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「煙に巻くだなんてとんでもない。この話と美姫さんが服を脱がなくちゃいけないってことには関係があるのよ。すごくね。いい? 妖精の存在が人間に知られるようになってハッキリしたことがひとつあるんだけど、美姫さんにはそれが何だか分かるかしら?」 そして紫色に輝く蝶の羽を背中から出すと、詩衣那さんはふわりと宙に浮き上がった。なんで飛んでいるんだろう? もしかしてヒント? なんだか分からない……。「妖精は実在したということですか?」 答えが分からないワタシはあてずっぽうで答えてみる。その間にも詩衣那さんはゆっくりと上昇し、やがて部屋の中をゆっくりと回転するように飛びまわり始めた。それにしてもテーブルの上に立ったまま視線だけで詩衣那さんを追うのはちょっ疲れる。「もちろん妖精が実在したということも大事なことだけど、それは本質的なことじゃないわ」 それだけを答えると、詩衣那さんは段々とスピードをあげて飛びまわり始めた。とうとうワタシも背中から純白の鳥の羽を出すとぱたぱたと羽ばたき、詩衣那さんを追いかけた始めたのだった。部屋の中とはいえ、人間サイズの部屋は妖精が飛びまわるには十分な空間がある。ワタシが詩衣那さんを追いかけ、そして詩衣那さんはワタシを追いかける。まるでダンスを踊っているかのよう……。「本質的なことって何ですか?」 空中を舞うワタシ達の周囲にはやがて妖精が飛ぶ時に出すオーラによって、薄く輝く軌跡が描かれていた。なんだかもしかするとトランス状態? ちょっと頭がぼんやりとしてきたかも。「一言で言ってしまえば、魔法という技術が現実に存在し有効に機能しているという実例が目の前に示されたということね。なのに私達には魔法とはいったいどういうものなのか想像することしか出来ない。大系だった知識は全くなくて、妖精との交信記録から類推された知識しかないの。魔法という技術を理解するには文字通り手探りで探っていくしか無いのよ」 空中を舞っていた詩衣那さんは、同じく宙を舞っていたワタシとの間隔を至近距離にまで詰めていくと、ごく自然にワタシの手を握った。若干、詩衣那さんのほうが体格は良いのかな。少しだけワタシの手を握る詩衣那さんの手のほうが大きく感じる。「魔法を手探りで、ですか……」 ワタシは何をどう言えば良いのか分からず、適当に相づちを打った。頭が半分ぐらいしか動いてないかも。「そうよ。だから魔法を研究すると言っても方法は限られてくるの。今、この世界で魔法が使えるのは妖精だけ。しかも単に羽を出して空を飛ぶことしか出来ない魔法ね。でもそれだけでも妖精召喚事件以前の状況から見ればすごいことよね。だって誰もが納得する形で魔法がそこにあるんだもの」 素晴らしいでしょ? という感じで話す詩衣那さん。「そうですね。確かに妖精が空を飛ぶのは魔法によるものらしいとは、ワタシも理解しています。広い意味ではこの世界の元人間だった妖精は、みんなが魔法使いだと言えなくもないんじゃないかなとも思いますし」 この話がどうしてワタシが服を脱がなくてはいけない話に結びつくのかいまいち理解できないまま、ワタシは詩衣那さんの話に同調した。「でも私達の技術や知識では、魔法に対する影響を与えることが出来るものはたったひとつしかないわ。残念なことにね。結論を言えばそれはコンピューターが代表するネット機器なわけ。この研究所での実験内容を簡単に要約すると、コンピューターの調子を変えることによって妖精の魔法に対して負の影響ではなくて正の影響を与えようとしているということなのよ」 ワタシの手を取ったまま、詩衣那さんはワタシを引きながらゆっくりと真下へと降下していく。そこは部屋の周囲に設置された妖精用の部屋のひとつだった。いったい何の部屋なんだろう?「その話は、剣持主任からも聞きました。少しだけですけど」 周囲に目を配りつつ、返事をするワタシ。ええと、この場所はどう見てもお風呂に見えるような……。「コンピューターの調子を変えて私達妖精の肉体の反応を見る為に、スーツの内側には各種センサーが取り付けてあるの。だからスーツを着る時は完全な裸にならないといけないのよ。データーにノイズが混じらないようにね。ついでに言うと汗などの汚れが有っても正確なデータが取れないから、スーツを着る前には念入りに身体を洗っておかないといけないのよ。というわけで、美姫さん。服を脱いで裸になってね♪ 一緒にお風呂にはいりましょう」 こうして私は、詩衣那さんの成すがまま服を脱がされて妖精用の風呂場へと連れられていったのだった。うう、やっぱり言いくるめられちゃったのかなあ?
Apr 30, 2004
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「り、理由を教えて下さい。どうして服を脱がなくちゃいけないんですっ!?」 ワタシは勢い良く詩衣那さんとは反対方向に逃げると、解かれかけたワンピースの背中の紐を急いで結び直した。危ない危ない、まったく妖精ってこんなのばっかしっ!!「剣持さんの話を聞いてなかったの? 今日はこれから美姫さんにはスーツを着てもらうから、その為に服を脱いで準備をしておかなくちゃならないのよ。思い出したかしら?」 右手の甲を軽く口元に当てて笑みをもらしながら説明する詩衣那さん。確かに剣持主任はワタシ用のスーツを用意してくるから準備しておいてくれと言ってたような気がするけど……。「思い出しましたけど、だったらそのスーツとやらが来てから着替えれば良いんじゃないですか? そのスーツが届いてないのに服を脱いだら、しばらくワタシは素っ裸のままになっちゃいますっ!」 言いくるめられるものかとワタシは警戒する。今のワタシは妖精の女の子だから、女性である詩衣那さんに裸をみられることはなんでもないことなのかもしれないけど、意識の上では男の子だったときの感覚がまだまだ残っているから、女性に自分の裸を見られるのは恥ずかしいのだ。性転換しちゃった妖精の心は複雑なんだよね。「ええと、どこから説明したら良いのかしらね……。この研究所が広い意味で妖精の魔法を研究しているのは知ってるわよね。でも本当のところ、狭い意味ではコンピューターなどの機械と妖精の体調との相関関係を調べているわけなの」 冗談を言っているかのような先ほどまでの態度からじょじょに真剣な雰囲気をかもし出し始める詩衣那さん。「だからどうしたというんですか?」 警戒心をあらわにしたまま、妖精に出せる限りの低い声でぼそぼそと訊くワタシ。今更ながらに思うけど、なんでワタシのまわりの人たちって色々な事情に詳しいんだろう?「本場の本物の妖精がこの世界の人間たちを召喚するときに召喚に対する人間の同意を得る為に色々な事情を説明するってことは知ってるわよね。美姫さんも経験したことだから。もちろん1人1人の人間に説明されたことだけではたいしたことは分からないのだけど、そんな断片情報でも十分な量を集積して合理的な分析をしたらどうかしら? 妖精召喚事件が始まってから既に7年……。既に私たちは妖精達の事情をかなりのところ理解しているかもしれないとは思わない?」 突然? 詩衣那さんは妖精の召喚について語り始めた。妖精の召喚と服を脱ぐことにいったい何の関係があるっていうの?「もしかして、煙に巻こうとしてませんか? ワタシが服を脱がなくちゃいけないことと妖精の召喚事情になんの関係があるのか、ワタシには全然分からないんですけど?」 詩衣那さんが詳しく説明し出したので、実はワタシが服を脱ぐことにも深い理由があるのかもしれないと思い始めたワタシだったが、とりあえず好奇心も手伝って説明をうながすのだった。う~ん、状況に流されるにしても、もう少し事情が見えてから流されたい気分だったりして。
Apr 29, 2004
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「あ、あの、服を脱いでって、ワ、ワタシ……、そんな趣味は無いんですけどっ!」 元男の子であるから女性にまったく興味が無いと言えば嘘になるけど、今のワタシは相手が女性だろうと男性だろうと性的な欲求の対象する気持ちがほとんど無い。第一、もしもワタシが今でも人間の男の子のままだったとしても、女性にたいしてあれこれしたいとは思っても、受身となってあれこれされたいとは思わなかったはずだ。まさにそんな趣味は無いということだ。ホントだよっ!「あら、さっきは私のことを『お姉さま』と呼んでくれたのに、美姫ちゃんってば薄情なんだから……」 ワタシ達が今立っている応接用のテーブルの上にくずおれて、よよよと、わざとらしく泣き真似をしながらハンカチを噛む詩衣那さん。や、役者だ。「呼んでませんっ! 『素敵なお姉さん』とは言いましたけど、『お姉さま』だなんて言った覚えはありませんっ!!」 心のどこかにちょっとだけ……、ホントにちょっとだけ何かを期待する気持ちがあるかもしれないという不安を打ち消すように、ワタシはブンブンと大きく頭を振りながら詩衣那さんに反論をした。びっくりして思わず背中から羽が出ちゃったじゃないのさ。まったくもうっ!「あははははっ! 美姫さんってば顔だけじゃなくて中身も可愛いのね。ねえ、人間だった頃の美姫さんって本当に男の子だったの? なんだか信じられないわ」 なんたることっ! 詩衣那さんはワタシの反応を見て楽しんでいただけだったようだ。それにしてもワタシってそんなにも可愛いの? それも中身が……。こうみえてもしばらく前はホントのホントに男の子だったのに。うにゅ~。「信じられなくてもなんでも人間だった頃のワタシは正真証明、間違い無く男の子でしたっ! もう、詩衣那さんってばワタシをからかう為に服を脱げだなんて言ったんですね。ひどいですよ」 口を尖らせてすねてみるワタシ。ついでに両手の人差し指どうしを胸の前で合わせて水あめをこねるかのように小さく回してみる。う~ん、客観的に見ると可愛いかも、自分。「からかってなんかいないわよ。だって服を脱がなくちゃいけないのは本当だもの。さあさあ、わかったら早く脱いで♪ もしも1人で脱げないのなら私が手伝ってあげましょうか? ね、美姫さん」 すすっと私の横を取ると、右手をさりげなく私の背中に回そうとする詩衣那さん。ああっ! 紐をほどかないでっ!
