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インフルエンザは侮れない伝染病である。1918年から20年にかけて猛威を振るったケースでは1700万人から1億人が死亡したと言われている。このインフルエンザは「スペイン風邪」とも呼ばれるが、最初の患者はアメリカのカンザス州にある軍事基地で見つかったという。 その死者数は5000万人から1億人で、CFR(致死率)は10から20%だと言われてきたが、新型コロナウイルス(COVID-19)で危機感を煽るためには不都合。アメリカのCDC(疾病予防管理センター)の推計によると、COVID-19のCFRは全体で0.4%という調査結果がある。 そこで、スペイン風邪のCFRを低下させる試みもある。スペイン風邪の死亡者数を1700万人から5000万人だと下方修正する人が出てきたのだ。当時の世界人口は20億人弱。死者数が1700万人で全ての人が感染していたとするならば、CFRは0.85%。5000万人なら2.5%になるのだが、全人類が感染していたという前提に説得力はない。 しかし、COVID-19のケースでも言えることだが、数値として信頼できるのは患者数よりも死者数。その死者数を下げるなら、これまでの推計値を否定する根拠が必要になるが、そうしたものは見当たらない。 ちなみに、CDCは2019年から20年にかけてのインフルエンザのシーズン(2019年10月1日から20年4月4日)にかけてのアメリカにおける患者数は3900万人から5600万人、死亡者数は2万4000年から6万2000人だと推計している。 それに対し、COVID-19の患者数は6月29日の時点で254万5250人、死者数は12万6369人だという。CFRは約5%ということになるが、この数値に問題があることは医療現場からの告発などで判明している。 ウイルス検査が信頼できないことは少なからぬ専門家が指摘しているが、それだけではない。本ブログでは繰り返し書いてきたように、アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は4月8日にFoxニュースの番組に出て、病院では死人が出ると検査をしないまま、死亡診断書に新型コロナウイルスと書き込んでいると話している。新型コロナウイルスへ感染していた場合、病院が受け取れる金額が多くなるからで、人工呼吸器をつけるとその額は3倍になるという。 こうした状況になっていることは医療の現場から告発されている。検査態勢が整っていない病院では、勿論、検査せずに死因を新型コロナウイルスにしているという。卒中などで倒れた人を速やかに集中治療室へ入れるためにはそうする必要があり、病院の経営としてもその方が良いからだ。不適切な人工呼吸器の使用が病状を悪化させているする告発もある。(例えばココやココ) インフルエンザの流行を抑えるため、すでに対策は存在する。情況によって学級閉鎖や学校閉鎖といった対策が講じられてきたのも対策の一部だが、これまで企業では「少々具合が悪くても出社しろ」という風潮があった。こうした企業の姿勢が感染を拡大させる一因になったと指摘されていたのだが、放置されてきたのだ。COVID-19に対する政策はそうした風潮を吹き飛ばし、経済活動だけでなく社会システム全体を麻痺させた。世界経済フォーラム(WEF)は資本主義の大々的なリセットを訴えている。ファシズム化だ。
2020.06.30
一部でエジプトが話題になっている。 この国は1979年3月にイスラエルと平和条約を結び、イスラエルを公式に承認した。それ以降、エジプト経済は軍に支配されるようになる。軍の系列下にある企業は受注で優遇されるだけでなく国税を免除されているので、当然の結果だと言えるだろう。退役した兵士の失業対策という口実で優遇されるようになったようだが、強大な利権システムを生み出すことになった。 平和条約を結んだ当時の大統領、アンワール・サダトはヘンリー・キッシンジャーの影響下にあった人物だが、1981年10月6日に暗殺されてしまう。その日から14日までスフィ・アブ・タレブが大統領代理を務め、そこから空軍大将のホスニ・ムバラクが2011年2月11日に辞任するまで大統領を務めた。 ムバラクを辞任に追い込んだのは2011年1月25日に始まった反政府運動。「アラブの春」と呼ばれる運動、つまりバラク・オバマ政権による体制転覆工作の一環だ。この工作はオバマ大統領が2010年8月に出したPSD-11から始まる。この工作ではムスリム同胞団を傭兵として使っている。 工作を作成したグループには国連大使を務めたサマンサ・パワーやロシア駐在大使としてプーチン政権を揺さぶろうとしたマイケル・マクフォールが含まれているが、それを実行する際には国務長官だったヒラリー・クリントンの側近、ヒューマ・アベディンが重要な役割を果たした。ヒューマの母親であるサレハはムスリム同胞団の女性部門を指導していた人物だ。 反ムバラク運動で中心的な役割を果たした若者のグループ「4月6日運動」はカラー革命の系統に属し、そのリーダーは2008年からアメリカ政府と接触していたこともわかっている。 ムバラク政権が倒された後、大統領に就任したモハメド・ムルシはムスリム同胞団の人間。彼の政権はムスリム同胞団の教義を国民に押しつけることになるが、反アメリカというわけではない。ムルシは1982年に南カリフォルニア大学で材料科学の博士号を取得、82年から85年までカリフォルニア州立大学で助教授を務め、航空宇宙局(NASA)でエンジニアとして働いた経験があるのだ。 ムルシはサウジアラビアの国教、ワッハーブ派との関係も悪くなかったのだが、アメリカのムスリム同胞団優遇は反発を招く。またムルシの政策はエジプト経済を破壊するもので、経済を支配する軍からも危険視されるようになった。軍やワッハーブ派も欧米と関係はある。 ところで、個人的な関係だけでなく、ムスリム同胞団はワッハーブ派と1950年代に強く結びついている。 ムスリム同胞団は1954年10月にガマール・アブデル・ナセルを暗殺しようとして失敗、同胞団は非合法化されてメンバーは国外へ逃れるのだが、その多くはサウジアラビアへ向かった。ナセルがエジプト大統領に就任するのは1956年6月。 ナセルの命はイギリス、アメリカ、イスラエルに狙われていた。イギリスの対外情報機関MI6(SIS)はナセルが大統領になる4カ月ほど前からナセル暗殺の検討を開始したと言われている。ロンドン駐在のCIAオフィサーだったジェームズ・アイケルバーガーからワシントンのアレン・ダレスCIA長官に宛てたテレックスの中に、MI6がナセルを殺す話をしていたとする記述があるという。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) 歴史的にイギリスやアメリカはムスリム同胞団と関係が深い。ナセルは1970年に心臓発作で急死した。その後に大統領となったのがサダトである。
2020.06.29
朝鮮半島では1950年6月25日に戦争が勃発している。その当時、半島の南にはアメリカの傀儡体制だった大韓民国があり、北には中国やソ連を後ろ盾とする朝鮮民主主義人民共和国が存在、戦いは中国とアメリカの軍事的な衝突という側面があった。 この戦争は北からの軍事侵攻で始まったとされているが、その当時、ダグラス・マッカーサーに同行して日本にいた歴史家のジョン・ガンサーによると情況は違う。朝鮮半島からマッカーサーに入った最初の電話連絡は「韓国軍が北を攻撃した」というものだったという。アメリカ軍は63万5000トンにおよぶ爆弾を投下、北側に住んでいた人びとの20%以上を殺すことになる。ちなみに、アメリカ軍が第2次世界大戦で日本へ投下した爆弾は約16万トンだ。 朝鮮戦争が始まったとされる日より前から南と北との間で軍事的な小競り合いは繰り返され、元特務機関員で戦後はCIAの工作員をしていた中島辰次郎によると、開戦の数カ月前からアメリカ側の命令で彼らは挑発工作を始めていた。 その当時、韓国の李承晩体制がアメリカの傀儡だということは広く知られていて、人気は朝鮮の方が勝っていた。その朝鮮の指導者だった金日成は6月7日に選挙を8月上旬に実施しようと呼びかけるが、その結果がアメリカの支配者にとって好ましいものにならないことは明白であった。 社会主義やコミュニズムを掲げる勢力だけでなく、自立した体制を樹立しようとする人びとをアメリカの支配者は嫌った。嫌われていたひとりが金九。第2次世界大戦中、上海にあった大韓民国臨時政府の要職に就いていた人物で、朝鮮半島に統一国家を建設しようとしていた。その金九は1949年に暗殺されている。 アメリカの支配者はウォール街の大物弁護士、ジョン・フォスター・ダレスを6月18日に韓国へ派遣、その足で日本を訪れて6月22日に吉田茂と会談、その日の夜に興味深い夕食会に出席している。 その集まりはニューズウィーク誌東京支局長だったコンプトン・パケナムの自宅で開かれた。出席者はアメリカ側がダレスとパケナムのほかニューズウィーク誌の外信部長だったハリー・カーン、ダレスに同行してきた国務省東北アジア課長ジョン・アリソン、そして日本側から大蔵省の渡辺武、宮内省の松平康昌、国家地方警察企画課長の海原治、外務省の沢田廉三だ。 夕食会の翌日に韓国空軍は北側を空爆、地上軍は海州を占領しているのだが、戦争勃発から3日後の28日にはソウルが朝鮮軍に占領され、韓国軍は馬山、大邱、浦項を結ぶ三角地帯に押し込められてしまう。そこでアメリカはソ連が欠席している国連の安全保障理事会で「国連軍」の派遣を決めて反撃を開始するが、苦戦した。指揮していたアメリカ軍の将校が山岳地帯での戦闘に不慣れだったことが原因だとする人もいる。 戦況が変化するのは1950年9月の仁川上陸作戦から。そこからアメリカ軍は北上し、南部を占領していた朝鮮軍を孤立させることに成功するが、その作戦の背後では旧日本軍の将校がアドバイスしていたとも言われている。それに対し、約30万人の中国軍が「義勇軍」として参戦、38度線まで押し戻す。中国はアメリカ軍の目的が中国にあることを理解していたはずだ。 中国を侵略する拠点として台湾も機能する。その台湾で権力を握っていた蒋介石たち国民党は1949年から岡村寧次大将などに接近、4月には岡村の下へ曹士徴を密使として派遣する。旧日本軍の将軍たちが処刑される中、岡村は無罪の判決を受けて帰国、GHQ/SCAPの保護下に入っていた。東京裁判が茶番だったことは、この事実からもわかる。 曹は岡村や富田直亮少将と東京の高輪で会談して台湾義勇軍を編成することで合意する。富田少将が「白鴻亮」の名前で義勇軍を指揮することになった。そこで義勇軍は白(パイ)団と呼ばれている。台湾でも日米合同で対中国戦が始まっていたのだ。 白団は1950年の正月頃に台湾へ渡り、日本軍の戦術や軍事情報を台湾軍に教育して国家総動員体制を伝授した。翌年の夏までに83名の旧日本軍参謀が台湾へ渡る。この「私設顧問団」が解散するのは1969年のことである。 CIAの顧問団に率いられた国民党軍約2000名は1951年4月に中国領内へ軍事侵攻、一時は片馬を占領したが、反撃にあって追い出された。翌年の8月にも国民党軍は中国へ侵攻しているが、この時も人民解放軍の反撃で失敗に終わっている。 1953年に大統領となったドワイト・アイゼンハワーは泥沼化した戦争から抜け出そうと考え、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと伝えたとされている。そして同年7月に休戦は実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)
2020.06.28
世界をファシズム化する口実に使われている新型コロナウイルス。昨年12月31日に中国から原因不明の肺炎患者が武漢で見つかったと報告を受けたWHOは3月11日にパンデミック(感染爆発)を宣言。当初、武漢にある海鮮卸売市場から感染は始まるとされた。 しかし、その後、それを否定する情報が伝えられている。ここにきて報告された新たな情報によると、昨年3月12日にバルセロナで採取された廃液サンプルから新型コロナウイルスが発見されたという。これまでもヨーロッパと中国では感染源が違うという説もあったが、今回の情報は新型コロナウイルス騒動を根本的に見直す必要を迫ることになりかねない。米英やWHOはこの情報を否定することになるのだろう。 新型コロナウイルスで最初に注目された場所、武漢には中国科学院の武漢病毒研究所がある。この研究所は米国テキサス大学のガルベストン・ナショナル研究所やカナダのナショナル細菌研究所と共同で細菌に関する研究を実施、タミフルやレムデシビルを開発したギリアド・サイエンシズともつながっていることが知られている。 武漢でアメリカの機関が研究を行うことになったのは、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長が中心になって進められていた研究をバラク・オバマ大統領が2014年に中止するように命じたからだとロバート・ケネディ・ジュニアは語っている。研究内容を懸念したのだという。そこでファウチは研究の拠点を武漢へ移動させた。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ軍が細菌化学兵器を研究開発する拠点はフォート・デトリック。そこの施設が昨年夏、数カ月にわたって閉鎖されたと伝えられている。廃液に絡む安全上の問題が発覚したことが原因のようだが、詳細は不明。その際、何らかの病原体が環境中に出た可能性もある。 昨年10月18日にニューヨークではコロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーション、イベント201が実施された。主催したのはジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、WEF(世界経済フォーラム)、そしてビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団。そのシナリオによると、感染者数は1週間で倍増するというペースで患者は増え、シナリオが終わるのは18カ月後、6500万人が死亡してからだ。 そのシミュレーションが実施された10月18日から27日にかけて武漢では国際的な軍人の競技会が開かれた。アメリカからも数百名の軍人が中国の武漢を訪れている。アメリカ人競技者は172名、全体では369名だったという。その時にウイルスが持ち込まれたという説もある。
2020.06.27
アメリカでも新型コロナウイルスを理由とした社会の収容所化が進められたが、経済活動の麻痺を懸念したドナルド・トランプ大統領はそうした政策を改めようとする。そうした中、5月25日からアメリカ国内で暴動が広がった。その中心にふたつの団体が存在すると指摘されている。BLM(黒人の命は大切)とアンティファ(反ファシスト)だ。 運動が一気に広がった一因はその主体の資金力、情報力、人脈にあるだろうが、そこに疑惑の目が向けられている。資金源として名前が出てくる団体にはCIAとの関係が指摘されてきたフォード財団、ソ連圏に対する工作を進め、ソ連消滅後には新自由主義を導入させようと活動してきたジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団、ケロッグ財団、ロックフェラー財団、ジョン・ケリー元国務長官の妻の一族が創設したハインツ基金、アイスクリームで有名なベン・アンド・ジェリー財団、ヒューレット財団などが名を連ねている。こうした財団は税金対策や宣伝のために創設されるが、工作資金を流す仕組みでもある。 こうした財団を作り出した富豪たちが自由や民主主義を理想とし、法律を尊重、庶民の権利を認めて公教育や医療システムを充実させ、強欲な巨大企業の横暴を規制しようとしているなら、新自由主義がこれほどはびこるはずはない。いや、そうした富豪こそ新自由主義を世界に押しつけてきた張本人である。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、新自由主義は強大な私的権力が国を上回る力を持つ世界を理想としている。そのために私有化を推進、強者総取りの社会を築いてきたのだ。新自由主義とは、フランクリン・ルーズベルトが定義したファシズムにほかならない。新自由主義はファシズムの別名だとも言えるだろう。 新自由主義の国外政策を知りたいなら、ウォルフォウィッツ・ドクトリンを見れば良い。これについても本ブログで繰り返し書いてきたが、彼らが行ってきたことは侵略、破壊、殺戮、略奪の繰り返しである。 そうした行為の手先としてジハード傭兵が使われてきた。その傭兵とは、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)やさまざまなタグをつけたアル・カイダ系武装集団だが、彼らはイスラエルと戦わない。それどころかイスラエルから支援されている。そうした傭兵を生み出し、育て、利用しているのがアメリカの支配層だということは本ブログで繰り返し書いてきた。 アメリカで展開されている暴動は旧ソ連圏で行われた「カラー革命」と同じだとする人もいる。この「革命」でもジョージ・ソロスは暗躍していが、CIAの資金を流す仕組みも活躍していた。CIAの資金を流す機関として国務省のUSAIDが有名だが、それを含む政府機関の資金という形でNEDへまず流れ込む。そこからNDI、IRI、CIPE、国際労働連帯アメリカン・センターなどへ渡り、工作に使われるわけだ。 アメリカでは1920年代からコミュニストは徹底的に叩き潰されてきた。そうした弾圧の中心に存在しているのがウォール街、つまり巨大資本だ。アメリカの労働組合、AFL-CIOがCIAと協力関係にあることも秘密ではない。その組合で重要な役割を演じていた人物として、アメリカ共産党の幹部だったジェイ・ラブストーンや戦時情報機関OSS出身のアービング・ブラウンが知られている。 BLMやアンティファが進めている運動はファシストを後ろ盾にしている。それが実態だ。運動の参加者は人種差別を問題にしても、強者総取りの仕組みや侵略戦争に反対しているようには見えない。マーチン・ルーサー・キング牧師、マルコムX、ブラックパンサーなどとは違うのだ。
