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今回も、予定通り前巻発行から半年での発行。 新型コロナウイルスの方は、先月13日からマスク着用が緩和され、 来月8日には感染症法上の位置づけが「5類感染症」に変更されることに。 ただ今後、第8波を超える規模の第9波が起きる可能性も指摘されています。 ***今巻は、全て前巻から始まった室井夏央と丸川陽茉莉の萬津病院での実務実習のお話。第46話「変化の兆し」では、陽茉莉が担当患者・飯島に積極的に関わっていきます。一方、夏央は葵から「プレグランディン膣坐剤」を薬剤部に一緒に取りに行こうと言われます。その使用患者は、夏央の中学時代の友人・柳亮太の妻である晶子でした。第47話「本質」では、陽茉莉が元気を失いつつある飯島を懸命に励ますと共に、その症状から、飯島が更年期障害だと気付き、適切な治療へと繋げていきます。一方、友人の妻が退院直後に子宮内胎児死亡したことに衝撃を受けた夏央は、他の入院患者に対して突き放すような発言をして、スタッフや葵から叱責されてしまいます。第48話「年の瀬」では、夏央が産科病棟での実習をあと3日残して欠席し始めます。そして、年越し当直を担当する葵の奮闘ぶりが詳細に描かれていきます。昼から翌朝まで1人で仕事をこなす、その勤務のハードさは驚くべきもので、救命病棟看護師・豊中さんの「同じ病棟の仲間でしょ!」の言葉が刺さりました。第47話「正対」では、夏央とその兄・冬唯(とうい)とのやりとりが描かれます。医師である兄の言葉で夏央は実習に復帰し、薬剤師の仕事に正対することを誓います。第48話「行く末」では、夏央が羽倉に、どうして病院薬剤師になったのかを尋ねます。そして、大学院進学の希望を固めた陽茉莉は、夏央に少し距離を置きたいと告げたのでした。 ***夏央と陽茉莉が実習を終えた後、羽倉は瀬野に今後のことで相談したいと申し出ます。これは、一波乱ありそう。そんな時、タカハシ製薬の工場で火災が発生したとのニュースが飛び込んできます。現実社会でも、2021年11月に発生した大阪の物流センター火災では、後発薬18品目の出荷調整が行われることになり、医療現場では大きな混乱が生じました。(供給不足のそもそもの契機は、2020年末に発覚した医薬品メーカーの不正発覚ですが)次巻は、そのあたりのことを取り上げたお話になりそうです。
2023.04.29
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スピンオフ『優莉凜香 高校事変 劃篇』と『優莉結衣 高校事変 劃篇』を経て、 『高校事変Ⅻ』から続く待望のシリーズ新刊が登場。 巻数表記が”ローマ数字”から”アラビア数字”に改められた今巻では、 これまで主人公だった優莉家の次女・結衣が、何と大学生になっていました。 これを受け、シリーズの主人公は、優莉家の四女・妹の凜香にバトンタッチ。 と思いきや、優莉家の六女・杠葉瑠那(ゆずりは るな)という新キャラが突如登場。 凜香と同じ日暮里高校に通うことになった彼女の周辺では、次々に事件が発生して…… 今巻は、そんな瑠那の生い立ちが、次第に明らかになっていく様子が描かれていきます。 ***さて、現時点で判明している優莉匡太の子どもたちは、警視庁捜査一課長・坂東志郎を主語とする、次の一文から知ることが出来ます。 それ以外の兄弟姉妹は現状、脅威とは考えにくい。 次男の篤志は、父親の逮捕以降ずっと行方不明で、 とっくに死亡した可能性が高いとされる。 三男の健斗は葉瀬中バス事件により、新潟山中の廃校内で猟銃自殺。 長女の智沙子はシビック政変のさなかにヘリから転落死。 三女の詠美や五女の弘子も、幼少時に死亡している。 公安が把握する六女の瑠那は、平穏に神社の巫女を務める一方、余命幾ばくもない。 