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(ま、しょうがないわね。でも条件がひとつあるわ。どうせはくなら可愛い柄のトランクスにしてちょうだい。それならば反対はしないわ。それぐらいは良いでしょ?) 条件付きながらも、あっさりと克哉の言い分を認める奈里佳。さっきまでのあれはいったい何だったんだろう?「いくら反対しても無駄だからね。だってもう決めたんだもん。だから、いくら可愛いトランクスならはいても良いって言っても、僕は絶対に……。え!? トランクスをはいても良いの?」 奈里佳には何を言っても絶対に反対されるだろうと身構えていた克哉は、あまりにもあっさりと奈里佳それまでの意見を変えたのが信じられなかった。あまりにも意表を突かれたので、直前の高ぶった口調が急にトーンダウンする。(もちろん良いわよ。克哉ちゃんが本気でそうしたいなら、私にはそれを止めることは出来ないわ) 異常なまでの、もの分かりの良さを見せる奈里佳。心なしかどことなく寂しそうな口調にも聞こえる。「どうしたの? なんだか奈里佳らしくないんだけど?」 奈里佳に対しては、タカビーでワガママで、他人の話なんか聞いちゃいないというイメージしか持っていなかった克哉は素直に驚いた。既にもう口調が奈里佳を心配する口調になっているのだが……、この素直さが可愛い♪「克哉君、今、克哉君の頭の中に存在して喋っている奈里佳ちゃんは、克哉君と別人格というわけではなくて、完全な同一人格なんですよ」 それまで布団の上で丸くなって日和見を決め込んでいたクルルが、ようやく話が一段落したのを確認してむくりと二本足で立ち上がると、克哉と奈里佳が行う1人芝居のような会話に参加してきた。「奈里佳も自分のことを、『僕の心がそうなっていたかもしれない可能性のひとつ』だって言っていたけど、何かそれが関係あるの?」 話の方向性が見えない克哉は、きょとんとしている。しかし話は逸れるが、オレンジと白のストライプのショーツをはいた女の子(?)が、男物のシャツを着てトランクスを握りしめている姿というのは、ちょっと異常な装いであるという自覚が本人に無いだけに、なかなかに趣があるものと思えなくもない。 「克哉君と奈里佳ちゃんは、表面的にはまったく別個の2つの人格に見えるけど、本当のところは完全に同一な存在なんです。立体的なものを角度を変えた方向から平面的に見ると色々と違った形に見えるけど、実際には単に立体という存在が別の面を見せているだけですよね。それと同じで、克哉君の別な側面が奈里佳ちゃんという可能性なんです」 短い前足を背中の後ろにまわし、布団の上をうろうろと立って歩きながら、クルルは克哉に説明した。(そうなのよね。私と克哉ちゃんは同一の存在なんだけど、今の私は克哉ちゃんがそうなっていたかもしれない心の可能性として存在しているわけで……) クルルの説明を受けて、珍しく言葉を濁す奈里佳。なぜか克哉には、奈里佳がその言葉の先を言いたくないというように考えているのだなと感じられた。「つまり、どういうこと?」 すかさず、クルルと奈里佳の2人に同時に問いかける克哉。でも、もう少し自分の頭で考える習慣を身に付けたほうが良いと思う。「つまりですね、克哉君は現実に今ここに存在していますが、奈里佳ちゃんは可能性として存在しているわけですよ。だからもしも2人の意見が対立した場合には、最終的な主導権はあくまでも克哉君が持っているということなんです」 後ろにまわしていた前足を元に戻し、クルルは、右前足でビシッと克哉の顔を指す。しかし、克哉はその言葉を理解することができず、ただ唸っている。「ほら、さっき、克哉君が『ショーツの上からトランクスをはく』ということを決めて、奈里佳ちゃんに向かって宣言しましたよね。それも本気かつ真剣な気持ちで」 克哉はクルルの言葉を聞いて、思い当たることがあった。確かにあの時は今までの人生の中で一番本気かつ真剣だたかもしれない。それにしてもトランクスをはくということを宣言することが、今までの人生で一番本気かつ真剣だっただなんて、克哉の人生っていったい……。
Aug 31, 2004
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「だめだよ、奈里佳ッ! それ以上やったら、声が、声が出ちゃう~。ん~、んん~ッ!!」 押さえようとしても身体の奥から沸きあがってくる初めての感覚の大波にシンクロして、色っぽいとしか言いようのない声が漏れ始める。それまではなんとか自由になる左手で奈里佳が動かす右手を引き離そうと無駄な抵抗をしていた克哉だったが、とうとう自分の口を……、もちろん上の口をだが、とにかく口を押さえる為にその左手を使わざるを得なくなってしまった。(あら、ようやく抵抗をやめてくれたのね。うれしいわ♪) 無理やりにでも、すべての物事を自分の都合の良いように解釈しようとする奈里佳。ある意味とっても立派である。「んん~ッ! ん、ん、ん、んんーーーッ!」 色々と言いたいことはあるだろうが、今の克哉には声にならない声で唸ることしかできなかった。そうしている間にも奈里佳の攻めは続く。(どう? こんなにも感じちゃうのに、まだ自分は女の子じゃないって言い張るつもりなの?) はたから見ていると、単に克哉が1人で自分のアソコを触ってもだえているだけなのだが、精神的には大いに楽しんで攻める奈里佳と、激しく抵抗しながらも守る克哉であった。……あ、この場合は守るではなくて、【受ける】と、表現しなくてはいけなかったか。「んぁ、ああああーーー!」 とうとう耐え切れず、左手で口を押さえたくらいではせき止められない声の本流が克哉の口から溢れ出してしまった。今まで力いっぱい抵抗してきただけに、いざ声を出すことへの抵抗がなくなると、それはもうびっくりするような声が出てしまったのだった。(いや~、克哉ちゃん。そんなにも喜んでくれると、私も触り甲斐があったというものよ。うん、私ってばテクニシャン♪) 克哉が果てたことで、ようやく攻めの手を休める奈里佳。その口調には達成感が満ちている。世界を結晶化とそれによる崩壊の危機から救うという使命を考えたら、そんなことに達成感を感じていても良いものかとクルルは思ったりするのだが、そんなことを言うと奈里佳がどんな反撃をクルルに対してもするのか分からない。というわけで賢明にも何も言わずに黙っている日和見主義のクルルであった。「喜んでなんかないもん……」 うっすらと涙を浮かべ、顔を紅潮させて抗議する克哉。その手の属性がある人なら一撃で虜にされてしまうほどの破壊力を持っている。もっともそんな評価をもらっても本人はちっとも嬉しいとは思わないだろうことは間違いない。「克哉ーーーっ! さっきから何を騒いでるの? 早く着替えてご飯を食べないと遅刻するわよーーー!」 部屋の外から、母、弓子の声が聞こえる。どうやら全てが聞こえたわけではないにしろ、ある程度の部分までは克哉の例の声を聞かれてしまったらしい。それに気づいた克哉は、ますます顔を赤らめるのだった。「はーーい、いま着替えてるところだから、もうちょっとだけ待ってーーッ!」 とりあえず何を騒いでいるのかということには答えずにあやふやにしたまま、母親に対して返事をする。そして克哉は部屋の中に置いてある小さなタンスから新しいトランクスを取り出すと、両手でそれをつまんで上に上げ、自分の顔の前に持ってきた。「奈里佳ッ! ショーツの上からこのトランクスをはくからね。もう決めたからッ!!」 恥ずかしいことをされまくって切れちゃったのか、克哉ちゃん、いつになく強気です。
Aug 29, 2004
