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自分の部屋で、トールは大きなため息をついた。見るともなく視線を投げた庭先に、小さな白い花がたくさん咲いている。なぜ緑の少女があれほど羽を怖がるのか、彼は知りすぎるほど知っていた。今思えば、あの偶然の重なりは必然だったのかもしれない。けれども当時、彼はずいぶんと自分を責めた。彼女を想う気持ちと一緒に、その辛さは今も残る。自分のことに関しては、後悔も痛みもなにもない。本体も今まで気づかなかったくらいだ。残っているのは、彼女が抱えるトラウマに関しての痛み、それだけだった。明るい庭で、白い花がさわさわと風に揺れる。深い想いと混ざりあった辛さは手放すのが難しいが、それでももういいんだよ、と言われている気がした。窓辺によりかかって銀髪を風になぶらせ、ぼんやりと可憐な花をながめながら記憶をたどる。それはもうずっと昔、彼女がまだルシオラと呼ばれているころの物語だった。ばりっ、と背中で音がした。折り取った自分の白い大きな翼を、大きな布を広げた床の上にばさりと落とす。傷口からぽたぽたと血が流れたが、痛みはなかった。お前まで羽を折らなくていいのだぞ。枚数に上下はないが、今の仕事ができなくなるぞ。お前が今までしてきたことが続けられなくなるのだぞ。そういった周囲の声を、彼はすべて聞き流した。かまわない。私は彼女の守護天使でさえあれればいい。道具も方法も知っていた。元々霊的医療の専門家であり、彼女が赤子だったときに、羽を減らしたのは彼だったから。波動を落とし、やがて戦士になるため。めぐりくる彼女の運命に備えるため。それを選んだのは生まれる前の彼女自身であると知ってはいても、彼の心は痛んだ。知りたいと望んだことを体感するまでに、彼女はいったいどれほど傷つくのだろう?また小さな羽を折った自分が、そのままで生きていけようはずもない。すべて承知の上で選んだことだ。闇の底を知ろうと進む彼女についてゆくならば、必ずどこかの時点で、彼自身の波動も同じように調整しておかねばならないのだから。メスで切り込みを入れ、折りとる。彼女のオペの時のように、すべてきれいにメスで切り取るには届かないし、同じ丁寧さなど持つはずもない。機械的に手を動かすと、ばりっ、また音がした。今日ここの時間と場所を用意するためには、細心の注意を払った。ツインであるがゆえの共振をぎりぎりまで避けるために、痛覚は遮断してある。彼女の手術をした罪を思えば、羽を失う心の痛みなどは無視することができた。けれど折り取った羽をすぐに光に還元してしまうこともまた、できなかった。彼女について戦場へゆくために波動を落としたとしても、世界が変わるわけではない。それでもその翼は、かつての同胞たちとの思い出の象徴のような気がして、消してしまう気になれずにいた。未来へはもってゆけない。過去は思い切ることに決めた。やり場のない思いそのままを形にしたような折れた翼は、どこへもゆくあてがない。大切だけれど持ち運べない想いの結晶は、今は床の上に、そして落ち着いたら過去と未来のはざまに、そっと包んで置いておくほかはなさそうだった。己の意思で決めたことに後悔はない。愛を表現するためだけに自分の翼を差し出せるか、と問われれば、できなくはないと思う。しかし今回はそれだけではなかった。ただの憐憫や自己満足で自分を傷つけているわけではなく、もっとも生きたい未来を選んだ結果だ。たとえ地獄の底であっても、できるかぎり近くに。それが彼の望み。小さなルシオラは、念には念をいれて今日はフレデリカに連れ出してもらっている。だが古い友人にも、彼は理由を告げることができなかった。彼女が悲しんでくれることがわかっていたから。自分は悪魔かもしれない。三枚目の羽を自ら折りながら彼は考えた。大切な、なにより大切な彼の宝石。けれどこれから彼女が背負う大きな苦しみのほぼすべてに、彼は手を下すことになるだろう。それでもこの役目を、他の誰かに渡すことはできなかった。彼女のためなら、彼女が経験することを望むならば、必要な悪魔になることも厭いはしない。しかしルースにとって、自分は長くトラウマの象徴になるのかもしれない。そう思うと、唇の端にかすかな自嘲がひらめいた。彼は四枚めの羽に手をかけた。元々背にあったのは六枚。上の四枚はもう必要がない。本当は、彼女が数を覚える前に、自分と彼の羽に気がつく前に折りとってしまいたかった。それができなかったのは、どうしても代わりのいない仕事を任されてしまったからだ。彼女の前では極力羽を隠して生活してきたが、いくらまだ小さいとはいえ、そろそろ疑問が出てきてもおかしくないころだった。「たーいま!」舌っ足らずな幼い声とともにドアが開け放たれたのは、四枚めの羽を折りとった、まさにその瞬間だった。彼に抱きつこうと、部屋に駆け込んできた小さな笑顔が凍りつく。目の前に落ちる、血にまみれた白い羽。大好きな彼の背を流れる何本もの赤い線。銀髪に半ば隠れた、えぐれた生え際。ぞおっと悪寒が背を駆けのぼる。こわい。いたい。こわい。いたい。はねをさわってるのはだれ。しろいはね。なのにあかい。ぽたぽた。なぜとれているの。こわいよ。こわい。いなくなっちゃうの?おいていっちゃうの?せなかいたいいたいいたい……痛み。恐怖。……死。急に世界がぐるぐる回って暗転する。甲高い絶叫が部屋に響いた。ずきんと彼の背が痛む。「ルース!」小さな身体に駆け寄って抱きしめながら、彼の脳裏に疑問がわきおこった。扉には何重にも封印をかけておいた。なぜだ? なぜ開いたのだ。それもなぜこんなに早く帰ってきた?開け放たれた扉の向こうに、口を押さえて小さく悲鳴をあげるフレデリカの姿が見える。しかし彼女では、彼の全力をかけた結界は破れないはずだった。そしてこの痛み。神経網を確認すると、痛覚はまだ間違いなく遮断されていた。とするとこれは彼ではなく、ルシオラの痛みだ。彼女の手術時には、慎重な準備のもとに麻酔をかけていた。だから痛みそのものは知らないはずだ。だが、今ここで目にしてしまった光景と、隠していた彼の心の痛み、傷口を見てあれでは痛いはず、という感覚。それらをすべて一度に受け取ってしまった結果、感じていなかったはずの痛みを身体が思い出してしまったということだろうか。そして、彼の傷を目の当たりにしてしまったことによるショック。今は親代わりでもある彼が死んでしまうかも、ひとり残されてしまうかも……息が詰まるような不安と恐怖を感じてしまっただろう。ずきん、ずきん、と走る痛みは、背だけではない。胸が苦しい。意識を失った小さな身体を抱きしめる。もみじのような手が、可愛いらしい素朴な白い花を握っていた。……ああ。彼女は、これを彼に届けるために家路を急いだのだ。彼は天を仰いだ。この痛みも、彼女が背負わなければならないというのだろうか。私は私の望みを叶えているだけで、彼女には何の責任もない。だからこそ心の傷にならないようにと最大限の心くばりをしてきたのに、それすらも許されないというのだろうか。絶対に置いていきはしない。その約束を伝える前に、巨大な爪痕がやわらかな心に残ってしまった。いったい彼女は、いくつの傷を抱えてゆけばいいのだ。閉じられたエメラルドの瞳を見下ろす彼の目から、ひとすじの涙が柔らかな白い頬に落ちた。ひとりにはしないよ。いつだってそばにいる。不安があなたの心に根づいてしまったなら、その根が枯れるまでずっと。……あらためてここに誓うよ。それは、彼の最後の涙だった。*************>>【銀の月のものがたり】 目次1 ・ 目次 2>>登場人物紹介(随時更新)「羽ばたいて」前話が書きあがったのはだいぶ前ですが、 これが書きあがったのは、ついさっきです(笑) このタイミングでなければ書くことはできなかったんでしょう。 骨格が見えて書いたのは土曜日ですが、それから書き足し書き足し、 気づけば倍近い長さになりました。 ようやく全部出し切れたかな?関連するじぇいど♪さんの話もぜひご一緒に読んでみてくださいね^^「羽はね恐怖症」(1~6話まであります)http://plaza.rakuten.co.jp/californiajade/diary/200906280000/コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→6/30 ミカエルヒーリング
2009年06月30日
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------【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/------◆◆登場人物紹介(随時更新)◆◆ http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904210000/>>目次1http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906280000/-------- 51【贈り物】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906010000/52【木漏れ日の下で】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906030000/53【教官は金の歌姫】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906060000/54【癒しの手】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906140000/55【結界】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906150000/56【喧嘩】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906160000/57【空中散歩】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906260000/58【羽ばたいて 1】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906270000/59【羽ばたいて 2】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906300000/60【羽ばたいて 3】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907020000/61【良き日】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907060000/62【おかえり】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907080000/63【つれづれと空ぞ見らるる】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907090000/64【祝いの花束 1】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907120000/65【祝いの花束 2】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907130000/66【就任】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907140000/67【はじめてのおしごと】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907150000/68【はじめてのおつかい】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907160000/69【遊撃隊長】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907180000/70【モルト・バーにて】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907200000/71【技術主任】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907210000/72【言葉にならない】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907220000/73【赤ちゃんドラゴン】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907230000/74【ヒカリの子】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907250000/75【思い出話】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907260000/76【ジャカランダの花の下】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907270000/77【夏至祭り】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907280000/78【足りないビーズ】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907300000/79【強制休暇】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200907310000/80【落とした翼】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908020000/81【剣術指南】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908030000/82【ぶらんこゆれる】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908040000/83【息抜き】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908050000/84【はじめの一歩】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908060000/85【星合の夜に 