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そしてその頃、夏美はと言うと……。(やっぱり何か隠してるわね。矢島君は) 数学の授業を聞いてるふりをしながら、ユニ君と会話をしていたのだった。(確かに心拍数と体温の上昇、発汗の増大からみて、何かを隠しながら会話をしている様子だと判断出来る。何を隠しているのかは現状では判断出来ないが) 先ほどの会話の状況を分析した結果、夏美とユニ君のふたりは、克哉が何らかの事実を隠しているという結論に達していたのだ。(教室に入ってくる直前の奈里佳の姿を見ているとしたら、矢島君しかいないと思ったんだけど、どうやらその線で間違い無いようね。そして奈里佳の正体を知っていて隠していることからみて……) 言葉を濁す夏美。(彼の知り合いが奈里佳の正体だということかね?) 夏美の言葉を引き継ぐユニ君。(ええ、きっとそうに違いないわ。いったい誰をかばっているのかしれないけど、矢島君は奈里佳の正体を知っていることは確かだと思う。というわけで矢島君のことを監視対象に加えたいんだけど、どうかしら?) 克哉に口を割らせるには、何か証拠でもないと難しいということを理解した夏美は、ユニ君に対して相談する。(そうだな。当然にあの少年、いや、今は局部だけが少女になっている元少年か。とにかくその少年を監視していれば、いつか奈里佳と接触する瞬間を押さえることができるかもしれない。しかし私の一部を切り離して、彼を常時監視するのは難しいな。奈里佳なら、ナノマシンのことをすぐに気づいてしまうだろうから、出来るならその方法は採りたくはない) 考え込むように話すユニ君の言葉を聞いて、夏美も考え込んだ。(ということは、街中の監視カメラの制御を乗っ取って、それで矢島君を監視するしかないということね) こうして、監視と言えば聞こえはいいが、結局のところ克哉をいかにしてストーカーするのかという相談をする夏美とユニ君が克哉のことを怪しいとにらんでいる時、実はとある場所で、密かに結晶化現象が進んでいたのであった。
Nov 28, 2004
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(あの娘、要注意人物ね) 数学の授業が開始されてまもなく、奈里佳が深刻な声を出した。(島村さん、色々と調べてるようだしね。何か質問されても下手な答えをしないように注意するよ) 克哉は、つい先ほどのことを思いだしながら奈里佳に答える。ちなみに数学教師は先日の集団変身事件で自分がいかに可愛いお嫁さんに変身したかを話している最中で、授業はまだ脱線したままだ。(そんなことなんか問題にしてないわよ。克哉ちゃんは気がつかなかったの? あの娘、微弱だけど魔法を妨害する力を持ってるわ) 普段とは、まるで別人のように真剣な雰囲気の奈里佳である。(どういうこと? まさか島村さんが……) 克哉も、真剣な返事を返す。魔法を妨害するということで、フューチャー美夏のことが思い出されたからだ。そしてそのイメージは奈里佳にも伝わることとなった。(う~ん、さすがにそれは無いと思うけど、魔法を妨害する、キャンセルする原理はフューチャー美夏も、あの娘も同じね。目に見えるものしか信じない頑固な心と融通の利かなさを兼ね備えたとても強い意思が共通しているわ) 冷静に分析する奈里佳。ちょっと、らしくない雰囲気である。(じゃあ、島村さんがフューチャー美夏の正体ってことは無いってことでいいの?) 外見上は授業を聞くでもなく、ぼうっとしているが、頭の中では真剣な様子で奈里佳に問いかける克哉。(まあ、力の質は同じものを感じるけど、パワーが段違いと言うか比較にもならないレベルだから、まず違うんじゃないかしら。それよりも、問題なのは結晶化よ。人は自分の未来の可能性を閉ざすことによって結晶化しちゃうんだけど、もうひとつ魔法を妨害する力を持つ人間も、場合によっては更に巨大な規模で自分も、そして世界をも飲み込むほどの結晶化現象を起こすことがあるのよ) 精神だけの存在であるにも関わらず、奈里佳はごくりとつばを飲み込むのだった。(それにしても奈里佳って色々なことを知ってるね。僕も自分が奈里佳に変身したときの記憶は残ってるんだけど、今、奈里佳が話してくれたようなことなんか知らないのに、すごいね) 素直に感心する克哉だったが、しかしそれにしてもなぜ奈里佳はここまで事情に詳しいのであろうか? 奈里佳の精神は基本的に克哉の精神の位一側面であるはずだから、知識量に差があるはずはないのに……。(それはね、克哉君、僕がふたりの会話をモニターして、奈里佳ちゃんに必要な知識をリアルタイムで送っているからなんですよ) 奈里佳の知識量に驚いていた克哉だったが、今度は突然頭の中に響いてきたクルルの声に驚くことになった。「ひゃッ!」 つい、声を出しかけた克哉は、自分の口を慌てて手で押さえるのだった。(そんなに驚かないでください。それにしても奈里佳ちゃん、克哉君に僕と奈里佳ちゃんが常にリンクしていたってことを今まで話してなかったんですか?) ちょっと非難するようなクルルの声。(だって、聞かれなかったし♪) あっけらかんと答える奈里佳の声に、克哉と、そしてクルルまで脱力したのだった。(ホントに奈里佳ってば、僕の心の可能性が現実化したものなの? 何だか信じられないよ) 現実に頭を振りながら、心の中でため息をつく克哉。(信じられなくても事実です) 断言するクルルの声が聞こえる。(はあ~、何だか疲れちゃったよ) 数学の授業が子守歌に聞こえてくる克哉だった。