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「そんなことは分かってるよ! ……さっきトイレで触ったもん」 恥ずかしさからか、最後はごにょごにょと尻すぼみになる克哉。耳まで赤くしちゃってるのが可愛い。 それはそうと、ここまで来たら行くとこまで行かないと奈里佳はおとなしくならないだろうと悟ったクルルは、ベットの上で丸くなってしまった。そして恥ずかしがっている克哉の顔を見て、密やかに目の保養をすることにしたのだった。克哉は、そんじょそこらの女の子よりもよっぽど可愛かったりするのだ。(触ったって言っても、トイレットペーパーで拭いただけじゃない。触るって言うのはね、こうするのよ♪) 奈里佳のコントロールにより、克哉の意思とは無関係に動いていく右手が、とうとうショーツ越しに股間の縦に入った切れ目の上に置かれてしまった。右手のコントロールは奈里佳に奪われているものの、その触感だけは完全なまま残されているので、妙にやわらかいその感触が克哉の脳髄を刺激する。「ひゃうあ!」 可愛らしくも驚きに満ちた声が部屋の中に小さく響く……。その驚きは触られた感触によるものだったのか? それとも触った感触によるものだったのか? それは声を上げた克哉にもよく分からないのだった。(いい声で鳴く小鳥だこと。ご褒美に撫で撫でしてあげなくちゃね♪) そのまま、奈里佳が動かす克哉の右手の中指が、妖しげな動きを始めだす。まずは縦筋の奥に置かれた指先が、微妙な接触を伴ったまま徐々に前方向に移動したかと思うと、身体の中で一番敏感な部分の上で静止する。そしてゆっくりと、しかし確実に圧迫を加える。 2~3秒ほどの間、その部分に単純な圧迫を加え続けた指先はふっと力を抜き、薄い布越しの接触を一旦絶ったのだった。しかしこれで終わりかと思う短くも長い時のあと、再び接触してきたその指先は、ごくわずかな動きながらも緩やかな振動を伴っていた。 指先という物理的なポイントが移動し動き回る範囲は、わずか数ミリのことに過ぎないのだが、ここまでの一連の動きが何度も繰り返されるに及ぶと、触れられている部分が脳に発する信号の強さと量は、そのような経験がまったくあるはずもなかった克哉にとってしてみたら、異常なまでに強すぎた。「あんっ!」 とうとう耐え切れずに、自分の意思によって出そうとしたわけではない声が、克哉の喉の奥から漏れてしまった。自分のどこからこんな声が出てくるんだろうと不思議に思えてくるほど、その声は妙に色っぽかった。(そんなに喜んでもらえるんだったら、もっとサービスしなくちゃね♪) 克哉のその声を聞いて調子に乗った奈里佳は、更に高度なテクニックを駆使し始めた。それはもうここでは描写が出来ないくらいに……。既に上の口からのあえぎ声だけではなく、下の口からも『くちゅくちゅ』といったなんだか良い子には分からない声(?)も漏れてくる。 克哉ちゃん、初めてにしては感度良すぎです。
Aug 26, 2004
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「ごめんなさい。自分からショーツをはくって言いました。だから胸は膨らませないで……」 アソコが女の子のアレに変化させられただけでも大変なのに、胸まで女の子にされてはたまらないと、克哉は目には見えない尻尾をくるりと股の間に入れ、同じく目には見えない犬耳を折り曲げて奈里佳に敗北の白旗を上げるのだった。(分かればよろしい。じゃあ魔法で胸を膨らませるのは無しにしてあげる。だって無理に魔法で胸を膨らさなくてもそのうちに……♪) 克哉が素直に折れたのに満足したのか、奈里佳もやけにあっさりと引き下がった。しかし何かそれでもどこか楽しそうな口調が妙に怪しいと言えば怪しい。もっとも克哉は、あえてそれを無視することにした。奈里佳の言う事をいちいち気にしていてはやっていけないことに、克哉もおそまきながら気がついたらしい。「……ねえ、奈里佳。ショーツははくけど、その上にトランクスを重ね着するのは良いでしょ? それぐらいは認めてよ。だって今日は体育の時間があるんだもん。このままじゃ絶対にまずいよ」 今日の時間割を思い出した克哉は壁に貼ってある時間割表を指差しながら、現実的な妥協点としての提案を奈里佳に申し出た。(どうしてまずいのよ? 世の中、女の子用のショーツを喜んではいている男の子だっていっぱい居るわよ。大丈夫、ノープロブレムよ♪) すっとぼける奈里佳。分かって言ってるだけに説得は難しそうだ。「僕は変態じゃないッ!」 顔を真っ赤にして思わず声を荒げる克哉。どうやらそろそろ持ち前の忍耐力も枯渇してきたらしい。「奈里佳ちゃん、それぐらいは認めてあげたらどうです? ほら、ディルムンのタイムパトロールだと思われるフューチャー美夏っていう敵も現れたことだし、どんなことであれ、あまり目立つようなことはしないほうが良いと思うんですよね」 クルルは『そろそろ助け舟でも出すか』とでも思ったのか、奈里佳と克哉の言い争い(?)に口をはさむ。しかし猫のぬいぐるみのようなその身体で言われても、あまり説得力は感じられない。(駄~目♪ それじゃあ意味ないでしょ? 女の子のパンツはね……、見せてなんぼなのよッ!!) ザッパーーンと、大きな波しぶきをあげる冬の日本海を精神的な背景として、またしても勝手な理屈を主張しだす奈里佳。すぐには言う事を聞いてはもらえないだろうと思っていたクルルも、奈里佳のあまりな理屈に短い腕、というか前足で頭を抱えたくなってきた。「僕、女の子じゃないもん……」 クルルが頭を抱えて黙っていると、もはや奈里佳に理屈は通じないと覚悟した克哉が、すねてつぶやく。(ほぉ~お、克哉ちゃんは女の子じゃないってか? ふふん♪ まあ確かにさっきまではそうだったわよね。でも、ほら、ここはもうちゃんと女の子になってるのよ。触って確かめてみたらどうなの?) 奈里佳がそう言うと同時に克哉の右手が勝手に動き出し、するすると股間へと伸びて行くのだった。克哉ちゃんの貞操……、危うしかもッ!?
Aug 24, 2004
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第4章 着替え「あれ? いつの間にもうこんな時間に!?」 自分のアソコだけが男の子のソレから女の子のアレに変えられてしまったことを深く大きく嘆いていたのだが、いつまでもそうしてばかりもいられない。ふと見た時計の針が指し示す数字に、克哉は驚きの声を上げてしまった。(まだ遅刻をするような時間じゃないじゃない。何を慌てているのよ。それよりも本当に学生服をセーラー服に変えなくてもいいの?) 捕獲した獲物をもてあそぶ猫にも似た雰囲気を漂わせつつ、奈里佳はのんびりと口をはさむ。「遅刻ぎりぎりに行くつもりはないから奈里佳は黙っててよ。お願いだから」 勇気を振り絞ったのか? それともやけになったのか? 克哉はちょっと震える声でそう言いながらパジャマを脱ぎだした。上着のボタンを外すとまずは左手、そして右手とパジャマから腕を抜くと、パジャマの上着をきれいにたたみだした。(あらぁ~!? 克哉ちゃんてば律儀ね!! そんじょそこらの女の子よりも女の子らしいわよ) 克哉の頭の中では、奈里佳が『ヒュー、ヒュー』と、はやしたてる。「そうなんですよね。僕も克哉君が男の子だというのは、常々惜しいと思っていたんですよ」 クルルも、勝手なことを言いだしたが、克哉はそれを無視して黙々と着替えのプロセスを進行させたのだった。つまり……、パジャマの下も脱いだのである。まずは右足、そして左足と、すね毛などまだ1本も生えてないすべすべの肌がまぶしい2本の脚をあらわにしたのだった。「あれ、克哉君、その下着はいったいどうしたんですか?」 クルルは克哉がはいているオレンジと白のストライプ模様のショーツを指差した。(ああ、これは私が魔法で変えといたのよ。ほら、やっぱりアソコだけとはいえ女の子が男もののトランクスをはいてちゃまずいでしょ? 克哉ちゃんも快く『ショーツをはきます』って承諾してくれたし♪) いたずらを自慢する子供のような口調で奈里佳が答える。今の奈里佳は克哉の頭の中にいる精神だけの存在のはずなのだが、鼻を高くして胸を反らせ、自慢のバストをこれでもかと強調しているポーズが目に見えるようだ。「……無理やり言わせたくせに」 聞き取れないぐらい小さな声で、ぼそりとつぶやく克哉。しかし克哉と精神同居状態の奈里佳に対しては、いくら小さな声でつぶやこうと丸聞こえなのであった。(う~ん、やっぱりアソコだけが女の子だなんてバランスが悪いわね。いっそのこと胸のほうも魔法で膨らませちゃうというのはどうかしら? ねえ、克哉ちゃんもそう思うでしょ?) もしも舌なめずりする猫が喋ったとしたらこんな感じだろうという、どこか背中がうすら寒くなるような口調で、しかしあくまでも表面的には優しく克哉を脅迫する奈里佳。