2020.06.26
NATO事務総長を務めるイェンス・ストルテンベルグは6月8日、組織を改革するため、NATO2030なるプロジェクトを始めると宣言した。ロシアと中国に対抗するため、機構を太平洋へ広げ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、そして日本をメンバーにしようということのようだ。NATOが出てきた理由は東南アジア諸国がアメリカの思惑通りにならないためだろう。 日本はアメリカと1951年9月8日にサンフランシスコのプレシディオで安保条約に調印、その1週間前に同じ場所でアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国はANZUS条約を結んでいる。安保条約国とANZUS条約国に韓国をNATOに加えようということのようだ。 ストルテンベルグは「自由、民主主義、そして法による支配」という価値観を実践すると主張しているが、勿論、戯言。この価値観はNATOを生み出した勢力が破壊してきたものだ。 本ブログでは何度か書いてきたが、NATOはイギリスとアメリカが第2次世界大戦後に設立したACUEをベースにして1949年に設立された。表向きの目的はソ連軍の侵攻に備えるというものだが、当時のソ連軍はドイツ軍との死闘で疲弊、西側を制圧する余力は残されていなかった。真の目的はヨーロッパを支配するためだ。 大戦の終盤、米英両国はコミュニストが主導権を握っていたレジスタンに対抗するため、ジェドバラというゲリラ戦部隊を編成していた。戦争が終わってからそれを基盤にして秘密部隊を編成、NATOが創設されると、その中へ組み込んだ。そうした秘密部隊の中でも最も広く知られているのはイタリアのグラディオだろう。 これも本ブログで繰り返し書いてきたが、イギリスにはユーラシア大陸の周辺部を支配し、内陸国を締め上げていくという長期戦略がある。アメリカはそれを引き継いだ。その戦略をまとめ、1904年に発表したのが地政学の父とも呼ばれているハルフォード・マッキンダー。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もその理論に基づいている。 ユーラシア大陸を締め上げる三日月帯の西の端はイギリス、東の端は日本。イギリスが明治維新に深く関与し、日本に技術を提供、資金を供給したのは日本列島を東アジア侵略の拠点とし、日本人を傭兵として使うためだろう。琉球併合、台湾派兵、江華島への軍艦派遣、日清戦争、日露戦争、韓国併合、そして中国侵略はイギリスの長期戦略に合致している。 イギリスとアメリカの支配階級、より具体的に言うならば両国の巨大金融資本がその後、日本を支配し続けてきたことは本ブログで何度も書いてきた。そうした勢力が日本を支配するために作り上げたのが天皇制官僚システムだ。 ところで、ストルテンベルグは2005年10月から13年10月にかけてノルウェーの首相を務めた人物。その間、2011年7月にノルウェーでは77名が殺されるという事件が引き起こされている。オスロの政府庁舎が爆破されて8名が犠牲になり、ウトヤ島のサマーキャンプ場での銃撃事件で69名が射殺されている。 キャンプ場では与党だった労働党の青年部が企画したキャンプが行われていて、約600名のティーンエージャーが参加していた。犠牲になったのはそうした人びとだ。党幹部にも責任はあったのだが、ストルテンベルグは責任をとっていない。首相を退いた後、彼はNATOの事務局長になり、タカ派ぶりを遺憾なく発揮することになる。
2020.06.25
世界規模でパラダイム・シフトが起こりつつある。新型コロナウイルスに対する恐怖心が人びとをファシズムへと駆り立てているのだ。すでに監視体制は強化されはじめ、社会の収容所化は確実に進んでいる。 昨年10月にジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターやビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と共同でコロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーションを行った世界経済フォーラム(WEF)は資本主義の大々的なリセットを訴えたが、そのリセットで生み出される世界は強大な私的権力に支配される。つまりファシズムの世界だ。 そうした動きと並行してアメリカでは暴力的な抗議活動が展開されている。抗議の対象は人種差別のように見えるのだが、日頃、被支配者から富を搾り取っている富豪やその手先になっている人びとがその活動に賛同しているように演じているのは滑稽だ。 アメリカでは公教育や医療システムが崩壊、新型コロナウイルスの騒動でもその実態が浮き彫りになっている。1%に満たない富豪やその手先が支配階級を形成、大多数の庶民が支配されている。貧富の差は圧倒的だ。一見、人種差別に反対する抗議に見える運動はその階級対立を覆い隠している。 アメリカの人種差別は奴隷制と密接な関係があるが、その奴隷制の歴史は遅くともエリザベス1世の時代、つまり16世紀までさかのぼることができるだろう。その当時、イギリスの支配者は海賊を使い、富を築いていた。 例えば、西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗み、人身売買のために拘束されていた黒人を拉致、その商品や黒人を西インド諸島で売りさばいて金、真珠、エメラルドなどを手に入れていたのだ。海賊は略奪だけでなく、反乱の鎮圧にも利用されている。 イギリスの海賊が襲っていたポルトガルやスペインも真っ当な方法で儲けていたわけではない。例えば1521年にスペインのエルナン・コルテスはアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を侵略、莫大な金銀を奪って国を滅亡させている。同じスペインのフランシスコ・ピサロはインカ帝国(現在のペルー周辺)を侵略して金、銀、エメラルドなどを略奪して国を滅ぼした。 これも本ブログですでに書いたことだが、ヨーロッパ人は莫大な量の貴金属品を盗んだだけでなく、先住民を奴隷として使い、鉱山開発という形で資源を盗み出していた。 つまり、ヨーロッパ系の白人が略奪し、アジア、アフリカ、中南米の非白人が略奪されていたのだ。そして略奪者が被略奪者を差別するという構図だ。 しかし、略奪された白人も存在する。オリバー・クロムウェルは17世紀に騎士派(王党派)を破り、小農民や職人層に支持されていた水平派を潰し、アイルランドを侵略している。侵略前に147万人だった人口は侵略後に62万人へ減少した。そのうち殺されたのは50万人で、残りは「年季奉公」や「召使い」として売られたとされているが、その実態は奴隷だったという。人種の違いは奴隷や差別の本質ではない。 アメリカにおける公民権運動の指導者として知られているマーチン・ルーサー・キング牧師は暗殺される1年前、1967年4月4日にニューヨークのリバーサイド教会で「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」という説教を行っている。 牧師はベトナム戦争を不当で、邪悪で、不必要だと表現、その悲惨な戦争の真実を聞くべき時が来ていると語り、大半の国民が自分自身を欺いているため、そうした真実は明らかにならないとも指摘する。そのうえで、そうした偽りの中で生きることは精神的な奴隷状態で生きることを意味するともしている。人種差別と侵略の根本は同じであり、戦争に沈黙する公民権運動はありえないと考えていたのだ。そして1968年4月4日にキング牧師はテネシー州メンフィスのロレイン・モーテルで暗殺された。 現在、アメリカで展開されている抗議活動の切っ掛けは5月25日の事件。ミネソタ州のミネアポリスでジョージ・フロイドが数名の警官に取り押さえられた際に死亡したのだ。フロイドはあるマーケットで買い物をして20ドル紙幣を渡したのだが、店員はそれを偽札だと判断、警察に通報したのである。 フロイドは「エル・ヌエボ・ロデオ」というナイトクラブの警備員として働いていたが、取り押さえた警官のひとり、デレク・ショウベンも同じナイトクラブで警備員として働いていた。つまり同僚だ。 死因は窒息だとされているようだが、写真で見る限り、膝は頸動脈を押さえているようだ。それだけで窒息するとは思えない。泥酔していたとする店員の判断が正しかったなら、嘔吐して窒息することはあるかもしれない。 しかし、フロイドの血液検査で検出されたのはアルコールでなく、致死量の3倍という量の麻薬性鎮静薬フェンタニルだったと伝えられている。これだけの量が検出されたとなると、本人が使ったのかどうかも問題になる。
2020.06.24
ジョン・ボルトンの回顧録が6月23日に売り出される。ドナルド・トランプ大統領は国家安全保障にとって問題だとして出版を止めようとしたが、裁判所はその主張を認めなかったようだ。 嘘を平然とつける性格なのか、あるいは妄想と現実の区別がつかないのかは不明だが、ボルトンは事実に反することを主張してきた。出版が予定されている本の中でもイエローケーキ(ウラン精鉱)をイスラエルの情報機関員が2018年にイランで発見したと主張しているようだ。 要するに、ボルトンが書いた新著は信憑性がないのだが、それでも出版が容認された意味はある。権力犯罪を告発する道が広がるからだ。ボルトンだけが許されるなら、それは司法システムを揺るがす問題になる。 内部告発としてはダニエル・エルズバーグが1971年にベトナム戦争に関する国防総省の秘密報告書を有力メディアへ流した出来事は有名だ。住民皆殺し作戦(フェニックス・プログラム)については伏せられていたという問題はあるが、それでも彼は犯罪者として処罰されそうになった。 1970年代の半ばにはアメリカの議会で情報機関の違法行為が調査されている。上院では1975年1月、情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会が設置され、同年2月には下院で情報特別委員会が設置された。上院の委員会はフランク・チャーチ議員が、下院の委員会はルシエン・ネジ議員がそれぞれ委員長に就任する。ただ下院の委員会はすぐにオーティス・パイク議員へ委員長が交代になった。 こうした委員会の調査によって法律を無視した国民監視作戦、要人暗殺計画、フェニックス・プログラム、マインド・コントロールを目的としたMKウルトラ、あるいはメディアをコントロールする目的のモッキンバード、破壊工作を目的とした極秘機関OPCが存在した事実などが明らかにされた。 1975年8月17日にNBCのミート・ザ・プレスという番組に出演したチャーチ議員は情報機関が国民を監視することに関し、そうしたことが行われると人々の隠れる場所は存在しなくなると警告していた。 それに対し、アメリカの支配階級は内部告発を封印するための規制を強化し、メディアの統制を強めていった。この頃から規制緩和で有力メディアの所有者が集中、気骨あるジャーナリストは有力メディアから排除されていく。日本でも同じこと行われた。そしてジャーナリストのむのたけじが1991年に講演会で発言したように、「ジャーナリズムはとうにくたばった」(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)という状態になったのだ。 それでもアメリカでは内部告発はあった。例えば電子情報機関NSAの不正行為を明らかにしたエドワード・スノーデン、イランへ核兵器に関する資料を渡して開発させ、イラン侵略の口実を作るというCIAの危険な作戦を組織内部で警告したジェフリー・スターリング、そしてCIAなどによる拷問を告発したジャニス・カルピンスキーやジョン・キリアク、そして内部告発を支援する活動を続けてきたウィキリークスを創設したひとりのジュリアン・アッサンジ、ウィキリークスへ情報を提供したブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵などだが、いずれも支配階級から厳しい報復があった。 勿論、ボルトンとこうした内部告発者は違う。イエローケーキはイラクを先制攻撃する際にも使われた嘘だ。ジョージ・W・ブッシュ政権には侵略戦争を正当化するための偽情報を流すネオコンの機関も国防総省内に設置されていた。OSPだ。その責任者になったエイブラム・シュルスキーはポール・ウォルフォウィッツと同じようにシカゴ大学で政治科学の博士号をレオ・ストラウス教授の下で取得した人物で、ボルトンと同じ親イスラエル派だ。 こうしたネオコンの嘘はイギリスでも内部告発で暴かれている。アメリカ政府は侵略戦争を正当化するため、国連で秘密工作を実行したが、その工作に関する電子メールをGCHQ(イギリスの電子情報機関でアメリカのNSAと緊密な関係にある)の翻訳官だったキャサリン・ガンが告発した。その出来事に基づく映画「オフィシャル・シークレッツ」が昨年、公開されている。(日本では今年5月に公開が予定されていたが、新型コロナウイルス対策ということで、延期された。) アメリカ政府の要請を受け、イギリスのトニー・ブレア政権は侵略を正当化するために捏造文書を作成したが、その事実は2003年5月に明かされる。BBCの記者だったアンドリュー・ギリガンがラジオ番組でその問題を取り上げ、サンデー・オン・メール紙でアラステアー・キャンベル首席補佐官が偽情報を流したことを明らかにしたのだ。 ギリガンの情報源はイギリス国防省で生物兵器防衛部門の責任者を務めていたデイビッド・ケリーだが、7月17日に変死している。公式発表では手首の傷からの大量出血や鎮痛剤の注入が原因で、自殺だとされているが、手首の傷は小さく、死に至るほど出血したとは考えにくい。しかも彼は古傷のため、右手でブリーフケースを持ったりドアを開けたりすることができず、1991年に落馬して骨折、右肘に障害が残っていた。
2020.06.23
シリア西部にあるイドリブで外国勢力の手先として戦闘を続けているアル・カイダ系武装勢力が統合され、ファスバトゥなる組織ができたようだ。資金や武器/兵器はNATOが提供するという。それだけでなく、アメリカはシリアに対する兵糧攻めを強化している。 また、クルド勢力の統合を進めるため、PYNKなる組織が5月20日に作られた。イラクでは1960年代後半からイスラエルの手先としてムスタファ・バルザニに率いられたクルド勢力が活動してきた。その後、息子のマスード・バルザニがその役割を引き継いだ。ムスタファはイスラエルの情報機関モサドのオフィサーだったと言われているが、息子も同じだと見られている。 シリアに対する侵略戦争を2011年3月に始めたのはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟、フランスとイギリスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設でシリアと対立したカタール、オスマントルコの復活を目論んでいたと言われるトルコ。途中、トルコは戦争の経済的な負担に耐えられずにロシアとの関係修復へ動く。 それに対してアメリカは2016年7月にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン体制を倒すためにクーデターを仕掛けたが、失敗。ロシアがトルコ側へ情報を提供していたと言われている。 そのロシアは2015年9月末にシリア政府の要請で軍事介入、侵略勢力の手先として戦争を続けていたダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)やアル・カイダ系武装集団を敗走させていた。 そこでアメリカはクルドを新たな手先とする一方、自国軍をシリアへ侵略させてジハード傭兵の穴を埋める。そのクルドと対立関係にあるトルコはクルドの武装勢力に対する戦争を始めたが、それだけでなく、イドリブで活動を続ける自分たちの手先に引きずられる形でシリア政府軍との戦争も完全に止めることはできなかった。 そうした中、エルドアン大統領は今年3月5日にロシアを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と会談し、戦闘の縮小で合意。それ以降、ロシア軍はイドリブでの空爆を止めていたが、ファスバトゥの登場で再開したと伝えられている。 ドナルド・トランプ米大統領はドイツ、シリア、アフガニスタン、イラク、韓国、日本から引き上げる意向だとリチャード・グレネル前ドイツ駐在米大使は語ったが、アメリカの支配階級はシリアの体制転覆を諦めていない。トランプ大統領はアメリカの支配システムの中で無視されているようにも見える。
2020.06.22
中国軍とインド軍が6月15日にカシミールのガルワン渓谷で衝突したと伝えられている。使われたのは棍棒だけのようだが、インド兵20名以上が死亡、中国兵は40名以上が死傷したとされている。両国は互いに相手が挑発してきたと批判、その詳細は明確でない。 中国、インド、パキスタンは領土を巡って対立を続けてきたわけで、インドは新型コロナウイルスの感染もあって国内が厳しい状況に陥っているとも言われているが、原因をそこだけに求めることは間違っているだろう。 元を正せば、イギリスによる植民地支配まで遡る必要があり、そのイギリスが引いた国境線に問題があるが、ここにきて対立が激しくなっているのは衰退しつつあるアメリカと勃興しつつある中国の対立が深刻化しているからだ。 中国は陸と海でユーラシア大陸の東と西を結ぼうとしている。一帯一路、あるいはBRI(帯路構想)と呼ばれているプロジェクトだ。ロシアは2015年にこの構想とユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)を連結すると宣言した。ユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げるというアングロ・サクソンの長期戦略への挑戦とも言える。 それに対し、アメリカはマラッカ海峡から東シナ海にかけての海域の支配力を強め、中央アジアでの工作も進めて中国のプロジェクトを妨害している。アメリカの中国に対する締め付けに日本も協力してきた。 そこで中国はマラッカ海峡を通過しないルートの開発に力を入れてきた。そのひとつがミャンマーを通過するものであり、もうひとつがパキスタンを通過するCPECだ。ガルワン渓谷での衝突はこのCPEC(the China-Pakistan Economic Corridor)プロジェクトと無縁ではないだろう。 中国は歴史的にパキスタンと関係が深いが、そのパキスタンでアメリカのCIAはインド、イスラエル、アフガニスタンなどの情報機関と手を組み、ジハード傭兵を使った破壊工作を進めている。パキスタンの中でも特に狙われている地域がバロチスタンだ。2016年にパキスタンで逮捕されたクルブシャン・ヤダブは自分がインドの情報機関員であり、バロチスタンの分離独立派と接触していたことを認めた。そうした工作の目的はCPECに打撃を与えることにある。 安倍晋三政権は2016年11月にインドのナレンドラ・モディ首相と一帯一路に対抗する目的でAAGC(アジア・アフリカ成長回廊)を設立、両国は日本からインドへ核燃料のほか原子力発電に関する施設や技術を提供することでも合意した。モディはイスラエルと緊密な関係にあることでも知られている。 そのインドが2017年にパキスタンと一緒にSCO(上海協力機構、上海合作組織)のメンバーになった。この組織の中心はロシアと中国で、メンバー国にはカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンも含まれている。この当時、インドはアメリカ離れしたのか、トロイの木馬なのかと議論されたが、結果を見ると後者だったようだ。