1】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908110000/86【星合の夜に 2】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908120000/87【星の隙間】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908130000/88【始動】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908200000/89【おむかえ】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908240000/90【訪問客】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200908270000/91【エル・フィンの多忙な一日】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200909010000/92【両腕】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200909040000/93【フェンリル、還る 1】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200909090000/94【フェンリル、還る 2】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200909140000/95【フェンリル、還る 3】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200909190000/96【フェンリル、還る 4】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200909230000/97【フェンリル、還る 5】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200909270000/98【破壊工作】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200910060000/99【式典準備】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200910190000/100【日蝕式典 ~ 歌 ~】http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200910260000/-------- >>目次3http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200910150001/拍手がわりに→webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→
2009年06月28日
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外伝とか出てきて、ややこしくなってきたので目次を作ってみました♪けっこう溜まってまして、今(2009年6月28日)までの全話分を載せようとしたらあふれちゃった^^;【銀の月のものがたり】 道案内 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200911230000/------◆◆登場人物紹介(随時更新)◆◆ http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904210000/-------- 0【ジャンヌ・ラ・ピュセル】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200809010000/1【@先生?】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200902140000/2【魔法を使うときには】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200902210000/3【戦闘訓練】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200902240000/4【剣】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200902250000/5【目覚め 1】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903010000/6【目覚め 2】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903030000/7【理由 1】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903040000/8【理由 2】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903060000/9【理由 3】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903060001/10【お茶の時間】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903260001/11【お茶の時間 2】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903270000/12【授業~神聖幾何学】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903300000/13【弟子】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200903310000/14【ジョゼの宝物】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904010000/15【しあわせのいろ】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904030000/16【しあわせのいろ 2】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904040000/17【昏き闇の淵へ】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904060000/18【彼方のかけら】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904070000/19【彼方のかけら 2】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904080000/20【彼方のかけら 3】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904090000/21【彼方のかけら 4】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904120000/22【彼方のかけら 5】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904130000/23【光の花園】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904140000/24【仕込み】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904150000/25【黒い羽の少年】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904160001/26【哨戒空域】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904180000/27【金の髪の少年】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904200000/28【消えない十字架】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904220000/29【親愛なる君へ】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904240000/30【蛍 1】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904250001/31【蛍 2】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904260000/32【蛍 3】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904270000/33【蛍 4】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200904280000/34【静かな海】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905020000/35【間なく散るとも】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905030000/36【In The Bar】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905040000/37【グラディウス 1】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905050000/38【グラディウス 2】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905060000/39【グラディウス 3】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905070000/40【天使の子 -残照-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905090000/41【天使の子 -前線-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905100000/42【天使の子 -闇-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905110000/43【天使の子 -環-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905120000/44【天使の子 -記憶-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905130000/45【天使の子 -論文-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905150000/46【天使の子 -世界樹-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905170000/47【天使の子 -来訪-】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905180000/48【カイルとアエル ~ call ~】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905190000/49【カイルとアエル ~ fuse ~】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905250000/50【カイルとアエル ~ fly ~】 http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905280000/>>目次 2http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200906280001/-------- ☆グラディウスと天使を統合後のトールのイメージ画像w http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/diary/200905200000/拍手がわりに→
2009年06月28日