Aug 23, 2004
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(い~ち、に~い、さ~ん、し~い、ご~う……) 奈里佳は、数をゆっくりと数えるのだったが、その声は克哉の神経を逆なでし、精神を奈落の底に突き落とすだけの力を秘めていた。「待って、待ってよ奈里佳!」 克哉は、往生際も見苦しく、最後の最後の抵抗を試みたが、奈里佳はやっぱり聞く耳を持たなかった。(ろ~く、し~ち、は~ち……) 容赦なくカウントダウンは進む。「分かった、はくよ。ショーツはきます。だから生理にしないで!!」 勝負(?)に負けた克哉は、ガックリと首をうなだれた。哀れ、克哉。(素直に言うことを聞いてくれてうれしいわ♪ それじゃあ魔法で、え~い♪) それまでのいきさつを完全に無視して、奈里佳が嬉しそうにそう言ったかと思う間もなく、克哉の下半身を包んでいたオレンジ色のトランクスが、微光を発しながら変形し、オレンジと白のストライプ模様の可愛らしいショーツへと変化した。(どう? はき心地はトランクスとはくらべものにならないでしょ?) 自信満々の口調の奈里佳。「……確かに、ピッタリとフィットして、はき心地は良いけど……。こんなのを誰かに見られたら……」 克哉ちゃん、もう完全に声が涙声である。しかしそれが可愛らしいのだから、世の中うまく出来ている?(あ~、もうっ! 何をうじうじしてるのよ! 見られたら見られたで良いじゃない! それよりも、もうお腹がペコペコ。早く朝ご飯にしてよね) 既にこの件は終わったと言わんばかりの奈里佳の態度である。いや、実際、奈里佳にしてみたら終わっているのかもしれない。しかし克哉にしてみたら、アソコが女の子のままでこれから先1週間を過ごさなくてはいけないのかと思うと、全ての災厄がまさに今始まったという感覚である。「うう、こんなんばっかりーーーっ」 克哉は、おきまりのセリフを言うと、パジャマのズボンを上に上げ、トイレを出たのだった。(しかし、トイレの中のシーンだけでここまで引っ張るのは、我ながら呆れちゃうね。 by 作者)「あら、克哉ったら、まだトイレに入ってたの? 早く着替えてきなさい。ホントにもう時間がないわよ」 トイレを出てから自分の部屋に戻るまでに、台所の前を通るのだが、そこで母親の弓子に注意をされたのだった。見るとテーブルの上には既に朝食が用意されている。「う、うん。わかった。急いで着替えてくるから……」 股間のふくらみが消えてしまったことを、母親に気づかれるのではないかと、そんな心配をしつつ、克哉はそそくさと自分の部屋に消えた。ちなみに恥ずかしさで、顔が真っ赤になっていたのは言うまでもない。 自分の部屋に戻った克哉は、まだ布団の上で眠りこけているクルルを叩き起こした。「クルル! 起きてよ! 起きろ~!」 そのまま、クルルの肩をガタガタと揺らして、なんとか目を覚ましてもらうのに成功した。「うにゃぁ~。……ああ、おはようございます。どうしたんですか? 克哉君」 まだ半分寝ぼけて、返事をするクルル。(うぷぷぷっ……。クルルちゃん。実はもう克哉君じゃ無くて、克哉ちゃんになっちゃってるのよね」 クルルの返事に対して、克哉の頭の中の奈里佳が、テレパシーで答えた。「そうなんだよ。奈里佳が、僕のアソコを、女の子のアソコにしちゃったんだ! なんとか元に戻してよ!」 その後、克哉は、ついさっきトイレの中で起きた“大事件”について一生懸命に説明した。時々、奈里佳が茶々を入れるので、話は何度も腰を折られたが、なんとか話は伝わったのだった。「なるほど。事情は分かりました。奈里佳ちゃん、これはちょっとまずいですねえ」 猫のぬいぐるみのような外見であるが、クルルは出来る限りの渋面を作ると克哉の顔、つまりは克哉の内面の奈里佳を見ながら、苦言を呈した。(何がまずいって言うのよ。身体全体を女の子にしたら、すぐばれちゃうけど、アソコだけなら裸にならない限りばれないんだから大丈夫♪ 心配無い無い♪) 奈里佳はお気楽に答えるのだったが、クルルの考えは別なところにあった。「いや、別に克哉君のアソコが女の子になっていようが、それがまわりにばれようが、別にどうでも良いんですよ。問題は別な点にあります」 深刻そうにそこまで言うと、クルルは考え込むように腕を組んだ。「そんな、どうでもいいだなんて……」 頼みの綱のクルルにも見捨てられて、克哉の精神は崩壊しそうだった。しかし、クルルはそんな克哉に構わず、言葉を続けた。「克哉君のアソコを女の子にしちゃったということは、その部分変身のために魔力を常時使っているということです。何も魔法を使わなければ、克哉君はだいたい5日ぐらいで、魔力の完全充填が出来るのですが、この変身をしたおかげで、魔力の充填に時間がかかるわけですよ。これはちょっとまずいですよね」 克哉は、クルルのその言葉を聞いて、希望がよみがえるのを感じた。もしかすると元に戻してくれるように、クルルが奈里佳を説得してくれるかもしれない。そう思ったのだ。「携帯電話の電源を切って充電するのと、電源をつけたまま充電するのじゃ、充電時間に差がでてくるってことと同じなのかな?」 克哉は、自分の理解が正しいかどうかをクルルに確認した。「まあ、ちょっと違うような気もしますが、大雑把に言えば、そういうことですね」 クルルは克哉の理解が正しいことを認めた。(ちょっと待ちなさいよ! それじゃあ何? 早く魔力を充填したいから魔法を使うなってことなの!) さっきまでの克哉と立場を変えて、今度は奈里佳が抗議の声をあげた。「簡単に言えばそういうことです。分かったら、克哉君にかけた魔法を解除してくださいますか?」 丁寧にお願いするクルル。「ねえ、奈里佳。クルルもこう言っていることだしさ、魔法を解いてアソコを元に戻してよ」 話の流れが自分に有利になってきたことを感じた克哉は、余裕の雰囲気でそういった。(嫌よ! 確かに魔法を常時使っているから、魔力の充填には時間がかかるかもしれないけれど、こうして魔法を使い続けていれば、魔力を充填する容量が大きくなるんだから、その点も考慮して欲しいわね) ああ言えばこう言う奈里佳であった。「なるほど、そう言われればそうですね……」 クルルもさっきまでの意見はどこへやら、ポンッと手を打ち鳴らせて納得する。(でしょ? 例のフューチャー美夏っていう敵もいることだし、魔力容量を大きくしておかないと、まともに戦えなくなっちゃうわよ) ここぞとばかり奈里佳は主張した。(というわけで、克哉ちゃんのアソコは、女の子のままが良いと思う人は手をあげて♪) 奈里佳がそう言った途端、克哉の両手が、克哉の意思とは別に、急に上に持ち上がり、ピンと手があげられたのだった。「手が……、手が、勝手に上がる! ああっ、もしかして奈里佳だな!? こら、何してるんだよ。ずるいぞ!!」 自分が手をあげてない以上、克哉の手をあげているのは奈里佳しかいないと正しく洞察した克哉だったが、だからといってどうにもならないのであった。 結局、上がった手は、クルルの右手に、克哉の両手の計3本であった。(全員一致っと! それじゃあみんなが賛成してくれたということで、克哉ちゃんのアソコは、しばらく女の子のままということで決まりね♪) 奈里佳は、この場を強引に納めようとしている。そう感じた克哉は、最後の気力を振り絞り、抗議の声をあげた。「今のは無効だ! 僕の手は奈里佳に操られていたんだ!」 往生際が悪い克哉だった。「あのう、克哉君。たとえ克哉君の片手が上がらなくても、僕と奈里佳ちゃんの手は上がっていたわけですから、どっちにしろ2対1で、克哉君のアソコは女の子のままなんですけど……」 申し訳なさそうにクルルが指摘する。「ガーン。そう言えばそうだ……」 ショックを隠せない克哉。(もう、さっきからごちゃごちゃとうるさいわねえ。あんまりうるさいと、もう二度と元に戻してあげないわよ!! いい? 分かった!?) その言葉を聞いて、克哉は、自分がとんでもない罠の中心部に入り込んでしまったことを自覚した。(さてと。じゃあ話もすんだし、そろそろ着替えてご飯にしましょ! あっそうそう、克哉ちゃん。学生服をセーラー服に変えてあげようか? アソコが女の子なんだから、スカートのほうが、トイレの時なんかは何かと便利よ) あっけらかんと奈里佳はそう言ったのだが、それを聞いた克哉はとうとう切れてしまった。「あああ、こんなんばっかりーーーっ、もういや! こんな生活!」 こうして克哉の苦悩は果てしなく続くのだった。がんばれ、克哉。がんばれ、奈里佳。世界の運命は君たちの手にかかっているのだ! 全然そうは見えないけど……。
