに大阪の夫婦モンというお二方が迎えてくれるのですが、押し付けがましくない程度に語りかけてくれて非常に気が楽なのです。知らぬわけではないとはいえ、ここは東京嫌いをあからさまにする大阪でありますし、少しは気張って来ているのでありますが、一挙にそのこわばりも解消されリラックスした気分になりました。でっかいジャガイモの入ったカレーを肴に愉快に杯を重ねるのでした。 またもや新世界に引き返すと、すぐに「やまと屋 2号店」があります。「やまと屋」は、この界隈に何店舗かあるようですが、ここがもっとも雰囲気がいいと聞いていたので、機会があれば入ってみようと思っていたのでした。もっとも周辺の店はぼちぼち店を閉め始めていることもあり、チェーン店ばかりが目立ち始めてきました。こちらも客は大分履け始めていて、空席の目立つカウンターに通されました。これが都内にあればなかなか枯れていいムードであるなどと言ってみたりしたくもなる程度に良い雰囲気ではあります。大阪は食い倒れの町と言いますが、値段という点においてはむしろ東京に部があるようです。いや、肴の値段は大阪が圧倒するようです。都内だと無体なほどに法外な値段を取る鱧やら湯豆腐、きずしなんかは嬉しくてついつい頼んでしまいます。そんなことをつらつら思いつつ、ぼくにはいささか賑やかに過ぎる新世界にあってはゆったりとした気分になれる店を改めて悪くないなと思い直してみたりするのです。
2015/08/03
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大阪での宿泊は値段を再優先して萩ノ茶屋界隈ー所謂釜ヶ崎ですね、言わずとしれた日本三大ドヤ街のひとつで、事実上山谷が外国人観光客が優勢となってからは寿町とここが往時の面影を残していると思われ、二大ドヤ街と言ったほうが良いかもしれませんーにある一泊1,500円のホテルでした。結論から言うと簡易シャワーやトイレにやや難があるものの総じて綺麗で危なくもなんともないので、今後の大阪滞在には積極活用しようと思いました。一応責任は負えませんのでそこは自己責任でご利用をご検討ください。 さて、翌朝5時過ぎには喉の異様な乾きで目覚めてしまい、のんびり身支度しましたが、ダラダラしているほどの時間は残されていません。同行するKさんも既に出発の準備が整っているようです。この日は別行動です。Kさんは神戸観光、ぼくは大阪の喫茶と酒場を巡るつもりです。それじゃあ、飛田の方を通り抜けて天王寺に向かいそこで夕方の新幹線までは自由行動とすることにしました。 飛田の商店街を歩いているとあるはあるは喫茶店が次から次へと姿を表します。この商店街にはかつて飛田東映という劇場に映画を見に行ったことがあります。普段は気の強さと怖いもの知らずを自ら標榜していたような女性でありましたが、やさぐれた日雇いのオヤジたちの険し意視線に終始怯えて映画にも身が入らないことが映画館の暗がりからも見て取れて滑稽だったことを今でもありありと思い出せます。そんな劇場からも程近い所にかほどに多くの喫茶店があったとは。「音楽喫茶 ニュープリンス」が界隈ではオオバコのようなので朝食がてら入ることにしました。店内に入ると造りが和歌山のあの「ヒスイ」にそっくりなことに驚かされます。奥深く伸びる客席と並行に半地下構造の同じテーブル配置の空間が広がります。ただ違っているのがそのゴージャスでありながらもどこかしら愛嬌のある「ヒスイ」にはあったセンスであり、こちらは不思議な位に味気ない大学の学食のような素っ気なさでそこら辺に独特の魅力を感じなくもないのですがやはりぐっと落ちるのは否めません。 飛田遊郭を通り抜け、天王寺駅前でK氏と別れると一人向かうは「純喫茶 スワン 阿倍野店」でした。立派なビルがまるごとこの喫茶店のようで、単調な景色の一階は避け二階に上ったもののやはりさほど愉快な何かがあるわけでもなく、まあ使い勝手はいいのでしょうが純喫茶好きを喜ばすものといえばせいぜいが二階へと上がる螺旋階段くらいのもの。