Apr 28, 2004
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「まあ、その件に関しては、おじい様達には感謝してもし足りないぐらい感謝しているわ。その件に関してはね……」 何か奥歯に物がはさまったような言い方をする詩衣那さん。何だろう?「でも、人間でなくなった途端に私の利用価値がなくなったかのような態度をとったお父様とお母様のことは忘れたくても忘れられないわ」 にっこりと笑みを浮かべながらなのに、怒鳴られるよりも迫力を感じる……。詩衣那さんはしばらくの間、剣持主任の目をじっと見つめ続けた。やがてその圧力に耐え切れなくなった剣持主任がすっと目をそらしたのを確認すると、詩衣那さんも、ふう~っと、長い息を吐いた。ワ、ワタシ、固まっちゃってました。「そんなことを言うもんじゃないよ。詩衣那君のご両親は単に君に幸せになって欲しかっただけだろうに」 今までワタシが知っていた自信に満ちた剣持主任の雰囲気は微塵もない。あああ、誰か、助けて。ワタシってこの場にこのままいてもいいのかなっ!?「まだ高校生の娘に政略結婚をさせようとする両親を好きになれというほうが間違っていると思うのだけど、それって私の考え違いなのかしら? ねえ、剣持さん?」 政略結婚っ! しかも高校生でっ!? 本物のお嬢様の住んでいる世界はワタシの住んでいる世界とはまったくの別物なのかも……。「もうやめよう。この話は……。過ぎたことだ。私は美姫君用のスーツを用意してくるから、準備をしておいてくれ。詩衣那君、頼んだよ。じゃあ、よろしく」 逃げ出すように話を打ち切ると、剣持主任は部屋を出ていった。何だか意外。あらためて人間って色々な面を持っているんだなと実感しちゃうよ。う~ん、それにしても詩衣那さんと2人きりになっちゃったけど、いったい何を喋ればいいんだろう。それに剣持主任が言っていたワタシ用のスーツの用意って何のこと?「……さてと、びっくりさせちゃったわね、美姫さん」 しばらくの間、剣持主任が去っていったドアをにらみつけていた詩衣那さんは、ふっと肩の力を抜くと、ワタシに向き直ると柔らかな雰囲気でそう言ったけど、……ホントにびっくりしちゃいました。「あの、政略結婚って……」 黙っているべきなんだろうけど自分の感情には素直な妖精の性質が、ワタシの口を勝手に動かした。わわっ!? いきなりこんなことを聞いちゃだめだよぉ~。「今はまだそのことは言いたくないわ」 詩衣那さんはワタシに言いきった。やっぱり無礼な態度だったよね。反省っ!「ごめんなさい、立ち入ったことを聞いてしまって……」 ワタシは妖精の小さな身体をさらに縮こまらせて蚊の鳴くような声を絞りだすのだった。うう~、いきなり悪印象ですか?「いえ、いいのよ。話題を出したのは私と剣持さんであって、美姫さんは悪くないわ。それよりも剣持さんが美姫さんのスーツを持ってくる前に準備だけ済ませときましょう。というわけで美姫さん、服を脱いで♪」 へっ!? 詩衣那さん、今、何て言ったんです? ワタシに服を脱げと聞こえたんですけど……。ワタシは自分の耳を疑ってしまった。もしかしてもしかすると、さっき自分のことを「お姉さまと呼んで」と言ったのはマジなの~っ!
Apr 27, 2004
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「7年前に妖精召喚現象が始まってから約1年後、今から6年前という早い時期に、詩衣那君はソレールという名前の妖精に召喚された。当時はまだ妖精に召喚されるということ自体が世間一般には理解されていなかったから、それはもう大変な騒ぎだったよ」 ちらりと詩衣那さんのほうに視線を向けて、詩衣那さんの反応を確かめながらゆっくりと剣持主任は話しだした。それにしても詩衣那さんはもう妖精を6年もやっているわけか。本当に妖精の大ベテランだね。7年前から妖精をやっている大島さん並だよ。「ひとつ聞いてもいいですか? 詩衣那さんは、いくつの時に召喚されたんです?」 妖精としての詩衣那さんの外見は、ワタシと同じく16~17才ぐらいか、それよりもやや上に見えなくもないけど、いったい本当の年齢はいくつなんだろう? 落ち着いているからもしかすると実際にはかなり年上なんじゃないかと思ったワタシはそう聞いてみた。女性に年齢のことを聞くのはタブーかもしれないけど、疑問に思ったことを素直に聞かずにおれないのが妖精の特徴なんだよね。「18才の時だ。その頃の詩衣那君は、今の姿に良く似たかわいらしい女子高校生だったよ。外見が召喚前と後でほとんど変わらない例というのも珍しいんじゃないかな」 昔の詩衣那さんのことを思い出しているのか、腕を組んで何もない斜め前方の空間をぼんやりと見つめている剣持主任。昔を思い出す姿が妙にはまっているけど、こんなところがおじさんっぽくて何だかかわいいかも?「ということは、今の詩衣那さんの本当の年齢は24才なんですか? とてもそうは見えないです。なんだかワタシとおない年みたいに見えますよ」 お世辞というわけでもないけど、素直な感想をまだ目をつむっている詩衣那さんに言ってみた。だって本当に若くてかわいらしいんだもの。「……ありがとう。妖精は年を取ってもなかなか外見には表われないみたいなの。だから外見だけみると17~18才ぐらいでしょ? でも本当はこう見えても24才なのよ。美姫さんから見たら24才なんてもしかするともうおばさんに感じられちゃうのかしら?」 見ようによってはなんだかちょっと意地悪な微笑みを浮かべてワタシに話しかけてきた詩衣那さん。確かに外見は17~18才ぐらいに見えたけど実年齢を知ってしまったからなのか、雰囲気はどこか大人びて感じられた。「いえ、おばさんだなんてことは無いですっ! 今はこんな姿をしているワタシですが妖精に召喚される前は17才の男子でしたから、詩衣那さんのことは素敵なお姉さんって感じがします」 腰かけていたソファーから半分腰を浮かせながら、ワタシは慌ててそう言った。おばさん扱いをされた若い女性がどんな態度を取るのかということは、想像するまでもないからだ。それに実際のところ、詩衣那さんを見て本当の年齢が24才だなんてことを当てられる人がこの世にいるとは思えない。まさに神秘的な美少女って感じなんだもん。……巫女装束を着せたら似合いそうかも♪「ふふっ、そんなに慌てなくても良いのに。とにかく『素敵なお姉さん』って思ってくれてうれしいわ。