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私が子供の頃は、田舎だったこともあって舗装した道路も少なく森や池には生き物があふれていました。叢に入ると、むっとする草いきれとともに溢れるばかりの昆虫を見ることができました。川には小魚が群れ、アメリカザリガニが徘徊し、時を忘れて遊ぶこともしばしばでした。そういう意味ではとても恵まれた自然環境の中で暮らしていたんだな実感することができます。夜になると街灯に群れる蛾とともに、今ではデパートでしかお目にかかれないような大きなカブトムシが迫力のある羽音と共に飛び回っているのも目撃しました。そういうわけで、私は単純に生物多様性に富んでいればいるほど、つまり種々雑多な生き物がたくさんいるほど、豊かな自然に恵まれていると思っていたのですが、Science Blogの記事によるとどうもそうとばかりは言い切れないようです。文明と言う名の人間の生活領域が広がるに連れ、複雑な生物相は失われ地球全体としての生物多様性は低下しているはずです。それでも、局部的には様相が変化しながらも生物多様性が増している地域もあります。米国、サンタバーバラのカリフォルニア大学とニューメキシコ州の科学者たちの発表によると、洋上に浮かぶ島々では在来種の鳥類の絶滅とそれに代わる新たな種の侵略により、異なった生物相による種の多様化が進んでいるとの事です。かつては繁栄を極めた在来種が多くの地域において消え去り、どこの島も似たような鳥にとって代わられているのですが、地域ごとには増加している生物多様性も、全体として考えると単純化しているというのが実状のようです。おそらく、陸上でもこれと似たようなことが起きているでしょう。人為的に持ち込まれた南方の昆虫や動植物がそれに拍車をかけています。人間の居住地域が周辺の生態系に多大な影響を及ぼしているのは紛れもない事実ですし、直接的にも間接的にも植物・生物生態系の単純化に拍車をかけているのでしょう。温暖化がもたらす生物相の変化は、徐々にではありますが我々の身の回りでも顕在化しており、それは在来種の動植物が駆逐され、南方に棲息していた種と置き換わってしまうということを意味しています。その結果、温帯モンスーン気候に生きてきた多くの生物の絶滅という結果を惹き起こすでしょう。さらに恐ろしいことは、マラリアなどの従来無かった病原菌の大進出を許してしまうのです。加えて、温暖化による地球レベルでの気流の変動がもたらす気候の変化は超大型のハリケーンの発生として、米国コロラド州の気象学者らによって予測されています。彼らは、アメリカの東海岸地域では2003年には超大型台風が頻発し、人工の密集した地域での被害予想は過去のどの時代よりも悲惨なものになるであろうと警鐘を発しています。その最大風速は110マイル毎時(50m毎秒)以上になるかもしれないと予測されています。旱魃、大水害、病気の蔓延、などなど、気候の温暖化がもたらす負の効果は、それが具体的になればなるほど人間の文明社会を破壊しかねない大きなものになるでしょう。喉もと過ぎれば熱さを忘れる、と言いますが、過ぎた後の世界を見ることができる人間が果たしてどのくらい残っているのか、私には予測しようもありません。ことさら大げさにこのようなことを書いていると思われるかもしれませんが、それは明日起こっても決しておかしくはないのです。一刻の猶予もならない事態と言えるでしょう。政治という分断された国家意識の中で、国家の損得だけを中心に考える手法ではとても対応できる事柄ではありません。乱暴な言い方ですが、国家の枠にとらわれずに物事を見、考えることのできる人たち、それはほかならぬ普通の市民であり、普通の生活者である多くのほかの地域の人たちと危機意識を共有することによってしか、今のところ実現できそうにありません。繰り返し同じ事を言いますが、全てはあなたにかかっています。
2002年12月27日
