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小説を書く楽しさというものがある。作品を他人に読んでもらうという楽しさはもちろんだが、私の場合、続きはどうなるんだろう? という気持で書いているので、徐々に作品が出来上がって行くのを見るのは楽しい。 妖精的日常生活シリーズという、これだけの長編を書いていると、きちっと構成をしてストーリーの粗筋も既に出来上がっているのだろうと思われがちなんですが、そうじゃないんです。元ネタはほんの数行のメモから始まったんです。 どこかでも書きましたが、小説を書くのは、昔見た映画のストーリーを思い出しながら少しずつ文章化しているという感覚なんです。だから小説を書き上げた時は、昔見た映画のビデオを手に入れたようで嬉しいですね。
Jul 26, 2004
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さて、めでたく妖精的日常生活 第14話の執筆も終りましたが、では次はどうなるのだ? ということに関しては、しばらく待ってくださいとお願いします。 結論から言いますと、しばらくお休みします。そして日記形式での連載小説の再開は、早くても8月の半ば以降、遅ければ9月に入ってからとなります。 理由としましては、完成させた14話の校正作業に時間をとられるということが第一にありますが、第二の理由としては、共同運営サイトの『妖精さんの本だな』の東京オフ会が9月4日に開かれるのですが、そこで発表する作品の執筆の為、こちらで連載する小説の執筆に時間を割く余裕が無いという事なのです。 というわけで、楽天広場における小説連載の再開は、上記日程のようになるというわけなのです。宜しくお願い致します。 但し、次回、連載予定の小説は、『妖精的日常生活 第15話』ではなく、書きかけのまま放置している 『魔法少女♪奈里佳』の第3話になります。……いい加減、書きかけのまま放置しておくのも、登場人物に悪いですからね。 一応、小説以外の事で、書き込むことも、たまにはあるかも知れませんが、それではしばしのお別れです。
Jul 19, 2004
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妖精的日常生活 第14話も、2004年の4月7日から日記形式の連載を開始して、途中、アップ出来ない日もありましたが、連載72回目でようやく完結を迎える事が出来ました。 とはいえ、シリーズの完結までには、まだあと12話分を書かなくてはなりません。一応、シリーズは全26話で構成されていますので……。先は長いです。 しかし! とりあえずひとつの話が完結するというのは、いつもの事ながら嬉しいものです。 私が運営するサイト、『ジャージレッドの秘密基地(自称)』および共同運営の小説投稿サイト、『妖精さんの本だな』にて発表するためには、これから長く地道な校正作業が待っているのですが、『それもまた楽し』です。校正作業が進めば、一般公開出来る日が着実に近付いて来るのですからね。 ちなみに、テキストファイルで正味 200KB の容量で、色々なタグをつけた HTMLファイルに直すと 208KB の容量があります。 1KB が、ライトノベル系小説の 1ページに相当するとも言われてますから(やや適当)、およそ200ページと言うことですね♪ ……こんなにも容量の大きなネット小説、いったい誰が読むんだよ。 _| ̄|○
Jul 18, 2004
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「よし、予定通りだ。やはりこのポイントで調整すると、美姫君の魔法力は詩衣那君よりも何倍も強化されるようだな」 スピーカーから聞こえる剣持主任のつぶやき声。そうなのか……、詩衣那さんよりも何倍も上なんだ。「でも、今まで協力してあげたのは私ということをお忘れなく♪」 詩衣那さんの茶々が聞こえる。その言い方、詩衣那さんらしいかも。「詩衣那君、それは十分に分かっているから……。では、美姫君、羽を出してくれないか? 今の状態なら通常の10倍の大きさぐらいは軽く行けるかもしれないぞ。まあ、それは冗談としても3倍から4倍の大きさを期待したいところだな」 詩衣那さんに弱味でも握られているのか、どうも剣持主任の詩衣那さんに対する態度は怪しすぎる。なにかこう、おどおどしてる時があるし。それとも詩衣那さんが単に加賀重工の会長の孫娘だからというだけなのかな?「あんまりプレッシャーをかけないでください。緊張しちゃうのはあまり良くないんじゃないですか?」 一応、言葉ではそう返したものの、本音を言えば先程も言ったように何でも出来そうな感覚だったので、言葉の内容とは裏腹に妙に自信に満ちた口調になってしまった。う~ん、ワタシって、こんなキャラだったっけ?「確かに……。では、美姫君。自分で出来る範囲で頑張ってくれ。決して無理はしないようにな」 その言葉を最後に、スピーカーからは誰の声もしなくなった。ワタシの周囲を取り囲む12台のパソコン本体、零号機が発するブーンといった作動音だけしか音がない。静かだ。普通ならうるさく感じるかもしれない音に囲まれているにもかかわらず、何故かその音は大自然そのものが語りかけているかのようだった。「今から羽を出します」 そう宣言したワタシは目をつむり精神を集中させると、ゆっくりと背中から羽を出し始めた。ゆっくりと、あくまでもゆっくりと。そう、大きなシャボン玉を作る為にゆっくりとストローに息を吹き込むように。