なんだったらワタシのことを『お姉さま』って呼んでくれても良いわよ」 口に手を当てて、ころころとおかしそうに笑いながら、詩衣那さんはそう言った。お、お姉さま……、ですか?「あの、それは……、冗談ですよね?」 もしかして本気だろうか? 私は心の中でたらりと冷や汗を流しながらそう聞き返すのだった。ちなみにワタシと詩衣那さんのやり取りをなんだか困ったような表情で傍観している剣持主任の顔にも冷や汗らしきものが見えた。「もちろん冗談よ♪ でも美姫さんがそう呼びたかったら、いつでも私のことを『お姉さま』って呼んでも良いのよ」 とても冗談には聞こえないんですけど……。心の中でそう突っ込みを入れつつ、ワタシは助けを求めるように剣持主任の顔を見た。この話題をそのまま続けるとなんだか違う世界に行っちゃいそうです。助けて、剣持主任っ!「まあ、そのへんのところは美姫君の自主性に任せるとして、話を元に戻そうか? とにかく詩衣那君が妖精に召喚されて、詩衣那君のご両親も、そして祖父である加賀重工の光政(みつまさ)会長も、最初のショックから立ち直ると、詩衣那君が今後も普通に暮らしていけるように政界に働きかけて、当時はまだ未整備な状態だった妖精の人権に関する法案を次々と成立させていったという訳なんだ」 剣持主任は強引に話の流れを元に戻すと、結論を口にした。なるほど、世界の標準とは違って日本国内での妖精の人権が比較的認められている状況は、ここに居る詩衣那さんのおかげだったのか? ワタシはただ感心するばかりだった。
Apr 26, 2004
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「美姫君の想像通り、この方は加賀重工の会長のお孫さんにあたる加賀詩衣那君だ。6年前に妖精に召喚されたから、妖精としては美姫君の大先輩になるね」 剣持主任はドアを閉めると、詩衣那さんに会釈をしながら部屋の中に入ってきた。やはりちょっと遠慮しているような雰囲気みたい。「そ、そうなんですか。詩衣那さんって加賀重工の……。ええと、いつも父がお世話になっています」 加賀重工の会長のお孫さんという立場の人に何を言えば良いのか分からないけど、とりあえずここは無難な挨拶をしておこうと思ったワタシは空中に浮かんだまま、同じく宙に浮かんだままの詩衣那さんにペコリと頭を下げるのだった。うう~、本物のお嬢さんに対してどう接すれば良いかなんて知らないよぉ~。「気にしなくて良いわ。私が加賀重工の会長の孫娘として生まれたのは単なる偶然でしかないし、それって私自身の価値とはなんの関係もないんですもの」 微笑みを浮かべながら詩衣那さんはそう言うと、ワタシの手を取って、ソファーに座るようにと促した。それを見てソファーの横に立っていた剣持主任もソファーに腰かけた。「詩衣那君、美姫君に詩衣那君のことを紹介したいんだが、かまわないだろうか?」 この研究所で実質上のトップである剣持主任が、気を使わなくてはならない詩衣那さんっていったいどういう妖精なんだろうか? ワタシの興味は膨れ上がるばかりだった。ドキドキしてきちゃった。「別にいいわよ。話しても。それが必要ならね」 詩衣那さんはそれだけを口にすると、眠るかのように目を閉じた。なにか変な感じだけど、剣持主任は気にした様子を見せてないところからすると、詩衣那さんっていつもこんな感じなのかな。「美姫君、君も妖精になってからそれなりの時間が経っているから、諸外国に比べて日本の妖精の人権が比較的スムーズに認められてきたというのは、既に知っているだろ? それは詩衣那君と、そのおじいさん。つまりは加賀重工の会長の力によるところが大きいんだよ」 詩衣那さんの話のはずだったのに剣持主任の口から出てきたのは、日本における妖精の人権という、ものすごく大きな話だった。もしもその話が本当なら、ワタシってホントにものすごい妖精と話をしてるのかもっ!?
Apr 24, 2004
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「……どうぞ。ドアに、カギはかかってないわよ」 しばらくの間を置いてから聞こえてきたのは確かにキンキンとした妖精の女の子の声だった。声からするとワタシとたいして年齢の差は無いみたい。もっとも妖精の肉体年齢なんて元の人間の身体と同じとは限らないから、見た目では判断出来ないけどね。「じゃあ、失礼するよ」 剣持主任は部屋の中に入りかけたところでワタシを手招きし、一緒に部屋の中に入るように促した。……なんだか緊張。「おじゃまします」 ドアを持って開けてくれている剣持主任の横を通り過ぎて部屋の中に入っていったワタシは、ひとめ見ただけで高価だと分かる妖精サイズの調度品がそろえられているのを見た。人間用の部屋が細かく区分けされてまるでヨーロッパ貴族のお屋敷のような感じになっているけど、これにはいったいお金がいくらかかっているんだろう。まったく見当がつかない。うう~、なんだか圧倒されちゃいそう。「いらっしゃい。剣持さんが言っていた妖精の女の子ってあなたのことね。確かお名前は……?」 妖精用の部屋は、その床の高さが人間の腰の高さよりもやや高い位置に設定してあり、壁にそって並んでいる。そして部屋の真中には人間サイズの応接セットが置いてあり、そのテーブルの上には妖精サイズのソファーと小さなテーブルが置いてあった。そしてそのソファーには、腰まで届きそうな程に伸びたストレートの黒髪の妖精少女が座っていた。なんだか神秘的な雰囲気の妖精……。「美姫、長谷川美姫です。はじめまして。ええと……」 どうやら自分とは何もかも違うらしいその妖精少女の雰囲気に気圧されながらも、ワタシは精一杯の元気を振り絞って挨拶をした。く、口がこわばる。「長谷川美姫さんね。どうぞよろしく。私は、加賀詩衣那(かが・しいな)。詩衣那と呼んで下さってけっこうよ」 優雅な口調でそう言いながら、背中から羽を出してワタシのすぐそばにまで飛んでくる詩衣那さん。その羽は鮮やかな紫色を基調とする美しい模様のある蝶の羽だった。それにしても……。「あの、もしかして……。加賀詩衣那ってことは、つまりそれは加賀重工の……」 部屋の中が高価そうな調度品で埋め尽くされていることといい、剣持主任の態度といい、もしかしてこの詩衣那さんは、加賀重工のオーナー一族の関係者じゃないのかと思ったワタシは、戸惑いながらも尋ねるのだった。もしかしてもしかすると詩衣那さんって本物のお嬢さんっ!?