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最近の日記で何度か木星観測衛星・ガリレオに関する話題を取り上げていましたが、気になっていた高放射帯の通過後、再起動しなくなっていたテープレコーダーがなんとか動き出したというニュースをNews Scientistのサイトで発見しました。念のためもう一度経緯を説明いたしますと、ガリレオは木星の最内側の衛星であるアマルティアを通り越して、木星へ接近する途中で非常に高レベルの放射能帯を通過しました。このような場合、ガリレオは放射線の被害を最小限に抑えるために、全ての機器を自動的にいったんシャットダウンします。そして放射能帯を過ぎたところで、全ての装置を復旧するのですが大事な大事なテープレコーダーだけが再起動できなくなっていたのです。ガリレオプロジェクトの技術者たちが懸命の努力をした結果、わずかですが息を吹き返したとのことです。傷んでいたダイオードに、繰り返し一時間づつ電流を通し、原子配列が元の格子状態に戻るようにのべ83時間にわたって刺激しつづけたのです。この結果、テープレコーダーは一度に数分間づつ動作するようになり、探査機のオペレーターは、データの復元にはこれでも十分だと考えています。復元作業は一月の半ば、ガリレオが最後のシャットダウンに入るまで続けられます。ガリレオの燃料はほぼ尽きており、文字通り最後の力を振り絞って、まるでいまわの際の人間が最後の呼吸をつぐかのように貴重なラストメッセージを送ろうとしています。幸いなことに、原始的な生命体の存在の可能性が考えられている木星の月エウロパに接触し、汚染することなくきれいな引き際を演じきったと、科学者は安堵の胸を撫で下ろしています。前回にも書きましたが、予定された活動期間よりも5年間も長く探査活動に従事した老兵は今静かに消え去る道をたどりつつあります。まさしくガリレオがその生涯を閉じ木星の一部となる来年の九月、もし覚えておいででしたら「ご苦労さん、ガリレオ、さようなら」と胸の内で呟いてあげましょう。
2002年12月24日
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宇宙が150億年前にビッグバンから始まったという話は、少しでも近代宇宙理論に興味をもったことのある人でしたらよくご存知だと思います。針の先ほどの宇宙が膨れ上がり、膨張しながら現在の宇宙を形成しているという話は言葉ではなんとなくわかるものの、イメージするのは甚だ困難なことでもあります。遠方宇宙の赤方偏移、つまり遠ざかるサイレンの音が間延びして聞こえるように、高速度で我々から遠ざかる遠方の銀河のスペクトルが波長の長い方、つまり赤色側にずれている事実がそのことを証明している現象のひとつです。空間としての宇宙は均等に膨張していますので、その密度は当然のことながら膨張に連れて希薄になっているはずです。そしてそのことを証明するのが宇宙背景放射と呼ばれるマイクロ波の存在です。超高密度、高温の原初の宇宙はインフレーションと呼ばれる爆発的な膨張期を経て、物質が物質であることを許容する条件にまで拡大していきました。当初光でさえも自由に動くことのままならない世界から、宇宙が急速に冷え始めた時期の光子のなれの果てが宇宙背景放射となって全宇宙に偏在しているのです。事実、宇宙背景放射は全ての方角からほぼ均等な強さで観測することができます。そしてそのスペクトルは3°K、つまり摂氏で言いますと-270度Cの黒体輻射のスペクトルとよく一致します。これはビッグバン後、3000°Kであったと類推される宇宙の温度が膨張に伴って3°Kまで冷えたことを意味しているのです。宇宙の膨張を加速している力の源が何であるかははっきりとは示されていませんが、全宇宙のエネルギーの65%を占めるダークエネルギーと呼ばれる力です。そして別の30%を占めるのがご存知のダークマター、星々を浮かべている媒体とも仮定されている物質のことです。我々の身体や星々を形成している物質のエネルギーは残りのわずか5%なのです!逆説的ですが、星々の質量を全て合わせても、銀河系を回転させるだけのエネルギーに遠く及ばないため、ダークマターが定義されているともいえます。10年以上前にも、NASAが打ち上げた観測衛星コービーが詳細に宇宙背景放射の観測を行い、大きな成果を収めましたが、最近は南極に建設された専用の観測装置が宇宙背景放射の詳細な観測に成果を上げつつあります。