2007年05月の記事
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ブルカの内側から見た祖国★「カンダハール」
６年前、アメリカの侵攻によって崩壊したアフガニスタンのタリバン政権。女性は（医師になる場合は例外）教育を受けられない音楽は奏楽も鑑賞も禁止小鳥を飼うことは禁止男性は髭がはえていないと監獄に入れられ、髭が伸びるまで出所できない‥‥とまあ、日本では考えられないような禁止事項だらけの監視社会で、世界中から批難を浴びていましたね。そんなタリバン政権下のアフガンの姿を、亡命者の視点から創り上げたのが、アッバス・キアロスタミ監督と並ぶイラン映画の巨匠モフセン・マフマルバフ監督の名作「カンダハール」（'01年 イラン＝フランス）！カンダハール(DVD) ◆20%OFF！アフガニスタンからカナダに亡命した女性ジャーナリスト・ナファス（ニルファ・パズィラ）は、祖国に残した妹が、地雷で片足を失ったことに絶望し、２０世紀最後の皆既日食の前に自殺すると告げた手紙に驚き、妹を救うために、イランから国境を越え、妹が住むカンダハールを目指していた。複数の妻を持つアフガン人男性の妻というふれこみで、彼の家族と共に、幌馬車でカンダハールへと急ぐナファス。ところが馬車はゲリラに奪われ、ナファスは一人で国境を越えることに。途中、イスラム神学校を退学になったアフガン難民の少年や、かつてソ連と戦うためにアフガンに来て、今もこの地で診察を続けるムスリムのアメリカ黒人医師と出会い、地雷で命や身体の一部を失う人々、他のイスラム諸国でもありえない女性差別、規律にがんじがらめの国民、恐ろしく不十分な医療、貧困など、祖国の厳しい現実を、改めて目のあたりにした。カンダハールの近くに来ると、町の前には検問所。ナファスはブルカの女性ばかりの花嫁行列に紛れ込んで、検問所を突破しようとするが‥‥主演のニルファ・パズィラ自身が、アフガンからカナダに亡命した女性ジャーナリスト。冒頭、砂漠をバックに、彼女がカメラの前で、ブルカをかぶるシーンが非常に印象的でした。先進国の女性から見ると、顔を覆うブルカは女性差別、封建主義の象徴のようにも見えますが、激しい砂塵が舞う砂漠地帯では、目を守る必需品だそうです。しかし、ブルカをかぶった女性たちの姿は、見慣れぬ人々には異様に映りますね。途中、ナファスを乗せた大家族の幌馬車が行商人と出会い、アフガン人男性の妻たちが、ブルカをかぶったまま、タリバン政権下では禁止の化粧品を、興味津々手にとり、人目をはばかるようにマニキュアを塗るシーンが、なんだか痛々しく目に映りました。３日後の日食までに、なんとか妹が住むカンダハールへと急ぎ、激しい風と砂塵を顔や身体に受けながら、果敢に砂漠を歩くナファスの姿はとても勇ましく、清々しささえ感じました。タリバン政権が教育を受ける権利さえも奪った女性は、実はこんなにたくましいのだと、訴えかけているようでした。マフマルバフ監督は、この作品で、ことさら声高にタリバン政権批判をしているわけではありません。実に淡々と、むしろ静かなトーンで、タリバン政権下のアフガンの実態を撮っています。声高に批難の声をあげていないからこそ、この政権の歪みがよりはっきりとクローズアップされています。タリバン政権崩壊後も、治安の悪化など、混迷を続けるアフガニスタン‥‥どうにかならないものかと思います、ほんとに‥‥★モフセン･マフマルバフ監督作品★マフマルバフ・コレクション DVD-BOX(DVD) ◆20%OFF！
2007.05.31
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神から最も遠かった男★「復讐するは我にあり」
人間が本来持つ欲望を赤裸々に、そしてユーモラスに描いた名作映画を数多く撮り、カンヌ国際映画祭にてグランプリを２度も受賞、後世代の映画人の育成にも力を注いだ今村昌平監督がなくなったのは、今からちょうど一年前。今村昌平伝説巨匠イマヘイの訃報をテレビで知ったモイラは、つくづく思いましたね。「ああ、映画界の巨星が、またひとつ消えた‥‥」と。きょうは数ある今村監督の名作の中から、このすごい‥‥というか、一種狂気じみているとも言える作品をおとどけします！'79年度松竹の映画です。復讐するには我にあり（期間限定）長崎五島の敬虔なカトリックの一家に生まれながら、少年の時から神に背き、悪事を重ね、成人してからは詐欺罪などで、シャバと刑務所を行ったり来たり。そして何度目かの出所後、金ほしさについに人殺しまでしてしまい、おのれの欲望のままに詐欺と殺人を繰り返し、ある時は大学教授、またある時は弁護士と偽って、数人の女と関係を持ちながら日本列島を縦断するも、悪運つきて逮捕、最後は絞首台の露と消える神から最も遠かった男・榎津巌の波乱万丈の犯罪＆逃亡劇！日本中が高度経済成長に浮かれていた昭和38年から39年の間に実際に起こった連続強盗殺人事件を題材に、佐木隆三が書いた直木賞受賞小説の映画化。モイラは最初、原作の小説を読み、欲望のままに生きた主人公・榎津巌のすさまじさに、頭をガツンと殴られるようなショックを受けましたが、映画でも緒形拳が、悪魔の申し子のような榎津を、「くわ～～‥‥さすが名優！」と何度も頷くほど、それは上手に演じていました。オープニング、榎津が車で護送される時に歌う、昔の隠れキリシタンの歌オラショ♪まいろ～や～な、まいろ～や、はらいその寺にぞ まいろ～や～な～‥‥江戸時代のキリシタンたちが処刑される時に歌ったというこの歌‥‥榎津は死刑という逃れられない運命を察し、歌ったのでしょうか‥‥？榎津の父親（三國連太郎）と妻（倍賞美津子）が、神の教えに背いて過ちを冒しそうになるというサブストーリーは、原作にはありませんが、あえてそういう設定を加えたところが、イマヘイらしいですね。露天風呂で父親が息子の妻を抱こうとするシーンは、人間の業の深さ、罪の深さを象徴するようでした。また、殺人の前科を持つ老婆役の清川虹子が、主役の緒形拳に負けず劣らず、ド迫力！「本当に人を殺したことあるんじゃないの、このおばあさん‥‥？」とか思っちゃいましたね。この榎津巌という男、人を欲望のままに５人も殺しているのですが、映画を観ていて、なぜか憎めないんですね。あまりにも欲望丸出しで、「俺は天下の悪党ばい！」と開き直っているから、逆に変に親近感みたいなのが持てるのかもしれません。人は誰でも、榎津のような悪の部分があるかもしれない‥‥それに気づいていながら、気づかぬふりをして、生きているのかもしれない‥‥そう思わせるようなピカレスクの名作でした。
2007.05.30
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岩場に咲く一輪の花★「誰がために鐘は鳴る」
アメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイが自らの体験に基づいて書いた傑作を、自らキャスティングして1943年に製作された大作映画 For Whom The Bell Tolls 「誰がために鐘は鳴る」‥‥ゲイリー･クーパー、イングリッド・バーグマン‥‥ハリウッドの２大スターの豪華共演です！世界名作映画全集43 誰がために鐘は鳴る(DVD) ◆20%OFF！1937年のスペイン。クーデターで政権を握ったフランコの軍事独裁に、多くの人々が反発して戦い、国土は血で血を洗う内乱状態に陥っていた。諸外国からも義勇軍が、ファシズム打倒をめざす人々の応援に駆けつけ、大学でスペイン語教師をしていたアメリカ人・ロバート（ゲイリー・クーパー）も、義勇兵の一人だった。ある日ロバートが、スペイン北部の山間の鉄橋を爆破する任務のため、砦のようなけわしい岩ばかりの現地へと赴くと、反政府ゲリラの荒くれ男たちの群れの中に、美しいが、男のような身なりで、輝くばかりのブロンドの髪が不自然に短い娘・マリア（イングリッド･バーグマン）を見た。ロバートの目にマリアは、荒涼とした岩場に咲く一輪の花のように映ったが、マリアは、とてつもなく重い過去を背負った娘だったのだ‥‥両親を目の前でフランコの兵士たちに惨殺され、頭を丸坊主にされた上に、レイプされたマリア‥‥ロバートとゲリラの砦で出会った時、少し伸びた髪をつまみながら、硬い表情で、「ここにいる間、これだけ伸びたの」と、つぶやくのが、ぐっときます。身体を汚されても、キスの仕方は知らず、ロバートに恋をして、キスをする時、「鼻は邪魔にならないの？」と、おずおずと訊き、実際に彼と唇を重ねたあと、安堵したように、「邪魔にならなかったのね‥‥」というセリフが、たまりません‥‥！鉄橋爆破の時や、軍隊の攻撃が迫り、明日をも知れぬ命のロバートとマリア。だからこそ、２人の恋は激しく燃え上がるのです。苦しげに過去を語るマリアを遮り、「君は誰にも汚されていない」と言うロバート‥‥２人が愛を囁く、ごつごつした荒涼たる岩場が、一瞬花園のように見えました。この作品、ラブ･ストーリーとしても上質ですが、ファシズムに抵抗するゲリラたちの人間模様を描いた、上質な社会派作品でもあります。かつては勇敢な闘士だったけれど、今では酒に溺れるゲリラの頭目パブロ、そんな夫を叱咤し、実質上のボスを務める妻のピラー、罠で獣を捕まえるのが趣味で、大ぼら吹きだが憎めない闘士プリミティボなど‥‥それぞれに個性豊かで、実に人間臭い。中でも、口は悪いけど、男勝りで頭が切れ、闘士たちのリーダー、マリアの母親役まで務めるピラーは、脇役の中で際立って光っていました。終盤の戦闘シーン、特にロバートが鉄橋を爆破するシーンは、迫力満点でしたね。また音楽が、ラブシーン、戦闘シーンなどで、非常に効果的に使われていました。まるで音楽が、つかの間の恋に落ちるロバートとマリアの心情を語り、戦乱の恐怖に怯えて叫んでいるような感じがしました‥‥昔の名作映画はほんっと、音楽の使い方が上手ですね。ゲイリー･クーパーは、無声映画時代から俳優として出演していて、トーキー時代を迎え、多くの映画俳優が、声の悪さ、セリフの稚拙さ、中には英語がうまく話せないということで、スターの座からすべり落ちたのに対し、彼は持ち前の演技力で、トーキー時代をうまく乗り切り、その後、押しも押されぬ大スターとなりました。でも、60歳での死去は、ちょっと早かったですね‥‥残念です。★ゲイリー・クーパー★ モロッコ（トールケース） / ゲーリー・クーパー【モリス特価】キープ 真昼の決闘 PDM-029KS★イングリッド・バーグマン★イングリッド・バーグマン/ポスター カサブランカ 特別版 / ハンフリー・ボガート
2007.05.29
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国に利用された男たち★「シルミド」
南北分断から半世紀あまりが過ぎた朝鮮半島‥‥一家離散など、分断による悲劇は、今もあとを断ちませんが、中でもすさまじいのは、韓国政府が極秘で結成させていた、北朝鮮のトップ・金日成暗殺のための特殊部隊、684部隊の悲劇ではないでしょうか‥‥きょうの名画は、韓国ソウルで起こったシルミド事件の事実をもとに作られた名作「シルミド」（'03年 韓国）です！ソル・ギョング／シルミド'68年、殺人罪で死刑判決を受けた囚人インチャン（ソル・ギョング）は、ある日突然、他の死刑囚たちとともに監獄から出され、軍服の男たちによって、仁川沖の無人島シルミド（実尾島）へ連れて行かれた。インチャンらを島へ乗せていった船は、その場で爆破され、何が何だかわからず、唖然となる死刑囚たちは、軍服の男たちに告げられた。「極悪人ども、きょうからお前たちは、金日成の首をとるための特殊部隊、684部隊の隊員だ！」むりやり軍服を着せられたインチャンたちは、隊長のチェ・ジェヒョン（アン・ソンギ）の指揮下、超苛酷な訓練を受けるはめに‥‥！始終監視され、脱出不可能な孤島での壮絶な訓練の日々‥‥しかし、この孤島にしか居場所のないインチャンたちは、よく耐え、３年あまりが過ぎた頃、金日成暗殺のために、いつでも出動可能な特殊部隊員となった。ところが‥‥韓国政府は今まで敵視していた北朝鮮に対し、太陽政策をとるようになり、もはや不要となったシルミドの684部隊の隊員たちを、全員抹殺することに‥‥！「畜生！さんざん国に利用されたあげく、殺されるのか?!」インチャンたち隊員は、反乱を起こしてシルミドを脱出し、一般市民を巻き込んだ、とてつもない行動に出るのだが‥‥死刑囚や凶悪犯を極秘で孤島に送り込んで、軍事訓練をさせる‥‥平和なわが国では、映画や小説の世界でしかありえないことですが、３８度線で分断され、今なお停戦状態にある韓国では、こういうことが本当にあったんですね。事実は小説よりも奇なりです、ほんと。「ペパーミント・キャンディ」「オアシス」などの名作で、持ち前の抜群な演技力を発揮したソル・ギョングが、この作品でも、悲劇の男を熱演しています。クライマックスでは、国に利用され、翻弄された男たちの哀しみと怒りが、非常に象徴的に描写されていましたね。ジェヒョン隊長を演じた、韓国映画界の名優アン・ソンギも、国の命令と、自分が育てた隊員たちへの愛情の板ばさみになって苦悩するエリート軍人の悲哀を、ベテラン俳優らしく、上手に表現していました。隊員たちの抹殺に真っ向から反対する部下役のホ・ジュノも、「さすが演技派‥‥」と言うような名演でした。監督は、ヒット作品「トゥ・カップス」シリーズのカン・ウソク。アクションを得意とする監督らしく、シルミドでの苛酷な訓練のシーンは壮観。クライマックスのバス乗っ取りのシーンも、緊迫感100パーセントでした！冒頭、インチャンの裁判から、極秘の「出所」までが、やや冗漫でダレていましたけど、上質な社会派映画として、いろいろ学び、考えさせられ、また、格調高いアクション映画としても、十分楽しめます。「シルミド」は韓国で空前の大ヒット。映画の中のセリフ「ヨギヌン・シルミドヤ！（ここはシルミドだ！）」が、流行語となったそうです。★ソル・ギョング主演作品★ 韓国映画/力道山（韓国版）(ノーカット版)オアシスソル・ギョング／公共の敵韓国広場韓流ショップ
2007.05.28
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赤いハンカチはどこにも出てこないけど‥‥★「赤いハンカチ」