Nov 24, 2004
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「事実って?」 下手なことが言えない以上、克哉としては自分から具体的な何かを言う訳にはいかない。綱渡りな感覚を味わいながら、夏美に対して克哉は質問で答えた。「それを言ったら、そこの恋人さんが心配するような誘導尋問になっちゃうから言えるわけないじゃない。それともして欲しいの? 誘導尋問を」 夏美は表面上、余裕のある表情を浮かべている。「いやあ、恋人だなんて照れるなあ~」 ついさっきまで、克哉に取材(?)する夏美を恐い顔をしてにらんでいた雄高が、頭を掻きながらにやけた顔をする。「雄高ッ!」 鋭く親友の名を叫ぶ克哉。夏美が言った『恋人』という言葉の意味は完全に皮肉だと分っていたから聞き流せたが、雄高が言う『恋人』という言葉の意味は、辞書をひくと一番最初に載っている意味だということが分ったから、つい叫ばずにはいられなかったのだ。しかしなぜそこで顔を赤らめるかなあ、克哉ちゃんは……。「だから、痴話喧嘩はよそでやってって言ってるでしょ。まあ、あまり質問を限定すると答えを誘導しちゃいそうだったから控えていたけど、矢島君にはもう少し具体的に訊いたほうが良さそうね」 雄高の反応を瞬殺すると、夏美は克哉の顔から目をそらさないまま、独り言を言うように克哉に話しかけるのだった。「答えられることなら答えるけど、僕は何も知らないよ。島村さん」 予防線を張る克哉。しかしその予防線はあまりにもか弱い。「じゃあ、お願いするわ。まず事実確認なんだけど、今の矢島君は部分的に女の子のなっている。そしてそれは一昨日、お嫁さんに変身した後遺症であると、ここまでは良いわね?」 念を押す夏美。その目は克哉を捕らえて離さない。克哉のどんな些細な反応も見逃さないという目だ。「うん、その通りだけど……、それが何か?」 克哉はそう答えたが、事実はまったく違う。克哉はお嫁さんなんかに変身していないし、アソコだけが部部的に女の子になっているのは後遺症でも何でもなく、今朝、奈里佳に部分変身魔法をかけられたからなのだが、それを認めることは出来ない。フューチャー美夏こと、ディルムンのタイムパトロールという敵がいる以上、自分が魔法少女♪奈里佳だということをおおぴらに認めるわけにはいかないからだ。「いえ、何でもないわ。それで矢島君、矢島君はいったい何時、どこで変身させられたの? 奈里佳によって花井先生がウェディング快人ヘイアーンに変身させられて、そのヘイアーンによってみんなはお嫁さんに変身させられたんだけど、矢島君もヘイアーンに変身させられたんでしょ? それは何時、どこでのことだったのかしら?」 その夏美の質問を聞いたとき、克哉は『来たッ!』と思った。夏美の質問は、実にいいところを突いていたからだ。克哉は微妙に顔の筋肉がけいれんするのを感じた。「そういえば、克哉は気分が悪くなっていたんだよな。保健室で休んでいる時に変身したのか?」 何の気なしに雄高が克哉に話しかけた。克哉は思わず『そうだよ』と言いかけたが、その言葉を聞いた奈里佳の反応はまた違っていた。(ストップ、克哉ちゃん。何も言わないで。この娘の質問、やばいわッ!) 奈里佳の緊張した声なき声。(何がやばいって言うの?) 克哉は短く聞き返す。(保健室で休んでいる時に変身したなんて言ったら、すぐに嘘がばれちゃうでしょ。だって保健室にはいつも養護教諭の真美先生がいるんだもの。真美先生にも取材されたら、一発じゃない。ホント、この娘、いい質問してくるわね。というわけで克哉ちゃん、気をつけて答えるのよ。いいわね) 克哉と奈里佳の会話は、言葉に直すと数十秒の時間を必要とする内容だったが、意識同士が直接情報を交換して会話(?)しているので、その会話に要した実際の時間は数秒程度だった。「いや、それが保健室には行かなかったんだよ」 にらみつけるような夏美の視線を避けつつ、雄高のほうを見ながら答える克哉。「それは興味ある事実ね。もう少し詳しく教えてくれる?」 克哉の視線を追いかけるようにして立ち位置をずらした夏美が、雄高の質問を引き継ぐ形で質問した。「え、だから、保健室に行く途中で吐きそうなぐらい気持ちが悪くなったから、いったんトイレに入ってその……、吐いていたんだよ。それで、ちょっとすっきりしてトイレを出たところで、ばったりと奈里佳と花井先生、というか花井先生が変身したヘイアーンに出くわして変身させられちゃたと、そういうわけなんだけど」 奈里佳のアドバイスのもと、とっさに嘘をつく克哉。すらすらとよく出てくるものだが、目が泳いでいるのがいただけない。ついでに両手をのこぶしを軽く握り、左右それぞれの肩よりやや下の位置に置き、人差し指だけをピンと立てているのが、ワザとらしくも怪しい。「つまり保健室には行かなかったと。