(力が……、流れ込んで来る……。これは零号機から? ……そうか、妖精の魔法が機械で増幅されるんじゃないんだ。零号機を通じて魔力をもらっているんだ) ゆっくりと羽を出していたからだろうか? ワタシは気がついてしまった。ワタシが持っている魔力が増幅されるのではなく、零号機を通じて魔力をもらっていることに。というわけでワタシは、積極的にその魔力の流れを受け入れてみることにした。なぜって? そうしたほうが良いと心の奥でささやく声がしたような気がするんだもん。(人間が作った機械でしかない零号機だけど、人間が大いなる大自然の一部なら、その人間が作った機械もまた自然の一部……。零号機、そしてそれをサポートする機械達。もしもワタシを助けてくれる気持があるのなら、ワタシに力を貸してください) 後で考えるとなぜそういうお願いをしたのか不思議な気がするのだけど、とにかくその時のワタシは、心の中でそうお願いをしたのだった。そしてそのお願いが終った瞬間ッ! ワタシの中に流れ込んで来る魔力が、今までとはくらべものにならないぐらいの量になったのだった。この調子なら、かなり大きな羽が出せるかもしれないな。「美姫君ッ!」 目をつむったまま、なるべく大きな羽を出そうと精神を集中していたワタシを、剣持主任の鋭く叫ぶ声が打つ。どうしたんだろう?「美姫さんッ! 羽を出すのを止めてッ! このままじゃ天井を、羽が天井をつき抜けちゃうッ!!」 切迫感あふれる詩衣那さんの声に、ワタシはそれまでつむっていた目を開くと首を右にひねり、いつもよりも大きく広がっているであろう羽を確認してみる事にした。するとそこには思ってもみなかった光景が広がっていた。なんと通常の3~4倍どころか、いったい何倍の大きさになっているのか見当もつかない大きさにまで大きくなったまだ実体化していない光の羽が、ドームの天井をつき抜けてまだ大きくなっていこうとしていたのだった。「キャーーーッ!!」 半ば思考停止しかけたワタシは何をするでもなく、ただ叫び声をあげるしかなかった。「電源カットッ! システムを強制終了しろッ!」 慌てきり、完全に冷静さを失った剣持主任の声が響く。「駄目ですッ! 電源が、電源が切れませんッ!!」 仁村さんの声もパニック状態だ。もちろんワタシもパニック状態であることは言うまでもない。ただ自分の背中から生えている非現実的な大きさにまで大きくなったキラキラと輝く光の粒子状態の羽を、呆然と見ていることしか出来なかった。「美姫さん、美姫さーーんッ!!」 詩衣那さんもパニック状態になってしまったようで、その感情が波となってワタシにも流れ込んで来るのが感じられた。しかしそのおかげだろうか? 心が乱れて、零号機から流れ込んで来る魔力が一瞬だが止まったのだ。いけるかも?「大丈夫です。なんとかなるかもしれない」 一瞬だが魔力の流れ込みがストップしたことにより、ワタシは自分の中に供給された魔力をコントロールすることに成功したと思った。そこでワタシはこれ以上羽が大きくならないように、まずは光の粒子状態の羽を実体化させることにした。しかし今、それだけはやってはいけないことだったのだ。今となっては既に遅かったけど。「駄目ッ! 今、羽を実体化させちゃ駄目ーーーッ!!」 何かに気づいた詩衣那さんが、大声をあげる。何!? 何のことを言ってるの? ともかく羽をしまうために、一度この大きさで羽を固定しないといけないのに……。「魔力のコントロールは出来てますから……。うわッ! キャーーーッ!!」 大丈夫ですと言おうとしたそのとき、ワタシはその羽に激痛と言うのも生やさしい痛みを感じた。詩衣那さんが、なぜ羽を実体化させるなと言ったのかということが分かった時、既に事態は手遅れだった。天井をつき抜ける程大きくなった状態で実体化したワタシの羽は、それが光の粒子状だった時にはドームの天井を素直になんの抵抗もなくつき抜けていたのに、実体化した瞬間に羽は天井の構造材によって分断されたのだった。「美姫君ッ! 美姫君ッ!! 今、助けるからなッ!! くッ、スイッチで電源が切れないなら、電源コードを断ち切れッ! 物理的に電源をカットするんだ。それでも駄目なら、構わん。零号機を破壊しろ……」 激しい痛みの中、剣持主任の怒鳴り声を聞きながらワタシは気を失いかけていたが、気を失う直前、ワタシはなぜか感じていた。妖精世界にいるはずの、今は妖精のエルフィンのものとなってしまったワタシの元の人間の身体の存在を。
Jul 17, 2004
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「では、もう一度だけ確認する。午前中の最後の実験で美姫君が気絶をする寸前、美姫君はとても気分が良くなったということだったね。だから今回の実験ではその瞬間の状態を再現してみるわけだが、それが第一段階となる。第二段階は例によって美姫君に羽を出してもらって、その羽が通常の状態に比べてどれぐらいの大きさになっているかということで魔法の強化増幅の度合いを見ることになる。何か質問は?」 感情のこもらない無機質な印象を与えるほどの冷静な声が聞こえる。だからこそ剣持主任の緊張の度合いも大変なものだと言うことが分かる。ふ~む、もしかして危ないのかな?「質問はありません。ちゃんと手順は分かってます。いつでもいけますよ♪」 その場の雰囲気を和ませるため、あえて何も心配していなさそうな明るい声で応えるワタシ。椅子に座ったままながら両腕を大きく振りまわし、元気さをアピールしてみる。「うむ、良い返事だ。しかし無理をすることはない。