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トールに呼ばれてルキアを訪れたフレデリカは、扉を開けて愕然とした。 パニックを起こして半狂乱になった緑の少女が目の前にいる。フレデリカのことすらわかっていないようだ。 (ちょっ・・・なによこれ。アンタいったい何したのよ!?) 扉の陰にいるトールに、怒りの心話を叩きつける。 (羽がうまく出なくて、生え際の確認を。物理的に癒着していたら大変だから) (それだけ?) (それだけ。・・・・・・申し訳ない) トールの声音に嘘はなく、辛そうなひびきがあった。 (わかった。・・・・・・ちょっと出てて) 長身が静かに部屋を出ていくと、フレデリカは目を閉じて一度息を吸い、それから振り向いて少女に優しい微笑をむけた。 「カワイコちゃん、どうしたの? 大丈夫よ」 ゆっくりと少しずつ近づき、細い肩に触れる。少女はびくりと身体を震わせた。言葉も話せないような状態で、見開いた大きな目に涙と怯えがあふれている。 「大丈夫・・・・・・だいじょうぶよ」 子守唄のように唱えながら、フレデリカは少女を抱き寄せた。華奢な体はまだ硬いものの、嫌がりはしない。 部屋は薔薇の花のように幾重もの結界でつつまれていたが、今は少し広すぎ、明るすぎるようにフレデリカには感じられた。 そこで自分の力で小さなテントのようなものを作り出し、その中でベッドに座って膝に少女を抱く。 温かい手で赤茶色の髪をやさしく撫でながら、しばらくよしよし、と少女を慰めていた。 少女の震えがおさまったところで、そっと抱きかかえるように、背中に出たままの羽の手入れをはじめる。 「嫌だけど、これはあなたが乗り越えないといけないことなの。誰も代わることができないから、慣れるしかないのよ」 呆然としたままの少女に、ひたすら歌を歌うかのようにやさしく話しかけた。 少女がどれだけ羽を怖がっていたか、フレデリカは知っている。 本当は、少女に嫌なものを我慢させたりするのは不本意だった。だがこればかりはそうもいかないため、熱を出したわが子を心配して看るように、 ただ叱咤激励するしかないのが辛かった。 (かわいそうに。代わってあげられればいいのに) ずっと泣いている少女に、「もういいの。やめましょう」と言えたらどんなにいいか。 フレデリカ自身も涙をこらえて、ただ愛娘を抱いていた。 やがて少女が泣きつかれて眠ってしまうと、フレデリカはそっと彼女をベッドに横たえ、あたたかな布団をかけて部屋を後にした。 音を立てないよう、細心の注意を払って扉を閉めると、その脇に銀髪の男が壁にもたれて立っていた。じっとここで待っていたのだろう。暗い廊下、窓からの月明かりに照らされた銀髪の中に、憔悴の色が見てとれた。 (あなたにはかなわないな) (役割分担が違うだけよ) きつく言い捨てる。あの、もうやめていいのよと言いたいけれど言えない辛さ、愛する子に嫌なことを強いなければならない辛さを、彼も感じていたに違いない。 けれども、いやだからこそ、フレデリカの腹には怒りが燃えた。 (次はルースがあんな風になる前に私を呼びなさい。 あんたは欲張りすぎ。ルースのケアをすべて自分でやろうとする気持ちは愛情ゆえなのはわかるわよ。でもね、なんでもかんでもっていうのは、無理よ。 ・・・・・・だからあんたは坊やなのよ) 最後のひとことは聞かせるつもりがあったのかわからないが、トールの耳には痛烈に響いた。 (・・・・・・申し訳ない) 頭を下げることしかできない。言い訳はしたくなかった。 余裕がなくなり、ぎりぎりになればなるほど、他人の手を忘れてしまう。 それが自分の悪弊であることに、彼は気づいていた。 余裕があれば頼れる、頼ることを思い出すことができるのだが。 頼りたくないのではなく、ほんとうに気がつかなくなる。視野が狭くなってしまうのだろう。 それは間違っていると、今ならば言うことができるけれども。 フレデリカが去った後、しばらく彼は彫像のように闇の中に立ち尽くしていた。 翌日、少女はマリアとルキアの庭にいた。明るい陽光が木々の緑を際立たせる。 マリアは少女にいろいろと優しく話しかけていた。彼女はトールの分身だが、そういえば、二人だけできちんと話をするのは初めてかもしれない。 「羽を見せてごらんなさい」 柔らかな声に言われて、少女はわりと素直に自分の羽を引きだした。けれどもまだとても怖い。 少女は緑の目をつぶって必死に我慢しつつ、ほんの少しだけ自分の羽を正視した。 今までは寝ている間にラファエルが基本の手入れだけしてくれていたとかで、機能的には損傷はなさそうだが、ひどく汚れてぼろぼろだ。 マリアが水とシャンプーのようなものを持ってきて洗ってくれたが、とても完全にきれいにはならない。 「でもだいぶ綺麗になったわ。よかったら、毎日ここにいる間だけでもいらっしゃいね。できたらしまわないで、そのままいてね」 マリアの言葉に、少女はおずおずとうなずいた。天使系の羽はドラゴンと比べて異様に大きいと聞いてはいたが、自分の背に大きな翼があるなんて、ものすごく違和感がある。 「さあ、頑張ったごほうびに美味しいものを作ってあげるわ。なにを食べたい?」 「・・・・・・フルーツが入ったサラダたべたい」 「いいわ。ちょうど採りたての野菜があるのよ。お見舞いのお客様も来ているの、通しましょうね」 マリアは微笑んだ。 その笑顔はやっぱりトールと似ているな、と少女は思った。 銀髪の女性に呼ばれて庭にやってきたのは、ジョゼとサバトだった。彼らは先日のアースデーにここを出て、クリロズの居室に戻っている。緑の少女が回復してきたらお見舞いに来ると約束していたのだった。 「こんにちは・・・・・・緑さん、天使だったの?」 「トール先生だって羽があるんだから、おかしくないだろ。それよりほら、あれ出せよ」 ぽかんとするジョゼを、サバトが肘でつつく。彼は少女が微妙な表情をしていることに気づいているようだった。 マリアが食事を作りに席を外すと、ジョゼがおずおずとリボンをかけた平らな白い包みを差し出した。 「あの・・・・・・これ、師匠の真似をして作ってみたんですけど、アップルパイ」 「アップルパイ? わあ、ありがとう」 一瞬羽のことを忘れて、彼女は包みを受け取り、リボンをほどいて中を覗きこんだ。とたんに噴きだす。 そのアップルパイは、きれいな緑の色をしていた。 「あの、その、頑張ったんですけど、緑さんにあげようと思ったら緑色になっちゃって・・・・・・」 「一応、クリロズのトール先生に見てもらって試食してもらいました。それでまた作り直しましたが、やっぱり緑色にしかならなくて」 しどろもどろのジョゼの隣で、サバトが言葉を添える。 クリロズのトールが笑いながら試食しているさまが目に浮かぶようだ。味はよかったよ、と言ってくれたので持ってきたということだった。 「さあ、お茶にしましょ」 そこへマリアが、美味しそうなフルーツたっぷりのサラダや皿をのせた大きな盆を持って帰ってきた。白い指がテーブルの上を踊ると、陶製のティーセットが出現する。マリアはあざやかな手並みで紅茶を入れた。彼女は料理などの手仕事をするのが好きなのだ。 テーブルに出された緑色のアップルパイを、もちろん彼女はトールごしに知っていたのだろう。驚きもせずに、「元気な色ね」と笑った。 アップルパイを切り分ける。少女はじーっとその断面(断面も素敵に緑色だ)を見て、おもむろにフォークで一口分取ると口に入れた。 「ん、おいしい。ほんと味はいいよ。ありがと、ジョゼ、サバト」 少女の声に、二人の少年が安堵のため息をもらす。その様子をにこにことマリアが見ていた。 しばらくジョゼの機械の話やクリロズの話をして、二人は帰っていった。 *************>>【銀の月のものがたり】 目次1 ・ 目次 2>>登場人物紹介(随時更新)昨日本編再開してから、なんかいろんな方に、「次からの緑ちゃんの暴れっぷりが楽しみです!」って言われたんですけど・・・ごめん、あんまり暴れてないかも。むしろシリアスかも^^;ちなみにトールとフレデリカさん、ものすご~く古い親しい知り合いのようで。ルシオラ誕生以前?にも会ってそうな雰囲気です。コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→6/30 ミカエルヒーリング
2009年06月27日
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「た・い・く・つ。あーきーた!」 ベッドの上で少女が叫ぶ。さもありなんとトールは苦笑した。 ステーションでの手術後にルキアに来てもう一週間以上。体力も徐々に回復し、そろそろ飽きてきても不思議はない。 ルキア内ならば危険はないから、散歩にでも連れ出そうかと彼は思った。 ちょうどデセルが外であることを練習中だ。 「じゃあ、外に行くかい?」 トールの問いに、少女は大きくうなずいた。しかしトールがバルコニーへの窓を大きく開け放ち、その背に真っ白な大きな翼をあらわすと、彼女の表情が固まった。 天使のエネルギーを多く持つ彼女だが、鳥も含めて羽が大の苦手なのだ。 もちろんトールはそれを知っている。けれどできればポータルを使わず、羽に慣れてほしいという理由もあったから、彼は穏やかな微笑を浮かべて手をさしだした。 「おいで。それとも、私でも怖い?」 少女は数瞬のあいだ逡巡し、ごくりと唾を飲み込んでぷるぷると首をふった。覚悟を決めた表情で銀髪の錬金術師に歩みよる。 「だいじょうぶ・・・・・・たぶん」 それでも恐る恐る、という感じで手を伸ばしてくる少女に笑って頭をなでる。華奢な体を腕に抱き、トールは軽く地を蹴った。純白の翼をはばたかせ、あっという間に上空に舞い上がる。 「どこへいくの?」 「空中散歩」 「なんだよそれ。ルキアの中じゃあ、外じゃないじゃん」 力強い腕の中で少女はふくれた。 「あなたはまだルキアからは出せないよ。回復しきってないからね。 それより、ほら。見てごらん」 ふくれっつらのままトールの視線を追って、少女はすっかり怒りを忘れてしまった。 そこには大きな灰色の翼を生やしたデセルが、ガーネット色をした大きなドラゴンと一緒に飛ぶ練習をしているところだったのだ。 「デセル!?」 少女の叫びに、空中のデセルは彼女のほうへ視線を走らせ、あやうくバランスを崩してドラゴンの大きな背に拾われた。 「サンキュー、サフィラ。・・・・・・こんにちは」 自分のドラゴンに礼を言い、二人を見て照れくさそうに笑う。 彼の周りにはトールの竜であるシルヴァンとユアン、それに小さなディアンもいた。ディアンは少女の本体の家から来た赤紫の鱗の幼竜で、先の二匹が年長であるためか、成長する気配なく子供のままで明るい波動をふりまいている。 「おまえ、天使だったのか?」 ぽかんと口を開けたまま少女は言った。いやでも、どうして? 問いに答えたのはトールだった。 「天使というより、古い過去世で有翼人種だったといったほうが正確かな。 彼もその過去世で痛覚遮断皮膜の実験をされていて・・・・・・このあいだその剥離手術をしたら出てきたんだ。術後すぐに出てきそうだったのが昨日生えたんだよ」 へえ、と少女は眼をぱちくりした。 霊的医療の専門家であった天使の過去世を統合してから、トールはずっと封印していたメスをふたたび執るようになった。 それは知っていたけれど、デセルもそんな実験をされていたとは。 はっとあることに気づいて、少女は自分を抱く人の顔を心配そうに見やった。その視線の意味をとらえて青灰色の瞳が微笑む。 (ちがうよ。過去世では私が施術したわけじゃない。ありがとう) 少女はほっと息をついた。もしそうならあまりにもひどすぎる、と思ったのだった。 (……同じ組織にはいたんだけれどね) 自嘲的なかすかな呟きは、少女には届かなかった。 彼らの横を、虹色に陽光を反射した大きなガーネットが風をおこしながら舞い上がっていく。 サフィラははるか上空に行って、そこからデセルが飛び降りた。まだ地上から自力で飛び上がるということができないらしい。 ペリドットの瞳を緊張させて、デセルは危なっかしいながらも滑空できるようになってきていた。 元が技術系であるだけに、翼の揚力やエネルギーの使い方の理論はすぐ頭に入ったようだ。あとは実践的にエネルギーをつかまえることに慣れさえすれば、すぐ上手に飛べるようになるだろう。 「そうそう、上手。・・・・・・もっと翼を丸める感じで。そう」 隣をゆったりと追いながらトールが言う。その腕の中から見ていた緑の少女であったが、だんだん我慢ができなくなってきた。 「あたしもやる!」と叫んで、トールの腕を振りほどく。 そして勢いつけてルキアの大空に飛び出した・・・・・・が、背中の羽は完全には出ず、滑空できずに下へと落ちてゆく。 「わああっ」 叫び声。ドラゴンたちも集まってきたが、即座にトールが翼をすぼめて真下に回り込み、無事に少女を抱きとめた。 そのままその空域で姿勢をまっすぐに立て直す。 やってきたデセルが、斜めになって横に滑りながら言った。 「・・・・・・ホバリングできないんですけど。羽動かしてないよね? それともハチドリみたいに、見えない速度で羽ばたいてます?」 その例えにトールは少しふき出した。 「羽ばたいてないよ。羽の前面に位置エネルギーを溜めるんだ。それでバランスをとる」 「・・・・・こうかな? お、なるほど」 コツをつかんだデセルが笑う。彼がそこから自力で上昇してゆくのを見やって、トールは一度戻るよ、と声をかけた。わかった、と上空から返事が降ってくる。 腕の中の少女がかすかに震えていることに、トールは気づいていた。 部屋に戻ると、彼は少女をそっとベッドに降ろした。 「背中を見せてごらん」 「やだっ」 羽の生え際を確認しようとすると、少女はぱっと逃げ出した。 「痛いことはしないよ。癒着していないか見るだけだ」 「でもやだっ」 エメラルド色の目には涙がたまっている。重ねてトールは言った。 「さっき咄嗟に羽が出なかっただろう。物理的に癒着しているのだとしたら大変だよ。見せてごらん、すぐだから」 「やだー!」 少女は泣き叫んでベッド脇の柱に抱きついた。なんでこんなに嫌なのか、ルシオラなのか他のトラウマなのか、彼女にもわからない。 ともかく羽全体、その中でも根元の可動部分については考えるのも嫌だった。 「いやぁだああああー!!」 トールは医療職らしく冷静に彼女の背を確認していたが、部屋には彼女の絶叫が響いていた。 *************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)お待たせしました! 本編再開ですっ。・・・とはいえ、またいつ外伝がぽっこり出てくるかわかりませんが^^;もーいつも勢いだけでつっぱしってますので・・・構成は上のどっか(にいるはず)のプロデューサーにお聞きくださいませ(爆さてさて、緑ちゃんに羽が生えた(いや元々あったんだけど)のは皆様ご存知のはず。それを出すまでも・・・やっぱり一騒ぎあったわけで 笑この後2話にわたりますが、どうぞお楽しみくださいませwコメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→6/30 ミカエルヒーリング
2009年06月26日