2020.06.21
新型コロナウイルス(COVID-19)の死亡率は季節性のインフルエンザ並みだと指摘する専門家は当初から存在した。その指摘が正しかったことをその後の情況は示している。 しかし、新型コロナウイルスに庶民、つまり被支配階級の人びとは恐怖して支配階級のプランを受け入れつつある。社会は収容所化され、ワクチンの強制的な接種が行われようとしている。世界経済フォーラム(WEF)は資本主義の大々的なリセットを訴えたが、その先にはファシズムの世界が見えている。 このWEFは昨年10月、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターやビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と共同でイベント201を主催、コロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーションを行っている。そのシナリオでは、患者が1週間で倍増するというペースで感染は拡大、18カ月後までに6500万人が死亡することになっていた。 伝染の拡大を収束させる手段として想定されているのがワクチンなのだが、ワクチンは伝染病に有効でなく、むしろ危険だと考える専門家もいる。 例えば1950年代に開発されたポリオ・ワクチンの場合、そのワクチンを投与したサルがポリオを発症することがすぐに判明したが、警告が無視されたことから多くの被害者が出た。 ワクチンの中に発癌性のSV(シミアン・ウイルス)40が混入しているとバーニス・エディは警告した。この研究者によると、SV40はサルを宿主とするポリオーマウイルスで、人間の体内に入り込むと癌を誘発するという。 そのように発言した当時、彼女はNIH(国立衛生研究所)に所属していたのだが、その発言にNIHの上司は激怒したと言われている。ちなみにNIHはアメリカにおける伝染病対策の中心的な存在であるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)の上部機関だ。 組織の幹部は警告を封印し、医薬品メーカーはワクチンの製造を続けた。製造が止まるのは1961年7月。リコールが宣言されたものの、NIHは市場へ出回っている製品全てを回収することを命じなかった。そこでアメリカ人は発癌性のワクチンを1961年から63年にかけて接種されることになる。 ジョン・F・ケネディ大統領の甥に当たるロバート・ケネディ・ジュニアによると、その結果、1996年の時点で血液サンプルの23%、精子サンプルの45%からSV40が発見され、80年から95年にかけて生まれた新生児の6%が感染していたという。(Judy Mikovits & Kent Heckenlively, “Plague of Corruption,” Skyhorse, 2020) 最近ではレトロウイルスのXMRVが問題になっている。癌だけでなくアルツハイマー病や自閉症の原因になるという疑いも持たれているのだが、そうした情報が広がると医薬品メーカーの経営にとって深刻な事態になる。利権グループはあらゆる手段を講じて情報を封印しようとするだろう。 ワクチンの問題は病原性のウイルスが混入していること以外にも存在する。個人を特定するためにデジタルIDを人体へ埋め込む基板としてワクチンを利用しようとする動きがあるのだ。そうしたデジタルIDを主張するNGO、ID2020は2016年から動き始めている。ID2020の出資者にはマイクロソフトやロックフェラー財団も含まれていた。 言うまでもなく、マイクロソフトはビル・ゲイツによって設立された会社。今は会社を辞め、活動の拠点をビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団へ移している。 その財団はWHOへ43億ドル以上したと言われているが、COVID-19の恐怖を煽ってきたアメリカにあるワシントン大学のIHME(健康指標評価研究所)やイギリスのMRC GIDA(医学研究委員会グローバル感染症分析センター)のスポンサーでもある。また2019年10月にNIAIDへ1億ドルをビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団は提供した。デジタルIDとワクチンが結びつけて考えられる一因はこの財団の存在にある。 デジタルIDで個人が管理される時代には免許証やパスポートは必要なくなる。もしデジタルIDの接種を拒否したなら、カネの出し入れもできない。つまり生活が極めて困難になる。 新型コロナウイルス騒動は3月11日にWHO(世界保健機関)がパンデミック宣言を出したところから始まった。同じ日、NIAIDのアンソニー・ファウチ所長はアメリカ下院の管理改革委員会でCOVID-19の致死性は季節性インフルエンザの10倍だと発言しているが、2月の終わりの段階ではCOVID-19の致死率は通常のインフルエンザ並みかもしれないとファウチは他のふたりと共同で書いていた。アメリカ政府が国家緊急事態を宣言したのは3月13日のことだ。 WHOのパンデミック宣言は大手医薬品メーカーの影響を受けて行われてきたが、原子力を推進する組織で設立されたIAEA(国際原子力機関)との間で1959年に取り交わされた情報公開に絡む合意文書が存在している。その第1条第3項の規定により、一方の機関が重大な関心を持っている、あるいは持つであろうテーマに関するプログラムや活動の開始を考えている場合、プログラムや活動を考えている機関はもうひとつの機関に対し、問題を調整するために相談しなければならないというのだ。つまりIAEAの許可がなければ、WHOは放射線の健康被害に関して発表することはできない。 マイクロチップを利用して労働者を管理する試みは遅くとも2017年には実行されているが、アメリカ国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)は人間の心理を操作するチップを開発している。人間の頭脳と巨大コンピューターをつなぎ、個人の言動を監視するだけでなく思考や心理を操る時代が目前に迫っている。そうした社会を実現するために必要とされているのが5G(第5世代移動通信システム)だ。 5Gの導入によって通信のスピードが速くなり、容量が膨大になる。この技術は健康に悪い影響を及ぼすと言われているが、そうした負の側面を無視する形で各国は導入しようとしている。世界中の人間を監視するためにもその技術を導入する必要だ。 アメリカは5Gで主導権を握りたがっているが、その技術開発で先頭を走っている会社は中国のファーウェイ・テクノロジーズ(華為)。アメリカ政府がこの会社を激しく攻撃してきた理由もここにある。中国は昨年10月に武漢で5Gを実際に使い始める予定になっていた。その武漢で11月ないし12月に新型コロナウイルスの患者が見つかったわけだ。
2020.06.20
地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止すると安倍晋三政権は発表した。配備が予定されていた場所は秋田県と山口県で、システム2基の価格は4664億円だが、1機約40億円というミサイルは別売りのため、建設費などを入れると合計7000億円以上になるという。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、明治維新以降、日本はイギリスやアメリカ、つまりアングロ・サクソン系国が描く長期戦略の強い影響下にあり、そうした国々が日本へ技術を提供、資金を供給してきた理由もそこにある。彼らは日本列島を東アジア侵略の拠点、日本人を傭兵と考えてきたとしか考えられない。イギリスが自力で中国を制圧する戦力がないことはアヘン戦争を見ても明白だ。 アングロ・サクソンの長期戦略は、ユーラシア大陸の周辺部を支配して内陸部を締め上げ、最終的にはロシア/ソ連を制圧、覇権を握るというもの。制海権を握っていたことを利用しての戦略だ。 イギリスは海を支配するために海賊を使った。イギリスはエリザベス1世の時代、海賊を使い、富を築いたのである。例えば西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗み、人身売買のために拘束されていた黒人を拉致、その商品や黒人を西インド諸島で売りさばき、金、真珠、エメラルドなどを手に入れている。海賊は略奪だけでなく、反乱の鎮圧にも利用されている。 もっとも、イギリスに襲われたポルトガルやスペインは南アメリカなどでの略奪で富を築いていた。例えば1521年にスペインのエルナン・コルテスはアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を侵略、莫大な金銀を奪って国を滅亡させている。同じスペインのフランシスコ・ピサロはインカ帝国(現在のペルー周辺)を侵略して金、銀、エメラルドなどを略奪して国を滅ぼした。 ヨーロッパ人は莫大な量の貴金属品を盗んだだけでなく、先住民を奴隷として使い、鉱山開発も行った。その象徴的な存在がボリビアのポトシ銀山。盗み出した資源の総量は不明だが、そうした財宝や資源がヨーロッパ支配層の支配力を強めることになった。欧米、特にアングロ・サクソンは今でも強盗の習性から抜け出せないでいる。 この長期戦略は1991年12月のソ連消滅で達成された、と考えた人たちがいる。ネオコンもそう考え、潜在的なライバル国や従属度の足りない体制を破壊し、力の源泉である資源を支配しようと目論む。そして1992年2月に国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成した。この思い込みが現在、ネオコンを苦しめている。21世紀に入り、ウラジミル・プーチンが曲がりなりにもロシアを再独立させたからだ。 当時の国防長官はリチャード・チェイニーだが、国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツが作成の中心。そこでこのプランはウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 このプランのベースを考えたのは国防総省内のシンクタンクONAで室長を務めていたアンドリュー・マーシャルで、マーシャルの師と言われている人物はイギリス出身のバーナード・ルイス。ネオコンはこのルイスの戦略を信奉している。 ソ連消滅後、ネオコンを含むアメリカの好戦派は自分たちが世界の覇者になったと考え、単独行動主義を打ち出す。日本もアメリカの命令に従えば良いと彼らは考えたであろうが、細川護煕政権は国連中心主義を維持した。 そこで細川政権は潰されるが、同政権が設置した諮問機関の防衛問題懇談会はその後、「日本の安全保障と防衛力のあり方」という報告書を発表した。いわゆる樋口レポートだ。 この報告書が国連中心主義に基づいて書かれていたことからネオコンは激怒する。最初にこのレポートを問題にしたのはマイケル・グリーンとパトリック・クローニンで、ふたりはカート・キャンベル国防次官補を説得してジョセイフ・ナイ国防次官補らに自分たちの考えを売り込んだという。そしてナイは1995年2月に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表。そこには在日米軍基地の機能を強化、その使用制限の緩和/撤廃が謳われていた。 日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込んでいくということだが、それに抵抗する政治家もいた。日本側の反応は鈍い。そうした中、1994年6月に松本サリン事件、95年3月の地下鉄サリン事件が引き起こされる。その直後には警察庁長官だった國松孝次が狙撃され、1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われるスターズ・アンド・ストライプ紙が日本航空123便に関する記事を掲載、その中で自衛隊の責任を示唆している。 その1995年には大和銀行ニューヨーク支店で巨額損失が発覚、98年には長銀事件。この当時、証券会社や銀行の不正が相次いで明るみにでたが、こうした問題には大蔵省(現在の財務省)が深く関与していたはずで、アメリカに脅されたとしても不思議ではない。 1995年以降、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。旧ソ連圏での工作には深く関与していないだろうが、ネオコンたちが最も警戒すべき潜在的ライバルと考えている中国の問題では日本に重要な役割を求めてくる。そうした流れの中でイージス・アショアの配備は決まった。 こうした防衛システムは先制核攻撃の後、破壊を免れた相手の報復攻撃を迎え撃つことが目的だとする考え方があるが、それだけでなく、先制第1撃に使われるという見方もある。 イージス・アショアではSM-3というミサイルが使用されるが、その発射装置は射程距離が2500キロメートルという巡航ミサイルのトマホークも使えると言われている。防衛という名目でロシアや中国の周囲にランチャーを配置、INFの廃棄でトマホークを配備するということになると懸念する人もいる。 こうしたミサイル・システムのアメリカは強引に東アジアでも配備してきた。そのひとつが2017年4月に韓国へ持ち込まれたTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システム。 そうしたシステムの持ち込みを朴槿恵政権は、保守派ではあるが、嫌がっていた。その朴大統領は2017年3月にスキャンダルで罷免され、文在寅が大統領に就任するまでの空白期間にアメリカは強引に配備したわけだ。 安倍晋三政権の場合、ここにきてアメリカの支配層から見切りをつけられたように見える。そしてイージス・アショアの配備計画を停止する決断をした。
2020.06.19
韓国と朝鮮との関係が悪化している。開城にある共同連絡事務所を北側が爆破したのは象徴的な出来事だが、こうした情況を生み出した原因を両国だけに求めることは間違っているだろう。朝鮮半島に限らず、東アジア情勢はアメリカの中国との関係に大きく影響される。 朝鮮半島で和平の動きが顕在化したのは2018年4月27日のこと。韓国の文在寅大統領と金正恩委員長が板門店で会談したのだ。その直前、3月26日に金委員長は特別列車で北京へ入り、釣魚台国賓館で中国の習近平国家主席と会談している。 アメリカ政府はCIA長官だったマイク・ポンペオが金正恩委員長と握手している様子を撮影、4月26日に公開しているが、撮影日は中朝首脳会談の直後だった。アメリカ側は朝鮮半島の問題で自分たちが主導権を握っていることを宣伝したかったのだろう。 ミハイル・ゴルバチョフ時代のソ連に見捨てられた朝鮮だが、ウラジミル・プーチンがロシアの大統領になると情況が替わる。2011年にロシアのドミトリ・メドベージェフ首相は朝鮮の最高指導者だった金正日とシベリアで会い、110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると提案したのだ。その後、ソ連のプロジェクトは中国の一帯一路とリンクする。 ロシアは天然ガスのパイプラインや鉄道をシベリアから朝鮮半島の南端まで延ばす一方、朝鮮の地下に眠る資源を開発しようと考えていた。そのプロジェクトに金正日は同意するのだが、2011年12月17日に急死してしまう。 列車で移動中に車内で急性心筋梗塞を起こしたと朝鮮の国営メディアは19日に伝えているが、韓国の情報機関であるNIS(国家情報院)の元世勲院長(2009年~13年)は暗殺説を唱えていた。元院長によると、金正日が乗った列車はそのとき、平壌の竜城駅に停車していたという。 その後、朝鮮はミサイル発射や核兵器の爆破実験を盛んに行うようになり、アメリカは制裁を科すことに成功、ロシアのプロジェクトにとって大きな障害になる。朝鮮の好戦的な行動はアメリカの支配層にとって願ってもないことだった。 そうした情況が大きく変化したのが2018年4月だが、その13日前、アメリカ軍、イギリス軍、フランス軍はシリアに向けて100機以上の巡航ミサイル(トマホーク)を発射している。シリア政府軍の航空兵力を破壊し、地上のアル・カイダ系武装集団にダマスカスを攻撃させようとしたのだろうが、ミサイルの7割がロシア製の防空システムで無力化されてしまったと言われている。 つまり攻撃は失敗だったのだが、その1年前、2017年4月7日にもミサイル攻撃は思惑通りの結果を出せていない。その時はアメリカ海軍が地中海に配備していた2隻の駆逐艦、ポーターとロスから59機の巡航ミサイルをシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、その6割が無力化されたのだ。