Aug 22, 2004
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第3章 トラウマ「え~ん。こんなんばっかりーーーっ」 克哉のアソコが、奈里佳の魔法で男の子のアレから女の子のソレへと、変化させられてしまった! というわけで、克哉君改め克哉ちゃんは、洋式の便器に座って用を足していたのだったが、出るのは黄色い液体だけではなく、ため息や叫び声、そして愚痴もいっぱい出てくるのであった。(む~~、せっかく便器の外に飛び散らかさなくても済むように女の子にしてあげたのに、怒ることないでしょ? それに変身させたのはアソコだけで、その他の外見は元のままで変わってないんだから、それでい~じゃない♪) 気持ちが沈み込んでダウン寸前の克哉に対して、あっけらかんと明るい奈里佳。もう既に勝負はついている。「そんなこと言ったって! どうするんだよ! これじゃ学校でトイレにもいけないじゃないかぁ~……」 既に半分涙声で訴える克哉ちゃん♪(何言ってるのよ。男子用のトイレの大のほうに行けば良いだけじゃない。立ってするよりも個室でゆっくりと落ち着いて出来るんだから、もっとうれしがりなさいよね) 奈里佳の勝手な理屈は続く……。しかし克哉の脳裏には、小学生時代の暗い思い出が走馬燈のように次々と現れてきたのだった。 小学生時代の暗い思い出。それはトイレ絡みの事件だった。いつもは学校に行く前に家でしっかりと大きなほうのトイレも済ませてくるのだが、ある日、どうがんばっても出ない日があった。時間もなくなり、しょうがないのでその日は大きなトイレはパスして学校に行ったのだった。 まあそれだけだったらなんの問題もなかったのだが、そうは問屋が下ろさなかった。昼になって給食を食べた後、克哉はトイレの個室から強烈なお誘いを受けたのだ。早い話が……、我慢出来なくなったのである。 というわけで昼休みにトイレの個室に駆け込んだ克哉だったが、クラスメートの男子にそれを目撃されてしまったのだ。小学生の男子にとって、学校で『う○こ』をするのはとても恥ずかしいことで、それをした者は極端な話、イジメの対象にすらなってしまうのだ。 事実、克哉はそれからしばらくの間、『う○こ野郎』と嬉しくないニックネームで呼ばれることを受け入れなくてはならなくなった。さすがに人の噂も75日で、やがて全ては事件前の状態に戻っていったのだが、克哉の心に大きな傷を残したのは間違いがなかった。 ちなみに現在、克哉が一番の友人だと思っている佐藤雄高(さとう・ゆたか)は、そういう状態の中でも克哉といつも通りに接してくれた唯一のクラスメートだったのだ。もっとも単にクラスのみんなが克哉をいじめていることすら気がつかなかったという、単なるおばかさんだったということなのだが、知らなきゃ知らないで幸せなので、まあここは黙っておこう。 さて、話を戻して……。(ほらほら、ちゃんと拭いて拭いて。女の子の部分はデリケートなのよ) 頭の中で奈里佳の声がする。それを聞きながら、克哉はとんでもなく情けない気持ちになりながらティッシュペーパーを適度なサイズにちぎりだした。克哉だって、女の子は、し終わった後には拭くものだということはちゃんと理解している。まあ、実践するのは初めてだけど……。「ううっ、何で僕が……」 自分の不幸を呪いつつ、ちぎったティッシュを今できたばかりの慣れない部分に押し当てて、しずくをきれいに拭き取ろうとした克哉だったが、ふと目にしたそこから視線を逸らすことが出来なくなってしまった。「本当にアソコだけ女の子になっているんだ……」 いつもなら、身体から伸びているはずの突起物が無いすっきりとした股間は、自分の身体なのにも関わらず、やけに綺麗に見えた。上から見下ろした股間には、まだうっすらとしか毛が生えていない“ぷにっ”と盛り上がった丘が見えるだけで、さらにその先には男の子にとっては未知の形があるはずなのだろうが、それは隠されていて見えなかった。構造上、鏡でも無い限り直接見ることは出来そうにない。 克哉はその部分が気になってしょうがなくなってきた。克哉も過去に2回奈里佳に変身したことがあるのだが、いつも着衣のままだったので、こうして直接アソコを見る機会は初めてなのだ。(そんなにもアソコが気になるなら、固まってないで、さっさと触っちゃえば? 誰も文句言わないわよ) 軽い口調の奈里佳。なんとなく楽しんでいるのが感じられる。「さっ、触っちゃえばって!! そんな!!」 克哉は完全にうろたえた。 声も裏返って、妙に高い声が出てしまう。奈里佳に自分の心の中を完全に見透かされているような気がして、恥ずかしさがどんどんと高まってくるのだ。(そんなに恥ずかしがらなくても、アソコが女の子になっちゃった以上、克哉ちゃんは今はもう女の子なのよ。女の子が自分のアソコを触っても全然平気。おかしくなんかないじゃない♪) くすくすと笑い声が聞こえるような錯覚を覚えつつ、克哉は奈里佳の言葉を呆然と聞いた。「そうか……。今の僕って女の子なんだ!?」 今さらながらに確認する克哉。もしかして“おまぬけさん”かも……。(当たり前でしょ。アソコ以外は今まで通り男の子の身体だけど、アソコが女の子なんだもん。これを男の子だって言える?) 反論出来るなら言ったんさい。という雰囲気で質問に質問を返してくる奈里佳。克哉が何も言ってこないのを確認すると、奈里佳は言葉を続けた。(ほらほら、おしっこした後はちゃんと拭かないと駄目でしょ。いつまでしずくをたらしてるつもりなの? 早くすませて朝ご飯にするわよ。お腹が空いて死にそうなんだから。……というわけで、さっさと拭く!) 奈里佳の強い口調に押されて、克哉もいよいよ覚悟を決めた。「じゃあ、拭くよ……」 そう宣言すると、克哉はティッシュを持った手を、そっと伸ばしたのだった。そして無事に拭くべき場所に接触し、しずくを拭き取ることに成功したかと思えた瞬間、その手は克哉が認識していた身体の表面よりもほんの少しだけ中に入ってしまった!! イメージ的には『にゅるんっ♪』という感じだろうか。初めてそこに触ったので、感覚がうまくつかめなかったのであろう。「えっ!? な、中に入った! うわわわっ!!」 やはり本来は健康いっぱいの男子中学2年生。女の子の部分の不思議な感覚に焦ってしまい、しばらくまともな反応が出来ないのであった。やれやれ。これから先1週間、大丈夫か? それから数分後、なんとかパニックも収まりトイレの中でするべきことは全てし終わった克哉は、立ち上がってパンツ、正確にはオレンジ色のトランクスをいつものように上に引き上げて、きちんとはいたのだったが……。(どうしたの? 動きが止まっちゃってるわよ?) 不審に思った奈里佳が訊ねてくる。「パンツが食い込んで痛い……」 これ以上情けない声は出せないぐらいの声で、克哉は奈里佳に訴えた。(ははあ、なるほど。確かにこのトランクスの生地じゃあ、食い込んで痛いわね) 奈里佳も納得の声をあげる。「うーん。そうか、女の子のアソコってこんなにも敏感なんだ。……どうしようかな。前にはいていたブリーフでも出してはこうかな? トランクスよりは痛くないだろうし……」 股間の微妙な痛さに悩んだ克哉は、それなりに考えた末にそう言ったのだが、奈里佳の意見は違っていた。(ちょっと克哉ちゃん! 何バカなこと言ってるのよ! 男物のブリーフなんて駄目に決まってるでしょ。女の子は女の子らしい下着を着けるの。これ常識よ!) 強く主張する奈里佳。「駄目! 却下! それだけは駄目!」 こればかりは、克哉も反対の意思を強く、強く、主張した。やはりアソコが女の子になってはいても、心は完全に男の子。しかもアソコ以外の身体は完全に男の子の外見のままなのだから、克哉の意見も分からないではない。 