お年を召した方々にとっては、日活アクションのトップスター‥‥４０代以下の方々にとっては、人気刑事ドラマ「太陽にほえろ！」のボス‥‥その名も‥‥石原裕次郎!!【Aポイント付】石原裕次郎 / 全曲集 (CD)裕次郎は数ある日活アクション作品の中でも、ただ殴りあい、撃ちあいを繰り広げるだけではなく、共演女優とのうっとりするようなラブシーンを多く取り入れた、いわゆるムード・アクションと呼ばれるジャンルで、大活躍しました。きょうはそのムード･アクションの傑作と名高い'64年の「赤いハンカチ」をおとどけします！赤いハンカチ(DVD) ◆20%OFF！麻薬密売組織が暗躍する国際都市・横浜‥‥刑事の三上（石原裕次郎）は、麻薬密売容疑で逮捕した平岡を、護送中、誤って射殺し、その責をとって辞職、流れ流れて、北海道のダム工事現場で働くようになった。ところが辞職から３年後、かつての刑事仲間から意外な事実を耳にした。三上の同僚だった石塚刑事（二谷英明）が、平岡射殺事件後、平岡の娘・玲子（浅丘ルリ子）と結婚し、スーパーマーケット・チェーンを経営する大実業家になっているというのだ。３年前のあの事件の裏には、何かある‥‥三上は横浜へ戻り、密かに探りを入れ始めるのだが、彼の行く手には、恐ろしい魔の手が‥‥！玲子への深い贖罪の思いを抱く三上。父親を殺した憎い男と怨みながらも、いつしか三上の面影が忘れられなくなる玲子。三上と夫の石岡、２人の男のはざまで複雑に揺れ動く女心を浅丘ルリ子が全身で表現していましたね。裕次郎も、罪を背負い、何もかも棄てて、ひとり北の果てでその日暮らしを送る男の孤独感を全身から十二分にかもし出していました。冬の夜、外は雪が降りしきる凍てつく寒さ、ダム工事現場の飯場の窓辺にもたれ、ひとり寂しく、ギターをつまびきながら、名曲「赤いハンカチ」を歌うシーンは、絶品です！完全に絵になってます！３年前の事件の真相が次第に明らかになってゆくサスペンスの流れも、なかなか巧みなもの。もちろん、日活アクションには欠かせない大乱闘のシーンも見せますよ！激しいアクションあり、切ない恋あり、サスペンスの盛り上がりありと、まさにてんこ盛り！裕次郎はもとより、ルリ子さんも、スターのオーラ全開です！う～ん、この頃の映画スターは、やっぱりとても光っていますよね。ほんとに輝く星！って感じで‥‥ところで、「赤いハンカチ」という題名にもかかわらず、映画の中では、なぜか一箇所も赤いハンカチは出てこないんですよねえ～赤い糸一本出てこなかったなあ‥‥それがちょっと拍子抜けでした。監督は舛田利雄。脚本は「早書き」の異名をとった山崎巌、「太陽にほえろ！」の小川英。裕ちゃんファンならずとも、思わず引きこまれる名作です。
2007.05.27
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哀しくも凄まじい愛憎劇‥‥★「天国の日々」
ハリウッドのヒット作のみならず、黒澤映画にも出演し、日本で人気の高いリチャード・ギア。リチャード・ギア/2007年カレンダー(G)数多い彼の主演映画の中で、モイラが最も好きで、最も完成度の高い傑作だと思うのが、'78年の「天国の日々」です！パラマウント ホーム エンタテインメント 天国の日々２０世紀初頭のアメリカ。シカゴの鉄工場で働いていたビリー（リチャード・ギア）は、上司と喧嘩して辞め、妹のリンダ（リンダ・マンツ）と恋人のアビー（ブルック･アダムズ）と共に、貨車に揺られて中西部へ出向き、大農場で麦刈りに雇われた。ビリーは雇われる時、若い農場主のチャック（サム・シェパード）に、アビーを妹だと偽った。麦刈りの仕事はきつく、賃金も安く、希望のない日々を送るビリー兄妹とアビー。ある日ビリーは、チャックが不治の病で余命いくばくもないこと、そして彼が、アビーに恋心を抱いていることを知った。麦刈りの仕事が終わっても、チャックはアビーに残るように言い、彼女に求婚した。ビリーは内心動揺した。しかし、チャックの豪邸に居候できれば、安い賃金でつらい農作業をすることもない‥‥ビリーはアビーに、「彼はもう長くないから」と説得し、チャックとアビーは森の中で結婚式を挙げた。ビリー兄妹とアビーは、美しい自然に囲まれた素晴らしい豪邸で寝起きし、毎日遊び暮らす、まさに天国の日々を送った。ところが‥‥ある日、チャックはビリーとアビーが兄妹ではないことを知ってしまうのだ！安い賃金でこき使われてきただけのビリーの半生。それが目の前に、労働も上司の罵声もない「天国の日々」をちらつかされたら、恋人を他の男に差し出しても、その安息と安逸の日々を味わいたい‥‥無理もないなと思いました。貧しさにうんざりし、なんとか「天国の日々」を得たいと切望する青年を、リチャード･ギアが気負いなく、淡々と、しかし上手に演じていましたね。劇作家で俳優のサム・シェパードの農場主チャックも、見事でした。大金持ちで、飛び切りのハンサムなのに（リチャードより美形ですよ、はっきり言って）、大豪邸に一人ぼっちで住み、おまけに不治の病で余命いくばくもない青年の孤独と悲哀を、全身から醸し出していましたね。大豪邸の周囲一面に広がる麦畑、美しい森と湖などの中西部の風景が、まるで一流の画家が描いた絵のように、美しかったのが印象的でした。この美しい映像を見るだけでも、この映画を観る価値がありますよ。映像の美しさが、静かに、しかしじわじわと水面下で広がる男女の愛憎劇をよりいっそう際立てているようでした。クライマックス、農場を襲うイナゴの大群は、それはそれは恐ろしく、ビリーとチャック、２人の男の憎悪のぶつかりあいを象徴していましたね。身体は壮健だけれど、貧しいビリー。お金持ちだけれど、病魔に冒されているチャック。双方とも互いに、持ちたくても持てないものを切望し、悲劇の渦に呑まれていくのです。天国の日々は、たとえ得ることはできても、長くは続かない‥‥この名作は、そのことを明確に語りかけていますね。監督、脚本はテレンス・マリック。日本での公開は'83年。単館ロードショーでしたが、大変評判がよく、数ヵ月後、再上映の運びとなりました。モイラは最初の公開の時に観ていたのですが、あまりに素晴らしい作品なので、再上映の時に母を誘って映画館に行ったら‥‥なんと！最終の回までチケットが売り切れていました！それから数年後、母はテレビでこの名作を観る機会を得、「いい映画ねえ～～」と、しきりに感嘆していました。★もっとリチャード・ギア！★■■映画パンフレット『プリティブライド』■■映画ポスター『シカゴ』/アカデミー受賞作！豪華キャストのミュージカル！コットンクラブ【GNBF-5032】=＞コットンクラブ
2007.05.26
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雷蔵が苦悩する青年を熱演！★「破戒」
1954年から69年までの16年間に、実に155本の映画に出演し、気品ある美貌と、どこか冷たい雰囲気、身体全体から漂う男の色気‥‥そして何より、時代劇から現代劇まで、無頼漢から正義の人までといった幅広い役柄で、一世を風靡した大スター・市川雷蔵‥‥！雷蔵好み雷蔵ファンの方々、大変長らくお待たせしました！きょうおとどけする映画は、市川雷蔵主演、市川崑監督と、Ｗ市川が大活躍している'62年の文芸大作「破戒」（大映）です！破戒(DVD) ◆20%OFF！原作は自然主義文学の草分け・島崎藤村の代表作。時は明治。千曲川の水清き信州・飯山で小学校教員を務める瀬川丑松（市川雷蔵）は、被差別部落出身者。しかし、封建主義の名残が消えぬこの時代、部落差別は現代よりもずっとひどく、「自分の出身を決して明かしてはならない」という父の遺言を、丑松は戒めとして守り続けていた。事実、仲の良い同僚も、部落出身者を軽蔑しているふしがあり、丑松はますます秘密を堅く守るが、同時に本当の自分というものをさらけ出せず、心の中ではいつも孤独感にさいなまれていた。だがそんな時、旧態然とした身分制度を嫌う士族の娘・志保（藤村志保）、部落解放運動に身を捧げる猪子蓮太郎（三國連太郎）を知り、丑松の心は大きく揺れる‥‥被差別部落出身者とわかったら、泊まっている宿屋からも追い出されていたこの時代、丑松のように、自分の出身を頑なに明かさない青年は大勢いたと思います。いわれのない差別と、「自分を偽っていいのか‥‥？」という思いの板ばさみで苦悩する孤独な青年を、雷蔵がそれは見事に演じていましたね。モノクロームの深みのある映像が、青年の苦悩をよりいっそうクローズアップしていて、また、自然に恵まれて美しい反面、山に囲まれて肌寒い信州の独特の雰囲気を、よく出していました。養女に行った先の寺の好色な住職（中村雁治郎 適役！）に汚されても、凛として生きる志保役の藤村志保も、清々しい美しさにあふれていましたね。下手をすれば地味すぎて、差別問題ばかりが前面に出た退屈な社会派映画になるところを、上質で重厚な人間ドラマに仕立てています。さすが市川監督の個性的で巧みな演出と、夫人の和田夏十の秀逸な脚色です。名カメラマン宮川一夫の撮影がまた素晴らしい！大当たり役「眠狂四郎」シリーズの雷蔵もニヒルでかっこいいけど、この「破戒」の雷蔵も、実に味があります。1969年７月17日、この稀代の美貌の大スターは、ファンに惜しまれつつ、肝臓ガンで、わずか37年の生涯を閉じました。★雷蔵FOREVER！★市川雷蔵出演映画作品ポスター集雷蔵、雷蔵を語る陸軍中野学校DVD-BOX(DVD) ◆20%OFF！