そこで1年後に発射するミサイルの数を倍増させ、その場所も分散させたのだが、結果はさらに悪くなったということである。 2017年の攻撃はトランプ大統領と中国の習近平国家主席がフロリダ州でチョコレート・ケーキを食べている最中に実行された。アメリカ側としては中国を恫喝するつもりだったのだろうが、逆効果だったわけだ。 バラク・オバマ政権もミサイルをシリアへ撃ち込もうとしたと考えられている。2013年にオバマ政権は化学兵器をシリア政府軍が使ったという偽情報を広めていたが、シリアへの本格的な軍事攻撃を始めると噂されていた。 そうした中、9月3日に地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されるのだが、そのミサイルは途中で海中へ落下してしまった。後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だったと主張したが、実際は攻撃を始めたのだと見られている。周辺国に対する事前の通告はなく、発射実験だとする主張に説得力がないからだ。ジャミングなどECM(電子対抗手段)が使われたと推測する人も少なくない。この経験から2017年には60機近いミサイルを発射したのだろう。 こうした出来事からロシアの防空システムが優秀だということが広く知られるようになった。朝鮮の指導部へも少なからぬ影響を及ぼしたはず。そして2018年4月、朝鮮はアメリカに気兼ねすることなく韓国の文在寅大統領と会談することになる。文大統領と金委員長はその年の9月18日と19日に平壌で会談、年内に鉄道と道路を連結する工事の着工式を行うことで同意したという。 そしてアメリカと朝鮮の首脳は2019年2月27日から28日にかけてベトナムのハノイで会談するが、合意に至らなかった。原因は国家安全保障補佐官だったジョン・ボルトンやマイク・ポンペオ国務長官にあると言われている。 その前年に韓国駐在アメリカ大使に就任したハリー・ハリスも朝鮮を敵視する考え方の持ち主。ミネソタ州のミネアポリスでジョージ・フロイドが数名の警官に取り押さえられ、死亡してから抗議活動、あるいはそれを利用した破壊活動がアメリカでは続いているが、この活動を支持する意思を韓国のアメリカ大使館は示してトランプ大統領を刺激していた。 朝鮮側の説明によると、朝鮮が制裁を部分解除する条件として核施設の廃棄を提示したところ、アメリカはそれを拒否して核プログラムの完全的な廃棄を要求、さらに生物化学兵器も含めるように求めたのだとされている。全面降伏の要求であり、朝鮮側が受け入れるはずはない。 アメリカ軍は2019年8月に韓国軍と合同軍事演習を実施、朝鮮は反発して韓国との和平交渉の継続を拒否、ミサイル発射実験を実施した。その直後に朝鮮人民軍総政治局の金秀吉局長を団長とする代表団が北京を訪問、中国と朝鮮の軍事的なつながりは一層強化されると伝えらている。その8月に期限が来るGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の延長をしないと韓国の国家安全保障会議は決め、大統領に報告したという。 軍事と経済両面で中国に圧力を加えているアメリカ政府は韓国を自分たちの陣営へ引き戻そうとしてきた。日本政府が慰安婦などの問題で韓国側を刺激することをアメリカは望んでいなかった。GSOMIAの問題を引き起こした安倍晋三政権に対する評価は低下しただろう。 そして9月9日、韓国では大統領に近い曺国が法務部長官に就任するのだが、検事総長だった尹錫悦に率いられたソウル東部地検刑事6部は曺を起訴、曺は10月14日に辞任を表明した。曺が大統領府民情首席秘書官を務めていた2017年、当時の金融委員会金融政策局長に対する監察を中断した疑いだが、曺本人は容疑を否定、「結論ありきの捜査」だと批判している。ちなみに、尹は自他共に認める保守派で、ミルトン・フリードマンの新自由主義を信奉している。つまりアメリカの支配層にとって好ましい人物だ。次の大統領選挙に出馬するつもりかもしれない。 その一方、アメリカ海軍は11月12日、巡洋艦チャンセラーズビルに台湾海峡を航行させ、対抗して中国海軍は17日に空母艦隊を台湾海峡へ派遣。アメリカは20日に沿海域戦闘艦のガブリエル・ギフォーズを南沙諸島の近くへ、また21日には駆逐艦のウェイン・E・メイヤーを西沙諸島の近くへ派遣して中国を挑発。韓国大統領府はGSOMIAを終了するという決定を停止すると11月22日に発表した。 その後、新型コロナウイルスの伝染拡大が問題になり、その責任をアメリカ政府が中国に押しつけたこともあって両国の関係はさらに悪化している。ポンペオは6月14日にアメリカ・ユダヤ人委員会で、中国はアメリカとイスラエルにとって脅威だと発言した。 アメリカとイスラエルが中国を巡って対立していることは本ブログでも紹介した。5月13日にイスラエルを訪れたポンペオ国務長官はベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、イスラエルと中国が経済的に結びつきを強めることは安全保障上のリスクであり、アメリカとの関係を危険にさらすと警告している。 それに対して中国大使館は15日に「ユダヤ人の友人を我々は信頼している」と語るのだが、16日にイスラエル駐在の中国大使だった杜偉がヘルツリーヤの公邸で心臓発作のために死亡している。中国政府は調査チームを派遣するとしていたが、その死に不審な点があると感じているのだろう。 アメリカは中国包囲網を強化し、ユーラシア大陸東部の軍事的な緊張を高めようとしている。そうした中、朝鮮は外交や安全保障に関する政策を大きく変更しているように見える。金正恩はプーチンほど忍耐力はないようだが、それでも朝鮮半島の緊張を生み出している原因を朝鮮に求めるべきではない。真の原因はアメリカにある。
2020.06.18
新型コロナウイルスはシリアへも広がっている。医薬品や医療設備が必要なわけだが、欧米から経済戦争を仕掛けられているシリアでは態勢を整えられていない。兵糧攻めで飢えさせようともしている。欧米はシリア国民を攻撃しているのだ。 欧米が経済戦争を仕掛けているのは、2011年3月に始まったシリアに対する軍事的な侵略が失敗に終わったからだと言える。その侵略戦争には中東の完全支配を目論んでいたアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟のほか、フランスとイギリスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設でシリアと対立したカタール、オスマントルコの復活を目論んでいたと言われるトルコなどが参加していた。後にカタールとトルコは離脱したが、残りの国はシリアの破壊に注力している。その一環としての経済戦争だ。 シオニストの一派、ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制、シリアのバシャール・アル・アサド体制、イランのイスラム体制を倒そうとしてきた。まずイラクに親イスラエル体制を築き、シリアとイランを分断したうえで両国を個別に潰していくという計画だ。それら1992年2月に作成されたアメリカ国防総省のDPG(通称、ウォルフォウィッツ・ドクトリン)につながる。21世紀に入ってからアメリカ、イスラエル、サウジアラビアはその戦略に基づいて動いてきた。 この3カ国より長期にわたり、シリアを狙ってきたのがフランスとイギリス。第1次世界大戦当時、オスマン帝国を解体して中東を食い物にするため、イギリスのマーク・サイクスとフランスのフランソワ・ジョルジュ-ピコは協定の原案を作る。そこに帝政時代のロシアが加わって1916年5月に秘密協定が結ばれた。これがサイクス・ピコ協定。その内容は1917年11月のロシア十月革命で成立したボルシェビキ政権によって明るみに出た。 協定が結ばれた直後の1916年6月、イギリス外務省アラブ局はオスマン帝国を揺さぶるため、アラブ人を扇動して反乱を起こさせた。「アラビアのロレンス」ことトーマス・ローレンスが所属していたのはそのアラブ局だ。そのイギリスはウィリアム・シェークスピアというエージェントをワッハーブ派のイブン・サウドに接触させていた。シェークスピアの戦死を受け、引き継いだのがジョン・フィルビーである。 その一方、イギリスはイブン・サウドとライバル関係にあったフセイン・イブン・アリも支援、この人物は1915年7月から16年1月にかけてイギリスのエジプト駐在高等弁務官だったヘンリー・マクマホンと書簡をやりとりしている。その書簡の中には、イギリスがアラブ人居住地の独立を支持すると約束した「フセイン・マクマホン協定」も含まれている。 イブン・アリは1916年、アラビア半島西岸にヒジャーズ王国を建国し、1924年にはカリフを名乗るものの、イスラム世界から反発を受けてイブン・サウドに追い出される一因になった。そのヒジャーズ王国は1931年にナジェドと連合、32年にはサウジアラビアと呼ばれるようになる。 アメリカ、イギリス、フランスなどは軍事的なシリア侵略も放棄していない。2015年9月末に始まったロシアの軍事介入でバラク・オバマ政権が作り上げたダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)は敗走したが、まだシリア西部のイドリブにはNATOから支援を受けている約3万人のアル・カイダ系戦闘集団が残っている。こうした戦闘集団から攻撃を受けているシリア政府軍やロシア軍は空爆で応じている。
2020.06.17
新型コロナウイスルを利用した世界の収容所化が進んでいるが、その黒幕たちが考えている新しい世界の姿を示していると指摘されているのがロックフェラー財団が発表した「国家Covid-19テスト行動計画」である。対策を講じるためには感染状況を把握する必要があるということだが、その目的は別にあるのではないかと疑われているのだ。 感染者に接近しているかどうかを監視する仕組みの開発がすでに発表されている。市街に張り巡らされた監視カメラで追跡することも可能だが、ブルートゥースの技術で感染者の存在を察知し、その情報をスマートホンを通じて知らせるというシステムも考えられている。そうしたシステムを共同で開発すると4月の上旬にアップルとグーグルは発表、マサチューセッツ工科大学も開発しているようだ。 そうしたシステムを機能させる前提として感染者を特定する必要があるわけだが、そのための大規模な検査なのだろう。ロックフェラー財団の報告書によると、当初は毎週300万人、半年以内に毎週3000万人へ増やすという。 これだけ検査すれば医薬品メーカーは大儲けだが、それだけでは留まらない。感染が確認されたと判断された場合、その場所をロックダウン(監禁)状態にする。日本はロックダウンしなかったが、それでも人びとの交流は制限され、経済は破滅的な情況に陥った。 ロックダウンは新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためだというのだが、その主張が怪しいことは本ブログでも書いてきた。ヨーロッパでは、新型コロナウイルスに感染していた死者を全て新型コロナウイスルが原因で死亡したように宣伝されていると言われているが、アメリカの場合、カネの力で病院が誘導されていると告発されている。新型コロナウイルスへ感染している患者を治療すると病院が受け取れる金額が多くなり、人工呼吸器をつけるとその額は3倍になるという。 アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は4月8日にFoxニュースの番組に出て、病院では死人が出ると検査をしないまま、死亡診断書に新型コロナウイルスと書き込んでいると話していたが、その後、医療の現場から告発されている。 検査態勢が整っていない病院では検査せずに死因を新型コロナウイルスにした方が経営的には良い。同じ理由で人工呼吸器をつけようとするのだが、不適切な使用が病状を悪化させているする告発もある。 昨年10月、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、世界経済フォーラムはニューヨークでイベント201を主催、コロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーションを行った。その世界経済フォーラムは新型コロナウイルスの伝染を利用し、資本主義の大きなリセットが必要だと訴えている。 新型コロナウイルスは政治経済のシステムを作り替えるために利用されつつある。西側で恐怖が煽られているのはそのためだろう。そうしたリセット、つまりクーデターを目論んでいる人たちが目指している世界を支配することになるのは強大な私的権力。ファシズム体制の樹立が彼らの目標であるように見える。
2020.06.16
一帯一路とユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)を連結させると中国とロシアが宣言したのは2015年のことだった。人や物資の交流を通じて世界を安定させようというプロジェクトだ。2017年頃になると、EUはもはやアメリカに頼ることはできないとアンゲラ・メルケル首相は語っている。冷戦に勝ち、自国が唯一の超大国になったと浮かれたアメリカの支配層は傲慢、強欲、凶暴という本性をあらわにしてしまい、求心力を失う一因になった。 そのメルケル首相は2019年9月6日に北京で習近平国家主席と会談、翌日には武漢を訪れた。その武漢で新型コロナウイルスの患者が発見されるのはその年の11月ないし12月だ。 一帯一路が新型コロナウイルスの問題で揺らいでいるという見方がある。経済力のない国に対して中国は融資してきたが、新型コロナウイルスの伝染拡大を防ぐという理由で採用された政策によって経済が麻痺、債務を返済できない国が出てくるだろうということだ。 中国もこの伝染病でダメージを受けたが、ほかの国々に比べると情況は悪くない。しかもアメリカに対する見方が世界的に悪化しているとも言われている。アメリカの支配者たちが新型コロナウイルスを利用して危機感を煽り、大手医薬品メーカーを儲けさせようと目論み、社会の収容所化を推進しているが、それに対する反発もあるだろう。 6月に入り、ドイツやフランスが中国との関係を維持しようとしていることを示す出来事もあった。習近平国家首席は3日にドイツのメルケル首相と電話で会談、5日にはフランスのエマニュエル・マクロンとも電話で会談している。 メルケル首相が武漢を訪れた翌月、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターやビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と一緒にイベント201を主催、コロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーションを行った世界経済フォーラムは新型コロナウイルスの伝染を利用し、資本主義の大きなリセットが必要だと訴えた。強大な私的権力が支配する体制を築こうと考えているのだろうが、中国の求心力は衰えていない。
2020.06.15
ドイツ駐在アメリカ大使を6月1日まで務めていたリチャード・グレネルは、ドナルド・トランプ大統領がドイツから駐留アメリカ軍のうち約9700名を削減するように命令したことを確認、さらにシリア、アフガニスタン、イラク、韓国、日本からもアメリカ兵を引き上げる意向だと語ったという。 これまでもトランプ大統領はシリアからアメリカ軍を撤退させると発言、議員だけでなく閣内からの反発を受けてきた。2018年12月に大統領がアメリカ軍をシリアから撤退させると発表した際にはジェームズ・マティス国防長官が辞任、ジョン・ボルトン国家安全保障補佐官とマイク・ポンペオ国務長官は中東を訪問し、シリアからアメリカ軍を撤退させるとしたトランプ大統領の発言を否定すると同時にその発言を肯定するというアクロバティックなことを行っている。シリア特使を務めていたジェームズ・ジェフリーも大統領と対立、結局、撤退計画は立ち消えになった。 ユーラシア大陸の周辺部を支配し、そこから内陸部を締め上げ、最終的には中国やロシアを支配するという長期戦略をアメリカの支配者は今でも維持、その包囲網の東端に日本列島はある。明治維新、日本人は東アジアを侵略するための傭兵になり、列島は侵略の拠点になった。 ユーラシア大陸の内陸部を周辺から締め上げるという戦略をジョージ・ケナンの封じ込め政策やズビグネフ・ブレジンスキーのグランド・チェスボードも基盤にしている。 この戦略をまとめ、1904年に公表したのが地政学の父とも呼ばれている地理学者のハルフォード・マッキンダーだが、制海権を握っていたイギリスはその前からそうした戦略に基づいて動いていた。それをアメリカの支配者は引き継いだわけだ。 こうした支配者たちはロシアを制圧すれば世界の覇者になれると考えていたが、1991年12月にソ連が消滅してロシアは西側巨大資本の属国になった。そうした巨大資本の手先として活動、巨万の富を築いた人びとがいわゆるオリガルヒだ。 この段階でネオコンなどはアメリカが唯一の超大国になったと考え、中国をはじめとする潜在的ライバルを潰しつつ、権力の基盤になるエネルギー資源の支配に乗り出す。そのプランが国防総省のDPG草案という形で1992年2月に作成された。 その戦略のベースを考えたのは国防総省内部のシンクタンクONA(ネット評価室)で室長を務めていたアンドリュー・マーシャル、執筆の中心は国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツ。そこでこのプランはウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、1991年にウォルフォウィッツはイラク、イラン、シリアを殲滅すると口にしたという。(ココやココ)イラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル体制を築いてシリアとイランを分断、その上でシリアとイランを倒すという計画をネオコンは1980年代に考えていた。 