四男の明日磨は間もなく中3だが、発見時にひどく衰弱していた後遺症で、 いまも通院がつづいている。 七女の伊桜里も中3になるものの、優莉家との接点はない。 中学にあがる五男の耕史郎に至っては、もう赤の他人も同然だ。 ほかにもいるが、優莉匡太の逮捕時に幼児だった者が多く、 その後の発育過程に問題はないと思われた。(p.57)これに長男・架禱斗、次女・結衣、四女・凜香を加えた面々が、現時点で判明している優莉匡太の子どもたちということになりますが、五女・弘子は存命しており、岸本姓を名乗っています。四男・明日磨や七女・伊桜里、五男・耕史郎も、今後登場することがあるのでしょうか?そして、今巻最大のサプライズは、日常の何気ない会話の中に仕込まれていました。それは、凜香を交えての、瑠那とクラスメイト・鈴山耕貴との次のやりとりです。 怪訝そうな顔で鈴山はつぶやいた。 「だけどナポレオンもチビだったらしいし、アルバタル・サギールとかの例もあるし……」 「なに? アルバ……誰だって?」 すると瑠那が微笑を浮かべた。 「きいたことがあります。2015年からのイエメン内戦かなにか……。 ケニー・ベイカー・レジェンドだっけ」(中略) 瑠那はいつものように控えめではあるものの、 鈴山の前だからか、意外にもわりとよく喋った。(中略) 鈴山が笑った。「冗談みたいなものだったらしいけどね。 内戦勃発の翌年か翌々年に、小人症の兵士が国内難民キャンプを全滅から救ったんだよ。 アルバタル・サギールはアラブ語で、小さな英雄って意味。 身体が小さくなきゃ入れない土管の奥に潜りこんで、爆弾を処理したとか」(p.183)最初、読んだときには、よく分からないままスルーしてしまっていたのですが、後で読み返すと、「なるほどな」と唸らされます。 ***今回のお話の軸は、”女子高生連続失踪致死事件”と”生命の畑”。知能指数の高い子供を必要なだけ生産しようとする計画の本格推進の背景には、施術を受けた胎児が出産後、短命に終わらずに済む治療法が完成したからと睨んだ瑠那が、その拠点である奥多摩の段丘崖の上、放棄分譲地にある廃校舎と廃病院に乗り込みます。”生命の畑”の計画実行者は、殷堕棲(インダス)こと奥田宏節医師。彼は、恒星天球教で教祖阿吽拿(アウンナ)こと友里佐知子の側近だった人物。そして、彼に加担するのが、警視庁公安部公安総務課刑事の青柳俊淳と、”異次元の少子化対策”を推進する浜管武雄少子化対策担当大臣。彼らの陰謀を阻止すべく、瑠那、凜香と共に、かつて陸自特殊作戦群に在籍していた凜香の担任・蓮實庄司や、以前、凜香に妻子共々印旛沼に沈めかけられた警視庁の坂東志郎捜査一課長が立ち向かい、ハードな戦闘シーンが繰り広げられます。一方、まだまだよく分かっていないのが、”EL異次体”という組織についてと行方不明となっている矢幡嘉寿郎前総理の立ち位置。さらに、留年して日暮里高校3年生となった雲英亜樹凪(きらあきな)の行動も不透明。5月25日発売予定の次巻では、そのあたりのことも次第に明らかになっていくのでしょう。
2023.04.29
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著者は『精神科医の本音』の益田裕介さん。 精神医学をベースに、ビジネスでも使える会話のテクニックをまとめた一冊。 自分の家族とさえあまりコミュニケーションが取れない人たちと コミュニケーションを取らなければならない精神科医が、プロの技術を公開。 *** また、相手は自分が話せば話すほど、そしてあなたがそれを聞くほど、 あなたへの信頼度を高めていきます。 「聞いてもらえている」ということで、好感を抱くのです。(p.115)これは大いに納得。確かに、相手からの言葉を受け止めたい気持ちより、こちらからの言葉を受け止めてほしい気持ちの方が、誰しもより強いのが常だと感じます。 