なるほど、じゃあそれはいいとして、矢島君がお嫁さんに変身したその姿を誰か他の人で見た人はいるのかしら? 少なくとも教室の中では大騒ぎでみんながお互いに変身後の姿を確認しあっていたんだけど、矢島君はお嫁さんの姿でいったい何をしていたのかしらね?」 だんだんと小さく、そしてつぶやくようになっていく夏美の声は、まるで克哉を静かに脅迫しているようにも聞こえた。「だから、変身させられたら、また急に気持ち悪くなってトイレに逆戻りしたんだよ」 一瞬、言葉を飲み込んでしまった克哉だったが、ポンと手を打つと明るい顔をして言うのだった。状況証拠的には怪しすぎる態度であるが、決定打ではない。「なるほど。では、変身している間は誰にも会わなかったと。で、最後の質問なんだけど、部分的に女の子に変身している状態のままだってことに気がついたのは、いったい何時のことなの?」 ふと、表情をゆるめると、ついでのように軽く質問を続ける夏美。手にしていたメモや筆記用具をしまいかけている。「え、他の人は知らないけど、昨日、朝起きたらこうなっていたんだよ。お嫁さんへの変身が解けた時は、ちゃんと完全に元に戻っていたんだけどね」 あまりにも嘘で固めるのも何だかまずいような気がしたので、この部分だけは本当のことを言う克哉だった。「へえ、そうなんだ。堀田の奴は、変身が解けた時からずっとああなっていたって言うけど、色々あるみたいなんだな。克哉みたいに一昨日は大丈夫でも昨日の朝起きたら部分変身していたっていう奴もいるみたいだし」 感心したように口を挟む雄高。「分かったわ。色々と参考になったし、取材に協力してくれてありがとう。また何かこの件で気がついたことがあれば教えてくれるとうれしいんだけど、いいかしら?」 その言葉を残すと、夏美は克哉の返事も聞かずに自分の席に戻って行った。見ると第一時限目の数学の教師が教室に入ってくるところだった。
Nov 23, 2004
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「大したことじゃないんだけど、奈里佳が現れて集団変身事件が起きた2日前のあの日、確か矢島君はその直前に、気分が悪くなって教室を出て行ったわよね?」 まずは事実確認をする夏美。しかしその目は獲物を狙う肉食獣の目だった。「え、う、うん、確かに気分が悪くなって教室から外に出たけど、それがどうかしたの?」 夏美の質問が何を意図して行われているのか予想がつかなかったが、これは【やばい】ということだけは克哉にも理解出来た。というわけでとりあえず事実を認めたが、夏美が知っていること以上の情報を与える気はさらさらない。「奈里佳の正体なんだけどね……」 わざとゆっくりとした言い方をする夏美。その言葉を聞いている克哉にしてみたら、まるでもう針のむしろに座らされているかのようである。「奈里佳の正体?」 ともかく克哉はあの日、教室を出てすぐに奈里佳に変身しているのだ。自分で考えると、克哉以上に怪しい人物はいないだろうと思えてくる。そんなこんなで克哉は平静を装っていたが、その表情の下では冷や汗をだらだらと流すことになった。まあ、精神的にだけど。「矢島君がこの教室を出てから、すぐに奈里佳が入って来たのよ。分かるでしょ、矢島君」 思わせぶりな言葉である。朝のホームルームが終わり、1時限目の授業が始まるまでの間の騒がしい教室が、なぜか克哉にはシーンと静まりかえったかのように感じられるのだった。「どういう……、ことかな?」 克哉はそれだけを言うのが精一杯だった。(どうしようッ!? ばれちゃってるよ~ッ!!) 表面は平静を装いつつ、克哉は心の中で奈里佳に助けを求めた。(何をおたおたしてるのよ。はったりに決まってるでしょ。とにかく落ち着きなさい) 奈里佳はまったく動じていない。なぜかその声を聞くだけで、克哉は奈里佳の落ち着きが自分にも伝わってくるかのような感覚を味わった。さすがに二心同体。「つまりね、矢島君が教室を出てから、入れ替わるようなタイミングで奈里佳が教室に入ってきたわけよ。なにかこう、タイミングが良すぎると感じるんだけど、これって偶然なのかしら?」 ジッと克哉の目を見つめる夏美。緊張した空気がふたりの間を流れる。「偶然……、だと思うんだけど。それよりも島村さん、僕に何を言わせたいの?」 あくまでもしらを切る克哉だったが、この言い方、聞きようによっては『自分は何かを知ってますよ』と受け止められなくもない。「別に何もないわよ。ただ、私は事実を知りたいだけ。それだけのことよ」 さらりとそう答えると、夏美は口を閉じた。(どう、ユニ君、何か反応は出た?) 克哉に対して口を閉じた夏美だったが、頭の中ではユニ君に話しかけていたのだった。(今のところ微弱な量子反応は出ているが、変身現象の後遺症が出ている他の生徒達に比べて際立った反応というものはない。精神の動揺による発汗と体温上昇も正常範囲内だ。出来るなら、もう少し揺さぶってみてくれないか?) 落ち着いた声で答えるユニ君。昨日は自分を構成するナノマシン群の大半、つまり夏美の脳神経系と融合していないナノマシンの全てが中津木警察署に出かけていたので、センサー類の大半が使用不可能だったのだが、今日は万全の態勢らしい。(分かったわ。じゃあ予定通りに行きましょう) 短く答えると、夏美はまた目の前の克哉に注意を戻したのだった。