ところが、ジョージ・H・W・ブッシュたちはフセインをペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤と認識していた。そこでネオコンと対立することになり、スキャンダルの暴露合戦が始まったわけである。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、NATOはヨーロッパを支配するために米英の支配者が1949年に作り上げた組織。その母体になったのは1948年に作られたACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)だ。その中にはイギリスのウィンストン・チャーチルやアメリカのアレン・ダレスたちがいた。 NATO加盟国には破壊活動を目的とする秘密部隊が存在していることも本ブログでも指摘してきた。イタリアのグラディオが有名だが、フランスのOASもNATOの秘密部隊ネットワークにつながっていた。 その一部が1962年にシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を試みて失敗、ド・ゴールは1966年にフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、SHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出している。フランスで大統領暗殺未遂事件があった翌年、アメリカではジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された。 ケネディ暗殺ではニューオリンズの地方検事だったジム・ギャリソンが1969年に実業家のクレイ・ショーを逮捕、起訴している。ショーはサントロ・モンディアール・コメルシアールやパーミンデックスの理事を務めていた。 サントロの理事会メンバーには、イタリア最後の王を出したサボイ家のグティエレス・ディ・スパダフォロ、かつてイタリア王一族の弁護士を務めたカルロ・ダメリオ、追放されたハンガリーのフェレンク・ナジ元首相らが含まれていた。 また、パーミンデックスはアルジェリアの独立に反対する軍人グループへ資金を供給していたとイタリアでは報道されている。そのグループとはOASにほかならない。イタリア政府もサントロとパーミンデックスを危険な存在だと認識、1962年に両社は国外へ追放している。(Jim Garrison, “On The Trail Of The Assassins”, Sheridan Square Press, 1988) トランプ大統領の本心は不明だが、ドイツ、シリア、アフガニスタン、イラク、韓国、日本などに駐留しているアメリカ兵を減らすという主張はアメリカやイギリスの支配者層を刺激する可能性がある。脅しの可能性もあるだろう。
2020.06.14
新型コロナウイスルを利用して資本主義をリセットするべきだと世界経済フォーラムが主張していることは本ブログでもすでに指摘した。アメリカを中心とする資本主義体制が行き詰まっているからだ。そうしたリセットの先に強大な私的権力が支配する新秩序を現在の支配者は描いているはずだ。彼らが「民営化」や「規制緩和」という呪文を使い、私的権力の力を強めてきた背景にはそうしたプランがあったのだろう。国を凌駕する力を持った私的権力が支配する体制をフランクリン・ルーズベルトはファシズムと呼んだ。 基軸通貨としてのドルを発行する特権を利用して世界に君臨してきた国がアメリカ。そのシステムを維持するためには実社会に流通するドルをコントロールする必要があり、考えられたのは石油取引を利用してドルを還流させる仕組みであり、金融規制の大幅な緩和による投機市場の肥大化。そのシステムが限界にきている。そのひとつの結果としてアメリカの大手投資会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングズが2008年9月に連邦倒産法の適用を申請したわけだ。 多くの人に指摘されていることだが、リーマン・ブラザーズが倒産した背後では金融システムの破綻があった。破綻したシステムを延命させるため、アメリカ政府は「大きすぎた潰せない」という口実で金融機関を救済、「大きすぎて罪に問えない」ということでその責任者を不問に付した。その尻拭いをさせられたのは被支配者である庶民だ。 体制のリセットとはクーデターにほかならない。アメリカを中心とする支配システムの中心にいる人びとはクーデターを始めたということだろう。 1945年4月にニューディール派を率いていたフランクリン・ルーズベルトが急死した後、ウォール街を拠点とする富豪たちはホワイトハウスを奪還することに成功したが、その体制はまだ盤石ではない。1961年1月に大統領となったジョン・F・ケネディは巨大資本と対立、イスラエルの核兵器開発を阻止しようと動き、ソ連と友好的な関係を築こうとしたのだ。 社会的に影響力のある人びとの一部はケネディ大統領と同じ考え方をしていた。大統領の弟で司法長官を経て上院議員になったロバート・ケネディや公民権運動の指導者として有名なマーチン・ルーサー・キング牧師たちだが、ケネディ大統領は1963年11月に、キング牧師は68年4月に、ケネディ上院議員は68年6月にそれぞれ暗殺されてしまう。 1970年代の半ばに私的権力の暗部にメスを入れる動きが議会であったが、潰されてしまう。その一方で情報機関は体制を強化、規制緩和でメディアの経営母体が寡占化されていく。1980年代に地下政府の設置を含むCOGプロジェクトが始動、社会を収容所化する準備が始まる。 そして1991年12月のソ連消滅。ネオコンをはじめとするアメリカの支配者は自分たちが世界の覇者になったと認識、単独で行動できると考え、国連を無視するようになる。そして翌年の2月に国防総省のDPGという形で世界制覇プランが作成された。新たなライバルの出現を阻止する一方、権力の基盤になるエネルギー資源を支配しようと考えたのだ。 アメリカが考えた潜在的ライバルには西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアなどが含まれるが、特に警戒したのは中国。そこから東アジア重視という政策が出てくる。 中国を警戒するということは日本の重要度が上がるということでもある。国連中心主義を打ち出していた細川護熙政権は1994年4月に潰されてしまった。その細川政権の諮問委員会だった防衛問題懇談会はその年の8月に「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」という報告書を発表するが、これを読んだネオコンは激怒する。そして1995年2月に発表されたのがジョセイフ・ナイの東アジア戦略報告。いわゆるナイ・レポートだ。これ以降、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。 この戦争マシーンを始動させる引き金になる出来事が2001年9月11日にあった。ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのだ。この時のアメリカ大統領はジョージ・W・ブッシュだが、バラク・オバマも侵略戦争を続ける。前者が正規軍を投入したのに対し、その行き詰まりもあって後者はジハード傭兵を利用した。 ヒラリー・クリントンも軍需産業を後ろ盾とすることあり、ソ連との軍事的な緊張を高める方向へ向かおうとしていたが、そこで登場してきたのがソ連との関係修復を訴えたドナルド・トランプ。彼が有力メディアから激しく攻撃されたのはそのためだ。 おそらくトランプ以上に警戒されていたのが安全保障補佐官に就任するマイケル・フリン元DIA局長。フリンはオバマ政権がジハード傭兵を支援し、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)を生み出したことを熟知していた。 そこでフリンは民主党や有力メディアから激しく攻撃され、2017年2月に解任された。その背後でCIA、FBI、司法省などが暗躍していたことも判明している。特に注目されているのが2017年1月5日に開かれた会議。出席したのはオバマ大統領、ジョー・バイデン副大統領、スーザン・ライス国家安全保障補佐官、ジェームズ・クラッパー国家情報長官、ジョン・ブレナンCIA長官、ジェームズ・コミーFBI長官、サリー・イエイツ司法長官代理だ。この時点でCIAやFBIを含む勢力の反トランプ工作は始まっていたが、この会議はその後の展開にとって重要だと考えられている。 こうした人びとはウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて動いているが、その背後には19世紀にイギリスが始めた世界制覇戦略がある。制海権を握っていることを利用、ユーラシア大陸の周辺部分を制圧し、海運をコントロールして内陸を締め上げていくというもので、明治維新以降の日本はその手先として動いてきた。少なくともイギリス、その後継国であるアメリカは日本をそう見ている。 資本主義のリセット、つまりクーデターをイギリスやアメリカを中心とした西側の支配者が始めたとするなら、それもこの長期戦略に基づいているはず。今後、ファシズム化が進むだけでなく、軍事的な緊張が高まる可能性がある。彼らの操り人形になりきらないトランプは大統領として好ましくないのかもしれない。
2020.06.13
何らかの政策を劇的に変化させるためには劇的な出来事が必要だという考え方がある。ネオコン系のシンクタンクPNACは2000年に国防政策を変化させるためには「新しい真珠湾」と呼べるような壊滅的で刺激的な出来事が必要だと主張、2007年に出版されたナオミ・クラインの著作のタイトルは『ショック・ドクトリン』だった。 そして今、新型コロナウイルスが世界の秩序を大きく変化させつつある。その変化は今年3月11日から始まる。その日にWHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言、世界規模で収容所化政策が推進され始めたのだ。 これを受けて3月13日にアメリカ政府は国家緊急事態を宣言、イギリスのボリス・ジョンソン首相は3月23日にロックダウン(監禁)を宣言、そして4月7日に安倍政権は緊急事態を宣言している。 WHOにパンデミックを宣言させる上で重要な役割を果たしたのはイギリスのMRC GIDA(医学研究委員会グローバル感染症分析センター)とアメリカにあるワシントン大学のIHME(健康指標評価研究所)。両機関のスポンサーはビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団だ。 新型コロナウイルスに感染した人が中国の武漢で発見されたのは昨年12月、あるいは11月だとされているが、10月18日にニューヨークでイベント201が開催され、コロナウイルスが全世界で流行するというシナリオのシミュレーションが行われた。そのイベントを主催したのはジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、世界経済フォーラム、そしてビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団である。その想定通りのことがシミュレーションの直後に起こったわけだ。 西側、特にアメリカや日本では新型コロナウイルスに対する恐怖が煽られ、人びとはライフスタイルの劇的な変化を受け入れつつある。そうした中、世界経済フォーラムは資本主義の大きなリセットが必要だとしている。 すでにアメリカを中心とする資本主義体制が行き詰まっていることは本ブログでも繰り返し書いてきたが、リセットの先には強大な私的権力が支配する新秩序が描かれている。フランクリン・ルーズベルトが定義したファシズムの世界へ突入するということだろう。 数字を見ると東アジアより事態が深刻なヨーロッパでは、新型コロナウイルスに感染していた死者を新型コロナウイスルが原因で死亡したように宣伝されていると批判されている。アメリカの場合、カネの力で病院が誘導されているという。 例えば、アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員は4月8日にFoxニュースの番組に出て、病院では死人が出ると検査をしないまま、死亡診断書に新型コロナウイルスと書き込んでいると話している。新型コロナウイルスへ感染していた場合、病院が受け取れる金額が多くなるからで、人工呼吸器をつけるとその額は3倍になるという。 こうした状況になっていることは医療の現場から告発されている。検査態勢が整っていない病院では、勿論、検査せずに死因を新型コロナウイルスにした方が経営的には良い。同じ理由で人工呼吸器をつけようとするのだが、不適切な使用が病状を悪化させているする告発もある。偶然とは思えないほど体制をリセットしたい人びとにとって都合良く事態は進んでいる。(例えばココやココ)
2020.06.12
アメリカの支配層はドナルド・トランプを排除する方向で意思が統一されつつあるとする見方がある。マイク・ポンペオ国務長官やマイク・ペンス副大統領のようなキリスト教系カルトの一派だけでなく、CIA出身でジョージ・H・W・ブッシュの部下だったウィリアム・バー司法長官、軍需企業の重役だったマーク・エスパー国防長官などもトランプから離れ始めているとも言われている。 トランプは2016年の大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントンを破って大統領に就任したのだが、そのクリントンは上院議員時代からロッキード・マーチンという軍需企業の支援を受け、金融資本ともつながり、大統領選挙の時点ではシオニストの一派であるネオコンに担がれていた。 こうした背景があるクリントンは2015年の時点で次期大統領に内定していたと言われているが、年が明ける頃に情況が変化する。そうしたことを象徴する出来事が2016年2月10日にあった。ヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問、ウラジミル・プーチン大統領と会談したのだ。情況を変化させた大きな要因は、ロシアと中国の接近だった可能性が高い。 バラク・オバマ政権は2013年からウクライナでクーデターを始動させた。翌年の2月にはネオ・ナチを使い、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を暴力的に倒す。その後、キエフのクーデター政権はウクライナの東部や南部の反クーデター派の掃討作戦を開始。5月2日にはオデッサでネオ・ナチの一団が市民を虐殺、東部では市民とキエフのクーデター軍が戦闘を始めた。 一方、香港では2014年9月から12月にかけて反北京の「佔領行動(雨傘運動)」が行われる。活動の指導者としてイギリス王室の顧問弁護士だった李柱銘(マーチン・リー)が含まれていることでもわかるが、運動の背後にはイギリスとアメリカの情報機関、つまりMI6とCIAが存在していた。 アメリカを共通の敵と認識するようになったロシアと中国は接近、戦略的同盟関係に入る。エネルギー資源があってアメリカに対抗できる軍事力を持つロシア、そして金融や経済の面で強い中国は互いに弱点を補完し合うようになったわけだ。 1970年代からアメリカは基軸通貨としてのドルを発行するだけの国になっている。生産拠点は中国をはじめとする外国へ出て行き、国内の仕事はサービス産業が中心になった。支配層はドルを発行し、国外へ出たドルは産油国を使って還流させ、投機市場を肥大化させてドルを吸い上げ、オフショア市場を世界に張り巡らせて資金を沈める仕組みを作り上げてドルの発行を続けたのである。 いわば金融マジックだが、その仕組みが限界に近づいていることは、2008年9月に広く知られるようになった。アメリカの大手投資会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングズが連邦倒産法の適用を申請したのだが、破綻していたのは金融システム全体だった。 アメリカ政府は「大きすぎた潰せない」ということで金融機関を救済、「大きすぎて罪に問えない」ということでその責任者を不問に付してしまう。金融システムを救うためにリーマン・ブラザーズを潰したと考える人もいる。 この救済で付けは庶民に回され、支配層は大儲けしたが、それで問題が解決されたわけではなかった。10年を経て金融システムの情況はさらに悪化、2030年までドル体制は持たないと見る人もいる。 そこでドル崩壊後の世界秩序がどうなるかが問題になる。ひとつの道はロシアと中国をはじめとする多極化した世界だが、米英の支配層は新秩序でも支配者でいようともがいてきた。西側経済界の集まりとも言える世界経済フォーラムは資本主義の大きなリセットが必要だとしている。 そうした中、始まったのが新型コロナウイルスのパンデミック。その恐怖を西側の政府や有力メディアが煽り、恐怖に駆られた人びとはライフスタイルの劇的な変化を受け入れつつある。資本主義のリセットが始まったとも言えるだろう。 実際に新型コロナウイルスが発見する前、昨年10月18日にニューヨークでコロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーションが行われた。イベント201だ。その主催者はジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、そして世界経済フォーラムである。世界経済フォーラムは資本主義をリセットするコロナウイルスのパンデミックを予知していたのだろうか。
2020.06.11