南極は文明世界から放たれる種々雑多な雑音から隔絶され、最高精度を得るために絶対零度に限りなく近い極低温を実現するには理想的な場所なのです。しかも観測所は南極にそびえる峰の3000mの高みにあり、大気はその希薄さと低温ゆえに殆んど水分を含んでいません。実は大気中の水分が電磁波の赤外域から紫外線までの波長のスペクトルを吸収してしまう元凶なので、最大限その影響を排除できるわけです。さらに、極地とは言え地に足をつけた作業ができますので、宇宙空間よりははるかに自由度も高いと言えます。ここで、宇宙背景放射のピークに近い1~3mmの波長帯のマイクロ波を長期にわたって精密に観測しています。それにしても、冬場にはー70°C以下にも下がってしまうこのような極寒の高地で、人知れず観測にいそしむ人たちがいることは普通の人からすればなんとも物好きなと思われることでしょう。宇宙が彼らに語りかけているに違いありません。「耳を澄ますがいい、広大無辺な宇宙の片隅のものよ。遥かな宇宙の辺境から伝わる、全てのものが溶け合い混ざり合っていた時代の残響を。汝は知るであろう、無限を超える時空の営みを」
2002年12月19日
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冬場になるといつもインフルエンザの流行で新しいタイプのウィルスが猛威をふるったりしますが、皆さんは対策は万全でしょうか? と言っても新しいタイプのウィルスはワクチンができるまで、あるいは自然なサイクルによって流行が収まるのを待つしかないというのが実情ですね。このようなウィルスを含む細菌類が大気中にうようよと浮遊していることはご存知だと思いますが、地球の上空どのくらいまで飛び回っているとお思いですか?ある種の細菌が非常に高高度の大気圏、つまり成層圏と呼ばれる領域で存在しているらしいことがわかったそうです。インド南部の上空41kmに上げられた気象観測気球によりこれらの細菌が収集されたのです。2種類のバクテリア(単細胞のものと細菌類)そして白癬菌のようなカビの類などがその正体ですが、いずれも地上でも土の中や植物に普通に見受けられる生命体です。でも、どうしてそんな高空でこんな有機体が捕捉されたのか正確なところはわかっていませが、三つの可能性が考えられています。ひょっとしたら風で巻き上げられて、たまたまそんな高度まで運ばれたのかもしれません。気球が低空にあるときに紛れ込んだとも考えられます。そして、最期の可能性として、これが一番面白いのですが、逆に宇宙空間から地球に運ばれたという説です。過去にも天文学者の中には、生命の起源は地球ではなく外宇宙から彗星などの接近と共に地球へ持ち込まれたとする説を唱えている人たちがいます。この発見は彼らの主張をあるいは裏付けるものになるかもしれません。今回の実験を主体的に行ったインド人の科学者とそれを援助した英国の科学者たちによって書かれた論文では、生命体外宇宙飛来説を支持しています。収集した菌類の密度から、彼らの計算によると年間1トンものこうした有機生命体が地球に降り注いでいるとしています。地球大気の表面で発生している空気の渦や流れは細かい粒子を高空へ巻き上げるのに十分なエネルギーをもっていますが、このような気象現象は高度17kmの範囲で生じる対流圏の中に限られているのです。そしてこの層はある種のふたとして機能してるのです。火山の爆発も物質を対流圏以上の高度に押し上げるパワーを有していますが、この観測気球が飛ばされた前後にその付近では火山の噴火は起こっていません。ところが、そんな現象を惹き起こす原因として一つだけ考えられるのが人為的な温暖化ガスの排出です。温暖化によって生じた上昇気流が対流圏を越えて成層圏に達することがわかってきているのです。熱帯の上昇気流は1m毎時の速度で上方へ移動し、それとともに物質を浮揚させる力を持っていますが、細菌類のような微粒子がどのくらい上空へ運ばれるのかは定かではありません。気球の上昇途中に、サンプラーに細菌が紛れ込んで汚染してしまった可能性については、実験手順によって注意深くそのような汚染が発生しないように計画されていましたので、考える必要はないであろうと実験を行った科学者は述べています。さらに、気球回収後の汚染の可能性についても、収集された細菌がフリーズドライ状態であったことから、否定されています。