Apr 23, 2004
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「ここにはワタシ以外の妖精もいるんですね。ていうか考えてみればあたりまえですよね。ああいった機械を開発するには妖精のモニターがいないと出来ないですし」 どこまでも続くかと思える長い廊下をひたすら早足で歩く剣持主任を飛んで追いかけながら、ワタシは話しかけた。それにしてもここにいるっていうのはどんな妖精なんだろう? 彼女って言っていたけど、元から女の子の妖精なのかな? それともワタシみたいに元々は男の子だったんだろうか? ちょっと興味かも。「ああ、今のところは一人だけだが、ちゃんと妖精がいる。さっきも言ったようにちょっと変わった性格の娘だから、美姫君が良い友達になってくれると良いと思っている。彼女の協力でパソコンなどの機械から妖精に対する悪影響をキャンセルするこことが出来る機械の開発も順調に進んだのだが、最近、ちょっと行き詰まってしまってね。だからこそ、美姫君の力を借りたかったんだよ」 顔の横に並んだワタシのほうを見ながら話す剣持主任の声には、ちょっとだけ疲れたような感じがした。う~ん、いったいどんな娘なんだろう。マッドサイエンティストな剣持主任に変わった性格って言われる妖精って。「なるほど、そうなんですか。ちなみにその娘の名前はなんて言うんですか?」 根堀り葉堀り聞いてもしょうがないので、とりあえずその妖精の名前だけを聞いてみる。「まあ、それは本人から直接聞いてみるのが良いだろう。ほら、あそこの部屋だ」 廊下のそこかしこにドアがあり、それなりの部屋が並んでいるのは分かっていたけど、そのドアは味も素っ気もないいかにも研究室のドアという感じだった。ところが剣持主任の指し示したドアは何というか……、ちょっと、いやかなりしゃれた造りの感じがする木製のドアだった。なんだか違和感ありまくりドアかも。「……妖精用の出入り口もついてますね」 とりあえずどう言ったものか迷ったワタシは、そのドアに妖精用の小さなドアが付随して付けられているのを見つけてそう言った。でも、この妖精用のドアって、どう見ても後から追加して取り付けられたというよりも、最初から付いていたという感じがする。だってドア全体のデザインが妖精用の小さなドアが存在することを前提にしたようなデザインなんだもん。「そりゃそうさ。部屋の主は妖精だからね。それに彼女は普段からここに住んでいるんだ。ちょっとばかり住居の雰囲気が出ていてもあたりまえだろ?」 当然とでも言わんばかりの口調で答える剣持主任の態度は、どこかおどけているようにも感じられた。いったい何を楽しんでいるんですか?「ここに住んでいるって、まさか監禁……っ!?」 妖精の魔法を研究しているのは部外秘だと言っていたけど、まさか秘密保持の為に外出が禁止されちゃうのかもつ!? そう思ったワタシは、ちょっと声をこわばらせた。まさか、まさかねっ!「ははっ! 監禁なんかするもんか。彼女は自分の意思でここに住んでいるんだよ。まあ、自己紹介されたら分かると思うけど、ここはすでに彼女の家みたいなものというか、広い意味では家そのものなんだよ。まあ、ここでぐだぐた言っていても始まらないから、中に入ろうか?」 言いながら剣持主任はそのドアを指差した。その指先の示すところをしばらく見つめていたワタシだったが、確かにここまで来て、ちゅうちょしていても始まらない。「分かりました。入ります」 ここが家そのもの? ワタシの疑問は膨らむばかりだったが、とりあえずその妖精の女の子に会ってみれば分かることという説明を信じて、剣持主任の言葉にコクリとうなずくワタシだった。そしてワタシにうなずき返した剣持主任はゆっくりとドアの前に移動すると、やけにていねいにノックをしたのだった。「詩衣那君、剣持だ。新しくここの仲間になってくれた妖精も一緒なんだけど入っても良いかい?」 抑えた声で静かに問いかける剣持主任の姿からは、マッドサイエンティストな雰囲気が消えていた。いったいこのドアの向こうにいる妖精の女の子って何者なのっ!?
Apr 21, 2004
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「おっと、魔法を研究しているということは部外秘でした。正式には、加賀重工航空機製作所開発部にようこそっ! かな? それはともかく歓迎するよ。美姫君の協力があれば研究も大いに進むことは間違い無しっ! いやあ、めでたいっ!」 何故か風の無い室内のはずなのに白衣をなびかせ、メガネをキラリと光らせながら朝からハイテンションな挨拶をする剣持主任。もっとも主任という役職ではあるのだが、お父さんから聞いた話によると、開発部の部長は加賀重工の会長が兼務しているので、この部門の実質的な責任者は剣持主任だということらしい。つまりは一番えらいのだ。「うちの幹也がお役に立ててうれしいです。では剣持主任、私は自分の部署に出勤しますから後のことはよろしくお願いします。もしも何かありましたらご連絡ください」 自分の出勤時間が迫ってきているお父さんは、ソファーから立ちあがってそう言うと剣持主任に対して一礼をした。自分よりも年が若い剣持主任だけど、やはり実質的な部門の長と一労働者ではこういう上下関係になるのかな。「美姫君のことはお任せください。長谷川さん。何度も説明しましたように、美姫さんに危害が及ぶことは何もありませんし、この研究成果が世の中に出れば、妖精の生活水準や安全性についても格段に向上するのは間違いありません。どうぞご安心ください」 自信たっぷりな剣持主任。でもどこかマッドサイエンティストが入った態度だから、いまいち心の底からの信頼性に欠けると思えるのはワタシだけだろうか? う~ん、今更ながらにそこはかとない不安……。「じゃあ、お父さん、いってらっしゃい。こっちはこっちでがんばるから」 お父さんの目線の高さまで宙に浮くと、ワタシは大きく手をく振りながら笑顔でお父さんを見送った。ちょっと心配そうな、何かを言いたそうな表情を見せたお父さんだったが結局は何も言わず、剣持主任に軽く頭を下げると、建物の外に出ていった。お父さん、お仕事がんばってね♪「では、美姫君、早速だがこちらのほうに来てくれないか。まずは会わせたい人物、というか妖精がいる。彼女は君に渡した例の『試作品28号』を作る際の基礎データの収集に協力してくれた妖精なんだ。ちょっと変わった性格の持ち主だがね、ははっ」 ちょっと思わせぶりな発言をした剣持主任は、ワタシの返事を待つでもなく、そのままさっさと研究所の奥へと歩き出してしまった。ちょっと、待ってくださぁ~い。もうっ! せっかちなんだからっ!
Apr 20, 2004
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「今、連絡しましたので、4~5分もあればこちらに参ります。それではよろしくお願いいたします」 そしてその受付というか、もしかすると警備の担当もしているかもしれない女性は自分の持ち場に戻っていった。剣持主任が4~5分でやってくるというなら、お茶やお菓子は出てこないかもね。「で、幹也、帰りはどうするんだ? もしも6時ぐらいに終わるということなら一緒に帰ることも出来るんだが、幹也のほうの仕事が何時に終わるか分からないんじゃ予定が立たないしな……」 あごの不精ひげを撫でながら、考え込むお父さん。うーん、お父さんってばワタシのことを今でも『美姫』ではなくて『幹也』と呼んでるけど、こんなときはワタシのことをちっちゃな子供扱いするんだもんなあ。妖精はちっちゃくて何も出来ないように見えるけど、こと移動に関しては羽があるから人間よりもずっと行動半径は大きいんだからね。「大丈夫。これぐらいの距離なら簡単に飛んで帰れるから心配しないで。海の上を突っ切って飛べる分だけ、車よりも早く帰れると思うよ。まあ、雨が降っていたらダメだけど。濡れながら飛びたくないしね」 最近、ワタシの飛行能力の向上はすさまじく、並みのカラスなんか完全にぶっちぎり状態でものともしないのだ。妖精になった当初はカラスの群れに襲われて命を落としそうになったワタシだけど、今なら当時の2~3倍の数のカラスに襲われても楽々と逃げ切る自信がある。ちょっと自慢だったりっ♪「じゃあ、雨が降ったら、タクシーでも呼ぶか? まあ、とりあえず今日は晴れみたいだから、その点については開発部の人に聞いておくといいな。こういうことは最初に聞くほうが聞きやすいんだ。あとになってから勤務条件について話すのはちょっといやらしいからな」 ちょっと声をひそめて、ワタシに耳うちするお父さん。なるほど、そういうものなのか。「おはようございます。長谷川さん、そして美姫君。ようこそ魔法の世界へっ!」 ワタシとお父さんが密談(?)をしていると、背後から剣持主任の声がした。振り返ると以前に家に来ていたときと同じように白衣を着た剣持主任がそこにいた。しかしなんで魔法……?