こうした患者さんは、言葉とはうらはらに、「大丈夫な状態ではない」のです。 このような微細な変化に気づくために、話に熱中しすぎるのではなく、 表情や仕草など、相手のさまざまなところに注意を向ける必要があります。(p.120)これも、よく分かります。プロとして相手に接し、それに応対していくためには、相手のことをしっかりと見つめ、その状況を見極める冷静さが必要。でも、それが簡単にはいかないんですよね……。 本著は精神医学における会話に関する知識を網羅的に説明したというよりは、 面白そうなところや重要な部分を、つまみ食いのように説明させていただきました。 飽きずに読み切れるよう、さまざまな工夫を凝らしました。 もしこの本を読んで、「何か物足りないな」「もっと精神医学を知りたいな」と思った方は、 ぜひ僕のユーチューブチャンネルを訪れてください。(p.204)本著は、チャレンジの姿勢を強く感じさせる内容の一冊ではあったものの、私としては、もう少し医学的内容に重点を置き、内容の充実したものにしてほしかった。ユーチューブチャンネルを訪れる予定はない(と言うかそういう習慣がない)ので、次回は、そんな一冊が刊行されることを期待しています。
2023.04.23
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副題は「太宰治にグッド・バイ」。 本著を読み始めて、しばらくしてから、 「これは、やっぱり原作を読んでおいた方が良い?」と思い立ち、 『人間失格』と『グッド・バイ』を読んでから、本著の続きを読みました。 ***「太宰治の5通目の遺書とみられる文書」が発見され、文科省委託の筆跡鑑定家・南雲亮介が鑑定を進めていた。しかし、その報告書が仕上がる当日、書斎でボヤが発生し、南雲は一酸化炭素中毒で死亡。李奈は、警察の要請で南雲邸に向かい、そこに集っていた週刊誌記者たちに遭遇する。南雲の前に科学鑑定をした元大学教授・吉沢は音信不通という状況の中、李奈は、渋谷署の扇田刑事と共に南雲の妻・聡美や週刊誌記者、専門家らから話を聞く。一方、李奈と同時に本屋大賞にノミネートされた柊日和麗(ひいらぎ ひかり)の失踪を、鷹揚社で彼の編集を担当する小松由紀から聞かされると、柊の足どりも追い始める。鷹揚社の文芸編集長・田野瀬抄造が、柊失踪を外部へ情報提供しないまま時は過ぎ、やがて、柊の遺体が三崎港で発見されると、担当編集者・由紀は入院してしまう。後日、由紀から柊のプリントアウトした遺作原稿を見せられた李奈は、その内容に衝撃を受けるが、終盤には違和感をおぼえたのだった。一方、南雲邸近隣に落ちていたビニール袋から南雲のDNA型が検出され、吉沢元教授の居場所が判明、逮捕されると、李奈は全ての真相に気付く。そして、南雲邸に集った渋谷署の扇田らと南雲聡美、吉沢、週刊誌記者たち、さらには鷹揚社一行を前にして、李奈が驚愕の事実を語り始めたのだった。 *** 「そうです。ゲラ直しにしても、自分が書いたときの記憶が消えるぐらい、 日数を置いて取りかかったほうが、第三者に近い脳の状態でおこなえますよね。 いわゆる原稿を”冷やす”ことに、無関係の趣味の本が重宝するんです。 わずか数分でそれなりに冷やせます」(p.145)由紀とのやりとりの中で、李奈が語った言葉です。なるほど、です。
2023.04.23