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ヒーリング天使シリーズ(笑)、次は知られてる度ナンバー1ではないか、と思われるミカエルですwなんでかっていうと、いつもの勢いなんですけどwここのところ、「黄色」が気になっててですね。オーラソーマで「黄色」が入ってて、天使のボトルってあるのかなあ・・・と思って調べてみたらミカエルしかなかったのです。で、今日はエンジェルリンクのスカイプ伝授をさせていただいたのですが、それもミカエルの伝授。昨日も他の方から、メールでミカエルの名前を聞いたし・・・というわけで、そんなにやる気に満ちてるならやっていただきましょうと♪ミカエルってノンジャッジメントとかいろいろありますが、せっかくなので恒例のおらそまボトル&説明を♪ちょっと長いのですけど、なんか大事なことが書いてありそうなので、最後のメッセージまで引用。メイン テーマ: 神との協力関係に入るために、個人の意志を神の意志に明け渡すアファメーション: 私は恐怖を手放し、より高い意志を信頼します。1本目に選ばれたときの性格的側面: このボトルを選んだ人は、小我(イエロー)が喜んで神の青写真(ブルー)の支配下で(に従って)生きなければならないことを理解しています。喜んで自分の 必要を根源の中にあるより大いなる善と平安の次に置こうとしています。生のプロセスを信頼し、あらゆる状況の中に良いことを探します。そのため、たいてい は、裁きと執着を超えて上ることができます。つまり、むしろ裁きや執着を「私はいる」という意識への明け渡しと交換するのです。自分と他の人たちに、人格的統合と光の中で生きるために必要な空間と時間と理解を与えることができます。スピリチュアルレベル: 私たちがここに見出すのは、この惑星とそこに住む存在たちを協力して世話する最初の二人のマスター、エルモリア(ペールブルー)とクツミ(ペールイエロー)です。それはこの惑星に降り注ぐそれぞれの光が、この惑星に到達するまでに結合するようにとの配慮のようです。この二つのエネルギーが結合してマスターヒラリオン(ペールグリーン)となって、私たちに自分の内なる統合の聖なるレベルの表現である「道、真理、光」を思い出させる強力な三位一体を創造するのです。これが天使界と色人(=人間)界の連結です。ですから、これが大天使のボトルであることは偶然ではありません。 精神的レベル: ここが私たちが、プロセス――つまり「御心がなされる」こと――を信頼するように深く進むことを促し求められる場所です。これを成し遂げるには、純粋な論理(イエロー)から離れ、自分自身をブルーが表現する慈悲の状態に連れていくこと、すなわち自分の真理を話すことが必要になります。私たちが喜んで、外側ではなく、真理に向かって内面を旅する限り、大天使ミカエルは理解と歓びを与えてくれます。 マイク・ブースのメッセージ: 1995年12月1日3:13pm誕生 大天使ミカエルは、私たちの低次の本性という不純物を切り落とす剣、足下に横たわるドラゴン、あるいは獣をやっつける剣とともに描かれる。彼のふるう剣とは、実は洞察と慈悲なのだ。私たちの低い意思と関連した高い意思。プラクティショナーは道を歩むにつれ、感覚に巻き込まれることが少なくなり、徐々にアイデンティティにしがみついている必要がないということを示している。私たちは、無意識の中の最も強烈な恐怖を手放す必要がある。私たちが最も強力な平和を見いだすためには恐怖を手放すことが必要であり、慈悲という観点から恐怖を見はじめたとき、それは起こる。そのとき、アイデンティティの感覚は弱まり、本来の自己の本質がより多く現れる。つまり強い感覚を通してアイデンティティを求めるのではなく、本質の表現としてのアイデンティティを求める。このボトルは、ふるとペールグリーンになる。それはハートからの応答を意味し、ヒラリオンの「道、真実、光」を思い起こさせる。「道」とは、自分自身であることを許すこと。「真実」とは、自分自身が統合されていくこと。それは、自分の恐怖を手放したときに起こる。強烈な喜びがわきあがる。大天使ミカエルは、私たちが自己本来の真実を見いだすことができたときに生まれる理解と喜びを表す。「恐怖を手放して、自己本来の真実を見出す」って、なんか響きます~応援ぽちっ♪→★リアルタイム日時 2009年6月30日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~7月1日(水) 20:30開始まで ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。
2009年06月25日
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その日は、なんとなく風呂にひとにぎりの塩、それにヴァラーとスプルースの精油を入れて入った。 たちのぼる清涼な松の香りが、黄緑色の瞳を思い起こさせる。 湯舟の中で、またグラディウスの身体と重なった。 けれど前回よりもずっと感触が柔らかい。彼も変わってきたのだな、と思いながらゆっくり腕をひろげ、深呼吸してみて驚いた。 重なる彼がほんのかすかに微笑んで、その頬にひとすじ涙が流れたから。 ---------- 身体を張って刹那の時を生きる戦士たちには、ときにさまざまなものが見えていた。 現場の流れに合わない突出・退却のタイミング。 均衡した勝敗のからくりに気づいた者も多かったが、 気づいて口にした者からいつのまにか消えていった。 彼らは戦士として生きた。 ゆえに多くの者は、狂って銃殺になるよりは、戦闘の中で死にたいと望んだ。 どうせ長く生きられないことはわかっているのだから。 作戦を選べない彼らにとって、作戦司令官が誰になるかは そのまま己の運命を分ける重大な関心事だった。 できるかぎり長く生かしてくれ、 かつ意味のある戦いの中で死に場所を与えてくれる、 そんな司令官が理想とされた。 「死神ゲーム」。 どの作戦司令官に当たるかを、戦士たちはこっそりとそう呼んでいた。 グラディウスはその会話に加わることはなかったが、それでも耳にはその話題が入ってくる。 彼はただそれを聞いていた。 風が戦場を吹き抜けてゆく。 たちこめる血と粉塵の匂いだけでなく、すべての運命を押し流して。 なぜここにいるのか なぜ戦っているのか なぜ生きているのか 広がるうつろな空洞に 考えるのをとうにやめてしまった魂たち 泥沼にはまった退却戦 鍔元まで血に染まった剣を振るい 盾はなく 「不吉な左手(短剣)」を持ち 敵の屍をのりこえて行く先にあるものは おそらくもう息のないであろう 倒れた同胞の身体 それでも その最後の言葉を届けてやろうかと思う しょせん剣を振るい 進むことしか自分にはできないのだから そのためだけに作られたのだから それは俺の生きた証 たどりついて裏返した身体はすでに事切れていた しかしその顔には かすかに満足げな微笑があった 祈りはしない 祈りなどというものは知らない けれど 生き抜いてお前のその顔を届けてやろう あの泣き虫に。 剣はいつか折れ 手に残ったのは細い短剣ひとつ どうにか離脱した戦線から 点々と血の跡が続く 強い風が戦場を吹き抜ける 雲が切れて 見えた満天の星 押し流された運命のむこうに何が残るのか ……まだ、誰も知らない。 --- あのゲームで当時一番人気があったのは…… デューク、お前だった。 隠語では「泣き虫」と呼ばれていた お前は不本意だろうが。 だが、ほとんど本能的に 俺達は知っていたんだ 身寄りのない、戦うしか能のない自分達のために 誰が涙を流してくれるのかを。 俺は お前になら背中を晒せた チームの奴らもそうだった だから誰ひとり、お前に殺されたと思っている奴はいない 望み通り激戦の果てに戦って死んだ その満足げな顔を俺は見た 遺言がわりに なんとかチーム全員を確認した 蒐集家の小部屋で、お前がそれを見逃していなければいいが。 ……ああ、奴らの伝言ばかりだが 自分のことは まだ言葉にできないんだ だが いつか また出会うことがあったなら 一緒に酒でも飲んでみないか。 <天使の分け前 1> http://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/7a52e80035b5155a810126b38281cd78 *************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)これはもう、ほとんど恋文みたいなもんですがw(前のもそうだけどwとはいっても色恋ではないんですよね~・・・なんでしょうね、命も魂もまるごと預けて、死地で背中合わせで戦える相手。 自分自身よりも強く信じられる相手。彼の作戦で命を落としたとしても、後悔はないと言い切れます。 <デューク - record 1 ->から読んでいただくとわかるのですが、彼の涙を最初に見たのは、こちらの本体さんなのです。私じゃありません(笑)本体よりよっぽど信頼されてますwwwww恋愛、ではもちろんないのですが、友情、というには濃く。触ったことといえば彼の右目をえぐったとき(爆)、話したことといえば仕事の話くらいなのに、こんな魂の結びつきもあるのですね。グラディウス、最初は感情もなにもない人形みたいな人だと思っていたのに、知れば知るほど、人間らしいかけら(かけらなんですが^^;)がでてきて親しみがわきました。辛いだけの過去世かと思っていたけれど、深く見ていってみると決してそうでもないものなのだなあ、と思っています。どんな人生でも、どこかに何かが隠れているのかもしれませんね。本編も止まっててすみませんが~降りてきたら書かずにいられないのです~~~~(爆)コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→
2009年06月24日
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母急病の件で、楽天のコメント、MIXIのコメント、ヒーリングご参加表明のコメントでご心配・お気遣いくださいました皆様、どうもありがとうございました!先ほど自宅に帰ってまいりました。おかげさまで、高熱はわりとすぐに下がりました。その後8度台7度台が続いて、ふるえなどが残って食欲もなかったので心配していたのですが、ホメオパシーやレイキ、アロマなどできることを併用していきじわじわと起きて食べられるようになりました^^回復にかかる時間を見て、やっぱりもう歳なのだなあ・・・としみじみ思いました。親ってなんだか、いつまでもせいぜい40代な気分でいたのですけど、自分がもう30越えてるんですもんねえ・・・。それでも今日には平熱に下がり、動けるようにもなってきたのは、何十人もの皆様に祈りをいただいた結果かと思います。ずいぶん心配もしましたが、おかげさまで親孝行ができてよい機会となりました。心より感謝申し上げます。本当に本当に、どうもありがとうございました!!今夜のザドキエルヒーリングは、お礼の気持ちもこめまして、いっそうの精一杯でやらせていただきたいと思います。まだまだ募集中ですので、どうぞふるってご参加ください♪メール等のお返事は、明日からさせていただきたいと思います。(あわてて出た+夫のひとり生活で、自宅は自宅でとんでもないカオスなので orz)大変申し訳ございませんが、できるだけ早く対応いたしますので、しばしお待ちくださいませ。それでは、本当にどうもありがとうございました!6/23 ザドキエルヒーリング
2009年06月23日
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インフルエンザではないらしいのですが、高熱が出て数日下がらないらしく。 一人で置いておけないということで、実家に看病に行ってきます。 回復すれば明日夜には戻るつもりですが、 メール等のお返事、エンジェルリンクのテキスト(そろそろこちらに着くと思うのですが)の準備と発送など すみませんが数日お時間をいただければと思います。 今夜クリロズの夏至音楽祭は、実家から参加いたします。 参加そのものには問題がないと思いますので、上でお会いしましたら、どうぞよろしくお願いいたします♪
2009年06月20日
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前回のゲリラヒーリングに名乗りをあげてくれたザドキエルさん。今回またまた強烈プッシュされたので、天使シリーズ(笑)次はザドキエルさんですー。単体でのヒーリングは初めて、ですね^^このお方、例によっていろいろ調べてみたのですがw名前は「神の正義」とか「神の高潔」とかいう意味なんだそうです。そして、慈愛、慈悲、記憶、許しの天使なんだとか。じぇいど♪さんのところでは、カチカチバーナーを作ったりちゅまちゃんのバイクを作ったり・・・実はけっこう技術系?? 笑恒例、オーラソーマボトルもありました。なんとなくシルバーバイオレットフレイムのイメージが強くて、紫?と思ってたのですがボトルはなんだか可愛らしい春っぽい色なんですね。メイン テーマ: 新しい方法による自由への一歩アファメーション: 私はレットゴーして、あるがままを受け容れます。1本目に選ばれたときの性格的側面: ハートの女性的リーダーシップに、新しい光が降り注いでいます。 直感を信頼し、自分自身の内なる女性性を発揮できるでしょう。無条件に自分自身を受け入れることができる人です。喜び、愛し、未来の平和を信頼する強さを持つでしょう。スピリチュアルレベル: 内なる地球(the Earth Star)とのつながりの中で、大いなる理解がわき起こります。幸福と平和と愛が、地上にそして途上に姿を現し始めます。 精神的レベル: 深い層にある混乱を意識的レベルで解放する可能性。 感情的レベル: 目覚めの旅における幸福、平安、喜び。 23日はちょうど新月。「レットゴーしてあるがままを受け入れます」ってぴったりかも♪応援ぽちっ♪→★リアルタイム日時 2009年6月23日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~6月24日(水) 20:30開始まで ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。
2009年06月19日