Apr 19, 2004
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「わっ! こら、泣くなっ! 何も俺は幹也が妖精になったことを非難してるわけじゃないんだからな。人間なんて時間がたてば変わるもんだ。子供だっていつかは大人になるし、場合によっちゃ妖精になることだってあるさ。ほら、もう着いた。というわけで降りるぞっ!!」 はたから見てもおたおたしながら、お父さんは何だかわけの分からない励まし(?)をする。真剣になられるよりもこういわれたほうが何となく気分が楽かな?「うん、ありがと♪ ……それで、ここなの?」 車が停まったのは、銀色の外観をしたドームが併設された白い建物の前だった。建物が工場の隣ではなくて緑地の中にあるのは、妖精への機械の影響を考えてのことなのかな?「そうだ。あそこに書いてあるだろ。『加賀重工開発部』って……。もっとも誰もそうは呼ばないけどな。ほとんどの人間が単に『研究所』って呼んでるそうだ」 来客用の駐車スペースに車を停めたお父さんは、車を降りるとそのまま『研究所』のほうに歩き出す。あれっ、お父さんも一緒に来るのかな?「お父さん、一人でも大丈夫だよ」 小さな妖精少女になってからは、他人に甘えることが自然に出来るようになってきた。17才の男子高校生ともなればお母さんに甘えるなんてことは恥ずかしくて出来なくなってくるのがあたりまえで事実ワタシも前はそうだったのだが、小さな妖精少女になってしまうとお母さんに甘えるなんてことは何だか普通の感覚になってしまったのだ。しかしっ! やはり元はこれでも男の子っ! お父さんに甘えるというのは妖精少女の身としてもちょっと恥ずかしいのだ。……しかもこんな朝っぱらからは。「1人でも大丈夫かもしれないが、親として挨拶ぐらいはしておかないとな。というわけで行くぞ」 ワタシの内心の恥ずかしさには気づくこともなく、お父さんはずんずんと研究所の扉を開けて中に入っていく。もうっ! しょうがないなあ、年頃の子供の心を分かってよぉ~。「あっ、待ってよ……」 もうこうなったら腹を括って一緒に行くしかないか。ワタシはお父さんのすぐ後を飛んで追いかけたのだった。「おはようございます。第3工場で勤務している長谷川徹也ですが、今日から息子……というか、娘というか、妖精になったうちの子供がお世話になる予定なので連れてきたのですが、剣持主任に連絡を取ってもらえますか?」 建物に入るとすぐ左横に受付があり、お父さんはそこに行くと既にスタンバイしている受付の人に目的を説明した。それにしてもずいぶんと早くから受付の人がいるんだな。というか受付というよりもガードマンってことなのかな? 女の人だけど何となく軍服にもにた制服を着てるし。「おはようございます。長谷川美姫です。今日からお世話になります」 空中でうまくバランスを取りつつぺこりとお辞儀をするワタシ。そしてそっと相手の顔を見てみる。もしも妖精に耐性の無い人だったら、ここで『かわいい~っ!』というような類のセリフが出てくるはずなんだけど……。「おはようございます。長谷川美姫さんですね。伺っています。剣持はすぐに来ますので、こちらでお待ち下さい」 キリッとしたショートカットの女性は、受付脇の応接セットのところまでワタシとお父さんを案内してくれた。でもやっぱりこの女の人、ちょっと普通の受付嬢とは違う。なんかこう軍人か警察官っていうような感じなんだもん。「ありがとう。じゃあ待たせてもらいますね。だいたいどれぐらいの時間待てば良いんですか?」 ソファーに座る前に、その女の人に尋ねるお父さん。それに比べてワタシはソファーにもう座ってくつろいでいる。な、なんだか自分がちっちゃな子供になったみたいで恥ずかしい。でも妖精だからしょうがないよね。自分の感情に素直なのが妖精の特徴なんだもん。
Apr 18, 2004
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「ああ、埋立地でひとつの島が出来てるわけなんだが、この島そのものが加賀重工の敷地だ」 やはり会社の敷地内にはいったからなんだろうか? お父さんの運転がなんとなくおとなしくなったような気がする。うんうん、安全運転は大事です。「じゃあ、ここに居る人って基本的にはみんな加賀重工の人なんだ」 もうすぐ目的地である研究所に到着するということが徐々に実感されてきたワタシの口調も、ちょっと緊張している。出るものはもう出ているはずなのに、なんだかまたトイレに行きたくなったきちゃったかも。「まあ、基本的にはそうだが、道路は私道ではなくて公道だから、まったく部外者が居ないというわけでもないぞ。ここは四方を海に囲まれている埋立地だから朝夕は釣り人が結構集ってきているぞ。ほら、あそこ……。クーラーボックスを車に積み込もうとしている人がいるだろ」 運転しながらアゴをつかって左前方を指し示すお父さん。見ると確かにそんな雰囲気の人が居る。でもこんな工場ばかりが立っている埋立地でも魚釣りなんて出来るんだ。もっと自然がいっぱいのところに行かないと釣りなんて出来ないと思ってたけど違うんだね。「うれしそうにしているけど、大きな魚でも釣れたのかな?」 後方に流れていく釣り人の姿を見ながら、ワタシはお父さんにたずねた。人間の男の子だったときのワタシは野菜作りには興味があったけど、釣りにはぜんぜん興味が無かったからねえ。分からないんだよね。「ああ、運がよければメートル級のシーバス、つまりスズキが釣れることもあるんだぞ。……今じゃ無理かもしれないけど、幹也とは一度いっしょに釣りに行きたかったな」 お父さんの言葉で、車の中は一気にしんみりとした雰囲気になってしまった。「……ごめんなさい。妖精なんかになっちゃって」 うつむいてしまうしかないワタシは、聞こえるかどうか分からないような小さな声でそう言うのがやっとだった。胸の奥に穴が空いたみたいに苦しいのは何故? しっかりしろワタシっ! 妖精少女としてがんばって生きていくって決めたじゃないのっ!!
Apr 16, 2004
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「遅くなっちゃって、ごめん」 既にエンジンが回っている車の窓から車内に飛びこむと、ワタシはお父さんに謝りながら助手席の背もたれの上に座った。もともと妖精のサイズではシートベルトなんか出来ないし、妖精用の補助シートなんかもあるわけないので、これで良いのだ。……お父さんの胸ポケットの中に入るというのも暑苦しそうで嫌だし。「しっかりつかまっていろよ。ちょっと飛ばすからな」 ワタシのほうを見もせずにお父さんは車を発進させた。昔からハンドルを握ると性格が変わるというか、本来の性格が出るというか、いい年をして暴走族じゃないんだからもう少し自制してほしいと思う。「大丈夫。つかまって無くても羽を出していればそれだけで踏ん張りが効くから」 妖精と人間の最大の違いは、身体の大きさもさることながら、羽が有るか無いかということも大きいと思う。この感覚ばかりは、羽の無い人間に的確に説明するのは難しいかも。「ふ~ん、妖精っていうのもそういう点は便利なんだな。じゃあ安心して飛ばすか……」 さして関心した様子でも無い口調でそう言うと、大通りに出た車を更にスピードアップさせるお父さん。身体にかかる慣性を羽を使って打ち消したワタシは、揺れる車の中でも態勢を崩さずに座っている。ふふん、行儀いいじゃん♪「あんまり安心されても困るんだけどね。事故を起こしてからじゃ遅いんだよ」 お父さんをたしなめるワタシ。何となくこういうのって女が男に対して言う言葉かもねと、心の中でおかしがるワタシがいる。ホント、男っていうのは子供っぽいっていうのが最近よく分かってきちゃったんだよね。ふふっ。「事故なんか起こすもんか。俺の腕を信じてないな」 ふくれたように言い返すお父さん。「あれ? この前、事故を起こしたのは誰だったかな~? フロントガラスが粉々に割れちゃったことが有ったと思ったけど♪」 とぼけた口調で指摘をするワタシ。「あっ、あれは事故じゃないだろ。前の車が跳ねた小石がフロントガラスに当たっただけだ。俺の運転のせいじゃない」 弁解するお父さん。ホント、こどもっぽいよね。「事故は事故だよ。それに車間距離を取ってなかったのが原因のひとつだって、言われたんでしょ?」 ワタシたちがああだこうだと言いながらも車は走り続け、やがて町中から埋め立て地のほうに入っていった。既にここには工場とその間に挟まれた緑地しかなくなってきて、民家は一軒も無くなってきた。いよいよ着いたのかな?「この埋め立て地が全部、加賀重工の敷地なんだよね」 一応、知ってはいるけど念のために聞いてみる。