Nov 19, 2004
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「おおこわ。じゃあ、黙ってるよ。ささ、どうぞ」 大げさなリアクションを取ってふざけているが、雄高は夏美から目を離していない。夏美が所属する新聞部が発行する新聞は、面白みはなくても、とにかく事実を的確に報道をすることで生徒達に信頼を受けている。それは良いのだが、だからこそ誤報なんかされた時にはよけいに大変なことになってしまうのだ。 今回の集団変身事件の後遺症問題については、既にあることないことの噂が飛び交い出しているので、雄高が身構えてしまうのも無理はない。もちろん克哉も緊張でこわばっているのは言うまでもない。「どこかの新聞みたいに記事をねつ造したり偏向報道をしたりするわけないでしょ。常に事実のみにひざまずくのが私のポリシーなんだから」 本気で自分には間違いがないと信じている時点で、ジャーナリストの態度としては既にもう駄目駄目なのだが、残念なことに夏美はまだそのことに気づいていない。夏美は、自分こそが正義だという態度もあらわに、強気な姿勢のまま克哉を見すえた。「矢島君。新聞部として今回の件について取材しているんだけど、インタビューに協力してもらってもいいかしら? 変身現象の後遺症が残っている人達から話を聞いて、何かこの事件の真相が解明できればと思っているんだけど。どう?」 手にはメモ帳とボールペンを持ち、克哉がインタビューを拒否することなどこれっぽっちも考えていないのが見てとれる。(奈里佳、どうしよう? インタビューって言ってるけど、なんて答えればいいの?) 夏美に返事を返す前に、とりあえず奈里佳に助けを求める克哉。臨機応変な対応というのは、ちょっとばかり苦手だったりする。(別に適当に答えておけばいいんじゃない? 克哉ちゃんが魔法少女の正体だなんてこと、分かるわけないんだし。どうしても答えに詰まるようだったら、私が身体を動かして答えてあげても良いけど。なんだったら、そうする?) まるで鼻の穴に人差し指を突っ込んで、老廃物と粘液が混ざりあって出来た粘度のある固形物をほじくり出しながら話しているような、なんともいいかげんな雰囲気で克哉の質問に答える奈里佳。(……僕が答えます) 一呼吸する間をおいて、克哉は奈里佳の申し出を断った。身体の主導権を一度でも渡したら、もうずっとそのままになっちゃうんじゃないだろうかと心配を否定しきれなかったのだ。「いつまでも黙ってないで、早く答えて欲しいんだけど。インタビューに協力してくれるの? それとも協力してくれないの?」 顔には営業スマイルを浮かべているものの、その笑顔は夏美という名前に似合わず冷たい。「あ、ごめんなさい。ちょっとぼうっとしちゃった。ええと、インタビューだよね。別に答えても良いよ」 下手に拒否するのも怪しいかなと思った克哉は、夏美のインタビューに答えることにした。「克哉、誘導尋問なんかに引っかかるなよ」 茶々を入れる雄高。克哉に話しかけている体裁を取ってはいるが、その実、本当のところは夏美に向けての話しかけているのは明白だ。視線が夏美のほうを向いてるし。「するわけないでしょ。そんなこと。私はいつだって公正よ」 雄高の懸念を一蹴(いっしゅう)のもとに葬り去ると、夏美は自分の正義を誇って胸を張った。「はいはい、いつだって新聞は正しいですよ」 全然そうは思っていないということが丸分かりの口調である。雄高……、もしかして昔何かあったのか?「それで島村さん。僕に何を聞きたいの?」 黙っていたら、どんどんと忘れ去られてしまうということに気がついたのか、克哉は夏美に対して問いかけたのだった。さすが腐っても主人公である。
Nov 16, 2004
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「ゆ、雄高ッ!?」 油断していたところにいきなり、【おでこ同士で熱はかり♪】なんていう技を食らった克哉は、裏返った声を出してしまう。おまけに大きく目をみはり、何かを言いたいのだが何を言えば良いのか言葉が思い浮かばなくて口をパクパクさせているなんて……、ホント、修行が足りない。「熱はないようだな。て、何、その反応?」 克哉の過剰な反応に不審がる雄高。「だって、いきなりなんだもん。びっくりするってば。それに恥ずかしいし。とにかくびっくりしたのッ!」 当然のようにそう答える克哉だったが、なぜいきなりだからびっくりするのかが、いまいちよく分からない。でも、かわいいから許す。「びっくりしたのは分かったけど、恥ずかしがることはないだろ? 別に男同士なんだから。……とと、違った。そう言えば今の克哉って、女の子だったよな。とりあえずアソコだけは。じゃあ、ついでだからもう1回やっとこうか」 そしてもう1度、おでこ同士をくっつける雄高と克哉。「ひゃあ!」 アソコだけは女の子とはいえ、いちおう外見的には男の子の時と変化がない克哉におでこをくっつける雄高も雄高だが、恥ずかしがりつつも本気で逃げようとしない克哉も克哉だと思う。「毎度毎度、飽きないわね。あんた達って」 そこにやってきたのは夏美である。