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田島周二(34歳)は闇商売から足を洗い、雑誌編集に専念しようとしていた。 一女を授かった先妻を肺炎で失うと、埼玉の農家を実家とする女性を後妻とし、 母子を後妻の実家に預けたまま、自身は単身東京でしこたま儲けていた。 しかし、3年を経た時点で気が変わり、母子を田舎から呼び寄せたくなったのだ。 ところが、彼には10人近く愛人がおり、彼女たちと上手に別れる必要があった。 そこで田島は、文士の入知恵により、すごい美人を探してきて事情を話し、 彼女を妻ということにして、一緒に愛人たちを歴訪することにした。 そして、闇商売で関ったことのある、鴉声で怪力の持ち主・永井キヌ子に声をかける。キヌ子を伴って、まずは日本橋の某デパート内美容室に勤務する青木さんを訪ねる。そして、一寸位の厚さの紙幣束を彼女の上衣ポケットに滑り込ませ、「グッド・バイ。」と囁く。その後、キヌ子を口説き落とそうと、彼女のアパートを訪ねるも失敗した田島は、乱暴者の兄と同居する洋画家の水原さん宅に、怪力のキヌ子を伴い訪問しようと考える。 ***『グッド・バイ』執筆は、『人間失格』脱稿後の昭和23年5月15日に開始され、5月下旬には、第10回までの連載原稿が朝日新聞社に渡されていました。その後、6月13日に、太宰はこの世を去りましたが、その時には、第11回分から第13回分までの連載原稿が残されていたのです。そのため、このお話は、ここで未完のまま終わっています。
2023.04.23
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大庭葉蔵は、東北地方の金持ちの家の末っ子。 小さい時から人間を極度に恐れ、道化の一線でわずかにつながる事が出来た。 しかし、中学校の同級生・竹一には道化を見抜かれてショックを受け、 「きっと、女に惚れられるよ」「偉い絵画きになる」という二つの予言をされる。 その後、東京の高等学校に進学、議員である父の上野桜木町の別荘で過ごす。 そして、本郷千駄木町の画塾に通うようになると、6つ年長者の堀木正雄から 「酒」「煙草」「淫売婦」「質屋」「左翼運動」を知らされ、自堕落な生活に陥る。 しかし、父の都合で住まいが本郷森川町の古い下宿へ移ると、金銭状況は一変した。葉蔵はその頃3人の女性と付き合っていたが、そのうちの一人、銀座のカフェの女給・ツネ子と、我を失うほど飲んだ翌日の夜、2人で鎌倉の海に飛び込むが、ツネ子だけが死んでしまう。葉蔵は自殺幇助罪で警察に連行されたものの、丁寧に扱われた上に、起訴猶予となり、葉蔵の父親からヒラメと呼ばれていた書画骨董商・渋田の家に引き取られて行ったのだった。高等学校を追われ、今後の展望の持てない葉蔵は、ヒラメの家を出て堀木の家を訪ねると、そこで出会った雑誌社の記者・シヅ子が、5歳の娘・シゲ子と暮らすアパートに身を寄せることに。漫画の依頼も入り、生活も多少落ち着いてきたものの、外で飲み歩く癖は一向に収まらず、母子2人だけの幸せそうな様子を覗き観た葉蔵は、高円寺のアパートへはもう帰れなかった。次に葉蔵は、京橋のすぐ近くのスタンド・バアのマダムに迎えられ、その2階に身を寄せるが、向かいの煙草屋の看板娘・ヨシ子に、酒を止めたら嫁になってくれと言って約束をする。葉蔵は、約束を守ることが出来なかったが、ヨシ子はそれを信じようとせず、2人は結婚。築地のアパートで真っ当な生活が始まったと思われたが、堀木が訪ねてくると元の木阿弥に。そして、ヨシ子が汚される現場を目撃した葉蔵は、後日、砂糖壺の中にジアールの箱を発見。その催眠剤を全て飲み干すと、三昼夜生死の狭間を彷徨った末に覚醒したのだった。その後、薬局でモルヒネを入手した葉蔵は、やがて中毒状態となって脳病院へ。3か月後に長兄が用意した海辺の温泉地で療養生活を始めた葉蔵は、今年27歳になった。 ***高校時代に現代国語を教えてくれていた若い男の先生が、ことあるごとに「太宰の文学は……」と言っていたのを思い出します。小説を書くことを志していたようで、「その締めの部分は、もう既に決まっているのだ」と何度も仰っていました。その先生が、その後どうなったかは知りませんが、私のよく知っている先生の娘さんが、今年芥川賞を受賞されました。太宰が欲してやまなかった芥川賞、本当にスゴイ事ですね。