危ないと思ったら仁村君が言ったように、すぐに脱出用のレバーを引くんだ。いいね?」 剣持主任もワタシを心配する。まあ、さっきは気絶しちゃったし、しょうがないかな。「それは大丈夫ですけど、あの網でキャッチするのは、もう少しなんとかならないんですか?」 午前中のことを思い出して、ちょっとだけ要求をしてみる。なんだか網に捕獲されるのって、あんまり良い気分じゃないし。「改善すべき点であることは認めよう。とりあえず今のところは我慢しておいてくれ。……では、零号機の起動に入る。起動30秒前ッ!」 剣持主任が、零号機の起動を宣言すると、スピーカーからはカウントダウンをする声が聞こえる。これは、仁村さんの声だ。「……27・26・25・24・23・22・21……」 自分では緊張していないと思っていたけど、カウントダウンが進むにつれて自分の小さな手のひらから汗が滲みだして来るのを、ワタシは感じていた。やはり、全く緊張しないということは無理なのかな。身体って正直だね。ワタシは軽く握っていた脱出装置のレバーをギュッと握りしめるのだった。「……5・4・3・2・1、零号機、起動ッ!」 その瞬間、例のコンピューターによる不快な間隔がワタシを襲う。しかしそれもつかの間、零号機が完全に立ち上がると不快を回復させるような快感とでも言えば良いのだろうか? 精神的な快感が肉体レベルまで来たような感じと言えば少しは分かってもらえるんじゃないだろうか?「零号機、アイドリング状態。美姫さんの身体反応に異常はありません。良好です」 仁村さんの声が遠くから聞こえる。ワタシ自身が世界の全てに広がって行くような……。「予定値まで出力上げ。ゆっくりとな」 指示を出す剣持主任。その声も遠くから聞こえる。「徐々に出力上がります……。現在、予定値の50%、……70%、……90%、……予定値まで出力上がりました。全て正常。美姫さんの状況も良好です」 椅子に座っているにもかかわらず、雲の上を歩いているような感覚。そして今なら何でも出来そうなぐらいの高揚感。……確かに、気分は上々かもしれない。
Jul 16, 2004
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「準備は良いかい?」 スピーカーから流れてくる剣持主任の声。そう、ワタシ達はまた実験に臨もうとしていたのだった。アメリカ合衆国政府が世界中で妖精の人権が認められないように工作して、唯一米軍に志願すれば自国民はもちろん亡命者にも完全な人権を認める意図。それは妖精の魔法を軍事目的に利用する為だという。人権という餌で世界中から妖精をかき集める。まるで兵器の部品のように。……最低だッ!「準備といっても心の準備だけですから、いつでもOKです。それよりも、この研究が妖精の為になるのは確かなんですよね?」 先ほどの話を思い出しながら念を押すワタシ。答えはもう分かっているけど、やっぱり聞いておきたい。「もちろんだとも。妖精の魔法を増幅して利用する装置が、軍事目的のものしかない状態になってしまったら、その世界の妖精は永遠に軍に縛られてまやかしの人権を与えられたままになってしまうだろう。兵器の中枢部分である妖精に自由が認められるはずもない。だからこそ我々が先に開発してしまうんだよ。もっと夢のあるものをね。そして世界に教えてやろう。妖精と人間が共存するすばらしい未来をッ!」 具体的な言葉がないにもかかわらず、どこか剣持主任の言葉には力があるような気がする。これっていわゆるカリスマ? それとも単なる煽動者なのかな? まあ、妖精の為になるならどっちでも良いか。利用できるものは利用する。それで良いよね。「はいッ! 分かりました。剣持主任ッ!!」 調整が終わったという零号機の中心に据えつけられた椅子に座ったワタシは、右手でガッツポーズを作る。皆から見えるか見えないかは知らないけど。「美姫さん、剣持主任の言うことをあんまり信じないほうが良いわよ。この人って単に自分がやりたいようにやってるだけなんだから。そうね、さしずめ今は自分も乗れるような宇宙船を作りたいってだけなんじゃないかしら。『生きている間にせめて月に行きたい』って、いつも言ってたもの」 良く言えば冷静な、そして悪く言うなら冷めきってあきれ果てている様子の詩衣那さんの声がスピーカーの奥から聞こえてくる。う~ん、そうなのかな~。「どっちにしても今の開発スピードが続くとしたら、月まで飛べるような魔法駆動の宇宙船が開発出来るのはまだ先ですね。主任が生きている間に開発出来るかしら?」 仁村さんもさりげなく茶々を入れる。愛されてるね。剣持主任♪「仁村君~~」 情けない声で抗議をしている剣持主任声を聞いていると、ホント、少年の心を持ったまま大人になったっていう感じかもしれない。 「アメリカのほうの開発具合も似たようなものなんですか?」 ちょっと気になったので、聞いてみる。もう既に開発済っていうのだったら嫌だな。「それについては、文字通り軍事機密だからほとんど情報はないんだが、おそらくまだじゃないのかな。あくまでも単なる想像だがね」 確信がなさそうな声の剣持主任。そうか、分からないんだ。「それはそうと美姫さん。大丈夫とは思いますが、もしも危ないと思ったら、迷わず先程の脱出装置を作動させてくださいね。こちらでもスーツからの信号を常時モニターしていますけど、装置の電源を切るのが間に合わない可能性もありますから」 仁村さんの冷静な声が聞こえる。ワタシは、コントロールルームの方を見ながらこくりとうなずいた。大丈夫。たぶんOK。
Jul 15, 2004