ドイツには3万4500名のアメリカ軍が駐留しているが、そのうち9500名を削減するようにドナルド・トランプ大統領は命じたという。それに対し、ポーランド政府はドイツから引き揚げるアメリカ軍を受け入れる用意があると表明した。 アメリカとドイツとの間ではアメリカ軍の駐留経費の問題で揉めていたが、そうした軍事分野だけでなく、ロシアからEUへバルト海経由で天然ガスを運ぶためのパイプライン建設を巡っても対立している。 このパイプラインはノード・ストリームと呼ばれ、2012年に最初のものは稼働している。そのパイプラインに並行してノード・ストリーム2を建設することでロシアやEUの会社は2015年に合意。それに対し、ポーランドはこの計画を妨害するが、ドイツやロシアはプロジェクトを推進してきた。フィンランド、スウェーデン、デンマークもパイプラインの通過を認めている。 ノード・ストリーム2の建設でロシアとEUの合意した年が2015年ということは興味深い。その前年の2月、バラク・オバマ政権はウクライナでクーデターを成功させ、傀儡体制の樹立に成功している。その時にアメリカは実行部隊としてネオ・ナチを利用、その際のスキャンダルにジョー・バイデン前副大統領、そして息子のハンター・バイデンの名前が挙がっている。 アメリカ側はウクライナを支配することでEUとロシアを分断、ロシアが黒海艦隊の拠点として使ってきたクリミアのセバストポリを制圧しようとしたのだろうが、クリミアの制圧には失敗した。ロシアとウクライナは1997年に条約を結び、基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められていた。クーデター当時、クリミアに駐留していたロシア軍は1万6000名。クーデター後、西側の政府やメディアはこの部隊をロシア軍が侵略した証拠だと宣伝、それを真に受けた人も少なくない。 クリミアの制圧に失敗した最大の理由は、クリミアを含むウクライナの東部や南部はクーデターで倒されたビクトル・ヤヌコビッチ大統領の基盤だったことにある。オデッサでは反クーデターの市民が惨殺され、ウクライナ東部では市民とキエフのクーデター軍が戦闘になっている。 このクーデターの前、アメリカはポーランドなどでネオ・ナチを訓練しているが、このポーランドは第2次世界大戦の前からアングロ・サクソン系の勢力から大きな影響を受けていた。ノード・ストリームの件でもポーランドの背後にはアメリカが存在している。 そのアメリカはプロジェクトに参加している会社へ強い圧力を加えているが、ロシアは2020年の終わりから21年の第1四半期に完成させるとしている。 EUとロシアとの関係を断ち切ろうとしているのはオバマ大統領やトランプ大統領だけではない。議会も立場は同じで、最近ではテッド・クルズ上院議員やジーン・シャヒーン上院議員は制裁の拡大を目論んでいると伝えられている。 EU、特にドイツがロシアと手を組むことをアメリカやイギリスは恐れている。これは第1次世界大戦の前からの話だ。ロシアとドイツを戦わせたいイギリスはロシアの産業資本家や有力貴族と手を組んで戦争へと導こうとしたが、その前に立ちはだかったのが戦争に反対する皇后やグレゴリー・ラスプーチンという修道士。その背後には大地主がいた。 結局、ロシアはドイツと戦争を始めることになるが、その直前、ラスプーチンは銃撃されて入院を余儀なくされている。退院したのは開戦後の8月。その年の12月にラスプーチンは射殺された。暗殺はフェリックス・ユスポフを中心とする貴族グループが実行したとされている。 イギリス政府は1916年にサミュエル・ホーアー中佐を中心とする情報機関のチームをロシアへ送り込んでいる。そのチームの中で特に注目されているのがステファン・アリーとオズワルド・レイナー。アリーの父親はユスポフの家庭教師のひとりで、アリー自身はモスクワにあったユスポフの宮殿で生まれている。レイナーはオックスフォード大学時代からユスポフの親友だった。このチームがユスポフと接触していることは運転士の業務記録などに残っている。 ラスプーチンが排除されて間もない3月に「二月革命」があり、事実上、資本家が実権を握る。つまり戦争は継続されることになったのだが、それに対抗する形でドイツは即時停戦を主張していたボルシェビキに目をつける。そこでドイツはレーニンを含むボルシェビキの幹部32名を「封印列車」でロシアへ運んだのである。結局、11月の「十月革命」でボルシェビキの体制になった。 そうした経緯があるため、ドイツとソ連との関係は悪くない時期が続く。両国の関係を破壊したのはアドルフ・ヒトラーだ。第2次世界大戦でドイツ軍はソ連へ攻め込むが、スターリングラードでの戦闘で大敗、その直後からウォール街の大物、つまりアレン・ダレスたちとナチスの幹部は接触を始めている。 ダレスを含むアメリカの反コミュニスト勢力はナチスの高官やファシストの大物をラテン・アメリカへ逃亡させ、匿い、雇う工作を実行した。ドイツの技術力を得るため、科学者やエンジニアを雇う工作も別立てで行った。 ドイツが降伏した直後、イギリスのウィンストン・チャーチル首相の命令でソ連に対する奇襲攻撃の作戦が作成される。アンシンカブル作戦だが、これは参謀本部の反対で実行されなかった。そしてチャーチルは下野。その翌年の3月に彼は冷戦の開幕を告げ、1947年にはソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領に働きかけてほしいとスタイルズ・ブリッジス米上院議員に頼んでいる。 そして1949年にNATOは創設された。その母体になったのは1948年に作られたACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)。これはアメリカやイギリスがヨーロッパを支配する目的で設立された組織で、イギリスのウィンストン・チャーチルやアメリカのアレン・ダレスたちが参加していた。 NATOの非公然組織として破壊工作部隊が編成されたこともわかっている。中でもイタリアのグラディオは有名。1960年代から80年頃までクーデター計画や極左グループを装った爆破事件を繰り返していた。 詳細は割愛するが、NATOが組織された目的はソ連軍の侵攻に備えるというより、ヨーロッパを支配することの比重が大きかった。ドイツにナチスのネットワークが残され、ソ連消滅後にNATOが解体されなかったのは当然なのだが、ここにきてドイツなどのアメリカからの離反が止まらない。アメリカの力に頼った政策が裏目に出ている。
2020.06.10
アメリカでは警官が容疑者を死に至らしめたことに対する抗議活動が広がり、ニューヨーク州ではアンドリュー・クオモ知事が6月8日までの期限付きで夜間外出禁止令を出す事態になった。 その発端になる事件が引き起こされたのは5月25日。あるマーケットでたばこを買った客が偽20ドル紙幣を使ったとその店員が通報、駆けつけた警官に取り押さえられたジョージ・フロイドが死亡したのだ。通報の際、店員は容疑者が泥酔しているように見えると伝えている。 駆けつけた警官のひとりでフロイドが死亡する原因を作ったとされるのがデレク・ショウベン。終末、ショウベンはエル・ヌエボ・ロデオというナイトクラブで警備の仕事をしていた。フロイドはコンガ・ラテン・ビストロという店で警備の仕事をしていたが、時折エル・ヌエボ・ロデオでも働いていた。 その後、警官による暴力行為に抗議するデモが始まるが、当初は平和的なものだった。そこに店のウィンドーを割るような人間が現れる。警察官だと疑う人もいるが、正確なところは不明だ。デモのリーダーはそうした暴力的な行為を止めているが、その後、店から金目のものが盗まれたり建物が放火される事態になった。 そこで州の公安局は抗議活動に参加した人の「接触追跡」を始めたと発表した。街頭に監視カメラが設置されはじめて久しく、顔を識別する能力が高まったことからカメラだけで特定の人物を追跡することもできるようになっている。 勿論、GPSを搭載した携帯電話を持っていれば、それを持っている人の位置が記録され、どこで誰といつ会ったかが割り出されてしまう。IC乗車券の動きも追跡、記録される。そうしたシステムが新型コロナウイルスの伝染拡大を防ぐという名目で強化されている。 新型コロナウイルスを利用し、「感染者」の近くにいることをブルートゥースの技術で察知し、その情報をスマートホンを通じて知らせるシステムも考えられている。そうしたシステムを共同で開発すると4月の上旬にアップルとグーグルは発表、マサチューセッツ工科大学も開発しているようだ。同じ研究はさまざまなグループが行っているだろう。 そうした追跡システムはどのような「ウイルス」にも対処できると本ブログでも指摘した。例えば「コミュニスト」や「ナショナリスト」。システムを支配する人びとが危険だ、目障りだと考えるターゲットはみな「ウイルス」だ。 そうした危険人物に「濃厚接触」した人も危険人物だと見なされ、情況によってはロックダウン(監禁)されるかもしれない。予防拘束。いわゆる「接触追跡」が伝染病対策だけに使われるということはありえない。そうしたシステムがアメリカで実証試験の段階に入ったとも言えるだろう。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、銀行のATMでカネを降ろせばその情報が銀行のシステムに記録され、クレジットカードを使えばその記録が残る。電子化の進んだ図書館なら何を読んだかがチェックされ、通信販売を利用しても記録は残る。さらに学歴、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券などの購入記録、住宅ローンの支払い内容、またインターネットでアクセスしたサイトに関する記録などあらゆる個人データが収集、分析されている。スーパー・コンピュータを使い、膨大な量のデータを分析して「潜在的テロリスト」を見つけ出すシステムも開発されている。そうしたシステムの開発に最も熱心な国がアメリカにほかならない。 1975年8月17日、アメリカ上院のフランク・チャーチ議員はNBCのミート・ザ・プレスという番組で、アメリカ政府の通信傍受能力はアメリカ国民に向けられる可能性があり、そうなると人々の隠れる場所は存在しないと警鐘を鳴らしていた。彼はアメリカで何が起こっているかを理解し、その危険性を訴えていたのだが、1980年の選挙で落選し、84年に59歳で死亡している。 監視システムは電子技術の進歩と共に強化されてきた。電子技術の飛躍的な向上が始まったのは1970年代だが、アメリカではチャーチ議員のように監視システムの強化を懸念する人は少数派だったとようで、そうした声は封じ込まれた。アメリカよりその問題に関心を持たずにきたのが日本人。いや、関心を持つことの危険性を察知していたのかもしれない。日本では学者も記者、編集者も、あるいは活動家と呼ばれている人も大多数は監視システムについて話すことを嫌がっていた。 アメリカで監視システムの中核として機能している機関はNSAだが、その存在は1970年代に入るまで一般的には知られていなかった。存在しないことになっていたのだが、内部告発などで明らかになっていく。 このNSAはイギリスのGCHQとUKUSAという連合体を編成、その指揮下にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの電子情報機関が組み込まれる。こうした5カ国の機関は連携して監視ネットワークを築いていくが、そうした中、世界規模で通信を傍受する仕組みも作られた。これがECHELONだ。1988年にダンカン・キャンベルというジャーナリストが明るみに出した。(Duncan Campbell, 'Somebody's listerning,' New Statesman, 12 August 1988) ECHELONについてはニッキー・ハガーが1996年に『Secret Power』という本にまとめ、クレイグ・ポットンから出版した。それに刺激されて欧州議会のSTOA(科学技術選択評価委員会)は1997年に報告書『政治的管理の技術評価』を作成、その短縮版が翌年に公表された。 その中では監視技術だけでなく、群衆を操作するための武器、新しい刑務所管理システム、尋問や拷問のテクニックなども扱われている。日本ではソ連消滅後の監視技術を「産業スパイ」のレベルで議論していたが、この報告書では監視のターゲットとして反体制派、人権活動家、学生運動指導者、少数派、労働運動指導者、あるいは政敵が指摘されている。 アメリカをはじめとする西側支配層の一部が新型コロナウイルスの伝染拡大で人びとを脅してきた理由をワクチンなどで儲けることだけに求めるのは正しくない。私有化の促進で強大な私的権力を中心とする支配体制を築き、その体制を維持するために社会の収容所化を進める口実としてウイルスが使われている。フランクリン・ルーズベルトが定義したファシズムの世界へ向かっているのだ。そのため、ウイルスの恐怖が宣伝されている。そうした方向へ世界を引っ張ろうとしている人びとにとって、ジョージ・フロイドの死は絶妙なタイミングで引き起こされたと言えるだろう。
2020.06.09
新型コロナウイルスに怯えている人びとの頭脳へ有力メディアはワクチンの話を埋め込んでいる。毎年、インフルエンザが流行する季節が近づくとワクチンの接種を勧める「報道」をしてきたが、今回の宣伝は尋常でない。 勿論、ワクチンが伝染病を予防する有効な手段で、その歴史は紀元前までさかのぼるとも言われている。10世紀には中国で天然痘の予防接種的なことが行われ、15世紀になると記録も残っている。そうした情報は1700年にイギリスへ届いた。 牛痘に感染した労働者が天然痘に感染しなくなる、あるいは軽症で終わるということも知られるようになり、1796年にイギリスではエドワード・ジェンナーという医師が8歳の息子に牛痘の膿を植え付け、数ヶ月後に天然痘の膿を接種して感染しないことを確認した。生体実験を行ったわけである。 ワクチンの持つ負の側面が問題になったのは1950年代に開発されたポリオ・ワクチンだろう。本ブログでもすでに書いたように、ワクチンの中に発癌性のウイルスが混入、少なからぬ人が犠牲になった可能性が高い。癌だけでなくアルツハイマー病や自閉症の原因になるという疑いがあるとする研究者もいる。 ポリオ・ワクチンの場合、ワクチン製造のために猿の腎臓が使われたことが問題を引き起こしたとも言われている。未知のウイルスを見逃したということだが、発見された後も利益優先で使い続けて犠牲者を増やした可能性は高い。そのように混入したウイルスの中にエイズの原因になるものが含まれていたとする報告もある。 ワクチンに関する内部告発をした研究者、医薬品メーカーにとって都合の悪い記事を書いたジャーナリスト、そうした報道をしたメディアは攻撃を受けてきたことも事実だ。医療関係に限らず、世界は利権のネットワークでがんじがらめになっている。 エイズ/HIVの場合、アメリカの国防総省が関係しているとする話が流れたことがある。そうした主張をしたひとりが東ドイツの生物学者、ヤコブ・セガルだが、そうした情報はソ連や東ドイツの情報機関、つまりKGBやシュタージが流したとされ、封印された。 実際、INFEKTIONという作戦はあったようだが、1969年6月9日にアメリカ下院の歳出委員会でエイズと似た症状を引き起こす生物兵器の開発が口にされている。国防総省の国防研究技術局で副局長を務めていたドナルド・マッカーサーは、伝染病からの感染を防ぐための免疫や治療のプロセスが対応困難な病原体を5年から10年で、つまり1974年から79年の間に作り上げると語っているのだ。これは議会での発言であり、記録に残っているので否定できない。 日本においてもアメリカにおいてもワクチンを開発している機関の周辺には生物化学兵器と関係している人びとがいる。日本の場合、ワクチン開発の中心的な機関と戦争中に細菌兵器を開発していたグループがつながっていることは薬害エイズの問題でも注目された。
2020.06.08
ウイルス性の伝染病をプロットの軸に据えた映画やテレビ・ドラマが話題になっている。本ブログではステファン・キングの小説『デッド・ゾーン』を原作とするテレビ・シリーズのうち2003年7月13日に放送された「伝染病」を紹介したが、一般的には2011年に公開された映画『コンテイジョン』が話題のようだ。 このふたつのプロットには大きな違いがある。『デッド・ゾーン』はクロロキンという抗マラリア剤が有効だったとされているが、『コンテイジョン』はワクチンだ。大手医薬品メーカーを含む医療利権グループが宣伝したいのはワクチン。アメリカにおける伝染病対策を指揮している人物はNIAID(国立アレルギー感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長で、ワクチンを推進している。 クロロキンやヒドロキシクロロキンは敵視され、リンパ球を刺激するというインターフェロン・アルファ2bはキューバで研究が進んでいることもあり、無視されている。『デッド・ゾーン』が『コンテイジョン』ほど話題にならない一因はこの辺にあるのだろう。 しかし、ワクチンを魔法の薬のように扱うことは危険である。例えば1950年代に開発されたポリオ・ワクチンの場合、そのワクチンを投与したサルがポリオを発症することがすぐに判明したが、警告が無視されたことから多くの被害者が出た。 バーニス・エディという研究者はワクチンの中に発癌性のSV(シミアン・ウイルス)40が混入していることにも気づく。これはサルを宿主とするポリオーマウイルスで、人間の体内に入り込むと癌を誘発するとエディは講演の中で語った。 当時、彼女はNIH(国立衛生研究所)に所属していたのだが、その発言にNIHの上司は激怒したと言われている。ちなみにNIHはNIAIDの上部機関だ。 組織の幹部は警告を封印し、医薬品メーカーはワクチンの製造を続けた。製造が止まるのは1961年7月。リコールが宣言されたものの、NIHは市場へ出回っている製品全てを回収することを命じなかった。そこでアメリカ人は発癌性のワクチンを1961年から63年にかけて接種されることになる。 ジョン・F・ケネディ大統領の甥に当たるロバート・ケネディ・ジュニアによると、その結果、1996年の時点で健康な男性から採取された血液試料の23%、精子試料の45%からSV40が発見され、80年から95年にかけて生まれた新生児の6%が感染していたという。(Judy Mikovits & Kent Heckenlively, “Plague of Corruption,” Skyhorse, 2020) 最近ではレトロウイルスのXMRVが問題になっている。癌だけでなくアルツハイマー病や自閉症の原因になるという疑いも持たれているのだが、そうした情報が広がると医薬品メーカーの経営にとって深刻な事態になる。利権グループはあらゆる手段を講じて情報を封印しようとしてきた。 新型コロナウイルスでも利権グループはワクチンを接種させようと必死だ。強制的に行おうとする動きもある。利権のネットワークは医療システムだけでなくメディアの世界にも張り巡らされている。医薬品メーカの経営状況はウォール街やシティを拠点とする巨大金融機関のカネ儲けにとっても重大な問題だ。