2007.05.25
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文化大革命に翻弄された人々★「芙蓉鎮」
北京オリンピックを前に、とてつもない勢いで経済発展を続け、世界中の注目を浴びている大国・中国。しかし、先進国の仲間入りをしつつあるこの国も、'60年大半ばから'70年代半ばまでは、時の権力者・毛沢東がひき起こした文化大革命によって、大混乱に陥り、何億もの民衆が苦しみ、あえいでいたのです。きょうは、中国四千年の歴史の汚点である文化大革命（文革）をモチーフにした中国映画の傑作「芙蓉鎮」('87年）をとりあげます！【中古】パンフレット(洋画) パンフ)芙蓉鎮'63年、湖南省の田舎町・芙蓉鎮では、玉音（リュウ・シャオチェン）と夫が作る米豆腐の小さな店が繁盛し、ハイミスの国香が主の国営食堂は、彼らに客をとられていた。そんな中、抜け目のない国香は、共産主義の大敵ブルジョアジーを摘発する政治工作班長の地位につき、米豆腐で儲けた金で店を新築した玉音夫婦を、「資本的ブルジョアジー」と名指しした。玉音夫婦は驚いて抗議した。「汗水たらして、毎晩遅くまで屑米を臼で挽いて、米豆腐を作っているだけの私たちの、いったいどこがブルジョアなの?!」しかし店は没収、玉音の夫は殺されてしまった！そして66年、文化大革命の嵐が芙蓉鎮にも吹き荒れるようになると、党幹部の書記となった無学でお調子者の王という男が、町を実質的に支配し、玉音へのつるしあげも、さらにひどいものとなった。毎日、日が暮れるまで石畳を箒で掃くという刑を受ける玉音。もう一人、大学卒というだけで「右派」と決めつけられ、党から「うすのろ」と罵倒されている秦という男も、同じ刑を受けていた。最初は互いに口もきかない二人だったが、やがて心を通わせるようになり‥‥「古い思想、風俗、習慣を一掃し、新しい国づくりを目指す！」を、スローガンとした文化大革命‥‥しかし、その実態は実に愚かしい国家統制、そして血も凍る恐ろしい粛清だったんです！文化人、軍人、政治家が次々と粛清されたのは有名ですが、玉音の夫のような一般庶民まで、大勢犠牲になったのですから、これはもう国家による大虐殺と言ってもいいですね。このいまわしき文革による犠牲者は、1000万人を越えると言われています。夫も店も失うという不幸のどん底に叩き落されてもなお、歯を食いしばって生き、秦と新しい愛をはぐくみ、明日を信じて強く生きていく姿が、観る人に大きな感動を与えます。不屈のヒロイン玉音を演じたリュウ・シャオチェン、本当に上手でしたね。玉音の店の繁盛を妬んで、わずかに残った色気を使って党の幹部にとり入るハイミス国香、「うすのろ」と罵倒され、屈辱的な罰を与えられても、どこか飄々としている秦、インテリを蛇蝎のごとく嫌い、党の書記にまで抜擢されるけれど、結局は党に使い捨てられる王‥‥登場人物がそれぞれに個性豊かで、実にリアリティあふれていました。芙蓉鎮の風景も実に美しく、文革色がない頃は、まるで蒔絵のようです。謝晋監督は、風景の撮り方が本当に上手ですね。この映画で一番優れているのは、骨太な構成と、山あり谷ありのストーリー展開と、登場人物それぞれが生き生きしているシナリオです。そして、本来人民のためであったはずの文化大革命というものが、それとはまったく逆で、いかに多くの人民の命や財産、心を奪ったかを、克明に描いています。文化大革命というものをまったく知らない人も、この映画を観れば、その大筋だけでも知ることが出来ます。事実、モイラはいい勉強になりました。３時間近い長篇ですが、少しもダレたところがなく、飽きさせません。やはりシナリオがよく出来ているからでしょうね。★中国発傑作目白押し！★【中古】洋画DVD 山の郵便配達(’99中国) (パイオニア)胡同（フートン）のひまわり【中古】 紅いコーリャン ／チアン・ウェン［姜文］,コン・リー［鞏俐］,チャン・イーモー［張芸謀］（監督） 【中古】afbにほんブログ村
2007.05.24
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これぞ教育の原点★「学校」
数年前から教育現場では、学級崩壊なるものが騒がれ、不登校児は相変わらず多く、給食費の不払い問題なんてものも浮上しています。さまざまな問題を抱える現在の学校‥‥きょうは、「教育の原点とは何か？」を問う素晴らしい映画をお届けします。タイトルはずばり、「学校」（'93年 松竹）。学校東京下町の片隅にある夜間中学。そこには、年令も職業も国籍もさまざまな生徒たちが通っていた。髪を染めた不良少女のみどり（裕木奈江）、日本語の読み書きが不自由な６０近い在日韓国人のキムさん（新屋英子）、昼間は肉体労働で汗を流す勤労少年カズ（萩原聖人）、昼間の中学でいじめにあい、不登校だったえり子（中江有里）数年前に日本に移住してきた日中ハーフの張青年（翁華栄）、経済的な事情で、子どもの頃、ほとんど学校に通えなかったイノさん（田中邦衛）、担任の黒井（西田敏行）は、読み書きの不自由な生徒たちには、熱心に読み書きを教え、他人との交流が苦手な若い生徒たちには、ゆっくりとでも学校というものに慣れさせようと、地道な努力を重ねていた。そんな中、浮上する生徒の就職問題。ことに張は日本人とのコミュニケーションがまだ不得手で、なかなか彼を受け入れる職場が見つからなかった。それでも、普通の中学と同様、修学旅行を楽しむ生徒たち。しかしある時、イノさんが胃ガンに冒されているのがわかった‥‥「寅さん」シリーズの山田洋次監督が、なんと１５年もの間、あたためていた企画で、製作にあたって、夜間中学をいくつも取材したそうです。読み書きがうまくできずに、「私はバカだ‥‥」と泣くキムさんを励ます黒井先生の言葉が、じーんときましたね。「キムさん、キムさんのどこがバカなんだ？日本に来て一生懸命働いて、焼肉屋繁盛させて、３人の子どもを立派に育てて。そんなことがバカにできるか？」生徒が落ち込んでいたら、先生は励ます。生徒が勉強が進まず、悩んでいたら、先生は手助けする‥‥これぞまさしく教育の原点ですよ！生徒が間違えたり、できなかったりすると、すぐ「こんなこともできないのか?!」と怒る先生に（実際そういうのが多い）、黒井先生のセリフを聞かせてやりたいです。それぞれに挫折を経験し、苦労を重ねた生徒たちの物語は、ともすれば湿っぽくなりがちですが、そこは山田監督、笑えるところは大いに笑わせます。イノさんがカタカナの書き取りの授業で、オグリキャップの有馬記念優勝の模様を、まるで講談師のようにとうとうと話す場面には、ゲラゲラ笑いました。あと、漢字がほとんど書けないイノさんなのに、競馬狂ゆえ、「配当」とか「連勝」という漢字は読めるというのも。この作品は、山田監督が最も得意とする分野「人情悲喜劇」でもありますが、「学校の本来あるべき姿とは何か‥‥？」という問いかけが、全篇にあふれています。そして随所に、「生徒たちが学ぶ喜び」が描かれています。極論かもしれないけど、モイラは、学校は本来、勉強を教える（できれば国語を重視）‥‥これで十分だと思います。やれ髪の毛の色がどうのこうの、服装がどうのこうの‥‥そんなくだらん校則、一切いらな～い！生徒に知らなかったことを知る喜び、学ぶ喜びを与える‥‥これがいっちばん大事です！事実モイラは小学１年生の秋、初めて漢字というものを学校で勉強し、へったくそな字ながら、ノートに「先生」と書けた時は、「やった！あたしも漢字書けるようになった！」と、もう飛び上がるくらいうれしくて、早速、近所の幼稚園の子どもたちを集めて、「先生」という字を書いてみせ、教えたものです。現在の教育現場の先生方も、ずいぶんがんばっていらっしゃるんでしょうけど、生徒に「学ぶ喜び」を与えられない人は、教師を続ける適性がないと言えるでしょうね。映画人もそうです！観客の心を動かす映画を作れない人は、もはや映画人ではない！