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「まあ、核爆弾を召喚魔法を応用して敵国に送り込もうという話よりはましですが、それにしてもやっぱり戦争用の研究なんですね……」 妖精の生活向上のためには仕方がないと納得しているワタシだったから、研究そのものに対する協力を止めようとは思わなかったけど、戦争のための協力はちょっと嫌かも……。そんな気持ちがワタシの声を微妙に暗くする。「妖精の魔法を戦争に応用すればそれこそとてつもないことになるということを心配する気持ちは分かる。私としても本当に作りたいのは妖精の魔法を利用した惑星間宇宙船なんだよ。火星はおろか、太陽系中の惑星探査を有人で行うことも可能かもしれないとなったらなおさらだ。しかしね美姫君、既に妖精は軍事目的で利用され始めている可能性が強いんだよ。米軍によってね」 考え込んでいる様子のワタシを見て、剣持主任は話を核心に進めて来た。妖精に対する機械の悪影響をキャンセルする装置、商品名『妖精用電波ガード1号・まもる君』や、妖精の魔法を強化増幅する装置、試作品名『零号機』と同じような機能を持った機械を米軍が開発しているらしいという話に。なんだかここに来るまでの道のりって長かったな……。「美姫さん、海外における妖精事情って、何か変だと思わない? 日本以外の国ではおおむね何らかの形で妖精の人権が制限されているのよ。宗教的にみて妖精は人間とは違う生き物だから、人間であることを唯一の理由として与えられる人権を妖精に認めるわけにはいかないだなんて、どこか無理のある理屈にしか思えないんじゃないかしら?」 詩衣那さんがまじめな顔をしてワタシに聞いてきた。その態度にはワタシの身体を撫でまわしたあのときの雰囲気は微塵もない。こんな態度が取れるなら最初からそうしてくださいッ! 静かに心の中で突っ込むワタシだった。「……何か、今までの話と関係があるんですか?」 詩衣那さんの質問に対して、同じく質問で返すワタシ。だって考えても分からないんだもん。「私のおじい様は私が妖精に召喚されて以来、妖精が人間と同じように暮らしていけるように加賀重工の財力をはじめとしてあらゆる力を使って政界に働きかけてきてくれたわ。そのおかげで少なくとも日本国内においては妖精であってもごく普通に人権を認められているけど、同じように海外に働きかけてもなぜかいつもどこからか妨害が入るの」 この部屋にはワタシ達4人しかいないのに、声をひそめて話す詩衣那さん。盗聴されてる? まさかね。「実際のところ海外の大半の国でも、妖精の人権は一切認めないという考えの人は少数派なんだよ。ところがなぜか国家としての意見となると、妖精には人権を認めないか、もしくは大幅に制限しているのが実情だ」 剣持主任は声をひそめるでもなく、苦々しく詩衣那さんの言葉を補足する。う~ん、何やら陰謀の匂いが……。「誰か、妖精に人権が認められると困る人でもいるんですか?」 座ったまま剣持主任の顔を見上げつつ話していてちょっと首が痛くなってきたワタシは、羽を出すと剣持主任の顔の高さまで身体を浮き上がらせた。ふう、やや爽快感♪「というよりも、世界的に妖精の人権が認められていない状況のほうが都合が良いという団体がいるんだよ。具体的に言えばそれが米軍ということなんだが……」 言葉を区切ると、メガネを外してレンズをハンカチで拭く剣持主任。いよいよ結論が話されるのかな?「知ってるかな? 妖精の人権を基本的には認めていないアメリカ合衆国なんだが、軍に入ることを条件に人間と同等の人権を認められているという話を。そのせいでアメリカ国内の妖精の大半が軍人になっているということなんだが……。怪しいと思わないかね?」 手の甲を口にあてて、声をひそめてみせる剣持主任。深刻そうな声の割に、目が笑っているのはなぜ?「アメリカ合衆国政府は、妖精が自ら軍に志願するように誘導する為に、あえて妖精の人権を認めていないのよ。妖精だけを徴兵するわけにもいかないしね。そう考えれば、日本政府がいくらアメリカ政府に妖精の人権を認めるように要請しても聞いてくれないわけよ」 苦々しくつぶやく詩衣那さん。なんだかちょっと悔しそう。「そしてなぜ米軍が妖精をかき集めているのか? 気づいているんだよ。彼らは……。妖精の魔法を軍事に応用したときの絶大な効果を。だからアメリカ政府は、あらゆる力を使って世界各国で妖精の人権が認められないように工作して、世界の妖精達がアメリカに亡命して軍に志願するように仕向けていると……、そう私達はにらんでいるんだよ」 なんだかワタシの頭の中で、パズルのピースが全てあるべき所に収まって行くかのような感じがした。まさかッ! でもッ!? そうなのかもしれない……。
Jul 14, 2004
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「そして、もしも大規模な召喚魔法を自由自在に使えるようになった時こそ、世界の軍事常識は根底から覆されるのだよ。分かるかい? 順番に説明しよう。まずは世界の超大国が多額の予算を費して構築している戦略核兵器システムが戦争発生に対する抑止力としての機能を大幅に失う……。そもそもなぜ戦略核兵器に戦争を抑止する力があるのか? 簡単に言えば『やったらやり返されてしまう』からだ。既にソ連も崩壊して久しいから美姫君にはピンと来ないかもしれないが、米ソの冷戦が核兵器を使った熱い戦争に発展しなかったのは、お互いに大量の戦略核を持っていたから核戦争を仕掛けた瞬間に自分も破滅するという状況が明白に存在したからだ。