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風呂に入っていたら、突然身体がグラディウスと「重なった」。 目を閉じて髪を洗いながら、自分のものとして感じる厚い胸板、逞しい腕。違和感この上ない。 なぜだ、と考えて思いあたる。 彼の心は心の座にない。 おそらく肉体の記憶の中にあるのだろう。 相手の眼球にナイフを突き刺す。 水気のある軟らかい感触。 切っ先の位置。ミクロンの力加減。 グラディウスは頚椎にチップを埋めこまれていた。 使い捨て戦士の寿命が近いという印。 人など誰も同じ木偶だった。 皆皮を剥げば血と骨と内臓だ。 だが彼の名だけは覚えていた。 彼と組んだときの復命率、生存率は限りなく100に近かったから。 特A級のペアとして、長くトップに君臨した。 しかしそれもいつかは終わる。 戦士は捨てる前に、動作や行動のすべてをチップに記録された。 中枢神経系に埋めるチップは、コンマ数秒反射を遅らせる。 だから最盛期の戦士に使われることはなかった。 そのうえチップからは傍受者の無駄な喋りが漏れてくることさえあった。 「彼はここの反応がいいな。 「RG銃の狙いはこうつけると効率がいいか。記録しろ。 ああうるさい。 チップを埋めこまれた戦士はもうすぐ捨て時であり、神経をやられて遠からず廃人になり、銃殺されるのが常だった。 それが組織の処理の仕方だ。 彼の目を傷つけろと命じられた。 なんとはなしに日延べしていた。 理由はわからない。 彼も捨てられる時期にきたのだ。 うるさい。うるさい。 右の目を潰した。 眼球をえぐった。 奥の神経には毛筋ほどの傷もつけていない。 彼ならその空隙になにかを仕掛けられるだろう。 俺のことをおそらく最も理解していた者。 大胆な理論と繊細な工夫を得意とした者。 導く者よ 最も長く、俺を生へと導いた者よ。 俺はもうすぐ狂うだろう。 そして塵芥のように捨てられるだろう。 所詮肉の器ならば、それもまたいい。 だが多分 お前が、導く頭脳が狂っていくのは見たくなかったのだ。俺は。 デューク、導く者よ お前は自分の生を導けるか? そしていつか・・・ 俺は、言葉にできなかったもの 自分自身ですら見失っていたものを お前に伝えることができるだろうか? <デューク - storage 1 -> http://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/d194569b563519cce341fa01e00ad5df *************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)なんだか今日アップしとけー、って感じなので。なぜかわからないけどアップしておきます 笑コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→
2009年06月17日
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数日間は、それでも穏やかに過ぎていった。 トールが神殿にこもってやっていることは、いわば安定剤や鎮静剤の役目を果たしている。 実際的に動けるエネルギーが少なすぎたという事実もあるが、少女は眼がさめても部屋の中でじっとしていることが多かった。 ベッドの上にぼーっと座っていたり、寝転がっていたり。 そもそもの総エネルギー量が低いところへもってきて、今はその半分もないのだから仕方がないし、実際部屋から出ないようにもしているのだが、いつもの彼女からみたらまったく精彩がない。 自分でしたことではありながら、どうしていいかわからない部分もトールにはあった。 そもそも彼女の自由をこんなにも長い間束縛していたことなどないのだ。 彼にとっては、少女の自由はまず第一に優先するべきものだったのだから。 トールは少女のベッドに座って、さまざまな話をしたり求めに応じて色々なものを出して見せたりと相手をしていた。 部屋の中をたくさんの花やぬいぐるみが惑星軌道をつくって飛び回る。 療養中の白い寝巻きを着た少女はひどく甘えん坊になっていて、トールが部屋を出ようとすると「いっちゃだめー」とその袖をつかまえたりした。 けれども段々エネルギーが回復して60%近くになると、やはり退屈になってきたらしい。 部屋の中を歩き回って、まだ破ろうとはしないものの結界を確かめたりし始めた。 しかしびくともしないことを知ると、やってきたトールに向かっていった。 「結界にとじこめたりしないって前に自分で言ったじゃん!!」 エメラルドの瞳がきらめく。その輝きが戻ってきたことに安心しつつも、冷静な声でトールは答えた。 「それとこれとは話は別だよ。あなたが元気なら束縛なんかしないが、今はそのへんの次元のポケットで行き倒れになられたら困るからだめ」 頑として動じない態度に、反抗は無駄と思ったのだろうか。少女はふくれてベッドに座りこみ、以前もらったミニハープをひっぱり出した。 「じゃあ、これ弾いて」 もちろん、とトールは笑った。 トールは以前、少女にハープの弾き方を教えたことがある。その後二人で合奏してみたりして、時は平和に過ぎていった。 きっかけは、少女のエネルギーが70%になったときに現れた。 夜更け、ルキアの部屋で悪夢を見て彼女は目覚めた。目覚めたところでなぜかと周囲を観察する。 普通の人間ならば気づかなかったかもしれない。けれども彼女は、そういった結界などの「仕掛け物」を見破って破壊することに関しては得意中の得意だった。 閾値ぎりぎりで流されているその波動を彼女はとらえ、それと同時に猛烈に腹を立てた。 (トール! なんだこれ。お前の作ってる結界の仕組みがわかったぞ。 ありがとう、もういいだろ? さもなきゃこのままじゃ共倒れになる。ちがうか) まだ夜中であることも忘れてトールに心話を送る。 応答はすぐにあった。 (今あれを外せばあなたが持たない。オペがなくても総エネルギーが足りない状態だったのを忘れたかい? 何と言われようと、それだけは譲れない。 大丈夫、共倒れにもさせない。あなたは怒るだろうが、見切ってやっていることだから。 私としては、あなたが早く寝てくれたほうが効果が高いことを保障するよ。あまり夜更かしめさるな) (見切って? 逃げないから大丈夫だよ) (わかっているよ) トールはまったく譲らない。 わかっている、って? それじゃあデセルが可哀そうじゃないか。少女の本体は寝る前、デセルが見たという異界の記録を読んだばかりだった。 そして彼女が見た悪夢も、それによく似ていた。ルキア全体の波動が下がっているのじゃないか? デセルはそれで悪夢を見たんじゃないのか? なんでそこまでして、デセルに迷惑をかけてまであたしを留めておかなきゃならないんだ。 それを言うと、デセルが異界を見たのは過去の話で今じゃない、彼には影響を与えていないと返事がきた。 それでも納得できない。 怒りがふつふつと湧きあがる。 心話では埒があかないから、下の本体を起こしてむこうの本体にメールさせた。それにも邪魔が入る。だがむこうはむこうで喧嘩を始めたようだった。 やがて朝になりトールが部屋を訪れると、怒れる猛獣の姿がそこにあった。 「こんなとこ出てってやる!」 叫ぶなり衝撃波の攻撃を叩きつけてくる。とっさに左手でふせいで視線を走らせると、案の定彼女はポータルを作って脱出しようとしていた。 「ポータルはだめだ」 右手から魔法陣をはしらせ、出来たばかりのポータルを覆って無効化する。 「いやだっ!」 少女は噛み付くように叫んでもう一度攻撃をしかけた。ほとんど本気であり、ルキアの壁が衝撃に振動する。 銀髪の錬金術師が部屋内にそれを押さえようとする間に、むきになって同時にいくつもポータルを作り出した。いくつもの瑠璃の魔法陣がそれを追う。 「まだそんなに力を使っちゃいけない。倒れてしまう」 トールの声を少女は聞いていなかった。別に行きたいところがあるわけではなかったが、とにかく頭にきており、腹いせに出て行きたかった。 ドアのほうにはトールがいるから、窓を開けてポータルをつくり、飛び込んで逃げようとする。 そのとたん、透明なカプセルが彼女を包んだ。 カプセルはふわふわと浮いたまま移動し、ベッドの上に戻る。申し訳なさそうな、残念そうな表情をしたトールが彼女を見上げていた。 「ごめん。でもまだあなたにポータルは無理なんだ」 「なんだよこれ! 出せ! 出せったら!」 叫びながら、少女はどんどんと両手でカプセルの内壁を叩いた。 透明な壁は硬くてびくともしない。 トールはため息をついた。本体からも詰め寄られていたが、これ以上エネルギーを裂く余裕はない。喧嘩はこちらだけでじゅうぶんだ。 しかし本体もエネルギーの枯渇には気がついたらしい。自分の受信能力に問題があると思ったのか、そのうち何も言わなくなった。 少女は檻に入れられた猛獣よろしく騒いでいた。困った顔でそれを見ていたトールだったが、そっとカプセルに手をあて、何か言い置いて部屋を出ていく。 彼が何を言ったのか聞く気もなかったくせに、部屋を出て行かれるとますます腹が立つ彼女だった。 しばらくして彼女が落ち着くと、カプセルは氷が溶けるように消え、少女は解放された。だがムッとした気持ちはおさまらず、ベッドの上で拗ねながら、本体に顛末のメールを書かせる。 やがてトールの本体から返信がきた。 本体の目でそれを読んだ少女の背筋が凍った。 彼女が感知していたことは間違っていなかった。けれどそれをするために、トールが何をどうしていたのか、を初めて知ったのだった。 ひとりがルキアの神殿に行き、そこでもう一週間、寝もせず飲まず食わずでひたすら瞑想している。それもずっと光の滝で滝行をするような感じで、きつい精進潔斎をしていると。 結界の仕組みについて、おまえの精神力がもたなければ、ここにいる数人が共倒れになるだろう、と彼女はトールを責めていた。 もちろんそんなことは彼は知っていたのだ。少女の本体にも少なからず影響が出ることを承知の上で、だからこそ自らを苛むようなきつい潔斎をしているのだろうと、少女にも察しがついた。 (わかった。ごめんなさい) ひどく反省して、本体からのメールでも彼女は謝った。するとすぐに、 (どういたしまして。今日は早く寝るんだよ) とやさしいエネルギーの返事がくる。なんでひと言も怒らないんだよ、と少女は大きな目に涙をためて、歩いて森に行ってみた。 神殿とやらを探しにいこうと思ったのだ。 だけど場所はわからないし、どういう顔をして会ったらいいかもわからない。行っても彼の邪魔をしてしまうだけかもしれなかった。 結局彼女は神殿には行かず、森の木の根元に座ってしばらく泣いていた。 やわらかな月の光が、そんな少女をそっと照らしていた。 *************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)なんだか今日アップしとけー、って感じなので。なぜかわからないけどアップしておきます 笑コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→6/16 サンダルフォンヒーリング
2009年06月16日
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先日、緑の少女に対するオペがステーションの高度医療フロアで行われた。 かつての手術で操作された、内分泌系の復旧が目的だ。 簡単にエーテル体のどこかをいじる、というようなものではなく、直接脳に触れるような大手術だった。 トールははるか昔のルシオラに対する施術以来、ずっと封印していた手術のメスをふたたび執る決心をしたのだった。 あのときの記憶、ツインのコードを切断した感触などは、今もくっきりと掌に残る。けれどもそれを越えるときが近づいていたのだ。 繊細かつ緻密な準備と手順をかさねて、慎重にオペは進行した。直前、普段どおり無意識に緑の少女に意識を繋ごうとした彼女の本体に、トールは言ったものだ。 「どうしても様子が知りたければ止めないよ。 でもあなたは本当の医療現場ってものを知らないだろう。 ある意味戦争よりも残酷でグロテスクな部分があって、しかも、それを受けているのは、今は別の体として外から見るにしたって、自分、だ。 私はあなたにどの瞬間も幸せでいてほしいんであって、苦しみの部分はできれば感知などさせたくない。 昔のオペのときそのまま体感してしまったことがいまだにトラウマを残しているのでもわかるように、今の彼女の体に意識を残してわざわざそれを体感する、なんてことはする必要もないし、してほしくない。わかったかい?」 本体は素直に言うことをきき、その後ずっと繋ぐときは黒い女性のほうにしてくれていた。上でも下でもギターばかり弾いている、と笑いながら。 少女が回復するまでは、リアルでのオーラも薄くなってしまうはずだ。なるべく早く回復させることができればいいが、とトールは思った。 オペ自体は成功だった。 本体も今生でエネルギーワークの経験を積みつつあるし、腕は鈍ってはいなかった。 しかし転生時のミスコピーが元で原組織との癒着がひどく、施術は20時間を越えた。 途中でラファエルが代わろうかと言ってくれたのだが、トールは「これだけは自分にやらせてくれ」といって断ったのだ。 当然術後トールは疲れはててしばらく動けないような状態だったが、それはまあいい。 問題は彼女のほうだった。 少女は元々エネルギーが完全ではない。 ステーションのどこか、つまり道などでいきなり寝ていることが多いとよく言われているが、それはそういうことに無頓着なだけではなくて、総エネルギー量が足りないために起こる「電池切れ」現象でもあった。 世界樹を出てからの転生回数は約十回。天使の子としてうけた魂のダメージから、まだ完全に回復していないのだ。 当初は手術後二、三日で回復する予定であったのに、延長されたオペの負担が想像以上に大きく、術後すぐルキアに移してもう四日めだがまだベッドから動けないでいる。 エネルギー値を測ると40%弱だった。そろそろ目は覚めて、動きたくはなるが力は足りない、というくらい。 さてどうしようか、とトールは思った。少女は実は結界についてはステーションで免許を持っているくらいで、普通ならば破れない結界はない、ともいえる。 ルキア内を歩き回るくらいなら別に構わないのだが、問題はポータルの使用だった。 短距離ならばともかく、中~長距離になると、最悪の場合作って入ったはいいが出口に至る前にエネルギーが枯渇してぱたっと寝てしまい、次元ポケットに落ちてしまう、という可能性がある。 ポータルというのは、慣れると呼吸のように自然に使用できる。 緑の少女レベルであれば、ふと気持ちが向いたときにはもうそこに出来ている状態であろう。「どうしてるかな」と思ったときには、入る入らないは別にして、もうそこにポータルができてしまう。 距離感などわからなくても直接相手方の空間に繋いでしまうのであろうし、無邪気で好奇心のかたまりの彼女に、それに入るなとか距離に応じて出入りを加減しろとかいうのは、かえって難しいと思われた。 次元ポケットに落ちるということも、普段ならばどうということはない。 きちんと意識があって落ち着いていればすぐに出られるし、よくあることだ。 しかし次元ポケットの中で意識を失い、長時間が経過すると、作ったポータル自体が消えて、繋がれていた「道」が閉じてしまうことがある。 そうなるとその時空間は周囲から隔絶され、トールでも探し出せるかどうかわからない。否、なんとしても探し出して助けはするが、今度は彼女や彼自身の存在そのものが危うくなるかもしれなかった。 あげられる命の種はもうないのだ。 一応、「ポータルは使わないでくれ」と直接伝えてはみた。 彼女はうんと答えてはくれたが、無意識のうちでもできてしまうものを、あえて使わずにいるのは難しいだろう。 