というわけで出来るのなら、作者も克哉の意見を採用したいところだが、やっぱり最終的には奈里佳の意見に従ってしまう作者なのだった。(だって奈里佳の言うこと聞かないと、後でナニされるか分かんないんだもん。ゴメンね。克哉ちゃん♪ by作者)(克哉ちゃん♪ 遠慮するのは良くないわ。じゃあ、私の魔法でトランクスをかわいいショーツに変えてあげるから感謝するのよ♪) やはり克哉の意見は聞き入れられなかった。そして奈里佳は、克哉のトランクスを今にも魔法でショーツに変化させようとしたとき、克哉が最後の抵抗を試みた。「そんなことさせないからね。もしも僕が、その……、ショ、ショーツなんかをはいてることが誰かにばれたら、みんなから変態扱いされていじめられちゃうじゃないか。もしも僕にショーツをはかせようなんてしたら、いくら奈里佳だって許さないからね!」 克哉は一気にそう言うと、奈里佳の反応を待った。(あっそう。そういうことを言うわけね。ふ~ん、そう……) 奈里佳の口調は急速に氷点下にまで低下した。「なっ、なんだよぉ~っ!?」 さっきまでの勢いはどこへやら、アッという間に克哉の強気はしぼんでしまった。まるで蛇ににらまれたカエルである。どうやら克哉、気持ちの上で完全に奈里佳に負けている。(あくまでもショーツをはかないって言うのなら、私にも考えがあるわよ~~) 奈里佳は、まるで地獄の底から響いてくるような声(?)で、克哉を脅した。「ふっ、ふん! なにされても、はかないものは、はかないからね」 克哉最後の抵抗……。しかしその声は震えていた。(克哉ちゃん♪ ショーツをはいてくれなきゃ……) 地獄の底の悪魔の声から、一転して天使の声に切り替えた奈里佳は、ゆっくりと話し出した。可愛らしい声(?)だけに、よけいに迫力が感じられるのは気のせいだろうか?「はいてくれなきゃ……、何だっていうんだよ……」 完全に怯えた声を出す克哉。情けなさ200%である。(はかないのなら……、魔法で今すぐ生理にしちゃうわよ!!) とうとう奈里佳は、最後の切り札を口にした。克哉の頭の中にフルボリュームの声(?)が克哉の頭の中でエコーを伴って響いている。「えっ!? 生理って、あの生理? 女の子の……」 さすがに中学2年生ともなると、女の子の生理とはなんたるものかということを完全に理解している。克哉は顔を真っ赤にしながらそう言ったのだが、その後急速に顔は青ざめていったのだった。(そうよ。その生理よ。知ってるでしょうけど、生理になったら女の子は色々と処置をしないといけないから、トランクスのままではいられないわよ。生理用のショーツなんてものもあるんですからね。それをはきながらさらにナプ○ンや、タン○ンを使わなくちゃいけないのよ) 壁際に追いつめられた克哉を、言葉でいたぶる奈里佳だった。「ナ○キンにタ○ポンって、なんで僕がそんなのを!?」 衝撃のあまり、大声を出してしまった克哉は、そこまで言うと、両手で口を押さえるのだった。(さあ、おとなしく普通のショーツをはくか、それとも生理になって生理用ショーツを仕方なくはくか? どっちか選びなさい! 10秒だけ待ってあげるわ) 問答無用、聞く耳持たぬの態度もあらわに、奈里佳はそう言いきると、カウントダウンを始めた。しかもどっちに転んでもショーツをはかされるのだから、凶悪な質問である。
Aug 21, 2004
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「あ~、も~、びくりした。もしかして奈里佳!?」 そう言いながら克哉はトイレットペーパーをくるくると丸めると、トイレの床に飛び散った液体を拭き取りはじめた。すると、また頭の中に声が聞こえてきたのだった。(他に誰がいるっていうのよ。とうぜん奈里佳ちゃんに決まってるじゃない♪) 間違いなく頭の中に響く声(?)は、克哉が変身してさらに変心した時に出てくる魔法少女な人格の奈里佳の声そのものだった。「やっぱり奈里佳だったんだ……。夢じゃ無かったんだ。そうだ! 昨日の晩は突然だったし、最後は魔法で眠らされちゃったから聞けなかったんだけど……、その……」 床の汚れをほぼ拭き取った克哉は、頭の中の奈里佳を相手に話し出した。もっとも頭の中の人格を相手に話をするということに慣れていないので、どうにも勝手が違って話しづらい。(う~~、ごちゃごちゃと前置きが長いわよ! 聞きたいことがあるならさっさと聞きなさい!!) 克哉のもたくさしたしゃべり方にイライラしたのか、奈里佳は怒り出してしまった。さすがにわがままでタカビーな性格の奈里佳である。「もう、怒らないでよ。よけいに話しづらくなるじゃないか。……ええと、まず聞きたいことは、僕と奈里佳は結局どういう関係なの? 僕が変心したのが奈里佳だと思ってたけど、こうして話が出きるということは、僕とは別に奈里佳がいるってことなの?」 克哉は床を拭いて汚れたトイレットペーパーを便器に放り込んで、水を流しながら質問した。ゴポゴポゴポ…… 克哉の質問に対して、奈里佳は無言で答える。静かなトイレの中、水の音だけが響いていた。やがて沈黙に耐えられなくなったのか、克哉が沈黙を破った。「ねえ、僕と奈里佳は同一人物なの? それとも別人格なの? 僕には分からなくなっちゃったんだけど、知ってたら答えてよ」 水洗タンクに流れ落ちる水で手を洗いながら、克哉は再度質問を繰り返した。(まったく……。克哉ちゃんったら、まるで分かってないのね。これで私と同一人物っていうんだから嫌になっちゃうわよ。ホント) 呆れた口調(?)の奈里佳。「しょうがないだろ。僕には魔法のことなんか分からないんだから。で、結局僕と奈里佳は同一人物なわけ? でも人格は違うじゃないか。どういうこと? おかしいよ。同一人物なのに別人格って、もしかして僕って二重人格になっちゃったの?」 克哉はわけがわからず、困惑いっぱいの表情を浮かべた。(そもそも、二重人格って言っても、人格Aと人格Bは同一人物であるってことは理解できるわよね?) 克哉相手にいつまでも呆れてはいられないと思ったのか、奈里佳は説明を始め出した。「うん。それは分かる。だから、今の僕と奈里佳の関係って二重人格なの? でも僕と奈里佳の人格が同時にでてきてるんだけど、こんな二重人格ってあるのかな? こんなの聞いたこと無いんだけど……」 克哉は、自信なさそうに言葉をにごした。(二重人格って言うと、なんとなく否定的なイメージがあるじゃない? そういう意味から言ったら、私と克哉ちゃんの関係って、二重人格じゃあ無いわね。二重人格の場合における第2の人格って、抑圧された心、抑圧された人格が表面に出てきたって感じよね) 明るく説明する奈里佳。「うーん。奈里佳って、僕の抑圧された心なの?」 奈里佳の話を聞いて、部分的にしか理解出来なかった克哉は、そう言った。(だぁぁーーっ、いったい何を聞いていたのよ。私が、あんたなんかに抑圧されるような心だと思ってんの?) 奈里佳の声に棘が混じってきた。「ごめん……」 強気に出てくる相手には、とても弱い克哉だった。(まあいいわ。説明してあげる。私、奈里佳は克哉君の心がこうなっていたかもしれない1つの可能性そのものなのよ。抑圧されていた心じゃないの。可能性なのよ。分かる?) 胸を張って(?)話す奈里佳。姿は見えなくても、威張っているのがハッキリと感じられる。「可能性か……。言ってみれば肯定的な二重人格ってところなの?」 あくまでも二重人格のイメージから逃れられない克哉であった。(……まあ、その理解で、まったくの間違いって、訳でもないから、まっいっか♪) 軽いノリの奈里佳。確かにこの軽さは、二重人格のイメージからはちょっと遠いかもしれない。(それでね、どうして普通の二重人格と違って、私と克哉君の2つの人格が同時に出ることが出来るかって言うと、パソコンを想像してみてよ。同時に2つや3つのウィンドウを開いて同時並行で処理が出来るでしょ。コンピューターの能力が低ければ、いくつも同時に作業をさせれば処理が遅くなるけど、それなりに能力が高ければ大丈夫でしょ?) 奈里佳はごく簡単にそう説明した。「つまり、それってどういうこと……」 克哉はあまり分かってないようだ。(もう、ニブイわね! 私、つまり奈里佳に変身することによって克哉ちゃんの魔力がアップしてきてるのよ。