2007.05.23
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命がけのニトロ運び！★「恐怖の報酬」
ハラハラ、ドキドキの場面の連続で、観客の心臓を早鐘のように鳴らし、一秒たりともスクリーンから目を離させず、なおかつ、登場人物にリアリティがあり、人間ドラマもしっかり描けていて、くわえて、ラストに「あッ!!」というどんでん返しが待っている‥‥それが上質なサスペンス映画の条件だと、モイラは思います。その条件をすべてクリアしている、サスペンス映画の傑作中の傑作が、フランスのヒッチコックと呼ばれた、アンリ･ジョルジュ・クルーゾー監督の「恐怖の報酬」('52年 フランス）です！ 恐怖の報酬中米の街ラス・ピエドラスには、他国から大勢の食いつめ者たちが集まり、マリオ（イヴ・モンタン）もその一人。ある時、街から500メートル離れた山の上の油田が火事になり、石油会社は多額の報酬で、消火のためのニトログリセリンを大型トラックで運ぶ仕事を募集し、マリオとパリから流れてきたチンピラ風のジョー（シャルル・ヴァネル）、ビンバ、ルイジと、４人の男が応募した。いずれも多額の報酬を得て、今のどん底の暮らしからなんとか這い出たい者ばかり。ところが‥‥油田へ至る山道は、けわしい傾斜、崖っぷち、行く手を阻む大岩などとんでもない難所続き！しかも運ぶのは、揺れると爆発するニトロ！果たしてマリオたちは、無事に還ってこれるのか‥‥?!この作品は、「一難去ってまた一難」という、パニック映画の要素を多く取り入れています。イヴ･モンタンが運転するトラックが、タイヤの横はすぐ崖っぷちのような、とんでもない難所を、どうにか抜けられたと思ったら、今度は目の前に道路をふさぐ大岩‥‥先を走っていたビンバとルイジ組が、ニトロで岩を爆発させ、それからしばらくは、これといった難所にぶつからず、ほっとしていたら、いきなり、ビンバたちのトラックがドッカーーーン!!と大爆発！ショックを受ける間もなく、今度は切れた送油管から流れ出た石油の海が待ち構えている‥‥といった具合なんですから。もう息を呑み、手に汗握り、スクリーンから一秒たりとも目が離せませんでしたね。「ああッ危ない‥‥落ちる‥‥！ああ、気をつけて！」モイラは観ながら、心の中でずっとこんなふうにつぶやきっぱなしでした。心臓バコバコの緊迫感の連続。それが終わったかなと思ったら‥‥あっと驚く大逆転劇！クルーゾー監督は、観客をひきつける技を、見事に心得ています。その手腕に、思わずうなりました。この作品ですごいのは、危険きわまりない難所の運転や、爆発などの見せ場に、特撮をひとつも使っていない、すべて実写だということ！イヴ･モンタン演じるマリオたち４人の男の性格の描きわけも、上手でしたね。街の酒場女に恋をし、ちょっとプレイボーイを気取っているようなマリオ。パリでは札付きだったというけど、意外と気弱なジョー。冷静沈着で機転のきくビンバ。人間ドラマも十分に描けていました。そして最後は‥‥とんでもなく非情などんでん返しが！この作品は'77年に、ハリウッドでリメイクされました（監督は「エクソシスト」のウイリアム・フリードキン）が、やはりクルーゾー作品には、全然負けています。主演のイヴ･モンタンは、「枯葉」などのヒットを飛ばしたシャンソン歌手としても有名。若い頃、シャンソンの女王エディット・ピアフに歌の才能を見出され、一時期彼女の愛人となり、のちに女優シモーヌ・シニョレと結婚。結婚後も、マリリン・モンローなどと浮名を流し、スキャンダルには事欠かなかったものの、シニョレとの結婚生活は、彼女が亡くなる'85年まで続き、60歳を過ぎてからは、アシスタントの女性と再婚し、一子をもうけ、'91年に、70歳で亡くなりました。もう一度、モンタンの歌う「枯葉」が聴きたいものです。★もっとイヴ・モンタン！★イヴ・モンタン／メナースイヴ・モンタン 枯葉イヴ・モンタン／愛と宿命の泉PARTI／フロレット家のジャン デラックス版
2007.05.22
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殺人でしか快楽を得られない！★「暴行切り裂きジャック」
きょうは、★モイラの名画座★開設以来、初の日活ロマンポルノの紹介です（殿方必見?!）作品は'76年、長谷川安春監督、桂千穂脚本の、「暴行切り裂きジャック」！ 暴行切り裂きジャック/桂たまき【中古】【邦画】中古DVD喫茶店のウエイトレスのユリ（桂たまき）は、ある晩、どしゃぶりの雨の中、ウエイターのケンの車に乗せてもらって、アパートに帰ろうとした時、精神病院から脱走したらしい、拘束服を着せられた若い娘（山科ゆり）を、路上で拾うはめとなった。意味不明のことを口にし、不気味な笑い声をたてながらリストカットをするその娘にぞっとしたユリとケンは、彼女を走る車から突き落とし、死なせてしまった。罪の意識と恐怖に震え、雨でずぶ濡れになりながら、死体を廃車置場に遺棄した２人は、その恐怖心を拭い去るため、激しく身体を求め合い、互いに頂点にのぼりつめた。その夜から同棲生活を始めたユリとケンだが、セックスがいまひとつ盛り上がらなかった。２人はふと思った。「あの拘束服の娘を殺し、死体を棄てた時の、恐ろしいが、なんとも言えぬ心の高揚があれば、最初の夜のような快楽が得られるかも‥‥?!」一度知ってしまった異常な快楽は、忘れることはできない‥‥こうしてユリとケンは、自分たちの性的快楽のために、次々と女性をいたぶり、挙句にナイフでめった刺しにする殺人鬼と化した！彼らの身勝手な欲望のために、無惨な死をとげる何の罪もない女性たち。若い男女の狂気は、とどまるところを知らないように思えた。ところが‥‥！日活ロマンポルノ作品は、男性の劣情をそそるだけの、くだらない作品も多いですが、シナリオの構成がしっかりしていて、低予算で作られていても、ドラマ性にあふれた、完成度の高い上質な作品も数多いことで知られています。否、「ロマンポルノ」の看板をとってしまえば、一般映画として十分通じる作品も少なくありません。事実、いま日本映画界で活躍している監督、シナリオライターの中には、日活ロマンポルノ畑出身者が大勢います。監督では神代辰巳（故人）、根岸吉太郎、そしてこの作品のメガホンをとった長谷部安春など、シナリオライターでは、荒井晴彦、いどあきお（故人）、加藤正人、この映画のシナリオを担当した桂千穂もそうです。この「暴行切り裂きジャック」は、バイオレンス・ポルノと呼ばれるジャンルに区分けされていますが、正統派のバイオレンス映画と呼んでも良いくらいの作品です。少々ヒステリックで、気の強いユリという女。そのユリにひっぱられがちな、ケンというやや気弱な男。この２人の性格の対比と、２人がふとしたことから異常な快楽に溺れていく過程が、実に不気味ながら、きめ細かく描写されています。２人がナイフを手に凶行に及ぶシーンも、観客を思わずぞっとさせます。シナリオがまた、「どうしたら観客が怖がるか」というツボを心得ているんですね。テレビドラマ「はぐれ刑事純情派」で、ベテランの婦警を長年演じていた岡本麗が、若い男女の殺人鬼の餌食となる女性として出演し、裸体を披露しているのも見ものです。彼女は当時劇団員で、糊口をしのぐために、またそのころ同棲中だった大竹まこととの生活のために、ロマンポルノにいくつも出演していたそうですね。若い男女の殺人鬼の凶行を描いたハリウッド映画「ナチュラル・ボーン・キラーズ」も顔負けのいや、あれよりずっと怖く、ドラマチックな作品です！モイラは学生時代、少しでも多くの映画を観て勉強しようと思い、時には恥ずかしさをこらえて、日活ポルノやピンク専門映画館にも入ったものです。それは、まるで男性トイレに入るような恥ずかしさでした。切符買う時も、館内に入る時も、どこかこそこそしていました。さすがに一人でポルノ・ピンク映画館に入ったのは２、３度で、あとは同級生の男の子たち、女の子たちと数人で観に行きましたね。★日活ロマンポルノの傑作、ここにあり！★(秘)色情めす市場 【DVD】【中古】キャバレー日記 [DVD]性盗ねずみ小僧 [ 小川節子 ]