相互確証破壊というやつだな」 剣持主任の話は、学校でもなかなか習わないような現代史のなかでもラスト部分だから、正確に理解出来たとは言えなかったけど、言わんとしていることは理解できる。ワタシは黙ったままうなずいた。難しい話だけどまだ大丈夫。ついて行ける。「これは、核爆弾を輸送する手段としてのロケットの能力が、攻撃側の核ミサイルのすべてが迎撃されない程度には高性能であり、同時に防御側が反撃の核ミサイルを発射出来る時間的余裕が有る程度には性能が悪いから相互確証破壊が成り立ち、抑止力が生まれるわけだ。ま、私としても専門分野外だから荒っぽい理屈になっていることは自覚しているが、間違ってはいない。ここまでは良いかな?」 米ソが使い切れない程の核兵器を抱え込んで対立していた東西の冷戦終結後に生まれたワタシだけど、剣持主任の言うことは理解出来る。でも、剣持主任が次に言いたいことってもしかしなくても……。「大体のことは分かりますよ。それにしてもここの研究って、戦争をするための研究だったんですか? そんなことは聞いてませんよ。まさか核爆弾を妖精の召喚魔法を利用して、敵国の中心部に送り込もうという研究だっただなんて」 妖精の為になると思えばこそ剣持主任の研究に協力しようと思ったのに、なんだかちょっと複雑すぎるかも。「確かにそういう使い方も出来る♪ 凄いだろうね。魔法を発動した瞬間に敵国の軍事基地の全てがドッカーンッ! ……と、地上から消滅してしまう。しかしそれは可能だが非現実的なオプションだね。それじゃあ戦闘には勝てても戦争には勝てない。今の時代、国際世論の支持こそ戦争の勝敗を左右するものだからね。それよりも、敵国の武器の全てを一気に召喚して敵軍を無力化しちゃうなんてどうだい?」 楽しい悪戯(いたずら)を思い付いた少年のような顔をする剣持主任。「え、そんなことも出来るんですか?」 考えてもいなかった方法を聞かされて、ワタシの中に生まれかけていたこの研究に関する嫌悪感が消えてしまった。う~ん、もしもそんなことが出来るのならすごいかも。「出来るとも。理論的にはだがね。しかしそこまで大技を使わなくても、その他にも色々と面白いことが出来るはずだぞ。例えば軍事行動をしている全部隊においてもっとも弱い部分は昔から輸送部隊と決っている。戦闘部隊を直接叩くだけの戦力が無くても、輸送部隊を叩き続けて行けば補給が滞って、戦闘部隊の戦力を無力化できるわけだが、そういった危険性は輸送路が物理的に長くなればなるほど大きくなる。だが召喚魔法による物資輸送が現実になれば弱点が無くなる分、軍の総合的な防御力・攻撃力は大幅にアップする。実はこれが一番大きい。軍が実際に戦闘している時間なんて微々たるものだからな」 段々と、一般人には分かりにくい世界の説明に突入しちゃった剣持主任。う~ん、軍事オタ……。
Jul 11, 2004
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「じゃあ、美姫君も話を聞きたがっていることだし、続きを話すことにしようか。とにかくさっきまでの話をまとめると、武器そのものである爆弾を敵にまで運ぶという【輸送力】、部隊を素早く展開するという【輸送力】、そしてその部隊に必要な物資を補給するための【輸送力】、そのすべてを飛躍的に増大させることができる可能性を秘めているのが、妖精の魔法なのだよ」 自分の言葉に興奮してきたのか、顔を赤くしつつ大声をあげる剣持主任。だけどワタシにはどうして剣持主任がそんなにも興奮しているのかが分からない。「妖精が使える魔法と言えば、空を飛ぶことだけですよ? もしも魔法を今とは段違いに強化する方法が見つかったとしても、妖精に出来るのは飛行機のエンジンの代わりぐらいじゃないんですか?」 前に、剣持主任が妖精の魔法を使った飛行機を作るのが当面の目的であると話していたことを思い出しながら、ワタシは質問してみた。確かに剣持主任は前にそんなことを言っていたような気がするんだけど、ワタシの記憶違いじゃ無いよね。「もちろん妖精が空を飛ぶ為に使っている魔法を強化増幅することが出来れば、飛行機どころか惑星間宇宙船を飛ばすことだって簡単だろうな。しかし確実に存在すると確認されている妖精の魔法がもうひとつあることを忘れちゃいないかね?」 完全に楽しんじゃっている雰囲気の剣持主任。もうッ! じらしちゃ嫌ッ!!「……詩衣那さん、妖精が使える魔法って、空を飛ぶこと以外に何かありました? そう言えば詩衣那さんは、遠くのことが分かっちゃう千里眼のような魔法が使えるとか言ってましたけど、そのことなんですか?」 考えても何も思いつかなかったワタシは、横にいる詩衣那さんにそっと聞いてみる。「ちょっと違うわね。その魔法は妖精なら誰でも使えるというような魔法じゃないもの。私のような蝶の羽をした妖精じゃないと使えないんじゃないかしらね……」 ちらりと剣持主任の顔を見ながら答える詩衣那さん。どうやら詩衣那さんは答えを知っている様子だったけど、剣持主任のオタク魂に遠慮しているのか、答えそのものを話そうとする様子はない。「妖精世界に居る妖精の全てが使えるかどうかまでは分かりませんが、少なくとも人間世界に居る元人間の妖精達なら誰でもその魔法は使えるはずですよ。潜在的には……、ということですが」 答えが分からずに黙っているワタシに対して仁村さんが助け船を出してくれたけど、もしかしてそれって【召喚】?「どうやら美姫君は、今、正解を想像することが出来たようだね。そう、元人間だった妖精の誰もが潜在的に使える魔法。それは召喚魔法だッ! 何しろ召喚魔法が使えない妖精が人間を召喚するなんて無理な話だろうからね。まあ、現状で人間世界に召喚魔法が使える妖精がいないのは確かだが、妖精の魔法を機械的に強化増幅することが出来るなら話は別だ。潜在的に使うことが出来る魔法なら、必ず実用レベルで使えるようにすることが出来るッ!!」 自信を持って言い切る剣持主任。なるほどそうなのか。ワタシは剣持主任の気迫に圧倒されてしまった。