というわけで、ふたりの人格が同時に出てこれるってわけ♪ おわかり?) どう? 分かったでしょ? という雰囲気で説明をうち切った奈里佳。「うーん、分かったような分からないような……」 ハッキリしない克哉であった。まあ、奈里佳の説明を聞いて分かるほうがおかしいのかもしれないが……。(もう、いつまで経ってもハッキリしないわね! それよりも克哉ちゃん。おしっこの途中じゃなかったの?) いきなり話題を切り替えた奈里佳。そしてそう言われたほうの克哉も、途中で止めていた尿意が強烈にぶり返してきたのだった。「うっ、そう言えば、途中だった……」 慌てて、もう一度、放水の体勢をとろうとする克哉だったが、奈里佳がそれを押しとどめた。(ちょっとストップ! また変な所に飛ばされるの嫌だから、座ってして頂戴♪) なぜか嬉しそうに話す奈里佳。「えっ、なんで! もう漏れそうなんだけど……」 焦る克哉、既に漏れそうどころか、ちょっと漏れてるかもしれない。(いいから黙ってパンツを下ろして座りなさい!) 奈里佳の迫力ある声(?)にびびった克哉は、そのまま素直にパンツを下ろすと、洋式の便座に座ったのだった。ちょっと情けないかも……。「もう、うるさいなあ。これでいいんだろ」 奈里佳という自分の中の別人格が相手だけに、そんなに恥ずかしいという感覚もなく、下半身をむき出しにした克哉であった。意外と思い切りがいいのか? それとも単にもう我慢の限界で、恥ずかしがる余裕もなかったのだろうか?(よしよし、それでいいのよ。じゃっ、早速いきましょうか? ふふ、部分変身~~♪) 克哉が便座に座ったのを確認した奈里佳は、何かの魔法を発動させた。その瞬間、克哉は奈里佳に変身するときに感じるような感覚をその股間に感じたのだった。 まずパーツが2つあるもののほうの大きさがみるみると小さくなってきたかと思うと、そのまま身体に吸収されて無くなってしまった。そして飛び出た棒状のもののほうも小さく豆粒大に縮んでいったのだった。そして仕上げに今までそれがあった場所よりもややずれたところの皮膚が身体の内側に織り込まれていくとともに、しっとりと濡れて柔らかい肉壁に囲まれたスロットを形成していったのだった。こうして克哉が持っていた男の子だった部分は、奈里佳の魔法で完全に女の子の部分へと変化した。「あわわっ! わっ、わっ~~!!」シャーーーーーッ! そしてそれまでなんとか我慢していたおしっこは、男の子と比較するとはるかに弱い括約筋へと変化した女の子のそれではせき止めることが出来なかったので、一気に勢いよく放出されたのだった。(どう? アソコだけ女の子にしといたげたのよ。これならもう便器の外に飛び散る心配もないってわけ。感謝してよね♪) 自慢そうな口調の奈里佳。ふふふんっという鼻息が聞こえてきそうである。「ちょっと、駄目だよ~、元に戻してよう~」 すっかり出し切って力が抜けた克哉は、涙声で奈里佳に訴える。(いいじゃない、そのままで。どうせ一週間後に私に変身してから魔力を使い切ったら、ちゃんと元に戻るわよ。それに変化したのはアソコだけで、それ以外のところは克哉ちゃんの身体のままなんだから、裸にならない限りばれないわよ♪) 元に戻すつもりはまったくない奈里佳であった。楽しんでいるね。奈里佳ちゃん。「え~ん。こんなんばっかりーーーっ」 下半身をむき出しにしたまま、克哉君。……いや克哉ちゃんは途方に暮れたのだった。あっ、そうそう、トイレから出てくる前にちゃんと拭いてくるんだよ。忘れずにね♪ こうして、大波乱の一週間は幕を開けたのだった。
Aug 20, 2004
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第2章 目覚め、そして変身?「アサダゾ! オキロ! アサダゾ! オキロ! ……」 目覚まし時計が、電子音声で朝の起床時間が来たことを告げる。情け容赦ない大音量で喚き続ける目覚まし時計に負けて、布団の中で克哉は目を覚ました。「うっ、うーーん。もう、朝か……」 まだ完全には目覚めていない頭で『目覚ましを止めなければ……』と思った克哉は、布団をかぶったまま右手だけを出すと、手探りで目覚ましを止めた。「オハヨウ! キョウモガンバルゾ!」 スイッチを押された目覚まし時計は、最後の一言を言って沈黙した。一方、克哉はというと、そのまま右手を目覚まし時計の上に乗せたまま、動きが止まってしまっていた。それというのも昨夜の夢のことが思い出されてきたからだった。(……昨日見た夢……。世界の結晶化と崩壊のビジョン……。アレって本当のことだったのかな? それともやっぱり単なる夢だったのかな……?) しばらく考えていた克哉だったが、記憶が混乱しているため昨日のことが夢だったのか、それとも現実のことだったのかが判然としない。それというのも克哉の別人格である奈里佳の魔法によって強制的に眠らされたことが影響しているのだが、まだ克哉はそのことを思い出していない。(まあいいか、とにかく起きよう) 考えがまとまった克哉は布団から起きあがった。畳の上に敷かれた布団の上にはクルルが丸くなって寝ている。まるで猫のような格好をしているが、これでも未来にある魔法の国、ネビルからやってきた魔法生物(?)であるのだった。「おはよう。クルル。ねえ、昨日のことなんだけど……」 クルルの姿を目にした克哉は、昨晩の出来事が夢だったのか現実のことだったのかを聞こうとして、クルルに呼びかけた。ついでにクルルの背中に手を当ててゆすってみる。「ZZZzzz……」 しかしクルルは目を覚ます気配がない。「クルルってば! ねえ、起きてよ!」 クルルを起こそうと、克哉は大声で呼んでみた。手でゆするだけではなく、ちょっと頭を叩いてもみたが、クルルはいっこうに起きる気配がない。「もうっ、しょうがないなあ、昨日のあれ、世界の結晶化と崩壊のビジョンのことをもっと詳しく聞きたかったのに……」 どうやっても起きそうにないことを確認すると、クルルを起こすことをあきらめた克哉は、パジャマ姿のままトイレに行くことにした。もよおしてきていたということもあるのだが、それ以外にも元気な男の子なら誰でも朝起きたときに経験するアレ、あの状態を元に戻す為ということもあった。うん、元気なことは良いことだ。 ちなみに今、克哉が来ているパジャマは、黄色や赤を主体としたデザインだ。母親の弓子いわく、こういう暖色系の色を使ったパジャマのほうが、ぐっすりと眠れるし健康にも良いらしいということだ。本当かどうかはしらないが、母親がそう思っている限り、克哉が着るパジャマは男の子が着るにはちょっと可愛らしすぎるデザインのものが多くなるのは、いたしかたないと言える。 クルルのことはとりあえず放っておいて、克哉は自分の部屋の外に出た。一人っ子である克哉は、小さな頃から今に至るまで、個室を与えられているのだ。 「とうさん、おはよう」 部屋から出た克哉は、既に出勤しようとしている父親、範彦(のりひこ)に挨拶をした。「おはよう。ようやく起きてきたな。昨日も大変だったらしいな。町中の人がお嫁さんになったとテレビで言ってたけれど、やっぱり克哉もお嫁さんになっちゃったのか?」 玄関のドアに伸ばしかけていた手を止めると、範彦はこれまた興味津々の顔つきで克哉に質問をした。「えっ、う、うん。やっぱり……、みんなと同じで、お嫁さんに……、なっちゃった」 実は、克哉はお嫁さんには変身していない。確かに昨日は、城南中学教師、花井恵里32歳・独身が変身したウェディング“快人”ヘイアーンのライスシャワー攻撃によって、町中の人々はことごとくお嫁さんに変身させられたのだが、克哉自身は魔法少女♪奈里佳に変身しただけなのだ。というわけで、克哉は一瞬、返答に詰まって言いよどんでしまったのだ。「ほほう、そんなに恥ずかしがらなくても良いじゃないか。今回もみんなで変身したんだろ?」 克哉が言いよどんだのは、恥ずかしさの為だと誤解した範彦は、うりうりと克哉のことを肘でつつきだした。まったく明るい父親である。「違うよ、そんなんじゃないってば……」 言葉とは裏腹に、とても恥ずかしそうな雰囲気の克哉である。父親にからかわれること自体が恥ずかしいのだった。「しかし、なんだな。今回も例によって写真の一枚もないんだろ……。まったくもったいない。……そうだ! 