2023.04.15
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『ラプラスの魔女』の前日譚。 『マスカレード・イブ』と同じパターンの作品であり、 元の作品を決して傷付けることのない優れた作品であるところも同じ。 本当に、東野さんはスゴイ……。 ***鍼灸師・工藤ナユタは、北稜大学で流体工学を研究する准教授・筒井を通じて、日本を代表する脳外科医・羽原全太朗の娘・円華と知り合う。彼女は、7年前に北海道で発生し、大きな被害をもたらした竜巻により母親を失っていたが、その秘められた力によって空気や水の流れを読み、様々な人たちを手助けするのだった。「第1章 あの風に向かって翔ベ」では、引退の危機に追い込まれていたかつてのスキージャンプの名選手・坂屋を復活へと導き、「第2章 この手で魔球を」では、ナックルボールを補給できなくなった若手捕手・山東から、再挑戦の意欲を引き出す。「第3章 その流れの行方は」では、水難事故で息子が植物状態となってしまった教師・石部を、新たな希望に目を向けさせ、「第4章 どのみちで迷っていようとも」では、パートナーが自死したと苦悩するピアニスト・朝比奈に、真実を提示する。しかし、円華の本当の目的は、工藤ナユタを工藤京太に戻すことだった。かつて工藤京太として、13歳で映画『凍える唇』で主人公を演じた工藤ナユタ。甘粕才生監督の作品は、人間の本質に迫ったすごい映画と評論家たちからも褒め称えられたが、その内容は、主人公が性に溺れ、さらには同性愛にも目覚めるという内容だった。「第5章 魔力の胎動」は、一転して青江修介視点のお話。3年前のJ県灰堀温泉村で起こった硫化水素中毒事故が描かれる。親子3人が亡くなった不幸な事故の真実を解明し、男性客の自殺を未然に防いだ青江は、3年前を思い出しながら、D県警の要請で赤熊温泉駅へと降り立ったのだった。 ***こうして、お話はスムーズに『ラプラスの魔女』に続いていくのですが、シリーズ第3弾『魔女と過ごした七日間』が、3月17日に発売されています。円華は魅力的なキャラクターなので、今後もシリーズは継続しそうな予感。映画化も間違いなしでしょう。
2023.04.15
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本編が15巻で完結した7カ月後に、番外編として出版されたのが本著。 「EX」は「Expert」「Exhibition」等の語の省略形としても用いられますが、 本著タイトルの「EX」は、もちろん「Extra」の省略形ですね。 あれから5年後のお話が、15巻に登場した一ノ瀬寿々の視点で描かれています。 ***「プロローグ」では、学徳学園高等部に入学した寿々が、幼馴染の海藤剛士、葉山透、藤原千歳にOGMの再結成を呼び掛けます。寿々、透、剛士は、興味津々でかつての『ミステリー研究会』部室を見て回りますが、千歳はそれに加わることなく、一人で立ち去ったのでした。第1章「抹茶クリームソーダと恋の味。」では、寿々がOGMで何があったかを明らかにすべく、学徳学園大学部『京都民俗学』専任講師となった澪人に会いに行きますが上手くいきません。しかし、小春が東京の大学に進学したとの情報を得た後、出版社に勤務する愛衣を訪ねると、心霊スポットで危機に陥るも、審神者となった朔也に助けられ、2人から話を聞けたのでした。第2章「懐かしい桜餅と彼らの真相。」では、寿々、透、剛士が、安倍公正宅を訪ねると、和人、由里子に出会って話を聞くことに成功、千歳が澪人に腹を立てていると聞かされます。翌日、中庭の塔で久しぶりに澪人に対面した千歳は、苛立ちの感情を激しくぶつけます。