なにより入り口の構築ができるなら、自分はもう回復しているのじゃないか、と思えるはずだ。問題は中を通るとき、それも途中で意識がなくなってしまったとき、なのだが。 気が進まないが、部屋に閉じ込めるしかないだろうか。 これほど療養が長引くならば、デセルに相談して新しい結界を考えておくのだったな。 トールがそう思っていると、ちょうど本体のところにメールが来た。 緑の少女が入院加療中のため、黒の女性モードになっている。話の流れで次の週末のクリロズコンサートのことになり、「緑に機材を触られたくないから、ルキアに閉じ込めておいてほしい」とあった。 それはまあ黒の女性にとっては半分(以上かもしれないが)本気であろうし、なにより「上」からのそういうメッセージでもあろうと思われた。 トールは嘆息した。 少女をルキアに閉じ込める。 できないわけではない。 今の時点で方法がないわけではない。 けれどもそれは、できれば最後まで使いたくないと思っていた手段だった。 少女の自由を制限するということのみならず、彼がもっとも愛する彼女の魂の輝きを鈍らせるような、それは手段であったから。 彼が知っているうちで、最大に精神力を使う手段でもある。 使い果たせというのだな、と彼は思った。 エネルギーのキャパシティをあげる、一番手っ取り早い方法は「限界を超えるまで負荷をかける」ことだ。 三次元の筋肉と同じ、一度断裂させると、そこを強化して回復する。 おそらくまずは次の手術にそなえて、トール自身も下の本体も、もっとキャパシティを上げなければならないのだ。 どうりでステーションでの施術後、エネルギーの回復を待つ暇もなく他のオペが次々に入ってきたりするわけだった。 ララーの本体、そしてデセル。 ララーの本体にいたっては三度にわたっての手術であったし、デセルに関しては、彼が過去世に受けた傷の修復をおこなった。二人ともこれから大きな変化があるのではないかと思われるが、それはまた語ることもあろう。 上のスパルタとはよく言うものだ。 すでにエネルギーが半分近くになっている状態で、トールは立ちあがり、森に出て歩き出した。 あとはルキアに一人、クリロズに一人。これ以降、人格として三次元に一人置いておく余裕はない。トールはデセルに心話をつなぎ、これから作る結界について説明しながら森を歩いた。 視線の先に穏やかな白い光にきらめいた建物と塔が見える。 それは光に満ちたルキア内でももっとも清浄な場所、神殿だった。 *************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)なんかもう、めちゃくちゃな不定期連載になっててすみません^^;アップするタイミングも、どーも上で決められてるんじゃないかと思う今日このごろ。なるようになるさー精神でいきたいと思います。(まてさていよいよ入院編。じぇいど♪さんがどこかでおっしゃってた、緑ちゃんがトールに喧嘩をふっかける、のは次のお話ですwwwお楽しみに~ 笑コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→6/16 サンダルフォンヒーリング
2009年06月15日
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「デセル、入るよ」 ノックをして、トールは扉に手をかけた。とたんに、びりっと静電気のようなものが指先に走る。 鍵も厳重に増やしているようだ。 中を透視しようとすると、きちんと偏向フィルタがかかっている。トールはともかく、本体あたりはこれで手もなく騙されてしまうだろう。 彼の気持ちもわからないでもなかったが、このまま消耗戦に持ち込んでいていいはずがない。 トールはひとつ息を吸うと目を閉じた。かかっていたセキュリティとフィルタをすべて取り去り、扉を開ける。 デセルの細工は見事なものだが、そもそもがここはルキアである上に、今のデセルにはそれほどの余裕がない。おそらく当人もそれをわかってやっているのであろうが。 大股で暗い室内に入る。左の奥の壁に、濃い陰の中に溶けるようにして、背の高い人影がもたれていた。座ることも眠ることもできず、腕を組み、ただうねりを耐えて立ち尽くして。 うねりの残滓を読みとり、トールは絶句した。 表面に見えていた以上の壮絶な影。これは……このことに気づかなかったとは、なんという迂闊さであったろう。 彼の想いが大きければ大きいほど、傷は深いはずだった。 たとえ望んで事が起こったわけではなかったにしてもだ。 デセル、と呼びかけた声にあげた顔は憔悴していた。 申し訳なさをこらえて、銀髪の錬金術師は続けた。 「デセル、君は言ったじゃないか。一人でぎりぎりまで耐えることはするなと。君も同じだよ……手伝わせてくれ。ほんの少しでも」 窓にひかれたカーテンのわずかな隙間から月光がさしこみ、銀青の服を着た錬金術師の姿を浮かび上がらせる。 暗闇でも明るさを失わないペリドットの右目から、すっと涙が落ちた。 本心は(そばにいて)だったから。 (大丈夫、そばにいる) トールは触れた腕から、言葉によらず明確な意思を伝えた。君が望んでくれるかぎりは、いくらでもそばにいる。 あのことが起こった、それを自分の責任というのは傲慢なのだろう。大きな波と小さな波がまじわって、物事は起こるべくして起こる。たまさか流れを覗くものをあざ笑うかのように。 現実さえ把握しきれないときがあるというのに、なぜ未来の破片が降ってくることがあるのだろう。覗くだけで変えられないなら、それになんの意味がある? あのときマリアがかすかに首を振った、理由はここまで明確に見えていたわけではないけれど。 いつも、ただ、受け入れることしか許されないのか。 軽く頭を振って思惟を払い、トールはペリドットの瞳を見直した。いまはまずこちらだ。自分の思いなぞはあとで沈めばいい。 「・・・・・・押さえ込もうとして失敗してる。このまま消耗して倒れるのと爆発するの、どっちがいい」 「・・・・・・」 金茶の髪の友人は無言だった。どっちも嫌だ、とは言えない。 自分ひとりで綺麗に処理できてしまえばいいのに。 そうと察したトールはため息をついた。 「爆発させよう。私は受けとめられると思う」 ぱっとデセルが顔を上げる。 「でも、本体が・・・・・・」 「本体は遮断して別個にヒーリングを送る。完全に切り離すわけにはいかないけど、フォローする。 おいで、荒地に行こう。思う存分暴れられるようにね。この部屋にセキュリティをかけてもかまわないけど、君は遠慮するだろう」 内圧がそこまで高まっていては、押さえ込むのはもう無理だよ。君だってわかっているだろう? 親友を見やって、トールは軽く片手を振った。部屋の空間がぐにゃりと歪み、荒地へと繋げられる。デセルは壁ではなく、銀髪の友人の肩にもたれる格好になった。 「さて、と」 トールはデセルの肩をかついだまま、空いた片手で空中に魔法陣を描いた。瑠璃の陣が荒地に広がり、空間をきれいに覆って外界から遮断してゆく。元々荒地は幾重もの魔法陣で結界されているが、これでここで何があっても、外部に影響が出ることはない。 「トール・・・・・・俺は、そんな」 まだためらう親友を、トールは間近からじっと見つめた。 「わかってる。本当の原因の方には手を出せない。けれど触発されて出てきた影の方ならば、爆発させても受けとめることができる。それだけでも少しは楽になるはずだ…… ただの対処療法かもしれないが、頼む、やらせてくれ」 言葉にならない言い尽くせない謝意が、肩を通してデセルに伝わる。 すべてを経験するために生まれてきた、という。 痛みすら味わうために生まれてきた、という。 けれども大事な人が苦しんでいるのを見るのは辛い。 けしてわざとではなくても、傷つけてしまうのは辛い。 なぜこうなってしまうのだろうと悩み苦しみ、自分の中の弱さを見せつけられて。 誰より幸せになってほしいと願う相手を、どうしようもないほど傷つけ苦しめる、それすらも時間の葉に記された必要な予定事項だったと、世界樹ならば言うのであろうか。 たとえそれが、渦中に生きている人間にとっては、血を吐くような経験であったとしても。 派生した影の解放をデセルは了承した。 それは彼の優しさであると、トールにはわかっていた。 荒地に白い光が爆発した。 突発的な暴風が起こり、二人の髪を巻き上げてゆく。 助けて 助けて 助けて たくさんの手が地中から伸びて二人に縋りつこうとする。 わきあがる死傷者の群れ。 足の踏み場もないくらいたくさんの怪我人、病人、中にはもう、明らかに生きてはいないだろうと思われる亡者たち。 助けてくれたじゃない 助けて 見捨てないで おねがい・・・・・・ 声は輪唱のようにやむことなく、血まみれの手が際限もなく伸ばされ、二人の足にまとわりつく。 (出来ない。出来ない) デセルの心が絶叫する。 もう力は使い果たしてしまった。これ以上は何もしてやれない。助けてやれない。 来るな、来ないでくれ、出来ない、出来ない、出来ないんだ俺は・・・・・・ 爆発する白い光、記憶を置き換えようとしてきた空白。なかったことにしようとして。 トールは親友の肩を支えながら、現れた影を慎重により分けて今対処できるものだけを浮き上がらせた。 少なくともこちらなら、まだなんとかなる。ヒーラーなら誰もが直面する問題、自分と相手とのバランス、そしてエネルギーの源について。 錬金術師は、あえて意識を目前の影だけに合わせた。大元をちらちらと気にして、エネルギー的にひっぱるようなことになってはいけない。今はできることに集中するべきだった。 亡者たちの声は、耳を覆わんばかりに強くなってきていた。 デセルは歯をくいしばって目を見開いたままだ。 光の爆発が出きったと判断して、トールは自分のエネルギーをゆっくりとデセルに同期させた。 「大丈夫、自分の力を使うんじゃない・・・・・・エネルギーは無限にある」 デセルのエネルギーをつかまえて、上端を「源」に伸ばす。光も闇も区別ない、大らかな力が二人に流れ出した。 「そして私達が癒すのでもない。癒されることを選択するのは、つねに相手なんだよ。 相手がそれを望まなければ、いかに無限のエネルギーを通せても、状況が好転しないことはままある」 源から流れる力は揺るぎがない。 ヒーラーは上下を繋ぐパイプであり、それ以上でもそれ以下でもない。 「人は人を救えないと、私は思う。人は、つねに自分から『救われる』んだ」 ベニトアイトとペリドットの光がぱちんと合った。 ヒーラーであれば誰しも、状況を改善できなかった無力感をいくつかは心に抱いているものだ。 けれどもたぶん、どんなに力があろうとも、「救える」と思うこと自体が間違いなのだ、とトールは思う。 どうなるかは相手が選ぶ。 杖としていっとき支えることはできても、相手の人生を代わりに歩くことはできないのだ。 相手のために自分を捨ててはならない。 自分自身のためにも、そして他に癒しの手を待っている人がいるかもしれないから。 ペリドットの光が落ち着いてくる。 トールはうなずき、視線を泣き叫ぶ亡者たちにあてた。 「彼らは望んでる。だから私達は・・・・・・君は、必要なエネルギーをすべて、源から降ろして渡すことができる。ほら」 二人の身体を貫いていた光のフィールドがぐんと拡がり、亡者たちを飲み込んでゆく。 それは突き刺すような強さではなく、暖かく包み込むような大きな光。 先ほどとは違う明るさを増してゆく光の塊の中で、血まみれの手が次々に光の粒子になって消えてゆくのがわかる。 (さあ、お帰り。君たちの行くべき場所に) トールのささやきが聞こえた。 やがて荒地の光すべてが消えたとき、デセルは足の力が抜けてがくがくと震えている自分を発見した。 肩をささえてくれる銀髪の友人を見やる。ひどい脱力感があった。 「しかたがない、あれだけ身体を酷使していたからね。熱が出るだろうけど、寝ていれば治るよ」 トールは彼を部屋に連れていき、そのままベッドに寝かせた。 ありがとう、と笑うデセルの優しさに、ようやく微笑で応える。 いまやったのは応急処置にすぎず、友人の抱える辛さは、根本的になにも解決してはいない。 それをわかっていてなお、デセルは自分に笑いかけてくれる。 彼を打ちのめした壮絶な体験――わが腕の中で愛する人がロストするという――その女性の分身であり、さらにはからずとはいえ、今回のフラッシュバックを引き起こしてしまった張本人である本体の分身でもある自分に。 ありがたさと申し訳なさで胸がつまる。なんという、強くやさしい想いであることだろう。 親友が眠るまで、トールはベッドの脇につきそっていた。 ヒーリングなぞできずとも、彼の価値にはいささかも変わりがない。 その魂のすべてに、その存在そのものに、どれだけ自分たちが助けられていることか。 いつでも支えてくれたその温かさに、甘えすぎていたのかもしれなかった。 幸せで笑っていてほしいと思う。それだけには嘘がない。 そしてせめては、今彼が安らかに眠れるようにと、心からトールは祈った。*************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)わ。もう前話アップしてから1週間以上たってたのですねえ^^;いろいろあったのでぜんぜん気づいてなかった・・・お待たせしましたっ。コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→6/16 サンダルフォンヒーリング
2009年06月14日
