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ポール・アンダースン『地球帝国秘密諜報員』ハヤカワ文庫1950年代にアメリカで一世を風靡した傑作スペースオペラついに邦訳。まず、あまりにも直球のタイトルに気圧される。主人公の諜報部員ドミニック・フランドリーの型にはまりすぎで大変素晴らしい。脇を固めるキャラクターも安心して読める。水戸黄門的読みやすさといえる。アメリカのSF界では宇宙の007といわれていたようだ。いまこの作品を書いたのならば、月並みの塊と相手にされないだろうが、1951年にシリーズ第一作が出たのだからやはりすごい。あとがきによると007が書かれるよりも3年も前にこのシリーズが始まったのだそうだ。この作品が型どおりに書かれているのではなく、この作品が方を作り出した傑作のひとつなのだ。
2006.03.17
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小松左京『日本沈没』小学館文庫 映画のリメイクを機に人気再上昇。日本と日本人の関わりを描く不朽の名作。日本を失ってしまった日本人は、果たして日本人として存続することが出来るのか。D2計画で描かれるこのテーマを深めていくと日本人とは何なのかが少し見えてくるかもしれない。数々の自然災害を乗り越えてきたからか、それともそもそもそのような性質なのか、日本人は助け合いの大切さを理解している。日本の緊急援助や復興支援は海外からも高い評価を得ている。しかし、この作品で描かれるほどの長期にわたる壊滅的な、いや終局的な災害に直面したとき、外国はどこまで日本のことを思ってくれるだろうか。あるいは有事の際に他国は日本にどのように接するのだろうか。小説では、日本沈没後の日本人難民たちの苦難は直接は描写されていないが、やはりそこが非常に気になる。どれだけ美辞麗句を唱えたところで、国家はその国の国益や国民の利益を最優先するもので、他国のことなど二の次、三の次である。同盟国アメリカでさえも日本を守ることがアメリカの国益に適う場合でなければ、日本を守ることはないだろう。日本人のための国は、日本のみである。その日本を担えるのは日本人以外にない。本書は、日頃は意識しない空気のように当たり前にあると信じている平和な日常はどこにあるのか考える良い機会にもなるだろう。
2006.03.16
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渡辺京二『逝きし世の面影』平凡社ライブラリー江戸末期、明治初頭の日本に訪れた外国人から見た日本の様子を紹介し、失われた日本文明の実態を探る。現代日本につながる近代日本の歩みの出発点としてわかりやすいのはやはり、開国と文明開化だろう。日本の政治、社会、文化、その他あらゆるものが一新された明治維新は、もちろんいきなりおきたものではなく、江戸時代の着実で地道な努力の積み重ねがあったからこそのものであり、単に西洋との接触によりただ一朝一夕になされたものではない。しかし、文明開化すなわち近代化、欧化主義は、江戸時代まで脈々と続いてきた日本文明の終焉を意味するものでもあったといえそうである。だからこそ、現代の日本や近代日本の歩みをより理解するためには、江戸末期から明治初頭にかけての日本を理解する必要があるのではないだろうか。異邦人による日本見聞記を美化された幻想として否認することの愚かしさを著者は繰り返す。まあ、私の場合その恐れは少ないが、逆に日本人にとって不都合な外国人の記述から目を逸らしてはいけないと自戒しながら本書を読んだ。わりと耳が痛いような辛らつなことも一部書かれているが否定できないことで、それを少々残念に思った。そして、それを残念に思うこと自体、私が過去の日本文明に属していた日本人の思考とは異なる、近代以降の日本人である証左なのだと気付き、苦笑いさせられた。とはいっても、基本的に西洋文明からの訪問たちは、日本文明を照れくさくなるほど高く評価している。その素晴らしい日本文明がどの程度、現代日本に受け継がれているのかと思うと本当に残念である。また、敗戦、昨今のますます加速するグローバリズムの風潮は、現代日本をかつての日本文明との継続性をさらに希薄なものとしていく。とはいえ、現代日本のあちらこちらに在りし日のこの国の文明の面影を見ることができる。画一化、均質化のグローバル化の時代にこそ、日本とは何か、日本人とは何かということをじっくりと考えたいものである。
2006.03.11
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