2007.05.21
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米国裁判史上最大の汚点！★「死刑台のメロディ」
昔も今も、自由と富を求めて、世界各国から移民が押し寄せているアメリカ合衆国‥‥しかし、そこは人種差別のひどい国でもあったのです。まだ公民権も確立していなかった1920年代、アメリカの司法は人種偏見によって、とり返しのつかぬ過ちを犯しました！世に言う「サッコ＝ヴァンゼッティ裁判」。この実際にあった、世にも恐ろしく腹立たしい冤罪事件を告発した映画が、フランス･イタリア合作の「死刑台のメロディ」('71年作品）です。【中古】 死刑台のメロディ／ジャン・マリア・ヴォロンテ,リカルド・クッチョーラ,ジュリアーノ・モンタルド（監督、脚本）,エンニオ・モリコーネ（音楽） 【中古】afb価格：6,480円（税込、送料別) (2023/6/21時点)楽天で購入ボストンに住むイタリア移民の靴屋ニコラ・サッコと、魚の行商人バルトロメオ・ヴァンゼッティは、ある日突然、まったく身の覚えのない強盗殺人容疑で逮捕された。アメリカ当局は、２人が労働運動をやっている無政府主義者という、ただそれだけの理由で逮捕したのだ。人種偏見に満ち満ちた苛酷な取調べの日々。弁護士は力を尽くすものの、判事はイタリア移民を露骨に見下している上、大の無政府主義者嫌い、いい加減な証人の証言、ありもしない証拠の提出など、最初から２人にとって不利な裁判が続き、２人とも死刑判決を言い渡されてしまった。絶望の淵に立たされたサッコとバンゼッティに、新しい弁護士が味方につき、２人の無実の証拠を探しに奔走し、やっと手がかりを掴みかけるが、その証拠は、当局の手で隠滅されていたのだった‥‥！サッコとヴァンゼッティは無実の罪で、1927年８月22日深夜、電気椅子で殺されました。この頃のアメリカ当局は、無政府主義（アナーキズム）というものを、蛇蝎のごとく嫌っていたんですね。加えて人種差別！モイラは観ていて、空恐ろしくなるとともに、猛烈に腹が立ち、「ふん、移民の存在や思想の自由は認めなくても、無実の人を死刑にする自由だけはたっぷりあるのね」と、心の中で毒づいていました。自由の国アメリカが聞いてあきれらあ！この映画は全篇でそう叫んでいるようでした。役者はほぼ全員イタリア人で、全篇イタリア語ですが、これほどアメリカやアメリカ人を悪く描いたヨーロッパ映画も、そうはないと思います。サッコとヴァンゼッティの母国イタリアからしてみれば、当時のアメリカはまるで悪魔でしょうからね。ジュリアーノ・モンタルド監督は、本来公正であるべき裁判の違法性、当時のアメリカでは当たり前だった思想弾圧、人種偏見を、この映画で鋭く告発し、辛口、否、激辛の上質な社会派作品に仕立てています。終盤、死刑が確定したヴァンゼッティが、静かな口調で、しかし皮肉をこめてアメリカ当局を批判していたのが、印象的でした。オープニングとラストに流れる、アメリカの反戦フォーク歌手ジョーン･バエズの歌が、この映画を盛り上げていましたね。特にラストの「勝利への賛歌」は、力強い歌詞とメロディで、横暴な体制側への抗議の声をあげていて、素晴らしかったです。アメリカ人でありながら、アメリカを告発した映画の音楽を担当したバエズにも、拍手ですね！ただ惜しむらくは、当時のイタリア移民の生活の様子や、サッコとヴァンゼッティの家族の様子が、あまり詳しく描かれていなかったことです。マサチューセッツ州がサッコとヴァンゼッティの無罪を正式に表明したのは、彼らが処刑された５０年後の、1977年７月19日のことです。遅すぎるよ!!
2007.05.20
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むき出しの生と性！★「鬼婆」
映画ファンにとって、観ていてガツーン!! と頭を殴られるようなショッキングな映画との出会いは、このうえなくうれしいものです。もうだいぶ前に名画座で観たものですが、この作品がまさに、「頭ガツーン!!」でした。'64年の新藤兼人監督・脚本作品、「鬼婆」（近代映画協会）です!!鬼婆(DVD) ◆20%OFF！戦国時代、農民だった中年女（乙羽信子）は、一人息子を戦にとられ田畑も荒らされて百姓ができなくなり、生きるために嫁（吉村実子）と二人で、落武者を竹槍で突き殺し、鎧兜を剥ぎ、それを食料に替えていた。ある時、女の息子と一緒に戦にかり出された村の若者・八（佐藤慶）が戻ってきて、息子は戦乱のどさくさで殺されたと告げた。ほどなく性欲を持て余した八は、女の嫁にしきりに言い寄るように‥‥嫁は初めは無視していたが、やがて男の肌恋しさから、ついに八と男女の仲に‥‥！夜、女が寝入ったすきに、白く不気味な月あかりの下、原っぱ一面のすすきが風になびく中、嫁は八の小屋へとひた走り、若い男女は獣のように互いの身体をむさぼるのだった。しかし、そのつかの間の快楽は、血も凍るような恐怖の序曲だったのだ‥‥!!日本の昔話（と言うより、怪奇伝説）のような形をとりながら、人間が本来持つ生と性への執着、渇望を、実にダイレクトに、かつ象徴的に描いた新藤監督渾身の力作です！かつて「100万ドルのえくぼ」と呼ばれた清純派アイドルだった乙羽信子が、バッサバサにふり乱した髪、照りつける陽光と土ぼこりで真っ黒になった顔、それでいて目はやたらにギラギラさせ、まさに鬼婆そのもの！これぞ、「迫真の演技」と言えるでしょう！この映画の時は、40過ぎていたと思うんですが、上半身裸にもなっていましたね。吉村実子も全裸で夜のすすきが原を走るなど、体当たりの演技をしていました。（このシーンは、映倫でちょっと問題になったそうです。馬鹿だねえ、映倫って‥‥）鬼の面をかぶった鎧兜の侍役の宇野重吉も本物の夜叉のように恐ろしかったです。この作品のモチーフは、新藤監督が幼い頃、お母さんから夜、枕元で聞かせてもらった恐ろしい昔話。「鬼になった女」の話で、「子どもが寝入る時に怖い話を聞かせるお母さんって‥‥」と、思わなくもないですが、のちのちそれが、こんな傑作映画として実を結んだのですから、素晴らしい情操教育だったのでしょうね。印旛沼にプレハブ宿舎を建ててのオールロケがまた、素晴らしい！風にそよぐ原っぱ一面のすすき、墨のように黒い夜空に浮かぶまぶしいほどの月、そして‥‥原っぱの中に不気味に黒い口をあけた大きな穴‥‥この穴は、生きるものが決して避けられない「死」を象徴しているようですね。モノクロームの映像ならではの光と影、白と黒のコントラストを、見事に表現しています。林光の、どこかショッキングな音楽の効果が、この作品の恐ろしさ、業の深さ、そして味わい深さを倍増させています。「原爆の子」「第五福竜丸」「裸の十九才」「午後の遺言状」など、社会問題を提起した秀作を数多く撮ってきた新藤兼人監督は、90歳を過ぎた今なお現役。創作意欲は依然衰えておられないようです。★もっと新藤兼人監督！★縮図[DVDソフト] 裸の島裸の十九才 / 原田大二郎