Apr 15, 2004
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「!? スー姉ちゃん、どうしてそのことを知ってるの。誰にも言ってなかったのに」 自分が写真を投稿しているホームページをズバリと言い当てられて、幸也は動揺している。しっかりしているように見えても、やっぱりまだ小学四年生だな。「幸也、パソコンで色々なホームページを見たら履歴というものが残っちゃうから、それを見ればそのパソコンを使っていた人が前にどんなホームページを見ていたのか分っちゃうんだよ。珠美香も、ワタシ達が使っているパソコンの履歴を見たんだよね?」 ワタシは自分の推測を珠美香に話してみた。「あら、私は許可もなく人のパソコンを覗き見たりなんかしないわよ。単純自分のパソコンから、【白い羽/妖精】というキーワードで画像検索をしたら、あっという間に美姫姉ちゃんの写真にたどり着いたというだけの話。けっこう美姫姉ちゃんのファンって多いみたいよ。掲示板の書きこみもすごかったし」 珠美香はそのままテーブルに付くと、ワタシの頭を人差し指で軽く撫でた。「とにかくネットではどこの誰が見ているか分らないんだから、勝手に家族の写真を変なところに投稿なんかしちゃだめよ。いいわね、幸也。……それより珠美香、起きてくるのはいいけど、パジャマのままでご飯を食べるつもり? ちゃんと着替えて着なさい」 お母さんはそう言いながら、幸也と珠美香の茶碗や箸を食器棚から取り出してテーブルの上に並べ始めた。「よし、ごちそうさま。幹也、もうそろそろ出かけるけど、準備は良いか?」 ワタシ達の話が一段落ついたのを見て、それまで黙々とご飯を食べていたお父さんがワタシに出発を促す。うわぉ、もうそんな時間なの?「待って、あともう一口で終わるから」 冷めてしまったお茶で流しこむように残ったご飯を食べるワタシ。の、のどにつかえそう……。「ご、ごちそうさまっ! あと、トイレと、もう一度、食後の歯磨きしてくるからっ!」 それだけを言い残し、ワタシは背中から天使のような白い鳥の羽を出すとテーブルから飛び立ったのだった。早く、急がなくちゃ。慌てると何だか急にトイレに行きたくなっちゃうんだもん。ちなみにトイレのドアはワタシが何時でも入れるように常に半開きの状態になっているんだけど、……どうでも良いよね。そんなこと。「じゃあ、幹也、俺は車の中で待っているから、すぐに来るんだぞ」 お父さんの言葉を背中に受けつつ、ワタシはトイレの中に入っていった。
Apr 14, 2004
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「だから記念日は写真をとらなくちゃ。それにかわいいし……。ほら、見てよ」 デジカメを操作して付属の液晶画面に今撮った画像を表示すると、それをワタシに見せる幸也。……確かにかわいい。自分でもそう思う。でも、大口を開けてご飯にかぶりつこうとしている瞬間だなんて、かわいいにしてもこれはちょっと違うっ! 可憐なかわいさじゃなくて、小さな子供のかわいさだよ。うーん、ワタシって、こんななの?「却下、どうせこの写真を怪しげなホームページに投稿とかしたりするんでしょ? さっさと消去すること。いいね」 剣持主任がくれた機械のおかげで妖精のワタシでもパソコンが扱えるようになったので、こういうことのチェックは厳しくなったワタシだった。幸也ったら、ワタシが黙っていたらとんでもないところにワタシの写真を投稿しちゃうんだから。まったくもう、これだからオタクって……。「でも、せっかく撮ったんだから……」 あくまでも抵抗する幸也。デジカメの電源を落として背中の後ろに隠そうとする態度がダメダメです。「知ってるんだからね。幸也が今までに何回もワタシの写真を変なところに投稿しているってことは。もう投稿しちゃったものはしょうがないけど、これ以上怪しげなところにワタシの写真を投稿するのはダメだからね」 胸の前で腕を組み、テーブルの上にすくっと立った状態で幸也の顔を見上げるワタシ。あくまでも表情は厳しく、有無を言わせない。ふふふ、かわいい姿をした妖精少女だって、これぐらいの威厳は出せるんだよぉ~っ♪「幸也ったら家族の写真を勝手にネットに公開していたの? そんなことしちゃダメじゃない。で、美姫ちゃん、怪しげなところってどこなの?」 お母さんが、軽く頭を叩く真似をして幸也をたしなめた。まったくホントに困っちゃうよね。幸也には。「ふぁ~、おはよ♪ それは、『ご近所の妖精さん』ってサイトの、『ハアハアする写真』ってコーナーね」 突然、会話に乱入してきたのは、まだパジャマ姿のまま眠そうな顔で起きてきた珠美香だった。ワタシの身体が半分くらい吸い込まれちゃいそうな大あくびをしているのを見ると、家の外では美少女で通っているのが信じられない。まったく外面だけは良いやつなんだから。
Apr 13, 2004
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「ところで珠美香と幸也は、まだ起きてこないの?」 ある程度ご飯を食べ終わったワタシは、ちょっとシアワセな気分でお父さんとお母さんに尋ねてみた。まだ人間の男の子だった去年までの夏休みはもっと早い時間に出かけていたから、2人が夏休みの朝をどういう具合に過ごしていたかを知らないのだ。ちなみに朝が早かったのは、まだ朝の涼しい時間に園芸部の畑仕事を終わらせる為だよ。 というわけで、夏休みのこの時間に起きて家にいるのは久しぶりのことなのだ。……ちなみに今年の夏休みは夕方からのバイトとかで忙しく、すっかり夜型の生活になってしまっていたから、最近のワタシは寝坊助さんなのでした。てへっ♪「あの2人が起きてくるのはもう少し後になるんじゃないかな? 珠美香はいつものことだけど、学区のラジオ体操も最近は7月中しかやらなくなったし、幸也もこの時間には起きてこないと思うけどな……」 やれやれと言いながら答えるお父さん。なるほどと思い、残ったご飯を口に入れようとしたその瞬間、強い光がワタシを襲ったのだった。え、何? この白い光はっ!?「おはよう美姫姉ちゃん。今日は新しい服なんだね」 反射的に振りかえったワタシの目に飛びこんで来たのは、デジカメを手にした幸也の姿だった。 「びっくりしたなあ、もう……。なんだよ。いきなり」 たかが突然のフラッシュごときで、ワタシの心臓は早鐘を打つかのように脈打ち出してしまった。妖精になってから感情のコントロールが難しくなってきているけど、こんなところにも影響するのかな? ともかくワタシは言葉少なくドキドキと上下する胸に手を当てるのだった。「だって美姫姉ちゃん、今日は妖精の魔法を研究するところに行くんでしょ? 記念すべきこの日の朝の風景を写真に撮らなくちゃダメだよ。それにその服だって今日初めて着るワンピースなんだから、これはもうしょうがないよ」 まったく妖精オタクなんだから、うちの弟は。ワタシは心の中でぶつぶつと文句を言いつつ、邪気の無い笑顔で自分の考えを主張する幸也を見た。なんというか、悪気がないのがなお悪いってやつですか?「何がダメで、なにがしょうがないのかな~?」 ワタシは顔の右半分をヒクヒクさせながら、笑顔で幸也に質問した。妖精少女で小さくても、前は兄だったとしても今のワタシは幸也の姉。姉に弟がかなうわけがないのさ。
Apr 12, 2004