そのような状態になるためには高高度の環境である低温・乾燥を経なければ説明できないからです。さて収集した細菌類をこの後、どのように扱うのか興味があるのですが、培養しても良いのかどうか、ひょっとしたら未知の細菌に遭遇しないとも限らず、その様なリスクを防ぐ手立てを確立してからにして欲しいなと思ったりします。生物の起源が外宇宙と言うのもSF的で面白いのですが、どこかの先進国が密かに人工衛星で培養した細菌を大気圏外からばら撒いているなんてことがないとも限りませんね。宇宙戦争に飽き足らず、宇宙細菌戦争なんて悪魔の所業でしょう。
2002年12月18日
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先日は種子島でのH2Aロケットの打ち上げも無事成功裏の内に終了し、まことにめでたい事であります。他の先進国に比べやや遅れをとっているこの分野にもっと頑張っていただきたいものです。このニュースに関しては、新聞やテレビなどがこぞって取り上げていますので、今更私ごときが解説するよまでもないので、例によってメディアでは取り上げないようなマイナーな情報(私にとってはマイナーではないのですが)を提供致します。日記で何度か取り上げました木星観測衛星ガリレオの話なのですが、その後テープがどうなったかはおおいに気になるところですね。さて、ガリレオが木星の最内惑星のアマルティアを通過して、現在は最小の衛星となって木星の周回軌道を旅しているわけですが、アマルティアを通過した際にアマルティアに関する情報を取得して地球に送信してきました。ガリレオの調査結果によりますと、アマルティアは非常にいびつなジャガイモ状の形をしています。しかも、その比重が異様に軽いようなのです。NASAの研究者の見方によると、アマルティアはたくさんの岩石が寄り集まった構造なのではないかということです。岩石同士の間にある隙間がこの衛星の見かけ上の大きさにしては軽い密度の原因になっているのですね。この赤茶けた色の長径270kmの木星の月の160km近傍をガリレオが通過したとき、ガリレオに与えたアマルティアの重力の影響を調べた結果、このような結論が導かれたのです。アマルティアの全体平均密度は、氷のそれとほぼ同じなのですが、それが氷でないことは従来の惑星学、特に木星系の研究から明白でした。そのいびつな形と密度から、多数の岩石が互いの重力により寄り集まった構造となっているのですが、岩石群自体がそれぞれ不定形な形をしているため空隙なく集合することは不可能なのです。つまりジャガイモが寄り集まっているとでも考えてください。もうひとつ不思議なことは、このアマルティアの個体部分の密度もお隣のイオよりも低いのです。これが何故不思議かと言うと、木星とその衛星の生成過程の研究の中で内側の衛星ほど密度が高くなるということが立証されているからです。これはきっとしばらく惑星学者を悩ます問題になりそうです。けなげにも頑張っていろいろなデータを送りつづけるガリレオですが、このまま木星に近づけば来年の9月21日には木星に吸い込まれ、壮絶な最期を遂げることになるそうです。そのときは皆さんも、ガリレオよ、よく頑張ったと拍手をおくってあげてください。
2002年12月15日
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昨日テレビを見ていると、ノーベル賞の授賞式の模様をさかんに報道していましたね。ご存知のようにカミオカンデでニュートリノの観測に功績のあった小柴さんと、初のサラリーマン受賞者として、なにかと注目を集めている田中さんのお二人が賞を受け取る場面や、晩餐会の模様が繰り返し放送されていました。田中さんの受賞理由であった蛋白質の質量計測方法の発見について、某国営放送で特集で解説番組を流していました。蛋白質の質量計測といっても、詳細にその内容を理解することは困難ですが、私が理解した範囲で分かりやすくここで述べてみたいと思います。まず、蛋白質は分子量の大きなアミノ酸の高分子です。水などのような単純な化合物にくらべるとその分子はとても大きく、質量も巨大です。