2020.06.07
ヒドロキシクロロキンという抗マラリア剤が新型コロナウイルスの有効な薬のひとつとして注目されているが、そうした評価を否定する論文がイギリスのランセット誌とアメリカのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に掲載されたことは本ブログでも紹介した。ランセット誌に掲載されたのは5月22日、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に掲載されたのは6月3日(オリジナルは5月1日)のことだ。 ふたつの論文が依拠しているデータを作成したのはサージスフィアという2008年に設立された医療分析会社だが、そのデータの信頼度に重大な疑問があることが発覚、両誌がその事実を告知した直後の6月4日にふたつの論文は撤回された。サージスフィアの分析能力に疑問が持たれているだけでなく、データそのものが存在しない疑いがある。論文が発表された後、世界各地の研究者からデータに対する疑問の声が挙がっていた。 論文を作成するための資金を提供したのはブリガム・アンド・ウィメンズ病院で、そこの医師が執筆に参加しているのだが、その病院はギリアド・サイエンシズと協力関係にあり、同社が開発した抗ウイルス剤、レムデシビルの臨床実験を行っている。 言うまでもなくレムデシビルとヒドロキシクロロキンはライバル関係にあるのだが、その事実を執筆者も雑誌編集者も明らかにしていなかった。新型コロナウイルスに関してはヒドロキシクロロキンのほかクロロキン、そしてキューバで研究が進んでいるインターフェロン・アルファ2bが有効だと報告されている。レムデシビルやワクチンの開発を有力メディアは宣伝しているが、奇妙な話だ。
2020.06.06
プロレスラーの木村花が5月23日に死亡したという。フジテレビが制作していた『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020(テラスハウス)』というリアリティーショーに出演、その中でのやりとりが原因でインターネット上で誹謗中傷され、悩んでいたようだ。 この番組を見ていないのでその内容については触れないが、一般論で言うならば、SNSなどで罵詈雑言を浴びせている人びとは理由があってそうしたことを行っているわけではない。 つまり、誰かに罵詈雑言を浴びせたい、誰かを誹謗中傷したいだけのことではないのか、そうしたことをする彼らなりの切っ掛けを探しているだけのことではないのか、弱者を作り上げて自分が強いと感じたいのではないのか。制作側はそうした人びとの感情を刺激し、罵詈雑言や誹謗中傷を誘発して視聴者を増やしたかったのだろう。 学校のいじめと同じ構図。ちなみに、いじめの問題に取り組んでいた知り合いによると、子どもの世界より前に大人の世界でいじめは深刻化していたという。 テラスハウスなる番組を制作していたのはテレビ局だが、テレビ局を含むマスコミはアメリカ支配層の意向に沿う形で罵詈雑言や誹謗中傷を繰り返している。本ブログではそうした事実を書き続けてきた。アメリカにとって目障りなロシア、中国、朝鮮、シリア、ベネズエラなどの話の多くは事実に基づかない罵詈雑言や誹謗中傷の類いだ。それを正当化するためにマスコミが使う呪文が「オーソライズ」である。 これも本ブログで繰り返し書いてきたが、日本は明治維新以降、イギリスやアメリカのアジア侵略に加担してきた。シティやウォール街は日本に対して大きな影響力を持ってきたのだ。波はあるものの、そうした構造は第2次世界大戦の前も後も同じ。その象徴とも言える人物がジョセフ・グルーだ。日本列島は米英にとってアジア侵略の拠点であり、日本人は彼らの傭兵的な存在だ。 明治維新まで日本は中国や朝鮮を含むアジアの国々と友好的な関係を結んでいた。薩摩と長州を中心とする明治政府がイギリスの手先になる道を選んだ瞬間、日本はアジアの裏切り者になったとも言える。アジア侵略のため、明治政府は日本人にアジア蔑視の感情を植えつけたのだろう。そうした感情が罵詈雑言、誹謗中傷という形で噴出する。そうした洗脳から日本人は未だに抜け出せていない。
2020.06.06
アメリカでは暴動が広がっている。本ブログでも書いたように、その発端になった警官による容疑者殺害への疑問、破壊活動を誘発する行動があったとする情報などが語られているが、そうした出来事で暴動が広がる下地があったことを無視できない。(ココやココなど) 以前からアメリカの被支配層はネオコン/新自由主義者が主導して築いてきたアメリカの支配システムへの怒りを抱いていた。そこへ新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を口実にした戒厳令的な政策による経済麻痺が加わり、1929年から30年代にかけての恐慌より事態は深刻だと言われるようになっている。怒りのエネルギーは高まっていたのだ。 新型コロナウイルスの感染情況に疑問があることも本ブログでは指摘してきた。ギリアド・サイエンシズのレムデシビルなる抗ウイルス薬やアメリカ製のワクチンで儲けようとしているだけでなく、治安体制の強化に利用しようとしている可能性は高い。ドル体制後の新たな世界秩序を自分たちに都合良く作り上げようとしているとも言われている。 新型コロナウイルスの恐怖を広める上で重要な役割を果たしてきたのはワシントン大学のIHME(健康指標評価研究所)やイギリスのMRC GIDA(医学研究委員会グローバル感染症分析センター)。 IHMEは2007年にビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団の1億0500万ドルで設立され、17年には財団からさらに2億7900万ドルが寄付されている。創設メンバーの中にはWHOで現在、事務局長を務めているテドロス・アダノムも含まれていた。2008年にMRC GIDAのスポンサーもビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団だと言われている。 また、アメリカにおける感染症対策で中心的な役割を果たしている人物はNIAID(国立アレルギー感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長。NIAIDへビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団は2019年10月に1億ドルを提供したとされている。 ドイツでは新型コロナウイルスの危険性は通常のレベルを超えていないとし、戒厳令的な政策を推進したことは間違いだとする内務省の報告書がリークされた。シュピーゲル誌によると、内務省はこの文書についてステファン・コーンという内務省の官僚が個人的に書いたものにすぎないと弁明したが、実際は同省のKM4というチームが作成したとものだとされている。ドイツの専門家は当初、政府のそうした政策を批判していた。 新型コロナウイルスを口実として世界的な収容所化が進み、経済は麻痺しているのだが、本ブログでもすでぶ指摘したように、その間に富豪層は資産を増やしている。一部の支配層がライバルや潜在的ライバルにダメージを与え、被支配層をさらに貧困化させ、何も考えられないようにして従属度を高めたいのかもしれない。
2020.06.05
日本やアメリカの有力メディアや政府はCOVID-19(新型コロナウイルス)に有効な薬としてギリアド・サイエンシズのレムデシビルなる抗ウイルス薬、あるいはビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団などが推進しているワクチンを宣伝している。 それに対し、中国やイタリアなどでの経験からキューバで研究が進んでいるインターフェロン・アルファ2b、あるいは抗マラリア剤として知られているヒドロキシクロロキンが効果的だとする話が伝わっている。 また、ヒドロキシクロロキンからヒドロキシル基を取り去った構造をしているクロロキンがコロナウイルスに対して有効だとする論文が2005年8月22日、ウイルス・ジャーナルというNIH(国立衛生研究所)の公式刊行物に掲載された。 キューバの医療制度が優れていることは有名で、マイケル・ムーアが監督し、2007年に公開された映画『SiCKO(シッコ)』ではアメリカの無残な医療体制と比較する形でキューバの情況を紹介している。そうしたアメリカの無様な状態を明らかにするキューバの話をアメリカやその属国の政府や有力メディアは無視する。 抗マラリア剤が有効だということになると、アメリカをはじめとする西側の医療利権グループにとって大きなダメージになる。そうした薬は安いからだ。 そうした中、5月22日にヒドロキシクロロキンやクロロキンは患者の死亡率を上げるとする論文がイギリスのランセット誌に掲載されたのだが、すぐにデータが実際の数値と合わないことが発覚、同誌の編集部はその論文について重大な科学的疑問があると6月2日に告知している。この論文が理由でWHOはヒドロキシクロロキンの臨床試験を中止していたが、この問題が発覚したこと受けて再開した。その翌日、アメリカのニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌にヒドロキシクロロキンはCOVID-19に有効でないとする論文が掲載された。こうした論文が純粋に学問的な目的で書かれたのかどうか、疑問に感じる人もいるだろう。
2020.06.04
公民権運動の指導者として知られているマーチン・ルーサー・キング牧師は1967年4月4日にニューヨークのリバーサイド教会で「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」という話をしている。暗殺される1年前、「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」が主催する集まりでのことだ。 主催者は「沈黙が背信である時が来ている」と主張、キング牧師はそれに賛意を示している。大半のアメリカ国民はベトナム戦争の悲惨な現実から目をそらし、自分自身を欺いていると指摘、そうした偽りの中で生きることは精神的な奴隷状態で生きることを意味すると語った。人種差別と戦っていたキング牧師は侵略戦争に反対すると宣言した1年後に殺された。公民権運動は許されても戦争反対は許されないということだろう。 ソ連が1991年12月に消滅した後、アメリカが唯一の超大国になったと信じたアメリカの支配層は潜在的なライバルを潰し、エネルギーなど資源を支配するために露骨な侵略戦争を始める。冷戦の終幕は熱戦の幕開けでもあったのだが、戦争に反対する声はか細い。キング牧師がリバーサイド教会で人びとに語りかけた時より情況は悪いかもしれない。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、それを利用してジョージ・W・ブッシュ政権はイラクへの侵略戦争を本格化、2011年春になるとバラク・オバマ政権はジハード傭兵を使った侵略を始めるが、それでも反戦運動は盛り上がらなかった。 その一方、白人警官が黒人を殺したという出来事が暴動につながる。有力メディアの宣伝や暴力を誘発する行動もあるのだが、戦争による破壊、殺戮、略奪に無反応な人びとがそうした出来事に激しく反応するということは事実だ。人種差別が問題だということは事実だが、体制の支配構造の問題から人びとの注意をそらすために利用されている側面もある。人種差別はそうした大きな問題の一部だ。人種差別が引き金になり、支配構造が崩れ始める可能性もあるだろうが、そうしたことは意図されていない。 ところで、アメリカの人種差別は奴隷の歴史と無縁ではない。奴隷は人としての権利や自由が許されないが、その関係を忘れられず、維持したい人がいると言えるだろう。 17世紀の半ば、イギリスではピューリタンが中心になってチャールズ1世の体制を倒した。いわゆるピューリタン革命だが、その指導者がオリバー・クロムウェル。地主や富裕な商工業者に支持されていた独立派のメンバーだ。 クロムウェルは革命を成功させた後、騎士派(王党派)との戦いで手を組んでいた水平派を潰す。水平派は小農民や職人層に支持されていたグループだ。 独裁者となったクロムウェルはアイルランドを侵略、住民を虐殺している。アイルランドの人口は虐殺前の1641年に147万人だったが、52年には62万人へ減ったという。50万人以上は殺されたのだが、残りは「年季奉公」や「召使い」として売られたと言われ、アメリカへも渡っている。アイルランド系移民が差別されてきた一因はそうした歴史にある。 17世紀半ばに書かれた「ウェストミンスター信仰告白」によると、「神は人類のうち永遠の生命に予定された人びと」を選んだが、「これはすべて神の自由な恩恵と愛によるものであって、決して信仰あるいは善き行為」のためではないとされている。(マックス・ウェーバー著、大塚久雄訳『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波書店、1989年) 奴隷も支配者も貧者も富豪も神が決めたことであり、社会的な強者は弱者のことを考える必要はないということにもなる。宗教改革でそうした考え方を打ち出された。こうした教えは金持ちにとって魅力的で、プロテスタントが広がる大きな原因になったと言えるだろう。「神」を「自然」に言い換えるとチャールズ・ダーウィンの進化論やフランシス・ゴールトンの優生学になりそうだ。ちなみにダーウィンとゴールトンはいとこである。
2020.06.04
リビアでの体制転覆工作が終わった後、オバマ政権は戦闘員や武器/兵器をトルコ経由でシリアへ運び込んだ。その際、批判をかわすために「穏健派」というタグを使い始めるのだが、そうした穏健派が存在しないことを2012年8月にDIAはオバマ政権へ報告している。その時のDIA局長がフリンだ。 DIAの報告書によると、シリアで政府軍と戦っている武装勢力はサラフィ主義者やムスリム同胞団で、アル・ヌスラという戦闘集団の実態はAQI、つまりイラクのアル・カイダと同じだとしている。アル・ヌスラ(AQI)の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 また、DIAはオバマ政権の政策がシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告は2014年に入ってダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で出現。そして2014年8月にフリンは解任されてしまう。 ダーイッシュは当初、残虐さを「売り」にしていた。残虐な集団を倒すために軍事介入するべきだという世論を形成しようとしたと推測する人もいる。リビアと同じような軍事介入はロシアによって阻止された。2012年5月にロシア大統領はドミートリー・メドベージェフからウラジミル・プーチンへ交代になっている。 ロシア政府の姿勢が変化した後、2012年8月にオバマ大統領は軍事侵攻を正当化する口実として化学兵器を言い始めた。シリアに対する直接的な直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だとバラク・オバマ大統領が宣言したのだ。その年の12月にはクリントン国務長官がシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語る。そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦をオバマ大統領が許可したという記述がイギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールの中に書かれているとする記事が載った。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除されている。) アメリカが流す化学兵器話はいずれも嘘が発覚するが、アメリカなど侵略勢力の支援を受けたダーイッシュは占領地を拡大させていき、オバマ大統領は2015年に閣僚を好戦的な人間に変える。つまり2月に国務長官をチャック・ヘイゲルからアシュトン・カーターへ、9月に統合参謀本部議長をマーティン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させたのだ。 ロシア政府がシリア政府の要請で軍事介入したのはその年の9月30日。ロシアの軍事介入を想定していなかったオバマ政権は動揺したと言われている。その後、ロシア軍は自分たちの強さを示していく。そうした中、アメリカで大統領選挙が始まった。 2015年の段階でヒラリー・クリントンが次期大統領に内定していたと言われているが、年明け後に風向きが変わる。ウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターで不手際があり、香港での反政府運動で中国政府を警戒させて中国とロシアを接近させるという事態を招いたことを懸念する支配層が出てきたとも見られている。 2016年2月10日にヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問してプーチン大統領と会談、22日にはシリアにおける停戦で合意した。そうした流れの中、民主党の幹部やクリントン陣営が戦争に反対していたバーニー・サンダースを潰そうとしていることを示す電子メールが明るみに出た。 ウィキリークスは2016年3月にクリントンの電子メールを公表、7月には民主党全国委員会(DNC)の電子メールを公表、その中には2015年5月26日の時点で民主党幹部たちはヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆するものも含まれていた。2011年1月24日の時点でヒラリー・クリントン国務長官は投機家のジョージ・ソロスからアドバイスを受けていたことも発覚した。 そして始まるのがロシアゲート。CIA、FBI、司法省などの幹部が有力メディアを利用してロシアの選挙介入を宣伝し始めたのだ。民主党やクリントンを窮地に追い込んだ電子メールはロシア政府がハッキングしたとする偽情報も流されたが、その工作を始めさせたのは2013年3月から17年1月までCIA長官を務めたジョン・ブレナンだと言われている。この主張は技術的な分析でも嘘だということは本ブログでも繰り返し書いてきた。 オバマ大統領はアメリカとロシアとの関係を悪化させる行動に出る。例えば2016年12月にニューヨークとメリーランドにあったロシア外務省の施設を閉鎖し、35名のロシア外交官に対して72時間以内に出国するように命じている。そのうらでロシアとの関係修復を始めようとしていたのがフリンだ。 オバマ大統領は2017年1月5日、ホワイトハウスで善後策を協議するために会議を開く。出席したのはオバマのほか、バイデン副大統領、ブレナンCIA長官、スーザン・ライス国家安全保障補佐官、サリー・イエイツ国家安全保障副補佐官、ジム・コミーFBI長官、ジェームス・クラッパー国家情報長官。 今後、不正な手段でフリンを排除した秘密工作の調査が進めば、この会議に出席した人びとが窮地に陥る可能性が高く、その背後関係が問題になるとアメリカの支配システムは大きく揺らぐ。そうならないように調整していたのがCIA出身のウィリアム・バー司法長官だろうが、その調整が成功したのかどうかは不明だ。(おわり)