Jul 9, 2004
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「ふう~っ、ようやく話が本題に入ったわね。まったく剣持さんの話ってば長い上にまわりくどいんだもん。男のおしゃべりは女性に嫌われちゃうわよ」 今まで黙って話を聞いていた詩衣那さんが、ため息とも深呼吸ともつかない大きな息を吐きだす。疲れてますね? 実はワタシもです。「詩衣那さん、あまり本当のことを言うものではないですよ。冗談になりませんから」 仁村さんもすました顔で詩衣那さんをたしなめる。しかしその一言は詩衣那さんに向けられたものではないのは確かだ。剣持主任、ぼろくそな言われよう……。少しだけ同情しちゃうかも。「は~い♪」 暗黙の了解なのか、詩衣那さんも明るく返事をする。完全に遊んでますね。ふたりとも。「ひどい言われようだなぁ~。これでも女性にはもてるほうだと思うんだが……。美姫君、今の話は退屈だったかい?」 あまり気にした様子もなく、ワタシに振ってくる剣持主任。だからどうしてワタシに振るの!?「えっ? あの~、退屈というよりも、その話がどうして妖精と結びつくのか分からないというのが正直な感想というかなんというか」 あせあせとしながら、答えるワタシ。その様子を見て、詩衣那さんがワタシをからかう。「そういうのを退屈っていうのよ。美姫さんも、訳が分からない話をする剣持さんのことを嫌いになっちゃったでしょ?」 にやにやと楽しく笑いながら、しかもその視線はワタシではなく剣持主任を向いているとなっては、誰に向かって言っているのかが丸分かりである。前に家に来た時に見た剣持主任は、自信満々のマッドサイエンティストで向かうところ敵無しという感じだったけど、詩衣那さん……、というか女性には関係ないことなのかなあ。男ってなぜかどうがんばっても女に頭があがらない時があるんだよね。「いえ、嫌いになったということはないですけど、ただ話が軍事関係でしょ? 今までその手のことに関心がなかったから分からないだけで、妖精と軍事がどう関係するのかということには興味ありますから」 最初は詩衣那さんに向かって、後半は剣持主任に向かって話をするワタシ。なんだかもうその場の雰囲気を壊さないようにするのが習慣になっちゃってるかも。喫茶店のウェイトレスをしていることによる職業病かな?「聞いたかねッ!? 詩衣那君ッ!! 美姫君は今の話に興味があると言ってるぞッ!! さすがは美姫君だ。やはりに元男の子だっただけのことはある。いや~、えらいぞ。これからの時代だからこそ軍事問題に関心を持たなくてはな」 我が意を得たりとばかりに喜ぶ剣持主任。この人ってアニメオタクだけかと思っていたら、軍事オタクでもあったんだ。もしかすると妖精オタクでもあるのかもしれない。まさにマルチオタク……。「は、はあ……」 今の私は女の子なんだけどなあ~、と、思いながら生返事をする。
Jul 7, 2004
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「そもそもなぜ正規の戦争ではなくテロが起きるのかということは構図としては簡単だ。相手の国が核を持っているかまたは核をすぐさま開発出来るような国を相手に戦争を仕掛けることは、報復手段として核を使われる可能性を考えたら自殺行為に等しい。だから国と国が自己の権益を主張する手段としての武力戦争は影をひそめ、争いの主戦場は権謀術数を極めた外交交渉に移ることになったのだよ。 しかし大国同士ならばともかく、色々と行きづまった弱小国が大国に外交交渉力で勝てるわけがない。また当然に正規戦争を仕掛けることも出来ないから最後の手段というわけでテロに走るわけだ。 ま、そんな国は、まともな手段で勝てないということで裏技を使おうなんていう根性無しとみることも出来るし、逆に勝つためにはどんな手段も使うこともためらわないという見上げた根性をしていると見ることも出来るんだが……。 問題なのはテロはいつどこで起きるかが分からないから、それに対処しようとするととんでもない手間と時間とお金がかかるということなんだな。 ちなみにテロを無くそうと思えば、弱小国や団体がテロ以外の手段でも大国に自らの主張を認めてもらえる手段が存在すると思わせると良いんだが、現在の国連は常任理事国の力が強すぎてちょっとうまくないといったところだな」 え~と、この話って妖精と軍事の関係についてが始まりだったよね? ホントに関係あるんですか? 剣持主任の話の先が見えない……。「さて、それで【輸送力】に話を戻すが……。軍隊に求められる概念のひとつに【即応性】がある。これも【輸送力】に関係があるの。軍隊は何か有事が起こった時には、出来るだけ早く現場に到着するなどの反応をするということが求められるわけだ。 しかしテロが起こり得る場所も様々なら、その手段も様々だ。たとえば1995年にあの有名な新興宗教集団が東京の地下鉄で起こしたような生物化学兵器によるテロに対処するには、それなりの装備と知識を備えた部隊の投入が不可欠だが、当然そのような部隊をいくつも作って全国各地に配置するのは予算がかかりすぎてしまうから現実的では無い。 