そして土曜日、祇園『さくら庵』には、澪人と小春が二人で一緒に現れたのでした。第3章「愛しき回顧録。」は、小春視点の振り返り、澪人視点の振り返りのお話の後、櫻井家で行われた結婚の宴の様子が描かれています。これまで不明だったことや、誤って伝わっていたことが実際はどうだったのか等、色々なことが次々に明らかになっていきます。「エピローグ」では、新たなOGMの活動に千歳も加わり、顧問は澪人が務めることに。「おまけの宴」では、5月某日に賀茂邸で開かれた澪人と小春の結婚披露宴が描かれています。 ***お話も、いよいよこれでおしまいのようでもあり、書こうと思えば、新たなOGMのお話を、まだまだ書き続けることが出来るようでもあります。でも、「あとがき」を見る限りは、これでおしまいですかね。ただ、今巻の「おまけの宴」に、家頭清貴が登場していたように、『京都寺町三条のホームズ(19)』には、澪人が登場しているらしいですが。
2023.04.15
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「プロローグ」では、澪人が祇園の櫻井家を去っていく様子が描かれます。 第1章「紅姫竜胆の想い。」は、 伏見『さくら庵』のスタッフとなった、元賀茂家の管理人・松原信二郎のお話。 松原の兄・信一郎は、許嫁だった香澄が、ハイキングの途中、山道で滑落し、 亡くなってしまったことから、その妹・安曇と結婚しました。 しかし、安曇との間には子宝に恵まれず、別の女性と間に子供が生まれていました。 かつて想いを抱いていた安曇の苦境を知った信二郎は、実家の旅館へと向かうのでした。 第2章「和栗のモンブランと深まる謎。」は、旧幼稚舎に怨霊を集めた犯人を追うOGMのお話。朔也はコウメと共に、三善家の除霊師たちからの情報収集に努めます。一方、澪人たちは、安倍家訪問前に清明神社で、陰陽師の葛葉久義と遠藤卓の2人に、そして、安倍公正の家では算盤塾に通う霊力の強い小学生・剛士、徹、寿々の3人と出会います。第3章「かりそめの想いと特製あんぱん。」では、朔也と和人が稲荷山で遠藤卓に遭遇。その頃、千歳は葛葉久義から「探しものを手伝ってほしい」と頼まれていました。第4章「過去の清算と懐中しるこ。」では、葛葉が異界への入口を探していたことが判明。千歳は異界の中で安倍晴明と出会い、かつて葛葉を救った巫女の救出に奮闘します。「エピローグ」では、澪人が京都民俗学を学ぶため大学院進学を決意。小春はフリースクールで働きたいと、皆に宣言します。他のメンバーも、それぞれに自身の進む道について語り合うのでした。 ***遂に本編が終了しました。でも、番外編である『EX』が既に刊行されているので、早速読んでみます。さて、今巻にも登場した清明神社に、1か月程前に行ってきました。平日の午後でしたが、流石に人気スポットだけあって、結構たくさんの人が参拝されていました。参拝後、書置き御朱印を納める「御朱印フォルダー」を頂いてきました。
2023.04.09
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「プロローグ」では、祖母と京都に住むことになった千歳が、 祇園『さくら庵』に現れ、小春に求婚します。 第1章「金魚焼きと前途多難な幕開け。」は、朔也の陰陽師『顔見せの会』と、 祇園『さくら庵』に集ったOGMメンバーによる餃子パーティーが描かれます。 第2章「モダンな羊羹と除霊。」では、現代の安倍晴明・巫狐を自称する者が、 京都の心霊スポットへ除霊に赴く動画を配信している件について、澪人が宗次朗に相談。 その件について話し合うOGMメンバーは、吉乃の幼馴染である徳松学長から依頼を受け、 幽霊が現れると聞いた旧学徳幼稚舎に出向き、除霊を行ったのでした。第3章「それぞれの想いと疑惑。」