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『趣味の文具箱vol.5』エイムック文房具系のムックの中で私が一番好きなシリーズ「趣味の文具箱」もついにvol.5まできた。文房具道楽も、趣味の一ジャンルとして市民権を得たといってもいいだろう。やはり趣味の行き着く先は、改造、ヴィンテージ、周辺の関連品のようである。特にこのような雑誌の場合、現行品の紹介だけならばネタがすぐに切れてしまうし、新製品の紹介だけならばネットショップに敵わない。また、愛好家にとっても巷で普通に買える現行品を買うだけでは物足りない。私は周辺の関連品には興味を持ちつつあるので、ペンケースやペン収納術の特集が今号で一番印象に残った。現在、ビスコンティの24収納のコファネットにペンをしまっているが、これを読んでペンケースとペントレーも欲しくなった。いま使っているペンケースは、ラミーのおまけのものでもうすでにヨレヨレで実にみっともない。ペン先の調整についてもいろいろ考えさせられた。インターネットを見ていると、どうやら最近の万年筆ブームではまった愛好家の中には、万年筆は調整しなければいけないものだとの強迫観念を持っている人もいるようだ。まあ、改造や調整に熱中する人の大半は、近年のブーム以前からの愛好家で、当時の現行品がアンティークになり必要性に迫られてオーバーホールしているようではあるが。気になるのは、本当に万年筆の調整は重要なことなのだろうかという点である。確かに、万年筆は、筆記角度や筆圧など他の筆記具よりも使用上の注意が多く、人によっては調整しなければ快適に書けないということも考えられる。しかし、私は今のところ現行品の未調整のペン先で強い不満を覚えたものはあまりない。安くはない値段の万年筆。調整しなければまともに書けないようなものを、メーカーが世に出しているとも思えない。むしろ万年筆で快適な筆記を楽しむためには、重さ、太さ、バランスといった持ち心地や握り心地が重要だと思う。とはいえ、安物のモノのペン先と高価なモノのペン先とでは、劇的に書き味が違う。ペン先調整すればさらに素晴らしい書き味が味わえるのかもしれない。
2006.02.27
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『時代小説読切御免第三巻』新潮文庫時代小説のアンソロジー。宮部みゆき、高橋克彦、東郷隆、宮本昌孝、杉本章子、高橋義夫、津本陽の短編を収録。高蒔絵風に盛り上げられた金色の題字の表紙がかっこいい。第一巻、第二巻を読んだからという理由で、第三巻、第四巻も買ったものの、あまり読む気がおきずしばらく放置していた。最近読んだ『一日江戸人』で、時代劇を読みたい気分になってきたので、引っ張り出してきて読んだ。
2006.02.20
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柳家小三治『ま・く・ら』講談社文庫噺家が高座で落語を始める前にやるイントロの小噺「まくら」の本。本来は耳で聞いたほうが面白いのだろうが、活字で読んでも楽しめる。知的で愉快な「まくら」は、エッセイのよう。ただ、間のとりかたがやはり噺家のもので、作家のエッセイとはだいぶ異なる。「駐車場物語」「日本の塩はまずい!」が特に面白かった。続編に『もひとつ ま・く・ら』という作品があるそうなので、こちらもぜひ読んでみたい。
2006.02.14
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雫井脩介『クローズド・ノート』角川書店万年筆が重要な役割を果たすとのことで読み始めた本だが、そんなことがどうでも良くなるほど面白い。のめりこんで一気に読み終えてしまった。本好きの間では「普段本を読まない人には受けるだろうが…」との声もあるようだ。確かにあまりにも綺麗に纏まりすぎの嫌いはあるが、日頃から本を読む人でも、大学生(教職課程ならなおよし)、万年筆を好む、ミステリ的な落ちを好む、泣ける話を好むという条件の幾つかに当てはまれば間違いなく満足できるだろう。塾の国語講師としていつも本文の意味や内容を説明・解説しているクセで、この作品の魅力を説明したくてたまらない。もっとも普通に読んだら私の解説なんぞ必要ないし、読んでいない人にはこの解説は迷惑なネタバレ以外の何物でもない。説明を一々書くのは野暮で興ざめとは知りつつ、あまりにも感動し感激したので自分のために書く。香恵と石飛さんの関係は、ノートに書かれている伊吹先生と隆の関係に重ねられる。また香恵のライバルとなる星美さんは、伊吹先生のライバルとなる「お嬢様」に重ねられる。伊吹先生のノートは単なる劇中劇のようなものではないということは本書のタイトルからもすぐわかる。しかし、読み始めたころは、単に香恵が自分の恋を伊吹先生の恋とダブらせているだけだと思っていた。香恵の話と伊吹先生の話がどのような形で融合するのか、ラストに近づくまで推測できなかった。ラストでなぜ香恵の話と伊吹先生の話がここまでダブるのかが明らかになる。話の細部がラストにつながる伏線として輝きを増す。読んでいる途中はさらっと流した数々の細かなエピソードも感動的な意味を内在していたのである。まあ、それはほとんどの小説にいえることで取立て書くべきことではないのだろう。しかし、あまり恋愛小説を読まない私にとって、ここまで謎解き的に落ちがある恋愛小説は新鮮で面白かった。構成はトリッキーだが、内容はごく身近な話題で、読者は自分の体験とダブらせて読み進めることが出来る。