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なんだか毎日がばたばたと過ぎていきます~充実してるといえばそうですから、ありがたいことですがwカマエルさんはいかがでしたか?来週はサンダルフォンさん! なんでしょう、ちょっとマイナーな天使キャンペーン? 笑ま、下私の知らないところでいろいろ決まってるぽいので、素直にサンダルフォンさんにしときますwwwサンダルフォンさん、っていうと、音楽の天使さんとか? 私もよく知らないのですがwでもケルティックハープ習いたいな~とか思ったり(昔から興味はあったんですが、調べだしたのはここ最近)、動画サイトでケルト音楽を聴いてたり、ちょっとやっぱり何かあるかも。普段はあんまり聴かないんですよね。嫌いじゃないんですが、なぜか^^;サンダルフォンさん、オーラソーマのボトルもありました。こんなの。↓カマエルさんとなんとなく雰囲気似てますね~。流れかなあ?調べてみたらこんなメッセージがありました。メイン テーマ: 我々の中にいるインナーチャイルドが、我々自身である天使になるアファメーション: 私は報われなかったすべての愛を変容します。1本目に選ばれたときの性格的側面: 大天使サンダルフォンは、意識レベルにおけるネガティビティの変容をもたらします。無条件の愛を通して、変容の過程を通っていくことでしょう。私たちの内なる深みからの協力、という新たなるレベルをもたらします。他の人が変容のプロセスを通過するのを助けることができます。喜びと洞察の人です。しばしば触媒の働きをする場合があるでしょう。スピリチュアルレベル: 高位の意志はこの人がデーヴァや天使たちとコミュニケートすることを支援し、変化のプロセスをサポートします。変容と無条件の愛。このボトルを通してある重要な秘密が開示されます。 精神的レベル: 意識的レベルにおけるネガティヴ パターンの変容。たくさんの新しい同化と理解のレベルを取り入れて情報を消化できるようにすること。 感情的レベル: 内側から最も深いレベルの喜びがこみ上げてくることができます。変容のプロセスにおける無条件の愛こそがサンダルフォーンの贈り物です。このボトルに含まれているのは、報われない愛に関係する強烈な問題のバランシングです。個人的にインナーチャイルドと向き合ってるとこだったので、「我々の中にいるインナーチャイルドが、我々自身である天使になる」っていうのがすごいヒットでした。このヒーリングで、あの子も少し変わってくれるかな^^応援ぽちっ♪→★リアルタイム日時 2009年6月16日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~6月17日(水) 20:30開始まで ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。
2009年06月12日
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たまには普通の記事も書いてみる 笑すでになんのブログだかわかんなくなってますがwww昨日、生まれて初めて、ミネラルショーというものに行ってきました~♪いったことなかったんですw近所に石屋さんもないし、なかなか実際に見て石を買うってことができないのですごーく楽しかったです!ご一緒してくれたお友達も大好きな人ばかりで、それもほぼ一年ぶりに会う人が多くて幸せでした~♪みんな元気そうでなによりでした。ありがとうございました!!それで、ヒーリングにも使えるし~という言い訳のもと(笑)買った石たちの写真をアップしようかと思ったら・・・なぜかアップロードできない~なんでだろ??写真載せるなってことですかねえ。残念。なので言葉でのご紹介になってしまいますが。ほしかったエレスチャルをゲットして幸せなのですwwww両端にポイントがあるダブルターミネイションなのですが、片方が三つのちびポイントに分かれているんです。あまり詳しくないのですが、ちょっと面白い形ではないかしらん。なんとなく心臓の形に似ているかなあ。買ってから一日で、虹がみるみる増えて点灯しました。エレスチャル、なんとなくほしいな~と思っていて、これだ!って勢いでお迎えしたのですが昨日帰ってから意味を調べてみたら、天使系のバイブレーションの石とかあってびっくり。へえええ。そして、「理由のない焦燥感(あせり、イライラ)、理由のない漠然とした不安感を感じたり、元気があまっているのに、自分からは怖くて行動できないジレンマ状態など「両極」にあるモノの調和が得意なストーンです。エレスチャルは主人から「こんな風な人になりたいんだ!」という強い思いを感じ取ると、その最終目的地へ到達するための「変化の時期」を完全にサポートします。ただし・・その人が隠し持つ「自分の内面」、自分では怖くて触れたくない「真実の自分」に直接対面させる作用が強いストーンです。その意味においては、すぐに落ち込みやすい人や、現実逃避傾向が強い人にはお勧めいたしません。ゴールにたどり着けるのであれば「何が起こっても、何でも乗り越えてやる!」という強い明確な意志をお持ちの人にとっては、頼もしい味方となってくれるでしょう。」こちらより・・・さらなるスパルタ教師のご登場ですか? 爆いいいいもん! なにがおこっても、なななんでものりこえてやるっっ・・・(ちと及び腰 笑石って、自分が必要なときに来てくれたりするから、ほんと不思議ですよね~そうそう、石についてはですね、こちらのブログ「とぱぞす。」が超お勧めです!!尊敬する石賢者様、バビル1025世さんが、素敵写真とともに色々ご紹介くださってます♪バビルさんはすごくしっかり現実にグラウンディングしつつ、見えない世界を語れる方なのでほんとにすごいと思います。そしてバビルさんちの石さん達はほんっとにキラキラのぴかぴかバビルさん、いつか石を愛でる会とか石を愛でる会とか石と遊ぶ会とかしましょうねっ♪♪そうそう、ミネラルショーでは、あとガーデンとかもゲット。ガーデンって、ほんと中に世界があるようですねえ。ほよよ~んと見て癒されてます♪最終日にぱぱっと見ただけでしたが、いつかゆっくり最初の日から行ってみたいなあ、と思いました。予算がいくらあっても足りないんじゃないかって気はしたけど^^;石好きにとってはある意味危険な場所ですよねwで、みんなでお昼をいただき、ちびの幼稚園バス時間がある私は先に失礼したのですがおかげさまでうまく快速に乗れて、最寄り駅から自転車とばして家についてかばん下ろしてトイレ行って外に出たら園バス到着、という素晴らしいタイミングで間に合いました 笑あとあと、習いたいなぁと思ってるケルティックハープのお話を聞かせてもらったり。お会いした方の中に、習ってた方がいらしたのですよ~!びっくり!!忙しかったけど、ほんとに楽しかったです~~~~みんなどうもありがとうございましたよかったらまた遊んでやってくださいねっ♪応援ぽち♪→
2009年06月10日
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ギィン、と音なき衝撃波が空を走った。光の乱舞が網膜を焼く。「こないだはごめんね~。ここ、わざとこう作ってあるんだ」緑色のミニスカートにブーツという戦闘服を着た女性教官が、高く飛び上がって身体ごと撃ちかかりながらにっこり笑った。赤かった髪は薄金になり、言葉遣いも中和されて、どうやら彼女も統合したようだ。「そうなんですよ。でもお気になさらず」右手の剣でいなしつつ左手で稲妻をしかけ、こちらもにこやかにトールが答える。雷撃が空気をふるわせた。「そうとわかったら思いっきりできるからいいよねぇ~」教官は着地と同時に身体を半回転させて何本もの稲妻を避け、間髪入れず腰に構えて突きこんだ。振袖に似た袖の先についた小さな鈴が、チリリンと澄んだ音を立てる。彼女の統合後の、というかそもそもの存在は、薄金の髪の歌姫であるらしかった。しかしその攻撃ぶりは、華奢な外見からは想像もつかないほど的確で容赦がない。「まったくですね。遠慮するとつまらないでしょう」鋭い突きをななめに叩き落し、返す刀で首筋を狙う。一撃ごとに、過去世で積んだ知識と経験が今の身に戻って落ち着いてゆくのがわかる。「そうなの~。学校でもさ、リミッターつけてその上武器なし、攻撃不可よ? ひどいと思わない?」細身の剣でからめるようにトールの剛剣を受け、そのままねじって鎖骨を目指した。互いに無駄のない動きは計算された舞踊のようだ。「ああ、そうでしたね。私もです。攻撃できないっていうのはねえ」飛びすさった瞬間に発火魔法陣を発動させる。同時に地を蹴って振りかぶった。「攻撃でなくてさ~、棒とか素手とかでちょいとつつくだけだって殺しかけちゃうじゃん。もーストレスなのよねぇ、あれ」だから今思いっきりできるって気持ちいいわぁ、と電撃を解放しながら突っ込んでゆく。会話だけ聞くとのんびりした、しかし繰り出される攻撃は結界がなければステーションのひとつやふたつは消し飛んでいるかもしれない、という、非常に危険な手合わせを二人はしていた。トールが専門戦闘員であったグラディウスを統合した、と聞いた教官が、ハンデなしの戦いを申し込んできたのだ。グラディウスの能力を完全に落とし込むために、一度全力で戦いたいと思っていたトールには願ってもないことだった。以前稽古をつけてもらったときも教官はリミッターなしだったが、今回は指導もなく、完全に対等に戦っている。互いの闘気と衝撃波がぶつかりあって大気の渦を生み、巻き上がる風が彼らの髪をなびかせる。混じっていた真空の刃が、二人の頬を薄く切った。「えへっ」血をぬぐった指先をぺろりと舐めて教官が笑う。ふ、とトールも笑った。なぜ楽しいのだろう、と考えてみる。剣は武器だ。しかし人を傷つけたいわけではなかった。傷つけたいだけなら、弱いものを狙うのが最も簡単だが、お互いそれはまったく考えにない。そうではなく、「自分の力を制限せずに解放する」ことが楽しいのかもしれない。だから教官も自分も、大怪我させる気遣いのない、対等に戦える相手を探していた。ではスポーツとしてやりたいか、というとそれも違うのだ。剣は剣であるとわかっている。使ってきた過去も、その重さも変わらずにこの背に負うている。好戦的な気質というのは、多分自分の中にあるのだろう。それは消しようもなく、自分の一部であるならば消す必要もおそらくなく。ただそれとどうつきあってゆくかが問われている、そんな気がした。もうほっとこ、とあきれる本体たちの声を聞きながら、二人の対戦は日が暮れるまで続いた。その後は教官の持つ別館に行き、その場を稼動させるための勉強の時間。歌姫の顔をもつ教官は誇らしげに、先日トールが教えて、それを実地に書いてみた魔法陣を見せた。「これこれ。どう?」トールは光る線で描かれた大きな魔法陣を見てうなずく。「ああ、よく描けてます……が、ここのスペルが違います。ここはほら、起動陣を組み込む場所なので、通常とはつづりが違うんですよ」「えー…」「……また絵として覚えましたね?」ベニトアイトの目をすがめてトールは言った。教官が舌を出して頭をかく。彼女は呪文をアルファベットのスペルとして覚えるのではなく、丸ごとそのまま絵として覚えてしまう癖があるのだ。記憶力としてはたいしたものだが、それでは応用がきかない。「あれだけ攻撃魔法が使いこなせるのに、なぜ維持系の魔法が使えないんですかねえ」トールにとっては心底不思議なのであるが、やー兄さまに教えてもらわなかったからぁ、と彼女は言った。維持系を教えられていないとしても、基本アルファベットは誰でもやると思うのだが、という呟きを飲み込む。別館を人の使える建物として起動させるだけなら、決まった魔法陣をいくつか教えればすむ。しかしメンテナンスなどの管理も自分でやろうと思うならそうはいかない。先日結婚した彼女の夫が知っているからサポートはするだろうが、一度基礎から教えたほうがいいだろう。それも資料を小出しにしないと、この生徒は最後だけ丸覚えして終わろうとするに違いない。エネルギーを扱う才能はあるのだからそれではもったいないし、三次元の言葉で降ろすことはなくても、彼女の本体にとっても必要な知識だろうと思われた。初めて家庭教師にきたときはほんの十分で教官には逃げられ、同じく分身である紫の少女が生徒になったが、統合してひとりになっている今日は逃がさない。逃げ道を結界でふさぎ、さて、では基本のつづり確認からいきましょうか、とにこやかにトールは言った。*************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)・・・いやもう、ほんっとに楽しそうでした、あの人たち(笑)コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→☆100回記念ゲリラ開催☆ 5/30~6/8 エンジェルヒーリング 6/9 カマエルヒーリング
2009年06月06日
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さて皆様、蒼のヒーリングはいかがだったでしょうか。すこしでもお役にたっていたらいいな~と思います^^つぎは大天使カマエルさん。ザドキエルさんがアピールしてきた、ってゲリラ開催の記事に書きましたが、その直後にアピールしてきたのが、カマエルさんでした。このお方もあんまり繋がったことがなかったのですが、調べてみると諸説あるものの、火星と蠍座と火曜日の守護者だそうで。オーラソーマボトルもあって、こんな色↓ゲッセマネの園にいたキリストの前に現れた天使、とも言われているそうです。私・・・蠍座の火曜生まれで、誕生日ボトルは「ゲッセマネの園」なんですけど 笑繋がっとけ、ってことですねこれは??wカマエルさん、エネルギーについてはオーラソーマの説明がわかりやすそうなので、一部引用してみます♪なんか銀色も関係あるらしいうえ、「ハートのエメラルドが開花するのを助ける」ってあって吹きました~ 笑多くの時間と困難をともなって生み出されたカマエルのタイミングは、真珠母のエネルギーとは異なったところでさらにいま一つの虹色の要素、すなわち銀とのつながりをもっています。浮遊する銀の色は女性的な直感がより意識的になることを助けます。自己の内部のより深い受容性の観点から理解と光明をふたたび呼び起こすことを通し、ピンクのエネルギーの中にあるこの要素は、女性性に関して深い癒しの可能性を秘めています。父にして母である神のハートと愛、その女性的次元であるカマエルは、ハートが発達しハートのエメラルドが開花するのを助けるでしょう。ここで問われる質は慈悲(真の感情)、よりよきコミュニケーション、自分に対する愛と他人に向ける愛とのバランスといったものです。対立をかかえた人々との間にたって、核家族内部の分裂を癒し、対立を克服し、調和を回復します。天国の守護者として、かれに従う幾百千万もの天使を率いているとされます。(略)カマエルのメッセージ ―「信頼せよ。そしてすべては完全であると知れ」。すべてがそれと反対に見える時ですら、いくら試みても思いどおりにならない時ですら、「何事もただあるがままに存在する」。 うーんなんか深いメッセージ。楽しんでいただけたら幸いです♪応援ぽちっ♪→★リアルタイム日時 2009年6月9日(火) 21:30より1時間(日本時間)★コールイン受け取り可能時間 日本時間で上記日時~6月10日(水) 20:30開始まで ※とくに決まった宣言文はありませんが、よいお時間に 「さつきのひかりのヒーリングを受け取ります」と宣言していただければ大丈夫です。 ★募集期限リアルタイム直前(火曜21:30)まで★参加ご希望の方はこの記事(エラーになってしまう場合、mixiの同名記事)のコメント欄に、HN(ハンドルネーム)と都道府県、以前さつきのひかりのヒーリングをお受けになったことがある方は、前回のご感想を一緒にお書きください。私もとても嬉しく励みになりますし、書くことでご自身の気づきも深まるかと思います。※他の記事へのコメント・メッセージ等は無効になります。お返事もできませんので、ご注意ください。★ヒーリングの種類その時々のテーマとともに、純粋な愛のエネルギーによるヒーリングを、お申し込みいただいたご本人、住んでいる土地、ご先祖さまがた、にお送りいたします。もっともシンプルで、誰にでも入りやすく、心の癒しには一番効くのだそうです。ハートが癒されると、ふんわり開いてご自分にとっていいものがたくさん引き寄せられてきます。キラキラをたくさん引き寄せちゃいましょう♪♪★初めましての方は、フリーページをご一読くださいませ^^→→「ヒーリングについて(http://plaza.rakuten.co.jp/satukinohikari/4000)」※よくあるご質問もまとめてあります。ご質問の前にご覧下さいね^^★喉が渇くことがあります。また好転反応が出た場合に楽に流すためにも、白湯などの水分をとられることをお勧めします。★エネルギーやヴィジョンを感じるワークではありません。リラックスして、寝るつもりでゆったりとお布団で受け取ってくださるといいと思います♪★車の運転など、注意力・集中力を必要とする場面では、絶対にヒーリングを受け取らないでください。 眠くなることがありますので、危険です。万一そういう事態になった場合には、「私は今はヒーリングを受け取りません。後ほど布団に入るときに改めて受け取ります」とはっきり宣言してください。★ヒーリングは医療行為ではありませんので、受けたことで怪我や疾患が良くなったり悪くなったりするというものではありません。変化はご自身が望まれたことを後押しするために現れます。ご自身の判断と責任によりお受けくださいね。☆100回記念ゲリラ開催☆ 5/30~6/8 エンジェルヒーリング