では、朔也と愛衣が巫狐の正体を探ろうと、演劇部部長に繋がる故・東堂周平の孫・静流に会うため、北大路通の『アンティーク堂』へ。第4章「柚子饅頭とダムの龍神。」では、巫狐が天ケ瀬ダムに現れそうだと気付いたOGMが、現地で動画撮影する2人組が青龍を怒らせるのに遭遇、澪人と若宮がそれを鎮めたのでした。「エピローグ」では、澪人と千歳の囲碁対決中、小春の中学時代の元カレが『さくら庵』に。澪人は集中出来ず敗戦を喫しますが、小春が昔結婚したかったのは宗次朗だったと判明します。 ***今巻は、心霊スポットの動画騒動を軸にしながらも、登場人物たちの恋模様や、これからについて描かれているシーンが多かったです。本編も残すところ1巻となり、著者も締めくくりにかかっていることが伝わってきました。さて、どんなフィナーレが待っているのでしょうか。
2023.04.05
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精神科医の「診断」や診療時間、カウンセリングと薬物療法、 精神科の受診基準、病院・クリニックの経営、オンライン診療等、 精神科医療の実情について、現場の第一線で活躍する精神科医が記した一冊。 著者は、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介さん。 *** 精神科医の医療報酬は、 「医科診療報酬点数表:第8部 精神科医専門療法」というものにまとめられています。 基本的な外来診療は、「通院・在宅精神療法」という項目の中でまとめられていますが、 初診の場合は、「60分以上で540点(5400円)」、 再診の場合は「5分以上、30分未満であれば330点(3300円)、 30分以上はいくら長い時間診ても400点(4000円)」と定められています。 つまり、再診については、5分診ても、29分診ても、同じ報酬にしかならず、 かつ30分以上いくら時間をかけて診療しても、700円しか違いが出ないのです。(p.61)これが『再診は5分+α』の理由だったのですね。もちろん、「精神科医の数と患者の数の割合」の問題が大前提としてあり、一人の患者に多くの時間を割けない現実があるのも確かで、そのあたりの事情は、患者側としても受け入れざるをえないのでしょう。 心理士によるカウンセリングは、診療報酬制度上、治療行為としては定められていません。 つまり、保険診療の中にはカウンセリングによる治療は設けられていないのです。 カウンセリングの料金は決まっていませんが、相場としては1回30分~1時間で、 6000円~1万円程度というところが多いでしょう。 そのため、月に数回カウンセリングに通うとなると、 患者さんとしては安くない出費になります。 医師による診察料は、だいたい1500円程度なので(保険診療で3割負担の場合)、 割高に感じる方も多いと思います。(p.98)ただし、医療行為としての「認知行動療法」については、医師が5分以上、看護師が30分以上行った場合は3500点(3500円)、「精神分析」については、45分以上で390点(3900円)と定められています。先述したように、再診は「5分以上、30分未満で330点(3300円)、30分以上は400点(4000円)」であることから、精神科医が「認知行動療法」や「精神分析」を選択することは少なく、多くは「通院精神療法」として、普通に対話することになるとのことです。精神科に関連する書籍は、これまでに結構多数読んできたつもりでしたが、こんな内々的事情にまで踏み込んで記された書物には接したことがなく、大いに驚かされると共に、大いに納得させられました。まさに、本音が記された一冊でした。
2023.04.05
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