しかも蛋白質は一様な構造ではなく、様々な分子量のものが集まった状態ですので、個々に分子量を測るのではなく平均的な分子量やその分布を求めなくてはなりません。試みられていたのは、蛋白質にレーザー光線を当てて荷電、つまり電気を帯びさせ、その電気的な力によって電極に吸着させてその移動の状態から分子量を求めるというものです。つまり、軽い蛋白質は早く、重い蛋白質はゆっくりと移動しますので、電極に集まってくる蛋白質の量の経時変化を細かく観察すれば分子量の分布がわかるのです。言い換えるとタンパク質分子の移動スペクトルのようなものです。この方法の難しい点は、レーザー光線を蛋白質に当てたときに蛋白質がレーザー光線の熱によってたやすく分解してしまうことでした。田中さんが研究を行っていた当時は、この緩衝材としてコバルトという金属が用いられていました。コバルトで蛋白質を保護することによって分解を防ごうとしたのですね。コバルトは金属の粉末ですので、なにかの溶剤を用いて均等に分散させてやる必要がありました。従来、分散剤としてはアセトンのような有機溶剤が多用されていましたが、あるとき田中さんは間違えてグリセリンにコバルトを混ぜてしまったそうです。それでも試行錯誤でいろいろな組み合わせを試していたのですから、ついでにこれもやってみようという気になって、そのままレーザー光線を照射してみました。すると、僥倖の極みか、蛋白質は分解することなく荷電し、電極に吸着されていきました。田中さんが偶然の産物だと言っていたのはこのことだったのです。後は、この結果が再現性があるかどうかを繰り返し実験し、条件を変えて行うことによってグリセリンの効果を科学的に立証したというわけです。その後、この原理をもとにさまざまな改良がなされ、世界中で蛋白質解析になくてはならない手法になったのです。今は遺伝子の解析や、人間の身体を構成する蛋白質の異変によって惹き起こされるパーキンソン病や癌などの病理学的解析におおいに貢献しているのです。ここまで書けば、ノーベル賞を受けるに足る大発見だったことを分かっていただけると思います。番組の中では蛋白質をボールに例えて、軽いボールは早く投げられるが重たいボールはゆっくりとしか投げられないと説明していましたが、私の頭の中に浮かんできたのは砂漠の風紋でした。砂漠の砂は大小さまざまな砂粒からなっていますが、砂が風に煽られて移動するとき、砂の大きさに従って重たいものはわずかしか動かず、軽いものはより遠くへ飛ばされ、その結果あの不可思議な模様の風紋が出来上がっているのです。単純な物理の法則に従った結果とは言え、砂丘の起伏の上に広がる規則正しい幾何学模様はなにかしら自然の方程式で組み立てられた造形を見せられているような感興を覚えさせてくれます。何事も自然のリズムの中に原理を見出し、そのハーモニーを乱さないような方法で問題の解決を図れば、いたずらに軋轢を生むことも、破綻を招くこともないのかもしれませんね。やはり我々はコスモスのシステムの中で生かされているのだということをもっと認識する必要があるのでしょう。
2002年12月12日
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皆さんは木の切り株を見てどんな情報が読み取れますか?切り口の年輪の数から木の寿命、そして年輪のつまり具合から方角、つまり太陽光の量の違いによる成長むらから南北を判断することができますね。海の世界ではどうでしょう。木の年輪のようなものはあるでしょうか?Science Blogというサイトで見つけた話題によりますと、ある種の珊瑚が木の年輪のような環境の変化の足跡を形として残すことが分かってきたそうです。海の環境の変化と言いますと、まずその平均温度変化、そして塩分濃度の推移などが変動要素として考えられます。ある種の珊瑚は1年単位で樹木のように段階的に成長して層をなし、なおかつ環境の変化を反映した珊瑚礁を形成することが明らかになってきたそうです。ご存知のように珊瑚礁は珊瑚虫が多数積み重なり、岩や棚状に成長したものです。特に大西洋の亜熱帯地域で見受けられる珊瑚にこのような過去の気候の変動を読み取れる特徴的なものが存在しています。マイアミ大学の海洋研究者たちが歯科用のX線で珊瑚の断面を検査し、その層の数から年代を計測しました。