2007.05.19
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あぶない若者たち。だけど‥‥★「アタック･ザ･ガスステーション」
けさ、モイラの愛用ＰＣがキーボード交換で復活しました（ホッ‥‥）。きょうは愛知で元暴力団員による立てこもり事件があり、容疑者の身柄がさきほど保護されましたね。きょうの映画は、立てこもり事件を扱ったもので、犯人たちの立てこもり場所は、韓国ソウルのガソリンスタンド‥‥と言えば‥‥ジャ～～ン！'99年の韓国映画、「アタック･ザ･ガス・ステーション」で～す！アタック・ザ・ガス・ステーション！(DVD) ◆20%OFF！世間からはみだした４人の若者が、以前も強盗に入ったガソリンスタンドに、再び強盗に入った。金を地下に隠しているスタンドの社長が、４人に金がないと言ってしまったのが運の尽き。４人は社長や従業員たちを人質にとり、自分たちが従業員となり、訪れるお客から満タンのガソリン代を次々ぼったくり始めた。そのうち、人質にとったアルバイト従業員同士、決闘をさせたり、お客まで人質にとる暴挙に‥‥４人の若者の無軌道ぶりは止まらないのか‥‥？！原題は「注油所襲撃事件」（ジュユソ・スプキョクサッコン）。舞台はほぼずっと、ガソリンスタンドの店内で、演劇的な面白さが味わえました。これもガソリンスタンドを襲撃する４人の若者と、スタンドの社長や従業員、客たちのかけあいの面白さ、また、一人一人が個性豊かで、仕草やセリフの一つ一つから、その個性がばっちり表現されているからでしょう。４人の無軌道な若者たちがまた、非常に個性豊かなのです。元高校球児だったけど、親から金をせびるコーチに嫌気がさして野球をやめたノーマーク（イ・ソンジェ）、いかつい顔だちから、何もしていないのに、いじめっ子の汚名を着せられ、以後、ひたすら無鉄砲な人生を送り始めたムデポ（韓国語で「無鉄砲」の意）（ユ・オソン）、かつてはロッカーだったけど、金銭トラブルで演奏できなくなり、それからというもの、いつも音楽を聴いていないと機嫌の悪いタンタラ（カン・ソンジン）、絵ばかり描いて、勉強しないことで、父親に「出て行け！」と言われ、今は前衛ヌードを描くことに生きがいを感じているペイント（ユ・ジテ）。４人とも大人になりかけのころに、大きな挫折を味わい、世の中の理不尽さ、不公平さに怒りを抱き、その怒りがガソリンスタンドを襲うことで爆発したわけですが、彼らの挫折や世の中への怒りも、非常に象徴的に描かれていましたね。アルバイト従業員の描き方も、面白かったです。中に貧相ないじめられっ子がいて、ムデポにいじめっ子と決闘しろ、死ぬまで闘えと命令され、仕方なく応じ、最初はいじめっ子に殴られっぱなしだったのが、反撃のパンチで一撃してしまうシーンは、痛快でした。ムデポが人質にとった美人の女性客と、ヘンな言葉で（「クソもらし」とか「クソバカ」とか）しりとりをし、負けたら服を脱ぐという、おかしな野球拳をやるシーンも、笑えました。モイラには４人のリーダー格のノーマークより、ムデポが強く印象に残っています。このユ･オソンは、「友へ チング」でも、チンピラを好演していましたね。タンタラ役のカン･ソンジンは、日韓合作映画「極道修行・決着（おとしまえ）」で、在日韓国人のチンピラを、日本語をまじえて演じていました。ユ・ジテはその後、「リベラ・メ」「春の日は過ぎゆく」「オールド・ボーイ」などに出演し、役柄の幅を広げましたね。「アタック･ザ･ガス･ステーション」は、ブラック・コメディでもあり、また上質な青春映画とも言えるでしょう。不本意ながら道を外れた若者たちが抱える憤懣と哀しみ、それをムチャクチャだけれど、どこか哀しく、滑稽な方法で爆発させる無軌道な青春‥‥韓国では封切当時、若者たちから広く支持を得たそうです。監督は「極道修行 決着（おとしまえ）」「トゥ・カップス３」などのキム・サンジン。バイオレンスものを得意とする監督ですが、この映画では暴力的な中にも、コミカルな要素をかなりとり入れ、またスピード感とリズム感あふれる演出が、観る人を飽きさせません。イ・ソンジェエンジェル・スノー（期間限定）(DVD) ◆20%OFF！ユ・ジテ春の日は過ぎゆく(DVD) ◆20%OFF！ユ・オソン友へ チング(DVD) ◆20%OFF！
2007.05.18
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１８歳のまぶしい裸体‥‥★「旅の重さ」
きのうは不本意ながら、映画紹介&批評をUPすることができませんでした。というのも、モイラはパソを立ち上げ、UPしようとした時、うっかりキーボードにコーヒーをこぼしてしまって、そのせいで、キーボードがアウトになってしまったのです‥‥！(涙、涙、涙）「バカ～、バカバカ、モイラのバカ～ッ!!」と、自分をグーで10発くらい殴ってやりたい思いです、ほんと‥‥で、しょうがなく、以前使ってた古い、というより廃品寸前のノーパソをがらくた置場から引っ張り出し、超低スペックで、亀のようにおっそろしく緩慢な動きに、イライラ、ムカムカしながらも、なんとかネットにつないでいます。‥‥とまあ、前置きはこのくらいにして、早速映画のほうに入りますね！きょうの名画は、'72年の公開当時、１８歳の高橋洋子が大胆にも裸体を披露したことで話題を呼んだ青春映画「旅の重さ」です！あの頃映画 松竹DVDコレクション 旅の重さ [ 高橋洋子 ]価格：2525円（税込、送料無料) (2022/6/16時点)楽天で購入男出入りの激しい母（岸田今日子）との暮らしに嫌気がさした１６歳の少女（高橋洋子）はリュックを背に家を飛び出し、ひとり、四国遍路の旅に出ます。真っ赤な真夏の太陽がさんさんと輝く下、田畑広がる田舎道を歩き、お腹が空けば、畑のトマトを失敬したり、地元の人から食べ物をいただいたり‥‥道中、ひょんなことから旅役者の一団と暮らすようになり、座長（三國連太郎）に、亡き父親の影を見出そうとしますが、それは叶わず、ある時は一座の女に、レズの味を教えられます。少女は一座と別れて、またひとり旅に‥‥しかし、灼熱地獄の中、歩き疲れて病に倒れ‥‥どこか孤独な影を背負った男（高橋悦史）に助けられます。少女はその男に、自分と同じにおいを感じ、やがてそれは、異性を求める思いに‥‥旅と旅先で出会う人々との交流を通して、ほんの少女だった主人公が、次第に大人の世界を知り、大人の女性へと変貌していくさまが、非常に詩情豊かに描かれた名作です。少女が遠く離れた母に語りかけるモノローグが多用されていますが、少しもそれがうるさく感じられず（モノローグは、うるさくて説明的なのが多すぎます）、少女の心のうちをとてもよく表現しているなあと、石森史郎氏のシナリオの素晴らしさに、思わずうなりました。少女の台詞はあまりないのですが、それがまた効果的。斎藤耕一監督も、真夏の四国の田園地帯や海辺、芝居小屋などの風景を、美しく撮っています。さて、話題となった高橋洋子が海で裸になって泳ぐシーンですが、小麦色に日焼けした健康的な肌や、大人になりかけのバストからヒップにかけてのラインがまぶしく、それは美しいものでした。当時の若い男性の観客は、早鐘のように胸をドキドキさせたことでしょうね。ところどころで流れる吉田拓郎（当時はよしだたくろう）の歌も、良かったですねえ。♪私は今日まで生きてきました。時には誰かを傷つけながら‥‥岸田今日子、三國連太郎、高橋悦史といった演技派が、新人の高橋洋子を盛り立てながら、非常にリアリティあふれる、味のある演技をしていたのがまた素晴らしい！あ、それから、これまた新人の秋吉久美子も、小野寺久美子の名で出ているんですよね。つまりこの映画は、高橋洋子、秋吉久美子のデビュー作なのです！高橋洋子はこの映画から１０年後、小説「雨が好き」で文壇にデビューし、女優業はほぼ廃業。秋吉久美子は今でも個性派女優として大活躍です。★もっと斎藤耕一監督！★あの頃映画 松竹DVDコレクション 70's Collection::内海の輪 [ 岩下志麻 ]価格：2525円（税込、送料無料) (2022/6/16時点)楽天で購入虹の中のレモン [ ザ・ヴィレッジ・シンガーズ ]価格：2525円（税込、送料無料) (2022/6/16時点)楽天で購入【中古】 無宿 ／高倉健,勝新太郎,梶芽衣子,斎藤耕一（監督）,青山八郎（音楽） 【中古】afb価格：1980円（税込、送料別) (2022/6/16時点)楽天で購入にほんブログ村