また、この話にはモデルがあるということも、作品に「魂」「共感できるストーリー」を与えることになり、読者の感動をより確かなものとしている。作中で万年筆を売る秘訣として「見た目や使い勝手そのものの印象とは別の魅力……言い換えれば、付加価値の一種」が挙げられている。本書が多くの人に指示されている理由は、面白い構成だけではない。それに加えて、共感できる内容であること、本書にはモチーフとなる話があったということ、万年筆ブームという時代の潮流に乗っていることなどがヒットの要因となっているのである。そしてこの本の最大の魅力である、恋愛小説としての内容について。これも解説的に書きたい気もするが、小恥ずかしいので割愛。ただ、非常に共感できるようなセリフが多々あったということは記したい。最後に、万年筆好きとしてコメントしたい。表紙の万年筆のイラストにまず惹かれ本を手に取り軽く立ち読みした。すると、立ち読みで万年筆ブランドの名称がやたらと登場するのでまずびっくり。しかも筆記具を選ぶシーンがリアルで、どうやら主人公は文房具屋の店員さん。恋愛小説は敬遠していた私も、これは買わねばならぬと運命的なものすら感じ、レジへと急いだ。話しは変わるが、私は雑誌やインターネットで欲しい万年筆を見つけて、それを買うために店に行って買ったり、通販で取り寄せるというスタイルで万年筆を購入している。家で悩んでから店に行く。それゆえ、お店の人に相談しながら品定めした経験はほとんどない。唯一店員さんに勧めてもらって購入したのはラミー2000のペンシルで、それも中学生の頃の思い出である。それ以降はペン先をFにするかMにするかを試し書きする程度で店でどれにするか悩むことはほとんどない。しかし、この本を読んで、お店の人に私に似合ったペンを幾つか見繕ってもらい、相談しながらどれにするのか決めるのも面白そうである。ただ、もうこの本を読んで、デルタのドルチェビータが欲しくなっているので、相談する必要がないような…←香恵の一押し、デルタ「ドルチェビータ ミニ」
2006.02.11
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杉浦日向子『一日江戸人』新潮文庫NHK「お江戸でござる」の解説で有名な杉浦日向子さんによる、実用的な江戸解説書。江戸時代が好きでもっとよく知りたいが、お堅い本はいやだという方にお薦めの一冊。浮世絵がバックボーンとなっている軽妙なイラストが楽しい。あくせく働くのが当たり前の現代。のんびりなんてしていられない。まかり間違ってニートやフリーターになれば「下流」として負け組みのレッテルを貼られてしまう。が、人間ならば怠けたい、のんびりしたいという願望は持っているのではないだろうか。しかし、それではいけないと自制する分別も持っている。その隙間で揺れ動くのが現代人の特徴だと私は勝手に思っている。そんな現代を生きる我々が、「月のうち半分も働けば、十分に女房子供を養え」る、という江戸時代にあこがれるのはごく自然なことだろう。自然の中で気ままに生きる。働くときはバリバリ働く。そして風流で粋な文化があちらこちらで競い合う。江戸時代のいき方こそ、いま流行のロハスなライフスタイルの見本だ。現代において何から何まで江戸流で生きていくことは不可能だ。けれども、そのエッセンスを幾つか取り入れ気分だけでも、優雅なちょい江戸ライフが味わえるだろう。本書には「あっという間にできる!!江戸前簡単特選肴」のレシピなど役に立つイラストが盛りだくさん。気取らない江戸町ぐらしの豆知識本として実に素晴らしい。
2006.02.09
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御堂地章『日本崩壊(上・下)』ハヤカワ文庫 経済破綻による未曾有の危機的状況を描く政治経済サスペンス。公共事業の乱発、政治家・官僚・業界団体の「鉄の三角形」から来る財政危機を糾弾する小説。軽い内容ではないが、一応は小説の形態をとっているので楽しみながら読める。ただ、政府批判や改革案の提言がメインとなっているので堅苦しいことこの上ない。しかしまあそれが本書の目玉だろうから仕方ない。「市民政府綱領」や「犯行声明」など、小説の一部とは思えないくらいの力作で論文かなにかのよう。狙撃犯の正体や、軍事的危機を煽った本当の黒幕の正体が明らかになるラストのどんでん返しは、本書のミステリとしての読みどころの一つだが、いまいち際立っていない。内容の是非は、識者の方々がいろいろ論じているかと思うので割愛。筆記具好きの私から見た本書のポイントをば。主人公が新聞記者であるため、筆記具に関する記述は多い。もしかすると元新聞記者だった筆者の好みや経験がもとにあるのだろう。主人公はカランダッシュのボールペンを取材のときに愛用する。お気に入りは愛人に貰ったモンブランのドネーションペンシリーズの第一弾「レナード・バーンスタイン」。よく行く文房具屋はもちろん銀座伊東屋。ニヤニヤしながらこれらの場面を読んだ。筆記具以外にも鞄や時計などにもいちいちブランド名や能書きを書く。横に写真を掲載したらカタログ雑誌が完成しそうな勢い。また主人公たちが食べる料理の描写も長い。奮発してご馳走を食べるシーンは何回あったか数え切れない。新聞記者、政治家、官僚たちの豪華できらびやかな世界を強調するために高級感を出そうと書いているのだろうが、少しくどい。
2006.02.07
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