したがって【即応性】を維持する為にも対処可能な数少ない部隊を、出来るかぎり素早く現場まで【輸送】するという選択肢が重要になってくるわけだ」 あ~もう、剣持主任は本当に気持ちよさそうに話をしているけど、聞いてるほうの身にもなって欲しい。それにしても詩衣那さんや仁村さんは、よくもまあちゃんと聞いていられるよね。もしかすると既に何度も聞いている話なのかもしれないのに。ワタシなんか自慢じゃないけど眠くなってきちゃった。だってなんだか別世界の呪文を聞かされているような感覚なんだもん。「もちろんこの構図は特殊部隊の輸送にだけ当てはまるわけではない。例えば現在のアメリカ軍は世界のあらゆる地域で発生する紛争にも対処出来るように、日本をはじめとする世界各国に軍隊を展開しているわけだが、ここでも輸送力の問題が出てくる。 極端な言い方をするのなら世界のどんな場所で紛争が発生しようともアメリカ本国からその日のうちにフル装備の大部隊を投入出来だけの【輸送力】があるのなら、なにもわざわざ世界各国から迷惑がられているのに平時から軍隊を世界各地に展開していなくても良いわけだ。 何かあった時には本国に待機している部隊をその日のうちに送り込めばいいんだからね」 う~ん、もしかすると分かりやすい話なのかもしれないけど、普段、こういった軍事関係のことなんて考えたこともないからワタシには剣持主任の話が本当のことなのかどうかということすら分からない。それにこの話のどこがどう妖精に結びつくのか想像すら出来ないし……。もしかしてワタシってお馬鹿さん?「それからもうひとつ重要なのは、補給能力としての輸送力だな。いくら軍隊を素早く輸送しても、その軍隊を維持するための補給能力が追い付かなければ何にもならない。1回輸送すればそれで良いのではなくて、継続して輸送し続ける能力が必要なんだよ」 剣持主任はひといきつくと、冷めてしまったお茶を一気に飲み干した。そして何かを期待するようにワタシをじっと見る。う~ん、もしかしてワタシにアレを言わせたいのかな?「あの……、それで今の話と妖精がどう関係してくるんですか?」 オタクの習性として、相手が知らないことを喋りたがるというものがある。剣持主任としては、ワタシが何も知らないことを確認したいのだろう。まったくもうっ!「ふふふ、まだ分からないのかね? 機械で強化された妖精の魔法が、今言った全ての分野において【輸送力】の圧倒的な向上をもたらすのだよッ! おそらく米軍もそれに気がついているはずだ。だからこそあの人権問題に世界一うるさいアメリカで妖精の人権がないがしろにされたままになっていると私はにらんでいるんだよッ!!」 口から泡をとばしつつ力説する剣持主任。き、汚い。それにしても軍事の話からいつのまに妖精の人権の話になっちゃったの? ワタシの頭はもうついて行けません。
Jul 5, 2004
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「なるべく簡単に、そして短くお願いします」 最後の抵抗というか、一応念の為の一言。しかし喋りたくてうずうずしている剣持主任の前に、それはむなしい一言だった。「では、はなはだ不本意ながら可能な限り簡単に、そして可能な限り短く話すことにするが……、美姫君は、知識というものは完全な形で吸収してこそ活きてくるとは思わないのかい? そして新たな知識に出会えた喜びにうち震えたいとは考えないのかい?」 対して剣持主任は、更に攻勢に出て来る。ダメだ。下手に抵抗したら【軍事における輸送力の重要性】という話の前に、【そもそも知識とは何ぞや?】というテーマで演説をされちゃうッ!「……少しだけなら難しくなったり長くなったりしてもいいですから、早く話をしてください。お願いします」 今度こそ本当に観念したワタシは、頭を下げるのだった。やっぱりちゃんと聞かないと収まらないんだね。ちなみに横を見ると仁村さんも詩衣那さんも軽く頭を下げている。オタクで演説したがりの上司を持った不幸ってやつかな?「皆が素直になってくれてうれしいよ。人間も妖精も素直が一番だぞ。さて、それはそうと軍事においてもっとも大切なのは輸送力という話なのだが…、輸送能力の大小が軍事能力の大小を左右すると言っても言い過ぎではない」 その一言が、剣持主任の大演説が延々と続く始まりだった。「まずそもそも戦車とか戦闘機。それに空母や戦艦というものを【ウェポンキャリアー】と呼ぶことからも分かるように、本来の意味における【武器】とは、直接的に相手にダメージを与えられる破壊力を持った銃火器や、爆弾に限られている」 いきなり【ウェポンキャリアー】なんていう初めて聞くような言葉を『知ってて当然!』という姿勢の剣持主任。これだからオタクは……。「つまり軍事技術というのは、本来的な武器である爆弾等を如何に素早く遠くまで運ぶ事が出来るか? ということに重点がおかれて開発されてきた歴史だと言っても良いんだ」 ワタシと仁村さん、詩衣那さんの3人は、ふんふんとうなづきながらも下手に返事をするつもりはない。何か言った途端にまた話が脱線して長くなるだけなんだもん。「より具体的に言うなら、鉄砲が発明されてからは如何に遠くまで正確に弾を飛ばすかという開発競争が始まったわけだが、その流れの果てにどんな大きな大砲よりも遠くに強力な爆弾を輸送する、つまり目標となる敵まで強力な爆弾を運ぶ事が出来る手段としての爆撃機やミサイルが開発される事になり、そして現代では地球の反対側にまで1時間もかからずに超強力な核兵器を輸送し命中させる事が出来るICBM(大陸間弾道弾)なんて物も出来てしまった。しかしそれによりお互いに相手の喉もとにナイフを突き付けているような状況になってしまったから、少なくともそのような技術を持っている大国間においては実質上戦争は使用可能なオプションでは無くなってしまい、戦争は抑止されることになった。技術の進歩が戦争を無くしたというわけだね」 何だか剣持主任の知識って、もしかするとかなり偏りがあるのかも? ワタシは、話を聞きながらそう思ったが、具体的にどういう具合に偏りがあるのか分からなかったので、やはりうなづきながらも黙っていた。「しかし大国間の戦争が無くなったが故に出て来たのが、テロとの戦争だ……」 そこでひといきをつくと、剣持ち主任はコップに入った水で喉を潤した。だから喋りすぎですってばッ! こころの中で突っ込みを入れるワタシだった。