2009年06月04日
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明るいルキアの庭。大きな樹の下に白いテーブルセットを出して、たくさんのごちそうが並べられていた。トールの弟子であるジョゼ少年が、機械作りと授業に夢中になりすぎて倉庫で寝たり食事をせずに学校に行ったりしてることが発覚したため、サバトの隣に部屋を作って住んで、もうしばらくになる。 はじめ寡黙でつねに何かに警戒しているような様子だった黒い羽のサバトは、完全に安全なルキアにいるうちに少しずつ安心を取り戻し、マリアの畑仕事を手伝ったり、森を散歩したりしてのんびりと過ごすようになった。いままでずっとサバトと一緒で、彼がいなくなって寂しさを押し隠していたジョゼ。夜にはこっそり、もらった瑠璃のマントをかぶって寝ている、と本体にばらされて怒っていた彼も、ともにルキアに来ることで笑顔が多くなっていた。そんな彼らも、今日ルキアを出立する。二人が挨拶だけしてクリロズに帰ろうとマリアを探したときには、もうごちそうはテーブルに並べられていた。湯気のたつ具だくさんのスープや焼きたてパンにサラダ、新鮮なフルーツに美味しそうなケーキ。「さあ、最後にお別れパーティしましょうね」マリアが微笑んだ。少年たちの健康な胃袋はいい匂いに刺激されてすぐに反応した。二人は顔を見合わせ、照れたように笑って促された席についた。テーブルにはトールとマリアの他に、デセルと緑の少女の笑顔もあった。「ちゃんと紹介するのは初めてだね。デセル、この子がジョゼ、こちらがサバト。で、彼がデセルだよ」行儀良くぺこんと頭を下げた少年達に、よろしく、とデセルが笑う。話はよくトールから聞いていたから、二人を見るペリドットの瞳が優しい。ジョゼは同じく技術畑、それも師匠の親友の人だ……と眩しそうな憧れの目でデセルを見つめていた。あまり自分から話をしないサバトが、師匠やデセル、マリアには照れくさそうでも自分から話をしている。それが嬉しくて、ジョゼはにじんだ涙を素早く袖でぬぐった。「あっこいつ、泣いてる」目ざとくそれをみつけたのは緑の少女だ。少女は腕をのばして隣の席のジョゼの髪をぐりぐりかき回すと、にやりと笑った。皆が笑う。いくつもの優しい笑顔が心を満たして、気恥ずかしいやら涙があふれそうになるやら、ジョゼはむちゃくちゃに袖で顔をこすった。「僕……僕、ありがとう、ございます」ようやくそれだけ言ってしゃくりあげる。嬉し涙を拭いた後の食事は、腹にしみるほど美味しかった。「それじゃあ、緑さんは週末から入院なんですか?」トールと話していたサバトが言った。過去世で行われた改変の、復旧手術をするということだった。執刀はトールがやるらしい。錬金術師は口にしなかったが、それが先日マスターと話し合った内容だった。「じゃあ僕達、緑さんが元気になったころにお見舞いに行きます! 師匠みたいにアップルパイ作って」ほおばっていた木の実いりのパンをスープで飲み下してジョゼが言った。「ほんとか? 楽しみにしてる」緑の少女が笑う。楽しい食事が終わって皆が席を立つと、ジョゼとサバトは並んで深々と頭を下げた。「ほんとに、ほんとにありがとうございました!」「二人ともね、来たくなったらいつでもここに帰ってきていいのよ」マリアとトールが微笑む。ジョゼがあげた顔を輝かせ、サバトは恐縮しながらも嬉しそうだった。みんなのことが大好きなのだ。ちゃんと食事して、それから今度クリロズで催されるイベントの花火を頑張るから、ぜひ見に来てください、とジョゼは言った。トールがうなずく。その日はオペに近いから正式に参加はできないかもしれないが、後ろのほうからでも必ず見に行こう、と彼はかわいい弟子に約束した。ルキアを出立する少年二人を見送った後、マリアはデセルの長身に目をやった。デセルも今、自分の家を作るべく場所を探している。今すぐではないだろうが、近い未来に彼もまたここを発ってゆくことになるのだろう。そして、今は離れに家族で住んでいるララー達も。皆一緒にいてくれるのは嬉しいし楽しいが、彼らには彼らの場所があっていい。門出の季節とはいえ寂しくなるわね、とすみれ色の瞳がちらりと分身を見やる。銀髪の男はわずかに肩をすくめ、それからね、と緑の少女に向き直った。「あなたもここを家だと思って、もうそのへんの道端なんかで寝ないでくださいよ」青灰色の瞳が心配そうな光を投げる。少女は下の娘の家にきちんと部屋があるのに、ステーションの「どこかそのへん」で転がって寝ていることが多く、シュリカンがいつも回収にまわっているのだ。その理由をトールは知っているが、心配であることに何も変わりはない。「……それ、やめてくれたら考える」眉根をよせて少女は答えた。「それ?」「敬語。だってそれ……わざと距離、とるためなんだろ」半分睨むように背の高い男を見上げる。トールは少女の怜悧さに微笑んだ。その通りだ。彼女の準備ができるまで、過去を思い出させることがないよう、そして自分を戒め馴れすぎることがないよう、あえて距離をとってきた。過去世を統合してからは、つい口調が昔の、それこそ天使時代の親しいものになりそうになるところを、理性で踏みとどまっていた。でもそれはもういい、と青灰色の瞳を覗きこんで少女が言う。わかった、と彼は答えた。*************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→☆100回記念ゲリラ開催☆ 5/30~6/8 エンジェルヒーリング
2009年06月03日
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いくつかの過去世を見たのちに、トールの意識は現在のルキアの自室に戻った。 まだ俯瞰しただけで、いつかまた深く入ることになる過去世もあるのだろう。けれど今はこれでいいはずだ。 グラディウスと天使時代と、大きなトラウマであった二つの人格を統合して、自分が姿も口調も変わりつつあるだろうことに、彼は気づいていた。 魂の本質はなにも変わりはしないが、三次元の肉体を持たない今の状態では、エネルギー的な変化がすぐに外見などに現れる。それは魔法学校などでもよくあることで、とくに珍しくはない。 いや、トールは元々すべてを知っていたのだ。ただそれを下の本体たちや、記憶を失っていた緑の少女に対して、あえて隠していたにすぎない。 元ツインだから、過去世のどこかで一緒だったからという理由で今そばにいるのではないと、まずそれを伝えたかったから。 封じていた記憶のエネルギーが回復した今、彼の姿は本来のものに戻ったといってよさそうだった。 長くなった銀髪をかきあげて、彼は椅子から立ち上がった。開け放った大きな窓から、陽の光のあふれるバルコニーを見やる。針葉樹のすがすがしい香りが風にのって流れてきた。 そのとき、ドアを開けて緑の少女がやってきた。 彼女もまた、彼が見た過去を同じく追ってきたはずだ。緊張した面持ちの彼女に、トールは元のままの口調で優しく声をかけた。 「何も知らないほうがよかったですか?」 すると少女はほんの少し首をかしげ、じっと彼の青い瞳を見つめた。 なにも知らないとき、ただトールといたとき、彼女はただ楽しかった。彼のことは、なにも理由がなくても大好き、だった。 ずっと忘れていた天使の子のこと、魂の融合のこと、いろいろ過去を知ってしまった今、そのときの関係と微妙に変わってしまった部分というのは、たしかにあるのだろうけれど。 しかしやはり、これは知らなければならなかったのだろう、と彼女は思う。 今生でこのまま知らなかったとしても、いつかまた同じことを繰り返すのだ。 そしてそのとき、それでもうまく会えるかどうか、うまく思い出せるチャンスを得られるかどうか、わからない。 「ううん……これでよかったんだと思うし……」 ベニトアイトの深い青が、今も昔も変わらずに自分をつつんでいるのを感じながら、ゆっくりと少女は続けた。 「知る前と変わらずに……ううん、前よりもっと深い気持ちをもって、愛してると、おもう」 最後は少し早口になる。トールが微笑んだ。 そう、いつだってこの微笑みは、この優しい瞳は自分のそばにあった、と彼女は思った。 なにも知らなかったときも、海のように包んでくれる彼の存在が大好きだった。 けれども思い出した今、どんなに自分が愛されていたか、がよくわかる。 今生初めて会ってからずっと、彼はひとことも過去世について触れなかった。ジャンヌの過去世で一緒にいたことは最初にわかっていたけれど、それでさえ、彼から話題にすることはなかった。 あらゆる面において彼女を支え、協力しながら、彼が言っていたのはいつも同じだ。 私はただ、私のしたいことをしているだけ。 だからあなたも、自由に望みを叶えてください。 私はそれを力のかぎり応援しましょう、と。 穏やかでしかし強靭なその姿勢を、それこそ数億年、数十億年の昔から、天使の子として彼女の魂が生まれたその瞬間から、彼はずっと続けてきたのだ。 なんという揺るぎのない、支え手として絶対的な強さだろう。 フレデリカも同じだ。 彼女は、少女の選択することならすべて受け入れる、と言ってくれる。不良になろうが、優等生だろうが、死のうが生まれようが、少女の意思のもとに行われた事はすべてそれでいいのだと。 肉体レベルで死んでも、帰ってくるだけ。 ロストするレベルは、それは悲しいけれども、彼女がそう選択した結果なら仕方ない。ただ、誰かに無理やりロストさせられそうになった、などは話は別だけど。 本体に対してフレデリカは笑ったそうだ。 「やばい。確かにミカエルに怒られるわ、アタシ。でもまあ、いろいろ口うるさく言ってくれるのはミカエルが居るからいいのよね。アタシはアタシの信じるままにやるだけよ。 好きなものは好きだし。嫌いなものは嫌いだし。それだけね」 これまたなんという、ぶれのない大きな愛であることか。それも放任ではなく、育ての母としてとても細かいケアもしてくれることを少女は知っている。 そしてこの二人には、出会ってから気の遠くなるほど長い間に、一度たりと裏切られたことも、受けとめてもらえなかったこともない。 自分が愛というものを百パーセント信頼していられるのは、きつい転生を重ねながらも見捨てられ不安というものがまったくないのは、ミカエルやラファエルはじめ、彼らのこうした支えが常にあったからなのだろう。 それらは、過去を思い出したからこそ手に入れることができた贈り物だ。 長らくトラウマであったオペのときにも、その後の戦闘にも、他のいくつもの転生にも、当時の自分が孤独だと思い込んでいたときでさえ、なんとたくさんの暖かな手に包まれていたことか。 一連のできごとは、まさしく上からの出版祝いだった。 思い出してよかった、とあらためて少女は思った。 「トール、これからも気持ちは変わらないか?」 少女の口をついて出たのは、いつもの彼女とはまったく違った話し方の声だった。 トールは一瞬目をしばたたき、すぐに事態を理解した。 少女の中に、もっと高次元の存在が入ってきているのだ。 魂というのは、下から上までつながった大きな縦長の存在、ということもできるだろう。 肉体のある三次元から、もっと上も下も、そして他の面も同時に存在している。どこのポイントにアクセスするか、どの一面を切り取るか、でそれぞれ見えるものが違うのだ。 誰だって上をたどれば、天使やマスターたち、高次元の存在にいきつく。 今は少女のもっとずっと上の面……それもおそらく、アエル側の系統のマスターの面が現れているのだろうと思われた。 威厳のある声でその存在は続けた。 「この魂にはルシオラだけではない、私の系統であるアエルの部分もある。それでもやっていく覚悟はあるか?」 「もちろん、永遠に」 トールは即答した。それは一万二千年前、アエルとルシオラの魂が融合したときに心に決めたことだ。いまさら問われるまでもない。 存在は満足そうにうなずき、では、とこれからの話を始めた。 それは、トールが長年希求していた変化の兆し、少女の魂を根本から癒す旅の始まりだった。 *************この【銀の月のものがたり】シリーズは、現在カテゴリをimagesから 銀の月のものがたり へと移行中です。移行期間中はご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ両方をごらん下さいませm(_ _)m→→登場人物紹介(随時更新)ついに現代編です~せっかく戻ってきたので、またーりいく、つもり(笑)皆様これからもよろしくお願いいたします♪コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。どれも大切に嬉しく拝見しております♪続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪拍手がわりに→6/2 蒼のヒーリング ☆100回記念ゲリラ開催☆ 5/30~6/8 エンジェルヒーリング
2009年06月01日
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