「うらやましい?」 おでこを離して、やってきた夏美をちらりと見ると、今度は自分の左のほっぺたと克哉の右のほっぺたをくっつけながら夏美を挑発(?)する雄高。(おお、雄高君大胆♪ 克哉ちゃんも負けずに抱きついちゃえ) ひゅ~、ひゅ~とはやす奈里佳。「雄高、離れて欲しいんだけど」 奈里佳の声を無視して雄高に抗議する克哉。目をつぶり下を向き、出せる範囲で一番低い声を出している。(お~、お~、無理しちゃって♪) 更に茶々を入れる奈里佳。まあ、現在の奈里佳としては克哉をからかうことぐらいしか楽しみがないのも確かなので、無理のないことかもしれない。「つれないねえ。それよりも克哉。なんだか肌がきめ細かくなってすべすべしているような気がするけど、やっぱりアソコが女の子になっているせいかな?」 克哉の抗議をさらりとかわして、ほっぺた同士をすりあわせる雄高。とりあえず学生服を着ている男同士(?)がほっぺたとほっぺたをすりあわせている絵というのは本来は美しくはないはずなのだが、克哉は学生服を着て男装した女の子と見えなくもないのでそのへんはクリアである。というわけで、文章を読んで絵を想像っする時はその点に注意して想像するように。「もう~、やめてよ」 克哉としては本気で怒っているつもりなのだが、夏美にはその声が怒りの声にはとても聞こえなかった。「いちゃつくなら学校以外でやって欲しいんだけど」 半分頭を抱えつつ、夏美は気力をかき集めて雄高と克哉に文句を言う。「いちゃついてないってば。それより何か用なの。島村さん」 まだほっぺたをすり寄せてくる雄高の顔を両手で押し返しつつ、夏美に質問をする克哉。「俺ならいつでもいちゃついても良いんだけどななぁ~。今の克哉って、単に胸がない女の子っていう状態なわけだし」 軽い調子の雄高。それを見て、『まったく最近の男どもときたら』と、夏美は頭が熱くなりかけた。「佐藤君、私、矢島君にまじめな話があるんだけど、邪魔しないでもらえる?」 夏美は雄高に冷たくそう言い放った。短いスカートからのぞくすらりとのびた白い足が、夏美の言葉をよりきつく感じさせる。
Nov 14, 2004
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(健康診断なんかしても意味無いけど、それはそれで面白そうだし、ま、いいいか) 克哉の頭の中で、イメージ上の奈里佳がうんうんとうなずきながらコメントする。(面白くなんかないよ。昨日の真美先生ってば、『診断』って言いながら僕の女の子なアソコを触りまくるし、もうかんべんして欲しいよ) 机の上につっぷしながら、うんざりという感じで奈里佳に答える克哉。(おー、おー♪ 面白くないって言いながら、触られまくってあんなにも感じちゃったのはどこの誰だったかな? それとも克哉ちゃんが可愛い声をあげていたのは私の聞き間違いだったのかしらね?) 奈里佳のその言葉のあとに、昨日の保健室で克哉が思わず漏らしてしまった【アノ声】が、克哉の頭の中で再生される。脳を共有している同一人格の別バージョン同士なので、克哉と奈里佳にとって一方が思い浮かべたイメージを他方に伝えることなんて簡単なことなのである。「やめてよッ!」 恥ずかしさのあまり、慌てて奈里佳に抗議する克哉だったが、思わず口から声を出してしまうあたり、まだまだ修行が足りない。「ん? 何が『やめてよ』なんだ?」 案の定、克哉の一言を聞いた雄高が、克哉の席からさほど離れていないところにある自分の席を立って、克哉のところまでやってきた。「僕、声に出してた?」 嘘でしょ? という文字を顔に書きつつ、雄高に問い返す克哉。自然と顔に縦線が入ってしまう。「うん、思いっきり声に出ていた」 妙に真剣な顔で克哉の机の横に立っている雄高。普段のおちゃらけた態度の時はともかく、こういう時の雄高には冗談がきかない。(ほらほら、彼氏が心配してるわよ。どう言い訳するの?) 雄高の真剣な態度とはうらはらに、お楽しみモード全開の奈里佳。(彼氏じゃないってば。もう、奈里佳は黙っててよ) いつもの気弱な態度はどこに行ったのやら、奈里佳に対して何だか強気の克哉。(はい、はい。恋人の前だと強気なのね。お姉さん悲しいッ♪) ぜんぜん悲しく聞こえない声で奈里佳が答える。「だから、違うって言ってるでしょッ!」 またしても声に出してしまう克哉。しかし今度は自分でも声を出したことに気がついたのか、慌てて自分の口を両手で押さえる。一瞬で真っ赤になった顔が可愛い。(私、し~らない) 奈里佳はさっさと無関係宣言をする。どうやら高みの見物としゃれこむらしい。「おい、克哉。本当に大丈夫か?」 そして雄高は腰を曲げると、座っている克哉の顔と同じ高さに自分の顔を持ってきた。「だ、大丈夫。だから心配しないで。あははは、やっぱりアソコが女の子になっちゃてるから、感情が不安定になっているのかな?」 汗までたらしながら、必死で言い訳をする克哉。「感情が不安定って、全然大丈夫じゃないじゃないか。それにそんなにも顔を赤くして……。熱まであるんじゃないのか? どれ……」 そして雄高は、あくまでも自然かつスムーズな動きで、ふたりの顔を隔てるわずかな距離を乗り越えた。つまり、おでこ同士をくっつけたのだった。
Nov 12, 2004