克哉にデジカメを買ってきてやるから、今度変身したら、しっかりとそれで写真を撮っておきなさい。よしよし、そうしよう♪」 ひとり納得して、とても楽しそうな範彦。もしかするとここ中津木町とその周辺の各家庭で同じような光景が展開されているかも知れないと想像して、克哉はくらりとめまいがしてくるような気がしたのだった。「あなた、早くしないと遅刻しますよ」 玄関での会話を聞いて、台所から母親の弓子が出てきた。「おっ、しまった。電車に間に合わなくなる。じゃあ克哉、デジカメ買ってくるからよろしくな。いってきます」 弓子の一言で、腕時計の時間を確認した範彦は、慌てて出勤していった。「いってらっしゃ~い」 複雑な表情を浮かべたまま、克哉は手を振りつつ、お気楽な父親を見送った。このぶんでは本当に写真を撮らないといけないようだ。しかし克哉は今後も奈里佳には変身するだろうが、みんなと同じ姿に変身する事はないはずなので、写真を撮ることは出来ないのではないかと思っていた。「克哉、早く、顔を洗って来なさい。もう登校の時間まで余裕は無いわよ」 ちょっと考え込んでボーッとしていた克哉に、母親の弓子は声をかけた。弓子もまた働いているので、朝は時間が無いのだった。「わかった。トイレに行ってから洗うよ」 そう返事をしつつ、そそくさとトイレに入ろうとする克哉。そう言えば、まだ男の子の部分は元気なままだったので、その部分を弓子に見られたく無い克哉であった。「早くしなさいね。もう時間、あまりないわよ」 そう一言だけ言い残すと弓子は台所に戻っていった。残された克哉は玄関のすぐ脇にあるトイレに入ると、出すべきものを引っ張り出し、そのまますべきことをし始めたのだったが……。(へええ~、朝、起きたばかりの時は、ここはこうなってるんだ♪) 克哉の頭の中で声がする。それも女の子の声だ。「わわっ! 誰だ! あっ! あぁ~~!」 大声であわてふためく克哉。慌てすぎて狙いがはずれてしまい、ジョロロロロ……と、便器の外に黄色い液体が飛んでいく……。(あっ! きったないわねぇ~! これだから男の子って嫌なのよ!) 克哉の頭の中の声は、可愛らしい声ながらも、口汚く克哉を罵った。そして克哉はというと、慌てふためきながらも、これ以上被害が拡大しないようにと、ピタッと“止めた”のだった。 女の子は尿道が短いこともあり、かなり括約筋が強くないと途中で止めるのは難しいのだが、男の子の場合は尿道が長いことや、その尿道が“いろいろなもの”にとりまかれていて丈夫な作りになっているので、誰でも比較的簡単に途中で止めたり出したりが自由自在に出来るのだ! ……って、誰でも知ってるか。
Aug 19, 2004
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「そんなこと言っても……、僕……」 クルルに励まされても、克哉の心は晴れなかった。けっして世界の結晶化とそれに続く世界の崩壊から目をそらして日常に逃げ込みたいと思っているわけでは無い。むしろ、何とかしなくちゃという想いのほうが、既に今は強くなっている。 それもそのはず、魔法少女♪奈里佳に変身していた最中の記憶はほぼ完全な形で克哉にも残っているし、つい今しがた、世界崩壊のビジョンを見たばかりでもある。克哉、つまり魔法少女♪奈里佳の働き次第で、この世界も含めた全てのパラレルワールド全体で構成されているという時空球が崩壊して消滅するかどうかがかかっているのだ。使命感は並大抵ではない。 しかし、それだからこそ、もしも自分が失敗してしまったらというプレッシャーは重い。そのプレッシャーが今、克哉を苦しめているものの正体だった。「僕なんかに、出来るのかな……。世界を結晶化と崩壊の危機から救うなんてことが……」 答えの出ない問いかけを自分自身にする克哉。そのまま鬱々とした状態が続くかと思われた瞬間、克哉の頭に元気いっぱい、はじけるぐらいに明るい声が響いてきた。(だあぁぁ、我ながらこの克哉君っていう男の子の心が、私の心の一面っていうのが信じられないわね! ちょっと克哉君! あなたも私なら、もっと元気を出しなさい。世界の危機を救うのが失敗したらどうしようかなんて考えてもしょうがないことは考えなくてもいいじゃない!) なんと、その声は克哉の心が“変心”したときに現れる克哉のもう一つの人格、魔法少女♪奈里佳だった。(心配なんてものは、心配すべき状況が起きてから心配すればいいのよ。まだ失敗してないんでしょ? だったらそれでいいじゃない。それに世界の崩壊を救うことに失敗しても、世界が崩壊してるんだから、誰も克哉君のことを非難したくても出来ないわよ。おわかり? じゃあそういうことで!) ちょっとぶっ飛んだ理屈で、克哉を励ますだけ励ますと、奈里佳の心はそのまま消えてしまった。「!? クルル……、今のはいったい何だったの」 思わずクルルに質問する克哉。しかし、クルルには奈里佳の声が届いていなかったらしく、きょとんとするクルルだった。「えっ、何のことです?」 クルルの返事を聞いて、克哉は今、奈里佳の声が聞こえてきたことをクルルに説明した。「……というわけなんだけど、今の声、本当に奈里佳のだったのかな?」 自信なさそうにそう言うと、克哉はクルルの顔を見つめた。「奈里佳ちゃんの心は、克哉君の心の無意識領域に、今現在も存在しています。きっと克哉君の魔力が活性化してきたことによって、奈里佳ちゃんの心も活性化してきたんだと思いますよ」 考えた末、クルルは一応の結論を口にした。「それじゃあ、これから僕はどうなるの。僕が奈里佳に変身しなくても、奈里佳の心が出てきちゃうの?」 克哉は、まさかそんなことは……、と思いながらクルルに質問した。「あり得ますね。克哉君の潜在魔力と、奈里佳ちゃんの魔力を考えると、変身しない通常の状態でも、やがて奈里佳ちゃんの心が現れるようになるんじゃないでしょうか」 クルルは腕を組みながらそう言った。「じゃあ、もしかして、僕は二重人格みたいになっちゃうの!? 僕の心と奈里佳の心の2つに……」 克哉は情けない声でそう言うと、自分の頭を抱えるのだった。「二重人格と言うよりも、精神同居ですね。でもそんなに心配する事はないと思いますよ。奈里佳ちゃんの影響で、克哉君の魔法力も徐々に開発されてくるはずです。充分に克哉君の魔法力が開発された暁には、奈里佳ちゃんの心と克哉君の心は融合するんじゃないでしょうか……?」 とんでも無い結論を言うクルル。「そんな! そんなことがあるなんて!?」 全力で否定したい気持ちになった克哉。自分の心が奈里佳の心と融合するというのは、とても異常な事態に思えたのだった。「そんなに驚かなくても、元々奈里佳ちゃんの心は克哉君の心が、こうなっていたかも知れない可能性の1パターンですからね。最終的には融合するのが当たり前です」 ビシッと、指の無い手で克哉の顔を指さしながら、クルルはそう断言した。「そんな、嘘でしょ~~」 ますます情けない声になる克哉。その時、またしても奈里佳の声が克哉の頭に響いたのだった。(嘘じゃないわよ。これからも時々おしゃべりしてあげるから、よろしくね♪ あっ、そうそう、夜更かしはお肌に悪いから、もう寝てくれる? あっ、興奮して寝られないのね。じゃあ魔法で眠らせてあげる♪ 3・2・1……、はいっ!) 奈里佳の心がかけた魔法(?)により、克哉は急激に眠くなってくるのだった。「あっ、待って……。ZZZZ……」 こうして奈里佳の心が出現したことにより、いつの間にか世界を結晶化と崩壊の危機から救うというプレッシャーから解放されていた克哉は、深い眠りについたのだった。「しかし、これはおもしろいことになってきましたね。変身しなくても奈里佳ちゃんの心が表面化してきたとは……。やはり克哉君の魔法力は並はずれていましたか……。克哉君なら、本当にやってくれるかも知れませんね」 クルルはそう言うと、克哉に邪魔された睡眠を再開したのだった。 それにしても奈里佳の心が表面化してくるとは……。明日はいったいどのような日になるのであろうか。世界を救う使命を持った正義の魔法少女♪奈里佳。その心を持つ矢島克哉。こうして役者は揃ったのだった。
Aug 17, 2004