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「おはよう、美姫ちゃん。今日はワンピースなのね」 洗顔を終えたワタシが台所のテーブルにふわりと着地すると、お母さんがまず注目したのはワタシの服装のことだった。すぐさまいつもと違う服装のことに目がいくだなんて、ごく最近に妖精の女の子になったばかりのワタシとちがって、やはり生まれた時から既にウン十年も女性をやったいるだけのことはあるね。「おはよう。お母さん。今日は剣持さんがいる加賀重工の開発部に初出勤だからちょっと新しい服を着てみたんだけど、 髪が青いのに服がオレンジ色っていうのはおかしくないかな?」 この服を買ったときはワタシも女の子の服のことはまったく分からなかったけど、とりあえずその時は妹の珠美香とその友達の江梨子ちゃんと早苗ちゃんの3人が見立ててくれたから、そんなに変なコーディネートでは無いとは思うんだけど……。もしかして人形の服を買う感覚で選んでたんじゃないのかな? と、ちょっと不安なんだよね。「大丈夫、いつものように涼しげな青系統の服もいいけど、オレンジ色の服も似合っているわよ。まあ、美姫ちゃんは何を着せてもかわいいけど」 親バカな発言をしつつ、お母さんは小さなのテーブルと椅子を出してくれた。前は普通のテーブルの上に直に座っていたけど、今では色々と妖精用の家具や道具もそろってきてずいぶんと生活しやすくなってきているのだ。人形用のものじゃなくて妖精用のものは実用に耐えなきゃいけない分、とても高いんだけどね。はぁ~、世の中お金だよね。妖精だからファンタジーにお気楽に生きていられるというのは幻想でしかないのさ。「何を着せてもかわいいって、それじゃホントに似合っているかどうか分からないよ。ねえ、お父さん?」 さっきからもうご飯を食べているお父さんに話を振ってみる。「ん、まあ、かわいいんじゃないのか? お母さんもああ言っているし……。それよりも早く食べろよ。もうそんなに時間がないんだから」 あまり気の無い返事をするお父さん。やっぱり男っていうのはファッションとかには関心が無いのかな? 確かにワタシも人間の男の子だった時には服装には全然関心が無かったよ。でも、今のワタシは自分でいうのも恥ずかしいけど着飾ったりすればするほどかわいくなる素材だし、どうしても自分の着ている服に気がいっちゃうんだよね。「はぁ~い、いただきま~す」 お父さんに聞いても無駄だということがあらためて分かったということで、ワタシは服の話をそこで打ち切ると、素直に朝ご飯を食べることにした。既に小さなテーブルの上には、小さな食器に盛られた料理が並んでいる。ほほう、ご飯にみそ汁、それにベーコンを焼いたのと海苔ですか。おいしそうです。
Apr 10, 2004
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「さてと、うーん。今日はどんな服を着ていけば良いのかな? ウェイトレスのバイトをするわけじゃないから、エプロンドレスやメイド服を着なくちゃいけないというわけでもないし……。かといって一応、初出勤ということになるからオーバーオールのようなラフな恰好じゃまずいよね」 とりあえず上半身裸のままではなんなので、身体にピタッとフィットしたシャツを着ながら今日着ていく服をどうしようかと考えるワタシだった。暑いからシャツは着ずに服を着るという選択肢も無くはなかったけど、小さいとはいえ一応女の子な胸をしていると胸を保護するものが無い状態で服を着るのはちょっと乳首が擦れて痛いのだ。妖精だって女の子は大変なのさ。「となると消去法でワンピースということになるかな。よし、そうしよう。今日は暑そうだし、身体に風を感じることができるワンピースっていうのもなかなか良いかも」 そしてワタシは部屋にとりつけられているクローゼットから明るいオレンジ色をしたワンピースを取り出した。フリルのような装飾が何も付いていないシンプルなデザインが涼しそうで、ワタシはちょっと嬉しくなった。へへ、そういえばこのワンピースを着るのってもしかしなくても初めてかも。「青色のワンピースはもう何回か着ているけど、このオレンジ色のはまだ新品だから、初出勤に着ていっても大丈夫だよね。うん、そうしよう」 新品だからなぜ大丈夫なんだと、どこからか突っ込みが来る前に、ワタシはそのオレンジ色のワンピースを頭から被るようにして着たのだった。ワンピースは文字通りそれ一着だけで全てが終わってしまう衣服なので、着るのは簡単だ。女の子の服もいいなと思う瞬間だったりする。だって楽なんだもん。「なかなかイイ感じだね♪ うん、かわいい、かわいい。これで足下がサンダルだと完璧なんだろうけど、まあしょうがないか。……今度お金に余裕が出来たらサンダルも買ってみたいな」 この服に似合うようなサンダルを私は持っていない。私が持っている靴と言えばブーツタイプのものしか無いのだ。妖精用の店に行けばサンダルも売ってはいるのだが、フリーサイズであるブーツタイプの靴に比べるとメチャ高いのだ。みんなびんぼがわるいんや♪ ……何故かそんなフレーズが頭をよぎる。「さてと、時間も無いし、お父さんも待っているだろうから早く行かなくちゃ」 とりあえず洗顔用具を手に取ると『お部屋セット』を飛び出すワタシだった。やっぱり食事前に洗顔と歯磨きはすまさなくちゃね♪
Apr 9, 2004
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半分寝ぼけていたせいもあるけど、妖精になってから体験する初めての地震(?)に、私は慌てて大声を上げるのだった。するとその瞬間、揺れはピタリと治まったっ!? 何? 何なのこの地震は。「ようやく起きたか。幹也、早く着替えて出て来いよ。もう時間があまり無いぞ」 妖精になってからは普段あまり寝起きの良くないワタシだけど、地震が来たということでショックを受けたのか、完全に目が覚めてしまった。そのワタシの耳に飛びこんで来たのは、空耳でも何でもない本物のお父さんの声……。ん? ということは、さっきの地震って本物の地震じゃなくて、ワタシが寝ているこの妖精用の『お部屋セット』をお父さんが揺らしたっていうこと? もうっ! なんてことするのさ!? 文句を言ってやらなくてはと、ワタシはそのまま部屋の外に飛びだした。「お父さんっ! 起こしてくれるのは良いけど、ちょっとやりすぎ。地震かと思って怖かったんだからね。起こすなら『お部屋セット』の窓かドアを開けて起こしてよ~」 妖精の小さな身体と可愛い容姿で凄んでも、ちっとも迫力が出ないということは分かりきっていたから、ワタシはうるうると目を潤ませて『怖かったんだからね』という気持をぶつけてみた。我ながら最近、妖精少女としての武器を使いこなしているよね。「おはよう。幹也。文句を言う前にまずは挨拶だろ?」 何故かワタシからちょっと目をそらすお父さん。「……おはよう。でも、もっと他におとなしい起こし方だってあると思う」 今度はすねてみるワタシ。「いや、まあ何だ。いきなり窓やドアを開けても、幹也がそういう恰好をしていたら困るだろ。だからああいう起こし方をしたんだが、結局は同じだったか。まあいい、早く服を着て来るんだぞ。朝ご飯を食べたらすぐに出るからな。まさか忘れてるとは思わないが、今日は俺と一緒に会社に行かないと行けない日なんだから」 そう言うと、そそくさと去っていくお父さん。いったいどうしたんだろう。ふと、落ち着いて自分の恰好を見てみると……。「ああーーっ! ショーツしか穿いてない……」 そうなのだ。暑かったのか、パジャマも下着のシャツも寝ている間に寝ぼけながら脱いでしまったのか、ワタシはショーツだけを身に付けた恰好をしていたのだ。まったくなんてことっ!「お父さんが視線をそらすわけだね、は、恥ずかしい」 妖精少女になってから既に2ヶ月近く経つと、女の子としての羞恥心も開発されてきてるのか上半身裸でいることが妙に恥ずかしいワタシだった。胸なんかチョコっとしか膨らんでいないのにね……。ああ、自分で言っていて悲しくなっちゃうかも? 「ま、まあ、過ぎたことは忘れて、服を着なくちゃ」 無理矢理そう言うと、ワタシはぎくしゃくとお部屋セットの中に戻っていったのだった。
Apr 8, 2004
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夏休みも本番の8月頭の早朝の明け方、ワタシは薄い夏布団の中でまどろんでいた。夏とはいえ1日の中で最も気温が下がるこの時間、クーラー無しでも気持良く過ごせるこの貴重なひとときを、ワタシはむさぼるように味わっていた。だってワタシが今いるこの『お部屋セット』にはクーラーどころか扇風機ですら付いてないんだもん。「おい、幹也……。起きてるか? 早く起きないと遅刻するぞ」 どこからかお父さんの声が聞こえてくるけど、空耳だよね。今は夏休み。もちろん学校は休みだし、喫茶店の瀬里香のバイトは夕方からだから、昼まで寝ていたって遅刻するなんてことはありえないし……。うぅ~ん、まだ眠たいの。布団が気持いいの~。「返事が無い。本当に寝てるのか? しょうがない。遅刻するよりはマシだろう。幹也、起きろ~っ!」 お父さんの声に良く似た空耳が突然に大きくなったかと思うと、ワタシは寝ていたベッドが小刻みに揺れるのを感じた。えっ!? えっ!? えーーーっ!? もしかしてこれって……。「わわっ! じ、地震だっ! ゆ、揺れてるっ! た、助けてーーっ! お母さーーんっ! 地震、地震だよぉーー!!」