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第8章 健康診断前夜「というわけで、昨日の職員会議で決まったことを伝えます。突然ですが、緊急の全校いっせいの健康診断を明日行うことが決まりました。明日はちゃんと新しい下着を着てくるとか、健康診断に備えた準備をして登校してきてください」 翌日、朝のホームルームの時間。克哉たちのクラスの担任である花井恵里32歳・独身♪が、開口一番に言ったのは、昨日発覚した集団変身現象の後遺症(?)への学校としての対策だった。 ちなみに第2話の登場では【花井恵里32歳・独身】という表記だったのが、今回からは【花井恵里32歳・独身♪】というように変わっている。この【♪】は、奈里佳により結晶化現象が解除されたことで生み出された彼女の心の余裕を表しているのであった。う~ん、微妙微妙♪(健康診断か。この時代の技術でいくら調べたところで何かが分かるとも思えないが、データ収集の観点からは興味深いな。問診結果による心理データも手に入れたいところだ) 花井恵里32歳・独身♪の話を聞いて、ユニ君が夏美に話しかける。(ふん、私たちがあれだけ調べても何も分からなかったのよ。健康診断なんて無意味よ) ちょっとムカムカとした言い方で答える夏美。(外見は元のままなのに、局部だけが女性化していた堀田修司の件だな。確かに昨日は直接見たり触れたりしても何も分からなかったが、それでも継続して観察していれば何か分かるかもしれない。こういう場合、短気は禁物だ) ユニ君のその言葉を聞いて、夏美は黙ってしまった。感情は煮えくり返っているが、理性ではユニ君の言う通りだということが分かっているからだ。夏美は大きくため息をつくしかなかった。「ああ、それからこの健康診断をする対象者は、変身現象を体験した人すべてということですから、女子も含めて後遺症が残っていない人も忘れずに健康診断の準備をしてきてください。それではこれで朝のホームルームを終わります」 ホームルームの注意事項は進み、最後にそう言い残すと、花井恵里32歳・独身♪は教壇を降りたのだった。「先生ッ!」 教室から出て行こうとしかけた花井恵里32歳・独身♪を鋭く呼びとめたのは、堀田修司だった。まだ生理痛がひどいのか、左手でおなかを押さえながらふらふらと立ち上がっている。「なにか質問なの。堀田君?」ゆっくりと身体を回しながら教室の内側のほうに向き直る花井恵里32歳・独身♪「ええと、先生も知ってるように、俺のアソコはまだ女の子のままなんですけど、トイレはどうしましょう?」 その質問を聞くと、花井恵里32歳・独身♪は考え込んだ。「……そうよねえ。その問題があったわよね。そうだ。矢島君?」 そしておもむろに克哉の名前を呼ぶ。「えッ? は、はい、なんですか。先生?」 主人公であるにも関わらず、相変わらず集団のなかでは目立たないのをいいことに、ぼうっとしていた克哉は、名前を呼ばれて慌てて返事をするのだった。「確かこのクラスでは、ええと、その、アソコが女の子になっちゃったままの男子は矢島君と堀田君のふたりだけだったわよね。なんだったら職員用の女子トイレを使っても良いけど、どうする?」 花井恵里32歳・独身♪は、一見、唐突な提案をしたかに見えるが、これには裏がある。昨日、ふたりの他にも他のクラスを含めると、学校全体で10名程度の男子生徒のアソコが女の子のままになっていたことが判明したのだが、彼ら(彼女ら?)がいつものように男子トイレで用を足そうとしたら、まあ、色々とセクハラまがいの事件が何件か発生したのだ。当然、花井恵里32歳・独身もそのことを知っていたからこそ、そのような提案をしたわけである。「お願いします。まだ生理中ですから、男子トイレで『見せてくれ』とか『音を聞かせてくれ』と騒がれるのはちょっとうるさくて……。かといって女子トイレに行ってもよけいに騒がれるだけですし……」 すぐに返事をしたのは、修司であった。そしてなぜか、じとっとした目で夏美のほうを見る。どうやら昨日、夏美はホントに徹底的に修司のアソコを触りまくって観察したらしい。「矢島君はどう?」 立ったままで返事をしない克哉に対して、返事を促す花井恵里32歳・独身♪「じゃ、じゃあ、そうさせてもらいます」 克哉も、修司がそうするならと、日和見な返事をする。「そう、分かったわ。じゃあ、他の先生にも伝えておくから」 そして今度こそ、花井恵里32歳・独身♪は教室の外へと出ていった。
Nov 9, 2004