Jul 3, 2004
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「仕事に【近い】話であって、仕事そのものの話じゃありません。それに普段の行いを思えば暴走と言われてもしょうがない話なんじゃないですか?」 そう言うと仁村さんは、詩衣那さんとお互いに目と目を合わせて『ねぇ~♪』と、うなずき合うのだった。……やっぱり前にも何かあったんだろうな。「いつだったかしら? 私も夜中の3時まで、その手の話に付き合わされたことがあったっけ……。あれにはホントまいっちゃったわ。次の日は眠くて結局仕事にはならなっかったのよね。怒るわよ。もしも今日までそんなことになっちゃったら」 仁村さんに続いて剣持主任にクギを刺す詩衣那さん。それにしても夜中の3時まで話をする剣持主任も主任だけど、素直に聞くほうも聞くほうなような気もする。……もしかして、詩衣那さんってば剣持主任のことが好きなのかな?「だから今の仕事に関係あるんだってばっ!」 すねたような雰囲気で怒る剣持主任。意外と子供っぽいのかも。いや、この反応は子供っぽいと言うよりもオタクっぽいのか……。「あの、剣持主任。話を聞くこと自体は問題無いんですけど、出来たらなるべく短く簡単に済ませてもらえませんか? ほら、ワタシって軍事に詳しいわけじゃないし♪」 オタクがマジ切れすると何をするのか分からないからね。ワタシはとりあえず剣持主任に話をするように促した。そのワタシを見る仁村さんと詩衣那さんの顔に浮かんだのは、剣持主任相手に話を聞こうとしているワタシに対する賞賛? それとも哀れみ? ……なんだか良く分からない。「しょうがない、じゃあ極端にまで話を単純にしてみるからちゃんと聞いてくれ。……美姫君だけじゃなくて、詩衣那君も仁村君も聞くこと。いいねっ!」 強引にまとめると、その場の全員に念を押す剣持主任。ホント、短く済ませてよね。でも、もしも話が長くなるようだったら最終手段、『トイレ~ッ! 漏れちゃうーーーッ!!』と言って逃げ出しちゃおうかな?「午後の実験予定のほうは大丈夫なのですか? 機械のメンテナンス作業には顔を出さなくてもよろしいのでしょうか?」 左手を胸元まで持ってきて、ちらりと腕時計で時間を確認した仁村さんは、半ばあきらめの表情で最後の抵抗を試みる。限りなく無駄な抵抗のような気がしますけど……。「それなら基本的な指示は出してあるから問題ない。というかこの段階で下手に私が顔を出したほうが作業が遅れてしまうかもしれないぐらいだよ」 変な自慢(?)をする剣持主任。それって自分がおじゃま虫だって言ってるようにしか聞こえないんですけど。「ふ~ん、ホントかなぁ~。それで、午後からは何をするつもりなの? 言っておくけど美姫さんをまた気絶させるようなことをしたら許さないからね。1週間ぐらい口をきいてあげないんだから」 細めた目で怪しそうに剣持主任を見る詩衣那さん。詩衣那さんってば、剣持さんのことをあんまり信用していないんだね。それはそうとワタシのことを心配してくれてありがと♪「詩衣那さん、気絶くらい大丈夫ですから気にしないでください。ワタシなら大丈夫ですから」 心配してくれるのはありがたいけど、自分の意思でこの実験に参加しているわけだし、ワタシは詩衣那さんに、『ほら、この通り元気♪』と、両腕でガッツポーズを作ってアピールしてみた。 「ありがとう、美姫君。美姫君が気絶する直前のことなんだが、瞬間的に今までにないレベルで魔法力が強化されたらしい反応が出たことが記録されていたんだよ。だから今は、その瞬間を恒常的に再現する為に零号機を調整中なんだ。今日はもうそれで終わりにするからね。調整が終わったらもう一度だけ付き合って欲しい」 そしてそのまま軽く頭を下げる剣持主任。あやや……。「付き合って欲しいだなんてそんなこと言われなくても、きっちり協力させてもらいますよ。これは妖精全体の為になる研究ですからね」 なんだか自分でいってて恥ずかしいセリフだけど、言ってること自体に間違いはないと思う。ワタシは体が熱くなるのを感じていた。がんばれッ! ワタシッ!!「そうか……、ありがとうッ! 絶対にこの研究を成功させようじゃないか、美姫君ッ! ……ところでさっきの話に戻って妖精の軍事利用に関して、まずは軍事的にみてもっとも重要な能力は【輸送力】であるということについての説明なんだが……」 ああ、忘れていたわけじゃなかったのね。ワタシは心の中で小さくため息をついた。その思いは仁村さんも詩衣那さんも同じだったらしく、ワタシ達3人は剣持主任には分からないようにそっと目で合図をするのだった。しょうがない。これも仕事と思って聞きますか。
Jul 1, 2004
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