2020.06.03
アメリカで暴動が広がっているようだ。ミネソタ州のミネアポリスでジョージ・フロイドが数名の警官に取り押さえられた際に死亡したことが発端だとされている。 フロイドは「エル・ヌエボ・ロデオ」というナイトクラブの警備員として働いていたが、取り押さえた警官のひとり、デレク・ショウベンも同じナイトクラブで働いていた。ただ、ナイトクラブの元オーナーはふたりが知り合いだったことを否定している。 アメリカでも新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を口実にして社会の収容所化が進められたが、その結果、経済活動は麻痺して失業が深刻化、1930年代を上回る恐慌に突入すると懸念する声もある。それだけ社会は不安定化していたわけで、今回の暴動の一因になっていると言えるだろう。その暴動のため、収容所化政策にブレーキをかけていたドナルド・トランプは窮地に陥った。 そうした社会不安のエネルギーに火をつけた人たちがいるという噂も流れている。警官、あるいは警官と思われる人びとが商店のウインドーを壊したりパトカーを破壊している場面だとされる映像がインターネット上に流れているのだ。(例えばココやココやココやココ) アメリカでは警官による暴行は珍しくないようだが、最も酷いと考えられてるのは警察の特殊部隊とも言えるSWAT(特殊火器戦術部隊)である。本ブログでも書いてきたが、アメリカでは「刀狩り」の一方、警察の武装化が進められ、SWATの不必要な情況での投入や過度の暴力行為が問題になっていた。そうした警察の行為が特定の人種に対して向けられているとは言えない。 フロイドが殺されたのは5月25日。それが引き金になった暴動に人びとの目は向けられているが、5月上旬にアメリカの権力バランスを崩しかねない情況が生まれていた。本ブログでもすでに書いたことだが、マイケル・フリン元国家安全保障補佐官に対する全ての起訴を取り下げると司法省が発表したのだ。司法省の発表に対し、地方判事のエメット・サリバンはその決定を保留するよう5月12日に命じたが、フリンに対する起訴取り下げの衝撃は小さくないはずだ。 ドナルド・トランプがジョー・バイデンに勝利した2016年の大統領選挙の直後、バラク・オバマはトランプと会談したが、そこでオバマはフリンを国家安全保障補佐官に任命しないよう「警告」している。 フリンは2012年7月から14年8月にかけてアメリカ軍の情報機関DIAの局長を務めていた。言うまでもなく当時の大統領はオバマ。2010年8月にオバマはPSD-11を出すが、これはムスリム同胞団を主力とし、アメリカ支配層にとって目障りな体制を転覆させるプロジェクトだった。 オバマが国務長官に据えたヒラリー・クリントンは上院議員の時代からロッキード・マーチンの代理人と呼ばれていた人物で、彼女の側近中の側近と言われたヒューマ・アベディンはムスリム同胞団と密接な関係にあった。このムスリム同胞団にサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)が合流、「アラブの春」という形になって現れる。 この体制転覆プロジェクトで2010年12月にチュニジアで政権が転覆し、11年2月にはリビア、3月にはシリアで戦争が勃発する。いずれもムスリム同胞団が中心的な役割を果たしていた。 2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒されたが、その際にNATOとアル・カイダ系武装集団LIFGの連携が明らかになった。2001年9月11日からアメリカの支配層は「アル・カイダ」をテロリストの象徴として扱っていた。 アル・カイダを率いているとされた人物がオサマ・ビン・ラディンだが、2011年5月に死んだとされている。オバマ大統領が送り込んだ特殊部隊によって暗殺されたというのだが、本ブログでも繰り返し書いてきたように、その証拠はない。それでも2011年5月の時点でビン・ラディンは始末されていたことから、カダフィ体制崩壊後、面倒なことにはならなかった。(つづく)
2020.06.03
ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された1週間後から炭疽菌の付着した手紙が送られ始めた。その宛先の中に含まれていたトム・ダシュル上院議員とパトリック・リーヒー上院議員は憲法の機能を停止させる法律の制定に反対していたことでしられている。「テロリズムの阻止と回避のために必要な適切な手段を提供することによりアメリカを統合し強化する2001年法(PATRIOT法)」、通称「愛国者法」だ。この手紙が原因で5名が死亡、約20名が病気になり、両議員は法案に反対するのをやめてしまった。 当初、炭疽菌に汚染された手紙を送ったのは「イスラム過激派」だとされたが、メリーランド州にあるアメリカ陸軍のフォート・デトリックだということが突き止められる。生物化学兵器の研究開発で拠点になっている軍事基地だ。 日中戦争がはじまる直前、日本は軍医学校、東京帝国大学医学部、京都帝国大学医学部などの下で病原体を兵器として使う研究が進められ、生体実験を行うための部隊が中国で編成された。敗戦時の呼び名は第731部隊。その資料や主要な研究員は戦後、フォート・デトリックへ運ばれている。 炭疽菌のケースでFBIが容疑者として名前を挙げたのはフォート・デトリックにいたブルース・アイビンスという細菌学者だが、名前が明らかになった8日後に自殺してしまう。つまり公判で検証されることはなかった。この学者が真犯人だと思っていない人は少なくない。 ヨーロッパでは十字軍の侵略戦争が終わってルネサンスの時代へ入る頃(1346年から53年)に黒死病が猛威を振るっている。その前世紀にモンゴルが支配地域を拡大してヨーロッパへ侵攻しているが、そのモンゴル軍はペストで死んだ遺体を武器として受かったという。砲弾に縛り付け、投石機で敵の支配地域へ撃ち込むということも行われていたようだ。一種の細菌戦だ。18世紀にはアメリカで先住のインディアンを殺すために天然痘が使われたとも言われている。病原体を兵器として使うことは珍しくない。
2020.06.02
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を口実にして社会の収容所化が進められている。ウイルスに怯えた人びとは収容所の安全を手に入れるために言動が監視されることを容認、自由や人権を手放した。伝染病対策として打ち出された政策は経済活動を麻痺させ、少なからぬ人が仕事を失う事態に陥っている。被支配層の力がさらに弱まり、強大な私的権力の力がさらに強まるということだ。 1991年12月にソ連が消滅すると、ネオコンをはじめとするアメリカの支配層は自国が唯一の超大国になったと認識、単独で好き勝手に行動できる時代が来たと信じた。そして打ち出されたのがウォルフォウィッツ・ドクトリン。潜在的ライバルを潰し、エネルギーをはじめとする資源を独占しようとする。 そうした世界制覇プランを実現するため、日本にも軍事的な役割を果たすように求めるのだが、国連中心主義を打ち出した細川護熙政権は潰され、1995年2月にはジョセイフ・ナイ国防次官補の「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が発表された。日本をアメリカの戦争マシーンに組み込むという宣言だ。 彼らが描く世界の新秩序を支配するのは強大な私的権力、つまりアメリカやイギリスを拠点とする巨大資本であり、その新秩序を実現するために打ち出された協定がTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)。 フランクリン・ルーズベルト大統領は私的権力が国を凌駕する力を持つ危険性を指摘、そうした状態をファシズムと呼んだ。1938年のことである。こうした体制を「近代農奴制」と呼ぶ人もいる。大多数の人びとが一部の支配層に隷属するということだ。 COVID-19が浮上する前、ドルを基軸通貨とする経済システムは崩壊し、そのシステムを利用して世界に大きな影響力を行使してきたアメリカの支配体制は早晩、崩壊すると言われていた。 現秩序が崩壊した後の世界を支配するため、アメリカの支配層は国家が強大な私的権力に従属する体制を築こうとしてきたわけだが、ロシアや中国などは多極化した秩序を構築しようとしてきた。 その中国が最初に新型コロナウイルスの伝染で混乱した。昨年10月18日、コロナウイルスのパンデミックを想定したシミュレーション、イベント201がニューヨークで実施された。主催したのはジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、WEF(世界経済フォーラム)、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団。 そのシナリオによると、ブラジルの農場で感染は始まり、ポルトガル、アメリカ、中国など多くの国へ感染は拡大、再流行もあってコントロール不能になって流行が収束するのは18カ月後。その時までに6500万人が死亡していることになっているが、実際はこうしたシミュレーション通りには進まなかった。新たな事態が引き起こされる可能性があるとも言える。 新型コロナウイルスの恐怖は新しい世界秩序を作り出すと言われているが、これまでにも伝染病が歴史の節目に流行したことがある。例えばローマ帝国が滅亡して西ヨーロッパ世界が形成される過程で起こったユスティアヌスのペスト(540年代頃)、十字軍の侵略戦争が終わってルネサンスの時代へ入る頃の黒死病(1346年から53年)などだ。伝染病による被害の規模は全く違うが、新型コロナウイルスを利用して新たな世界新秩序を築こうとしている人がいることは確かだろう。
2020.06.02
イギリスでは新たな治安立法を成立させようとする動きがある。すでにスパイ活動、破壊工作、体制転覆といった行為を取り締まる法律は存在しているわけで、それ以外の「有害な行為」を取り締まる法的な手段が欲しいということだ。 現在、アメリカやイギリスの支配層が最も恐れているものは事実だ。被支配層を操るために偽情報を彼らは使うが、それを暴く行為は支配層にとって「有害な行為」以外の何ものでもない。言論統制を強化しようと目論んでいると見られている。 しかし、有力な新聞社、出版社、放送局などは支配層のプロパガンダ機関と化している。ウォーターゲート事件で取材の中心になったことで知られているカール・バーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を離れ、ローリング・ストーン誌でCIAとメディアの関係を明らかにしている。 バーンスタインによると、400名以上のジャーナリストがCIAのために働き、1950年から66年にかけて、ニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) ジャーナリストのデボラ・デイビスによると、1948年頃からモッキンバードと呼ばれる情報操作プロジェクトが始められている。そのプロジェクトで中心的な役割を果たした人物は情報活動の中心的な存在だったアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) ダレス、ウィズナー、ヘルムズはOSSに所属していた仲間。フィリップは陸軍の情報部に所属し、東南アジアで活動した際にOSSの幹部だったその3名と親しくなった。 この4名は金融界との関係が深いことも知られている。ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士で、ヘルムズの母方の祖父であたるゲイツ・ホワイト・マクガラーは国際決済銀行の初代頭取、そしてグラハムの義理の父にあたるユージン・メイヤーは世界銀行の初代総裁だ。 CIAのこうした工作はアメリカ国内に留まらない。ドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の編集者だったウド・ウルフコテによると、ジャーナリストとして過ごした25年の間に彼が教わったことは、嘘をつき、裏切り、人びとに真実を知らせないことで、多くの国のジャーナリストがCIAに買収されているとしている。 アメリカの議会では1970年代の半ばに情報機関の秘密工作を調査している。上院では1975年1月に情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会が設置され、その翌月には下院で情報特別委員会が設置されている。委員長に就任したのは前者がフランク・チャーチ上院議員、後者がルシエン・ネジ下院議員(すぐオーティス・パイク下院議員へ交代)だ。 当時、CIA長官だったウイリアム・コルビーは秘密工作の一端を明らかにし、支配層の逆鱗に触れた。そこでコルビーは解任され、新たな長官としてジョージ・H・W・ブッシュが登場してくる。本ブログでは繰り返し書いてきたが、このブッシュはエール大学でCIAにリクルートされた可能性が高いだけでなく、父親や母型の祖父はアレン・ダレスのウォール街仲間。ブッシュ一家はダレスと親しい関係にあった。 ブッシュの登場は支配層の反撃を象徴している。その後、メディアに関する規制が緩和されて一握りの巨大資本が有力メディアを所有することになり、気骨あるジャーナリストは追い出されていった。同じことが日本でも1980年代から起こっている。こうした有力メディアに情報を頼れば、支配層に操られることになる。 そうした中、登場してきたのは2006年にジュリアン・アッサンジらが創設したウィキリークス。支配層は自分たちにとって都合の悪い情報は隠す。そうした情報を人びとに知らせる内部告発を被支配層へ知らせはじめたのだ。 2010年4月にはアメリカ軍の戦闘ヘリコプターがバグダッドでロイターの特派員2名を含む非武装の十数名を銃撃、射殺する様子を撮影した映像を公開している。日本では軽く扱われた映像だが、世界的には大きな問題になった。 この映像を含むアメリカ軍にとって不都合な情報をウィキリークスへ伝えたブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵は映像が公開された翌月、アメリカ陸軍のCID(犯罪捜査部)に逮捕された。 バラク・オバマ政権の意向を受けてスウェーデン当局はアッサンジを逮捕するための令状を発行するが、その事件がでっち上げだったことが後に判明している。 しかし、スウェーデンの逮捕令状を利用してイギリスの警察はアッサンジを拘束しようとする。それに対してアッサンジはロンドンのエクアドル大使館へ逃げ込んで亡命を求め、ラファエル・コレアは認めた。 ウィキリークスが2012年2月に公表した民間情報会社ストラトフォーの電子メールによると、アメリカ当局はアッサンジを2011年初め、秘密裏に起訴したという。 その後、この情報は公的な文書で確認された。ケレン・ドワイアー検事補が裁判官へ書いた文書の中で、アッサンジが秘密裏に起訴されていると記載されているのだ。 亡命は認められたものの、アッサンジは大使館から外へ出ることができず、幽閉状態になる。その状況が変わったのはエクアドルの大統領がコレアからレニン・モレノへ交代した2017年5月。スウェーデンの検察当局はアッサンジに対する捜査を終了、逮捕令状を取り消したが、モレノはアメリカへ協力する方向へ動き始めた。 その後、エクアドルではモレノが汚職で受け取ったカネのロンダリングを行うためにINA投資という名前のペーパーカンパニーを2012年にベリーズで作ったという話がリークされたが、モレノはそうした情報が流された責任はウィキリークスにあると主張、18年までにモレノは亡命を取り消す。そのモレノ政権は2019年3月にIMFから42億ドルの融資を認められ、その翌月にイギリス警察はエクアドル大使館へ乗り込んでアッサンジを逮捕した。 アッサンジは亡命を認めた国の大使館でイギリスの警察によって逮捕され、過酷な取り調べを受けている。アメリカに支配層は彼を移送させて厳しい処罰を科すつもりだ。アッサンジたちが行ってきたような支配層にとって都合の悪い情報を伝える行為を「有害」だと支配層は考える。そうした「有害な行為」を取り締まる法律をイギリスでは制定しようとしている。 イギリスやアメリカは「自由」、「民主主義」、「人権」といった看板を掲げているが、実際に行ってきたことは侵略、破壊、殺戮、略奪。こうしたことを行わなければ「先進国」の「文明」を維持することはできない。
2020.06.01
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