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「と、いうわけでさ、部分的に女の子に変身したままなのは、克哉だけじゃないんだよ。だから安心して良いっていうわけなんだけど……。どうした? ぼうっとした顔をして。もしかして俺の言うことが信じられない?」 保健室で寝ていた克哉に教室での出来事を話して聞かせる雄高。しかし克哉は黙ったままだ。実はこのとき克哉は、奈里佳との会話に没頭していたりしたのだ。(なるほど。まさかそんな後遺症があったとはね。でも、考えてみればまったくありえない話じゃないかも……。あっ、克哉ちゃん。何か聞きたいなら遠慮しなくても良いわよ。頭の中で考えてくれれば、それだけでちゃんと会話出来るから♪) 雄高の話を聞いた奈里佳は、ひとり納得している。(頭の中で考えるだけで良いだなんて、そんなこと聞いてないよッ!) 抗議をする克哉。(だって、聞かれなかったもん。だいたい聞きもしないで、言葉を声に出さないと私に伝わらないと勝手に思い込んでいた克哉ちゃんが悪いッ!) 決めつける奈里佳。克哉の抗議は一言のもとに斬って捨てられた。(じゃあ、その話はおいといて、今の雄高の話って本当なの?」 奈里佳に言葉で勝とうだなんて無理だということを、たった1日ながらも繰り返し学習させられた克哉は、話題をクラスメイト達が部分変身していることに移す。(みんなをこの前みたいに私に変身させたり、昨日みたいにお嫁さんに変身させたりした魔法の力は、全部本人達の魔法力だもの。部分的にまだ変身が解けないことだってあるわよ。ま、個人差の範囲内よね) あっさりと言う奈里佳。「おい、ホントにどうしたんだよ。克哉ッ!」 奈里佳との会話に集中する克哉だったが、外から見ていると、単にぼうっとしているようにしか見えない。それを心配した雄高は克哉の肩をつかんで軽く揺すりながら短く呼びかけた。「あ、ごめん。ちょっとびっくりしちゃって頭が止まっていたみたい」 雄高に向かって顔をわずかに赤らめながら右手でこぶしを作り、自分の頭を軽く叩く克哉。「ま、まあ、びっくりするのは分かるよ」 克哉の場違いなまでの可愛さにクラッとしかけた雄高は、照れ隠しの為にやけに大きくうんうんとうなずく。もっとも克哉自身は今の自分の仕草が可愛いということは気がついていないようだ。(ねえ、奈里佳。個人差って言うけど、具体的にはどういうことなの?) 雄高に返事をすると同時に、克哉は奈里佳質問する。(魔法なんてホントは誰にでも使えるんだけど、やっぱり上手い下手っていう個人差があるわけ。今回のは魔力のコントロールが上手く行かずに完全に元の姿に戻れていないというパターンと、魔力がやや暴走気味で部分的に女の子に変身する魔法を無意識に使っている。……ということかしら) 至極まともな返事を返してくる奈里佳。「ねえ、佐藤君。今の話からすると、佐藤君達のクラスだけでもそれなりの数の生徒達の身体の一部が、女の子のままなのよね?」 雄高の話を興味深そうに聞いていた真美先生。その顔には養護教諭という職業に忠誠を誓う顔だった。先ほどまで克哉の変身したアソコをいじくり回していた人物と同一人物だとはとても思えないッ!!「ともかく昨日の変身現象の後遺症は思ったよりも広範囲に広がっていたという訳ね。一度これは全校調査をしてみる必要があるわね」 脇で聞いていた真美先生は雄高の話を聞いてそう決意すると、(なかなかおもしろくなってきたわね♪) 楽しそうにつぶやく奈里佳の言葉を聞いて、克哉は逆に気持ちが沈んで来るのだった。果たしてこれからどうなるのだろうか? 心配することしか出来ない克哉だった。
Nov 6, 2004
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「あ、出てきた。佐藤君、もう男子の着替えは終わったの? まったくもう遅いんだから」 待ちくたびれて、いらついた声の女子生徒が、教室から最初に出てきた雄高を非難する。「いや、まだみんなは着替え中なんだけど、修司の奴の具合が悪いものだから、ちょっと保健室に行くんだよ」 どこまでの事情を説明して良いものかと雄高は一瞬だけ迷ったが、とりあえずあたりさわりのないことだけを言ってみる。そして言われたほうの女子生徒は雄高の後に続いて出てきた修司を見て、雄高の言葉が嘘ではないことを知った。「ホントだ。堀田君、顔色が悪いわよ。大丈夫?」 途端に声が優しくなる女子生徒。まわりのその他の女子生徒も口々に『大丈夫?』と聞きながら修司のまわりに集まってくる。なんだか好かれているね。修司君。「やあ、心配ありがとう。でも大丈夫。具合が悪いのは確かだけど、病気というわけじゃないから」 まあ確かに病気ではない。しかしそう言う修司の顔色は悪くて、誰が見てもつらそうな感じだ。「具合が悪いけど病気じゃないって……。修ちゃん、なに訳わかんないこと言ってるのよ。全然大丈夫そうじゃないじゃない」 心配そうな様子で近づいて来たのは夏美である。フリーカメラマン志望(だった?)修司と、新聞記者志望の夏美は幼なじみでもあり、そしてほのかに夏美は修司に恋心を抱いていたのだった。まあ、ほのかというよりも露骨な恋心というのが正解ですけど。「ああ、夏美、いいところに来た。ちょっと夏美に聞きたいんだけどいいかな?」 軽くおなかを手で押さえながら、青い顔をして夏美に話しかける修司。その弱った顔を見て夏美はきゅんと、心が音をたてるのを感じていた。どうも母性本能を刺激されたらしい。「なに? 何でも言って!」 心配そうに修司の目を正面から見つめる夏美。すでに夏美の周囲にはラブラブの恋人しか進入することが許されないフィールドが形成されつつあったが、まあどうでもよいことである。「いや、俺、生理になっちゃったんだけどさ、初めての生理の時って、やっぱりタンポンよりもナプキンのほうが良いよね? 夏美はどう思う?」 まるで聞いたことがない外国語で話された言葉のように、夏美はその言葉の意味がまったく理解できなかった。