ストローを始めとした店オリジナルのグッズが辛うじて心を和ませてくれるのでした。 天王寺からひたすら南に向かって歩きます。ぐるりぐるりと寄り道しつつ歩いているうちに阪堺電気軌道上町線の松虫停留所に到着していました。この停留所には聞き覚えがあります。この界隈には多くの喫茶店があるはずです。急激に疲れを感じたのでこの界隈の喫茶店をハシゴして休息を取ることにしましょう。何軒かの喫茶店が閉店していたり改装中だったりして、期待外れだなんて思っていたところに「喫茶 軽食 ゆうなぎ」が姿を表したものだからーって停留所のすぐそばにあったのだけどー、これは興奮しない方がどうかしているというものです。ゆうなぎという店名がそのまま店の印象を的確に表しているようで、夕闇の深い静寂にくるまれたかのような感覚に見舞われます。日の沈むまでのほんのわずかな無風状態を永遠にそのままの状態で留めておきたいという店主の欲望は、純喫茶という独特の文化が獲得してきた幾多あるイコンから最良のものをまとわせることで、不気味さすら感じさせ達成されています。ジョゼフ・ロージー監督による「夕なぎ」が立ち直れなくなりそうなほどの怪しさを湛えていたのと似た、危なさを感じました。ここにあまり深く囚われてしまうと立ち上がれなくなるやもしれぬ、そんな不安に駆られ逃げるように店を出たのでした。
2015/08/02
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西調布にやって来ました。京王線の沿線であるこの駅で下車するのは初めてのこと。初めての町には興奮せざるを得ないはずなのに、どうしても良い印象がほとんどない調布のお隣ということもあって少しも気分は高まりません。でも酒場放浪記に登場した酒場があるというのでは一応行っておこうかと重い腰を上げたのでした。この番組の意味っていうのは良かれ悪しかれ、知らない町に人を走らせる役割をほんの少しだけ担っているところにあるのではないでしょうか。ともかくそうでもなければ来ることもまずなかったであろう西調布に降り立ったのでした。 駅を出ると素敵な呑み屋街がいきなりあって思ったより退屈しないで済みそうだぞとほくそ笑むのも束の間、あっという間もなく呑み屋街は途切れてしまいました。ここぞという酒場も見当たりません。まあ、この日目指すのは駅の向こう側です。喫茶店というよりはスナックそのものといった風の「ピエロ」を越え、踏切を渡ると程なくして目指す「金八」が見えてきました。三日月状の奇妙な形状の長屋の弧の外側にその店はありましたがなんとも無情なことにお休みのようです。こうした経験は嫌なくらいに積んでいるはずですが何度味わっても慣れることがありません。已む無く別な店を探すことにしました。 探すまでもなく良さそうなお店に行き当たることができました。「どびん」という店名を持つなかなかどうして味のあるお店です。長屋の弧の内側、その先っちょにあります。こういう造りなので店内も狭くてちょっと窮屈な席の配置となっています。でもそこはかとなく実力を漂わせるのがその品数の豊富なことと工夫が凝らされているのが一目瞭然なカウンターに置かれた大皿です。実際何気ない一品にも一手間かけていることが食に疎いぼくにも感じ取れるほどの品でした。先客が父娘―一人暮らしをする娘を出張に託けて様子を見に来た子離れできない父とそんな父を疎ましく思いながらも美味しい料理をご馳走してもらえるとなれば如才なく振る舞える今時の娘といった様子―と呑みよりも食の方に重点を置いていそうな方たちであったことも宜なるかな。次に西調布に来るのはいつのことになるのやらでも次はじっくり腰を据えて呑みたい酒場でした。
2015/08/01
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