1994年に採取されたサンプルは1935年頃から60年近くをかけて成長したものです。そして1年あたり22サンプルの薄片に切り出し、合計59年間にわたる珊瑚の成分の変化を調べました。その調査方法は珊瑚の骨格を成す炭酸カルシウムの中に含まれる酸素の非放射性同位元素(通常の酸素原子よりも中性子が多く存在する重たい酸素です)の量を測るというやりかたです。通常、海水温が低いほど重たい酸素原子を多く含むようになるようです。塩分濃度に関してはもっと依存度が高く、濃度の低い海水で育った珊瑚ほど重酸素原子の割合が低くなります。ですから、細かい年代で珊瑚中に含まれる重酸素原子の量をプロットすると海水環境のダイナミズムを読み取ることが出来ます。この調査結果によりますと、酸素同位元素の含有量はきれいなサインカーブを描いていて、ほぼ12.5年の周期で変動していることがわかったそうです。それでも採取出来たサンプルの年代幅がたかだか60年ほどですので、より大きなスパンについては化石化した珊瑚をドミニカ共和国沖から取り出して、さらなる過去のデータ解析に挑んでいるようです。より詳しい解析が進めばこの海域での周期的な環境の変動と、その変動をもたらした外的因子などが明らかにされ、地球全体の気象変動のメカニズムの解明に寄与することでしょう。残念なことにこの種の珊瑚は大西洋のある地域に限定されており、太平洋では棲息していないとのことです。ところでもう一つの話題ですが、ちょっと以前に欧州宇宙機構が打ち上げた最大級の通信衛星が途中で推進力を失い、頓挫しているとのニュースを紹介しましたが、ついにこの衛星が太平洋上で、この火曜日の午前中に破壊されてしまいました。当初は宇宙タグボートのようなもので、なんとか本来の軌道まで曳航しようというアイディアもありましたが、技術的な問題が大きすぎて結局断念せざるを得なかったようですね。莫大な費用と労力がかかったであろうこの通信衛星の失敗は残念であると共に、おおいなる資源の無駄遣いになってしまいました。現在進行中の国際宇宙ステーション計画が順調に進めば、宇宙空間でいろいろな用途の衛星を組み立てて、リスクなく安価に目標を達成できる日がくることでしょう。願わくば、タンカーの座礁のような事故が宇宙空間で起きないように細心の注意を払ってもらいたいものです。万一の事態が発生すれば、その影響は地上の事故の比ではなくなることは明らかですので。
2002年12月11日
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化石燃料によるエネルギー消費を転換しようという試みは世界で始まっていますが、日本でも某自動車メーカーの開発した水素電池駆動の自動車が政府ご用達として採用されましたね。水しか排出しないという触れ込みですが、厳密には炭化水素化合物を分解して水素を抽出する過程では二酸化炭素は少量ですが排出されます。自動車単体として捉えるのではなくて、トータルのサイクルの中で正確な報道をしてもらいたいものです。水の電気分解で水素を得るとしても多量の電気を使用しますので、間接的には二酸化炭素を発生しているわけです。エネルギー転換の有力な候補のひとつに太陽電池、つまり太陽の熱エネルギーを直接電気に変換して蓄電する方式があります。お天道様はきまぐれですので安定したエネルギー源とは言い難い面もありますが、とりあえず無尽蔵ですので有効利用しない手はありません。現在の課題はいかに太陽光線を効率よく電気に変換するかですが、今までの方法では精一杯頑張ってもせいぜい30%ほどが限界でした。ここに紹介する太陽電池はその壁を大きく改善し、なんと50%の変換効率を達成したというもので、News Scientistの記事に紹介されています。太陽電池は半導体の層を敷き詰めて、太陽光線のエネルギーを電流に変換する装置なのですが、主流になっていたのは種類の違う2層の半導体を重ねて、異なる波長帯の太陽光線を電気に変換するものでした。このタイプの最大効率が30%ほどだったのです。新しく開発されたのはインジウム-窒化ガリウム(InGaN)の半導体です。インジウムの含有量を変化させながら各層に使用し、光のバンドギャップに応じて効率よく太陽光を吸収させる方式です。