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第1章 ビジョン 空一面、赤黒くてどんよりした雲に覆われている。そんな空の下、矢島克哉(やじま・かつなり)はなぜか空中に浮かんでいた。頭がぼんやりとしてうまく働かないので、自分の今の状況がつかめない。しばらくそのまま浮かんでいた克哉だったが、やがて風にでも流されるようにゆるゆると前に進んでいった。 眼下にはこれまた暗く沈んだ町並みが見える。しかも上空から見ているにも関わらず克哉の視界には、町の遠景とともに、同時に町中で生活している人々の姿が明確に見えていた。普通ではあり得ない視界である。たとえて言えば、多画面に分割されたマルチモニターを見ているような感じであろうか。「なんだか雰囲気が変だ……」 克哉は町中の人々に奇妙な点を見つけて、誰に聞かせる訳でも無いのだが、独白した。克哉が今見ている人々。彼らの姿は確かに人間であるのだが、よく見ると表情が無く、まるでマネキン人形が人間のマネをしているかのようだったのだ。 いや、むしろマネキン人形のほうが人形としての存在がハッキリしているだけかわいげがあるとも言える。今、町中で動き回っている存在……、それはやけに人間的な動きをするにも関わらず、あきらかに人間とは違った存在に見えた。何か背筋が寒くなるような醜悪な存在とでも言おうか? どことなく命の無いゾンビにでも似た人間であって人間ならざる存在……。見たいわけでは無いが、克哉は延々とそれを見続けていた。 そしてこのまま何も変化が無いかと思われたとき、克哉の視界の片隅に異変が映った。ビキビキビキビキッ 町のはずれの方角だろうか。赤黒かった景色の一部が、凍りつくような音をたてながら、氷の青さにも似た色に変化した。そして息をのむ間もなく、急速に青く変化した領域が広がってきたのだった!「!? これは……」 克哉が言葉を失っている間に、青い領域はみるみると視界全域に広がり、気づいた時には克哉以外の全てが、青く輝く氷のような結晶に変化してしまった。「もしかして……、これがクルルの言っていた結晶化現象!!」 奈里佳に変身していた時はともかく、変身前の自分自身としては初めて結晶化現象を目の当たりにした克哉だったが、克哉は、正しくその現象が何であるかを洞察した。と、同時にもやが晴れたかのように頭の中がクリアーになったかと思うと、克哉の身体はゆっくりと町中に降下し始めた。 眼下からずんずんと迫ってくる結晶化した町と人々……。しかしそのような状態になっているのにも関わらず、人々は普段と同じように歩き回って、お互いに喋りあっていた。「みんな……、みんな、自分がどうなっているのか気づかないのかな……。それに、あんなになっちゃってるのに、どうして動けるんだろう?」 やがて克哉は地面に降り立った。きょろきょろとあたりを見渡してまわりの反応を見てみるが、誰も空から降ってきた克哉のことを気にした様子は無い。見事なまでに無視されているのが分かる。「ねえ、ちょっと……」 結晶化した町の中で、結晶化してクリスタルの人形にしか見えない人々にこのまま囲まれている状態になんとなく不気味なものを感じ出した克哉は、とりあえず道行く人の1人の背中に声をかけてみることにした。「……」 しかし声をかけられた人は、完全に無反応だった。しかたがないので、克哉はその人のクリスタルな肩をポンッと手で叩いたのだったが……。ガラガラガラガラ…… 克哉がその人の肩を叩いた途端、青く結晶化していたその人は、叩かれた肩の部分にひびが入ったかと思う間もなく、そのひびが全身に広がり、一気に崩れてしまった。「ヒッ!?」 声にならない小さな悲鳴をあげた克哉は、目の前の様子をただ見守ることしかできなかった。そして結晶化していたその人は見る影もなく完全に崩壊たのだった。「まさか……、そんな……」 驚きのあまり言葉を無くした克哉は、その様子をただ見ていることだけしか出来なかった。そして、人ひとりが完全に崩壊したかと思うと、そのまわりの人々もまた、連鎖的に結晶の崩壊に巻き込まれて次々と崩壊していった。 人だけではなく、結晶化した建物や道路まで、ありとあらゆるものが崩壊し、そして結晶が崩壊したあとからは何もない虚無の空間が口をあけ、克哉を飲み込もうと……。・・・・・「わあぁぁーーーっ!!」 大声を出してガバッと布団から飛び起きた克哉。どうやらさっきまでの光景は夢だったらしい。まだ春だというのに、びっしょりと寝汗をかいている。心臓もドキドキと早鐘のように鼓動を打ち、息も荒い。「うにゅ~、どうしたんですか? 克哉君」 克哉が寝ている布団の上で身体を丸めて寝ていたクルルが、克哉の大声で目を覚ました。そのまま眠そうな顔をして、うにゅ~と質問してきたのだが、猫のぬいぐるみのような顔をしているくせに表情はむやみに豊かであるのがおかしい。「あっ……、クルル……」 克哉は言いたいことがいっぱいあるのだが、どこから話をすれば良いのか分からないまま、言葉を飲み込んでしまった。その様子を見てクルルは急にまじめな顔つきになると、一言だけ質問したのだった。「見たんですね」 余分なことは何も言わない質問だったが、それだけで克哉には十分だった。「見た……」 対して克哉の答えも、余分な贅肉がひとつもなかった。しかしその一言の裏には、言葉では語り尽くせない想いが凝縮されていたのだった。「ねえ、クルル! あれはいったい何!? 町ごと、人も建物も全部、青い色をした結晶に変わってしまって、そして……」 そこまで話したところで、克哉は気分が悪くなり、身体が震えだしてきた。両手を交差させて自分の二の腕を掴んで自分で自分を抱きしめる体勢をとって、何とか身体の震えを押さえようとするのだが、身体は克哉の意志を無視してブルブルと震え続けた。「崩壊のビジョンを見たのですね?」 ぬいぐるみな外見に関わらず、極めて真剣な雰囲気で確認をするクルル。「ねえ、クルル……。あれが世界の結晶化とその崩壊なの!!」 口までもブルブルと震えてくるので、それだけを言うのにも渾身の力が必要になってくる。しかし一度、言葉が形になると、克哉の口からは次々と言葉が溢れてきた。「世界が、世界が消えてなくなっちゃうなんて。そんなことがあるのかと思っていたけど、あれは、あれは……。それに、どうして僕があんな夢を見なくちゃいけないんだよ! 僕はただの中学生なんだよ。僕には世界を救うなんて無理だよ。どうして僕が!」 既に涙を流しながらクルルに訴える克哉だった。なすべきことの重要性が今になって初めて理解出来た克哉は、本気で怯えだしたのだった。「克哉君。今、世界を救えるのは君だけなんですよ」 落ち着いた声で、ゆっくりと諭すように話すクルル。その顔はなぜか威厳すら感じられた。「でも、僕には無理だよ……」 力無く応える克哉、その顔はもう涙でぐしゃぐしゃである。「克哉君にはすごい力があるんですよ」 クルルはそう言うとじっと克哉の目を見た。「奈里佳のことを言ってるの? あれはクルルが僕を変身させたからで……」 克哉はさらに言葉を重ねた。その言葉ももう今にも消え入りそうに小さい。「それは違いますよ。確かに奈里佳ちゃんに変身させたのは僕ですけど、奈里佳ちゃんの力そのものは克哉君の力なんですよ」 なぐさめるような口調で克哉に話すクルル。その言葉を聞いているとちょっと気分が落ち着いてきた克哉だった。そしてそのまま克哉は、まるで女の子がぬいぐるみを抱きしめるように、クルルを両手で持ち上げるとそっと抱きしめたのだった。「でも……、僕ひとりじゃ世界を救うなんて出来ないよ。奈里佳に変身しなけりゃ何にも出来ないのに……、それに昨日はフューチャー美夏なんていう敵も出てきたし……」 弱音を吐く克哉だったが、クルルはそんな克哉を叱ろうとはせず、ゆっくりと諭しだした。「克哉君。奈里佳ちゃんに変身もしていないのに、どうして克哉君は世界の崩壊のビジョンを見ることが出来たと思いますか? 克哉君にも魔法を使う能力があるんです。それも僕が見たところ、かなりの潜在能力なんですよ。この時代に僕がやってきてから出会った人間の中で、克哉君が一番魔法適性があるんです」 そこまで言うと、クルルは克哉を優しい目で見つめた。
Aug 16, 2004
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