単語それぞれの意味は分かるものの、それが修司の口から流れてくるという状況に頭が追いついて行かなかったのだ。「はぁ?」 間抜けな返事をする夏美。思考が完全に停止している。まあ、当然であろう。「だから、タンポンとナプキンのどっちが良いかな? 生理になるの初めてだからわかんなくてさ」 夏美の思考が停止していることなど少しも気にかけることなく、修司は質問を繰り返す。ちなみにまわりにいる他の女子生徒達も固まっているのは言うまでもない。「あの、島村さん……」 雄高が固まってしまっている夏美の顔の前で手を振り、呼びかける。「はッ! ええと、修ちゃん。今、『生理になっちゃった』って聞こえたけど、それってどういうことなの!?」 さすがにジャーナリスト志望の夏美である。思わぬ事態に直面しても、すぐさま態勢を立て直している……、のかな?「だから昨日、お嫁さんに変身しちゃったろ? あのあと変身が解けたと思ったんだけど、アソコだけ女の子のままなんだよ。で、今朝から生理になっちゃったと。それにしても、痛たたた……。生理っていうのは、こんなにも痛いんだな。知らなかったよ」 顔をしかめて痛がる修司。しかしその姿を既に夏美は見ていなかった。「魔法少女♪奈里佳ッ! またあのバカ女のしわざなのねッ!!」 視線をあらぬ方に向け、大声を出す夏美。既に頭は沸騰状態かもしれない。(夏美、いい機会だ。彼が部分的に変身しているという状態を観察してみたいのだがどうだろう。もしかして魔法少女♪奈里佳を名乗る時間犯罪者が持っている技術レベルが分かるかもしれない) いきり立つ夏美に対して、冷静に話しかけるユニ君。もちろんその声は夏美にしか聞こえない。そしてユニ君はいつものように夏美に話しかけると同時に、気持ちを落ち着かせる微弱な電気信号を夏美の脳におくるのだった。(……分かったわ。ユニ君) 声に出さずに夏美はユニ君に答えると、次に修司の手を取り歩きだした。「修ちゃん、ちょっとこっちに来て……」 そのまま夏美はとまどう修司を連れてその場を離れて行った。おそらく修司をトイレにでも連れていくのだろうが、いったい男女どちらのトイレに連れて行くつもりなんだろうか?「お~い、あらら、修司の奴、行っちゃった。じゃ、俺は1人で保健室に行くか。克哉と真美先生にこのことを伝えなくちゃいけないし」 思いっきり夏美に無視された形の雄高だったが、雄高はそれをさほど気にせず保健室へと歩いて行くのだった。
Nov 3, 2004
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「は~い。今の俺がそう。アソコだけ女の子になってるんだな。これが」 右手を半分だけ上にあげているのは堀田修司(ほった・しゅうじ)である。しかしその顔は妙に青白くて元気が無い感じだ。「え、そうなの? 堀田はホントに具合が悪くて見学していたと思っていたけど」 ちょっと不思議そうな顔になる雄高。「まあ、具合が悪いのは確かだよ。腹は痛いし、気分も重いし」 確かにつらそうな表情をしている修司であった。「ああーーぁッ! もしかして体育を休んだ理由って、あれ、マジだったのか!?」 修司の言葉が意味するものに気がついて、雄高は大声をあげた。「おお、マジもマジ、大マジ。アソコが昨日から女の子のままなのはいいとして、いきなり生理になっちゃってるから、もう大変なんだよ」 ため息をつく修司。あれだけ魔法少女やお嫁さんになりたいと言っていたにも関わらず、やはり生理となると遠慮したい気持ちのほうが大きいのだろう。なんというか勝手ではある。「そ、そうか。まあ、がんばってくれ」 そう言うしかない雄高だった。「おう、ありがとう。……あ、ちょっと血がたれてきたかもしれない。やっぱりティッシュを重ねてあててるだけじゃ駄目だね。保健室に行ってもらって来ようかな」 どこからどんなふうに血がたれてきているのかということは聞かないでおこう。そう思う雄高だった。「もらって来るって、やっぱり……。あれをか?」 答えは聞かなくても分かっていたが、健全なる中学生男子としては、なかなかに人前で言いづらい単語ではあるので、雄高としてもどうしても言葉をにごしてしまう。「もちろん。やっぱり初めてだからタンポンよりもナプキンのほうがいいんだろうな。う~ん、夏美に相談してみようかな?」 幼なじみの島村夏美の名前を出す修司。しかしその夏美が、正義のナノテク少女フューチャー美夏の正体だということを知ったら、いったい彼はどんな顔をするのだろうか?「そ、そうか……。ま、それはそれとして、保健室に行くなら俺も行くよ。克哉にこのことを知らせてやれば、変身の影響が残っているのは自分だけじゃないってことが分かって安心するだろうし」 ポンと手を打ち、教室を出ようとしている修司を追いかける雄高。ちょうどそのとき、修司の手は扉にかかっているところだった。「ん、分かったじゃあ一緒に行こう」 そのまま修司と雄高は教室を出た。すると廊下には、男子の着替えが終わるのを待っていた女子達がたむろしていたのだった。
Nov 2, 2004
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