ご存知のように太陽光は波長の短いほうから紫外線、可視光線、そして赤外線と様々な波長の成分を含んでいます。半導体によって電気エネルギーに変換可能な光の帯域があって、すべての波長をむらなく利用するのはとても困難だったのです。そして今回の発見がこれを大きく改善し、効率50%を達成したのです。通常の半導体の持つ欠点である異なる半導体を重ねて成長させるときに生じるひびが、InGaNの半導体では起こりにくく、このことが人工衛星に太陽電池を搭載したときに、極端な温度変化や放射線の影響に強く、長持ちする受光パネルを実現するそうです。InGaNの素子が変換可能な太陽光のスペクトル幅は従来のものより倍から3倍にもおよびます。太陽電池の世界ではちょっとした技術革新と言えるでしょう。しかしながら、欠点が無いわけではありません。この高性能はその純度の高さに負うところが大きく、手間がかかる製作工程は高度でコストが高く付くのです。科学者たちはこの現実的な欠点を改良すべくコスト低減という新たな課題に取り組んでいます。多くの新技術に共通した問題点ですので、いずれ改善され、安価に提供される日が来ることを信じましょう。考えてみますと、化石燃料にしろ風力発電にしろその根源は太陽エネルギーです。太陽光というエネルギーの筆が地球をキャンバスに幾多の生命や、大気の循環を発生させてあでやかな命の惑星を描き上げてきたのですから、太陽エネルギーを直接利用することは、原点に帰るということなのかもしれませんね。
2002年12月09日
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スペイン沖でも、日本沿岸でもタンカーの座礁事故で大量の原油が漏れ出して付近の海や沿岸に多大な被害をもたらしているようです。以前触れましたが、地球の大気組成維持に必要な酸素分を補給しているエコーシステムは実は海洋の方に多く存在するのです。海藻類の酸素供給能力は地上の森林よりはずっと大きいのですが、残念ながら木々ほど我々が関われる機会が少ないので、あまり注目されません。森林浴はできますが、海藻浴はちょっとできませんものね。アメリカのカリフォルニア州沿岸の大学などが海洋の保護区のネットワークを作り上げるべく努力をしています。どのようにすれば最も効果的に海の質および海洋資源を護ることができるかを共同で研究しています。つまり、港湾や空港を建設するときと同じように、豊かな海を取り戻すためのプロジェクトの設計をしようとしているわけです。このネットワークを広げて、保護区を世界各地に設けることによって海洋全体のバランスをも回復しようとしています。確かに人間の活動が激しい海域での生物多様性が著しく衰えていることは明白ですし、これが地球海洋全体におよぼす食物連鎖やエコシステムの単純化による脆弱化は看過できないレベルに達していると言えます。少し考えてみると、海洋での食物連鎖は陸上のそれよりもはるかにデリケートでお互いへの依存度が強いことがわかります。海洋にはプランクトンのような微細な生物から鯨のような巨大な生物が浮遊あるいは回遊しているのです。プランクトンは少し大きな小魚の食物となり、その小魚はさらに大きな魚の餌になっていて、まさに海全体が一つの生命体をなしているかのようなサイクルで成り立っています。プランクトンの異常発生、激減が結果的に系全体にどのような甚大な影響を与えるか、計算してみるまでもないことです。例えて言いますと、これは地上で動物保護区を作るような試みであり、その目的が漁業のための漁獲量や海産物の種類の回復でないことは認識しておく必要がありそうです。イエローストーン国立公園がその中で保護され、個体数を維持している狼やバイソンや熊を公園外の地域でハンティングするためにあるのではないことは当然なように。言い換えますと、このような試みはいかなる政治的、経済的動機からも自由でなければならないのです。かつて人間が魚介類を獲って食用としていたのは自分達の食糧とするためであり、大量に売りさばくためではありませんでした。漁業が大規模化して需要の変動に応じて特定の魚ばかり乱獲するようになってしまったのは、経済原理に他なりません。経済は社会の重要なファクターではありますが、それが自分達の足を引っ張り、結果的に環境や資源を濫費してしまう事態を招くのであれば、物事の優先度を転換する理性を取り戻さなければなりません。環境や資源に関する問題意識は国や地域によって温度差が甚だしいのが現状です。各国の政府の意識によっても大きく左右されます。これを共通の認識とするためには、主義や民族を超えた教育や啓蒙がなされなければなりません。絶望的に難しいことかもしれませんが、これを実現するにはやはり我々一般市民の意識の向上しかないでしょう。宇宙船地球号の乗組員としての義務感の定着、共同意識の向上はこれからが本番です。