Apr 7, 2004
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【01】 夏休みも本番中の本番の8月頭の早朝、美姫ちゃんは寝ているところをお父さんに起こされます。今日はいよいよ美姫ちゃんが、例の機械の影響を打ち消す装置を開発した加賀重工開発部の剣持主任の元を訪れる日、つまりは初出勤の日なのです。【02】 着替えて、朝食、そしてお父さんの運転する車で、会社に向かいます。【03】 工場の敷地は、広大な埋立地にあります。まだ空き地が目立つ殺風景なところです。まず車は開発部のある建物の前に停まります。お父さんと美姫ちゃんは、受付に行き、ここで美姫ちゃんは1人になります。お父さんとは、ここでお別れです。ちなみに雨が降らない限り、帰りは飛んで帰宅、またはタクシーを使うことになっています。(寒い冬もやはりタクシーでしょうか?)【04】 さて、受付で美姫ちゃんはしばらく待つように言われます。待つこと数分、剣持主任が現われます。そのまま再会の挨拶とともに、目的地へと歩きながら、試作品28号の調子はどうだ? という話になります。やがて目的地に着きます。そこは研究所と言うにはあまりにも豪華な妖精サイズの調度品が整った応接室でした。【05】 ふと見るとソファーに座ってくつろいでいる妖精がいます。何やら無表情な女の子です。剣持主任は、彼女に美姫ちゃんのことを紹介します。お互いに名乗りあいます。彼女の名は加賀詩衣那(かが・しいな)。名前から分かるように加賀重工の創業者一族であり、現会長の孫にあたります。ちなみに人間だった頃から女の子で、蝶の羽を持っています。詩衣那ちゃんはかなり無口です。必要最小限のことしか喋りません。イメージとしてはエヴァの綾波レイです。【06】 剣持主任の話によると、比較的早期に詩衣那ちゃんは妖精に召喚されたのですが、その為に日本では早め早めに妖精の人権を認める方向に社会が進んだのでした。もちろん詩衣那ちゃんのおじいさんである加賀重工会長の力によるのは言うまでもありません。【07】「脱いで……」と詩衣那ちゃんに言われるまま、美姫ちゃんは服を脱がされてしまいます。 ……以後は、ほぼあらすじで語られている内容ですので、とりあえず、ここまでのプロットにて、書き始めることにします。
Apr 6, 2004
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既に某所にて発表しているものだが、私が執筆している【妖精的日常生活】という作品の第14話を書くにあたり、まずはあらすじを書いてみた。*************************************妖精的日常生活 第14話(プロット) 魔法研究所?【あらすじ】 加賀重工の開発部を訪れる美姫ちゃん。そこでは既に妖精に対するコンピューター等の機械の悪影響を打ち消す装置が開発されていた。そして現在は次の段階として、妖精の魔法の力を機械的に増幅強化するための装置を開発中だった。 そこで紹介される蝶羽の妖精、加賀詩衣那(しいな)。彼女に言われるまま、服を脱ぎ、なにやら身体に密着した宇宙服のようなスーツに着替える美姫ちゃん。その際、身体を拭かれたり、あちこちに電極を貼りつけられたりする。くすぐったい。 その後、別室に移り、妖精の魔法とは何かという点につき、今までに理解もしくは推測されていることの説明を受ける。そして機械の悪影響を打ち消す装置の原理を聞く。その原理のトンデモぐあいに驚き呆れる美姫ちゃん。 今後の予定を聞く。第1段階として、機械の悪影響を打ち消す装置のプログラムを微妙に変えて、魔法力を増幅させる効果が現われる状態を作りだすことを目指すことになる。ちなみに先ほど身体に貼りつけた電極は、身体の状態をモニターし装置の状態を微調整する為のもの。 説明後、美姫ちゃんは詩衣那ちゃんと共に、大きなドーム状の部屋に連れていかれる。その中心になにやら機械が置いてある。その機械からうねうねと伸びるコードは、ガラス窓で隔てられた別室に引きこまれている。 その機械は、美姫ちゃんが以前にもらった【試作品28号】と同じ機能を備えているが、個々の部品のスペックはけた違いに高い物が使用されている。ちなみにこの機械の名前は【零号機】と名づけられている。どうやらスタッフの趣味らしい。やはり青い髪をした妖精少女が使用する機械には、この名前がふさわしいということで意見が一致したもようである。ちなみに宇宙服のような服の名称はプラグスーツだと説明を受ける。 さて、詩衣那ちゃんがその機械の元に美姫ちゃんを案内する。そしてそこで何が行われるのかという事を確認する。機械を作動させつつ美姫ちゃんが羽を出す。その羽のサイズ等をモニターし、魔法力が強化されたかどうかをしらべるのだ。 じゃ、がんばってと、去る詩衣那ちゃん。なぜワタシだけ? と美姫ちゃん。それに対して『気持悪いから』と答える詩衣那ちゃん。疑問を感じつつ見送る美姫ちゃん。そしていよいよ実験開始。 機械が作動……。なんとなく気分が良くなり、良い感じ。じゃあ、ということで羽を出す。何度か繰り返す。若干いつもより羽が大きくなっているというようなデータが出る。ここまでは詩衣那ちゃんが被験体として得たデータを元にしている。さて、いよいよ美姫ちゃんを被験体とした本格的な実験の開始。機械を微調整。更に気分が良くなる。羽を出す。通常の107%の羽の大きさ。 ところが次に機械を作動させると、逆に気分が悪くなる。めまい。気を失う美姫ちゃん。 気がつくと横に寝かされている。目の前に詩衣那ちゃん。看病をしてくれているらしい。お礼を言う美姫ちゃん。上半身を起こす。何故かスーツの前のジッパーが開けられていて、胸がはだけている。どうして? ちょっと苦しそうだったからと答える詩衣那ちゃん。美姫ちゃんは、ありがとうと言いつつジッパーを閉めようとするが、それを押しとどめる詩衣那ちゃん。汗で剥がれた電極を貼りなおすという。そのまま部屋を去り、妖精用の更衣室へ……。 とりあえず全部服を脱いでと言われる美姫ちゃん。女の子同士、しかもさっき既に詩衣那ちゃんの前で肌になっていることでもあるし、まあ安心して裸になる美姫ちゃん。 電極が貼りついていた肌が赤くなっている。大丈夫? と聞きながら微妙なタッチで触る詩衣那ちゃん。何だかちょっと変。まさか詩衣那ちゃんって【百合】?と思いつつ、ぶんぶんと頭を振って自分の考えを否定する美姫ちゃん。 そこに詩衣那ちゃんが聞く……。『あなたは元男の子だったそうだけど……。恋愛の対象は今でも女の子なのかしら? それとも……、今の身体にあったものに変化しているの?』 ストレートな質問を受けて、美姫ちゃんはしどろもどろ……。ああ言えばこう聞き返されるという具合に詩衣那ちゃんの質問は容赦がない。詩衣那ちゃんの目つきは何だか怖いです。 どうしようかという時に、剣持主任が更衣室のドアを指でトントンとノックする。解放される美姫ちゃん。そして詩衣那ちゃんはいつものような無表情な感じに戻ります。 さて、電極を貼りなおし、スーツを着なおして、またドームの部屋にもどろうとする美姫ちゃんですが、とりあえず午前中の実験は終わりだと言われます。続きはお昼ご飯後ということで、社員食堂に行く美姫ちゃん、詩衣那ちゃん、剣持主任、そして女性研究員で、美姫ちゃんたちのサポート担当の仁村智子(にむら・ともこ)さん。食事中もスーツを着たまま、美姫ちゃんたちの体調がモニターされています。 食後、おいしかった。と美姫ちゃん。しかも妖精サイズの料理がそろっている。それは詩衣那ちゃんの為なんだよということが話される。詩衣那ちゃんのお状様ぶりが再確認される。色々と世界の妖精の状況について話題が飛ぶ。 そこに、連絡が入る。先ほどの機械の再調整が出来たということ。みんなはドームに戻る。そして再実験。美姫ちゃんの羽は通常の200%、300%の大きさになる。かなり調子が良い。最後にちょっと微調整をしてもう一度実験をして今日は最後とする。 本日最後の実験。羽を出す美姫ちゃん。ぐんぐんと大きくなる羽。そのままドームを突きぬける。驚くみんな。その時美姫ちゃんは、妖精界にいるはずの自分の元の体の存在を感じるのだった。
Apr 4, 2004
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