2002年12月06日
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さて、最近の科学ニュースを見るとなんと量子コンピューターの実用化に向けて画期的な実験がオーストラリアで成功したと言う華々しいニュースがあるのですが、もうひとつ憂鬱なニュースが見つかりました。量子コンピューターのトピックについては後日と言うことにしまてこの話題を取り上げたいと思います。それは地球温暖化に関する話題なのですが、NASAの研究によると今世紀末には北極の氷がすべて溶けてしまうという恐ろしい予測が出されました。このままの温暖化傾向が続けば、遠からず両極の氷が溶けてしまうという話は従来からありましたが、具体的な数値を根拠にこのような結論が導かれると慄然とせざるを得ません。NASAの調査では、溶けていく氷の割合が当初の予想よりも大きく、この傾向が数十年継続すると北極を覆っていた氷が全て溶けてしまい、今世紀中には北極海が海洋として露出することになるであろうと警告を発しています。ご存知のように北極には大陸が存在しませんので、氷の多くは海洋上に浮かんでいるわけです。氷となった水は比重が軽くなりますのでその分だけが海洋から頭を出して氷山となるのですが、仮にこれが溶けたとしても海水の水位には影響を与えません。溶けた後の水の容積が海面下に沈んでいる氷の容積と等しいからです。水位に変動がないというと、なんだそれじゃ大勢に影響はないじゃないかと思われるかもしれませんが実はそうではありません。海流やプランクトンの発生、ひいては全地球的な気候の変動を惹き起こすのです。ゴダード宇宙センターの科学者が衛星画像をもとに、20年以上にわたって北極付近のいくつかの地点の断面について、最も薄い厚みとなる氷を経年観察してきました。それによりますと、氷は年々薄くなり、これが加速していることが確認されています。氷同士や氷と外気の関係が正のフィードバックとなり悪化の一途をたどっているのです。夏場の温度上昇に伴い氷の領域が後退し、氷が薄くなると、太陽光がその下や周辺の海洋により多くのエネルギーを与え、さらに大量の氷が溶け出します。海洋部の大きな熱容量により秋季からの氷の生成が遅れ、冬の間に回復するべき氷の層が年々薄くなってしまい、次の年の夏にさらなる氷の衰退を招くのです。膨大な計算を要する地球全体の気象ですから、簡単にこのことがなにをもたらすのか計算できませんが、この結果をもとにNASAはもっと詳細な地球サイクルへの影響を明らかにしようとしています。地球の大気や海洋ほどの膨大で流動的な環境が多少のことでは大きな狂いを生ずるとは考え難いのですが、平均温度がもう数度だけ上がると、雪崩式に全てのバランスが崩れて破滅に向かってまっしぐらという状況になる可能性が極めて高いのです。複雑系として成り立っている地球の営みは、ある限界点を越えると全く異なった様相へ変化する公算が大きいことを、そしてそれが同時に人間の住める環境ではなくなってしまうことを直視すべきだと思います。地球温暖化に対しては、先進国の首脳たちの間でも大きな問題にされていることは言うまでもありませんが、鍵を握っているのは自国の利益を追って右顧左眄している指導者達ではなく、ほかでもない我々一般民衆なのだということをここで訴えたいと思います。数にして圧倒的多数の一般民衆こそが、全体の意識を変えうる実体であるのです。21世紀はもはや国の時代ではありません。地球市民の時代なのです。
2002年12月03日
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