2007.05.17
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３つのポップなストーリー展開★「ラン・ローラ・ラン」
観ていて「あれれッ？」と意外性のある映画は、世の中に数多いですが、この作品ほど意外性が満載で、また忙しく、めまぐるしいものは、観たことがありませんでした。1998年のドイツ映画「ラン・ローラ・ラン」です！【中古】ラン・ローラ・ラン [DVD]午前11時40分、ベルリンの大手銀行頭取の娘ローラの部屋に、裏金運びをしている恋人マニから電話が‥‥！「運んでいた裏金10万マルクを、電車の中に置き忘れた。12時までに金をボスに渡さないと、殺されるんだ！助けて！」ローラは恋人を助けるため、パパが頭取を務める銀行へと、真っ赤な髪をふり乱しながら、ベルリンの町を西へ東へ走る走る！走りに走って、12時前に銀行に着くと、パパは愛人と密会中。10万マルクが手に入るどころか、パパに「ママとは離婚する。それにお前は私の子じゃない」と言われ、大ショック！‥‥と思ったら、ローラは自分の部屋に戻っていて、時間はマニから電話がかかってきた時にさかのぼっていた‥‥パパの銀行へと、またベルリンの町をひた走るローラ！今度はパパを人質に銀行強盗をやることに‥‥！ローラが恋人のために金を工面しようとする過程を、３つのパターンに分けて見せているのが、このちょっと変わった映画の醍醐味です。また、原色の赤の髪に、マリンブルーのキャミソール姿で、ベルリン市街を縦横無尽にひた走るローラの姿が、なんともポップでファンキーです。少々驚いたのが、ローラがキャミソールの下にブラジャーをつけていること。ドイツの女性って、そういうコーディネイトを普通にするんでしょうか？それとも演出？ローラが走り始めると、画面が一転トボケたアニメーションになり、かなりデフォルメされた赤い髪のローラが走るのがまた、面白い！こんなところでアニメを使うなんて、意外でした！それから、「あれッ？」と目を見張ったのは、ローラがすれ違う人々のその後の人生をものすごいスピードで描写しているあたり。ドイツの気鋭トム・ティクヴァ監督のセンス、なかなかユニークですね。カメラ･ワークがまた、ダイナミックというか、めまぐるしいというか‥‥観ていて何度も瞬きしちゃいましたね。女の子が恋人を助けるために、街を走るだけ‥‥たったそれだけの内容を、よくもここまで、意外性満載の超ユニークな映画に仕立てたものです！製作費もそんなにかかっていそうもないしね‥‥面白い映画って、やっぱりまず「発想」ですよね。手垢のついたテーマでも、ちょっと視点を変えて、シナリオ作りをする‥‥これ大事です！それと、これは冒険ですけど、今まで誰もとらなかった斬新な手法を、あえてとる（でも観客にウケなかったら、悲惨‥‥）。これができない映画人は失格だと、モイラは思います。ラン・ローラ・ラン映画ポスター【RUN LOLA RUN】 Lサイズ 通販 楽天 販売 プレゼント
2007.05.15
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コルトを手にした男のさだめ★「拳銃無頼帖 電光石火の男」
日本のジェームズ･ディーンこと赤木圭一郎（愛称トニー）は、赤木圭一郎★ベストセレクション/黒い霧の町、打倒（ノック・ダウン）他、全18曲【新品CD】わずか２年あまりの俳優人生の中、２４本の映画に出演し、中でも「拳銃無頼帖」シリーズは、人気を呼び、計４本、製作されました。きょうは２作めの「拳銃無頼帖 電光石火の男」（'60年 日活）について書きますね！【中古】DVD▼拳銃無頼帖 電光石火の男▽レンタル落ち3年前、ハイライト興業の元幹部の丈二（赤木圭一郎）は、敵対する大津組の親分仁作（菅井一郎）を闇討ちしたボス麻島（藤村有弘）の身代わりに刑務所入りし、出所後、喫茶店を経営する恋人の圭子（浅丘ルリ子）と会うため、かつてのシマに戻ってきた。ところが圭子は、仁作の息子でエリート刑事の昇（二谷英明）と婚約していた。丈二はショックを受けたが、圭子の幸せを願い、断腸の思いで別れることにした。そんな時、丈二は列車の中でチンピラにからまれているのを助けたクラブ歌手のジーナ（白木マリ）に求愛され、そこにかつての彼女の情夫で、やはり拳銃使いの五郎（宍戸錠）が現れた。五郎は大津組に雇われた男で、麻島は丈二に彼を消すように命じた。２人の女をめぐっての恋の攻防戦、昇を先頭に暴力団を一掃しようとする警察の手、そんな中でも火花を散らす双方の暴力団‥‥！拳銃使いには、明日も安住の地もないのか‥‥一歩間違えれば、東映ヤクザ映画のような日本的泥臭さが出てしまうところを、赤木圭一郎のエキゾチックな風貌、彼と宍戸錠とのしゃれた言葉のかけあい、白木マリ、藤村有弘の無国籍的な雰囲気が、この映画を「ヤクザ映画」ではなく、フランスあたりの「ギャング映画」のような仕上がりにさせています。（あ、モイラは東映ヤクザ映画も好きなんですよ。念のため‥‥）特にこの作品で目を見張るのは、バイプレイヤーたちの個性！白木マリ演じる、やや人生に投げやりなクラブ歌手ジーナは、どこか「モロッコ」のマレーネ･ディートリッヒを彷彿とさせていましたし、ヤクザの親分の子であり、また丈二の行く末を案じながらも、刑事という立場から暴力団を壊滅させようとする昇役の二谷英明も、役になりきっていましたね。丈二を憎みながらも、彼の拳銃の腕前と潔さに惚れる五郎役の宍戸錠は、お約束の役柄ですが、あの独特の不敵な笑顔と、ボソリとしたセリフが、しびれます。でも、モイラが一番ぐっときたのは、藤村有弘演じるボス麻島。刑事たちがナイト･クラブに踏み込むと、ピアノを一節弾き、祖国を思い出してか、遠くを見るような目になり、北京語（たぶん）で何か言い、無抵抗で手錠をかけられると、どこかほっとしたように、「これも何かの運命ね‥‥」とつぶやく姿‥‥切なかったですね。この人、日活アクションではよく中国人の悪漢役を演じていますが（当時は三国人という差別語を使っていました）、この作品の中国人役が、一番印象に残っています。新人の吉永小百合が、チンピラと恋仲になる清純なウエイトレス役を演じていたのも注目！恋あり、裏切りあり、決闘ありの、第一級娯楽アクションです！★トニーよ永遠に！★【バーゲンセール】【中古】DVD▼俺の血が騒ぐ▽レンタル落ち紅の拳銃【邦画 中古 DVD】メール便可 レンタル落ち男の怒りをぶちまけろ/赤木圭一郎 浅丘ルリ子【中古】【邦画】中古DVDにほんブログ村
2007.05.14
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償い、そして闘い‥‥★「ミッション」
ローランド・ジョフェ監督は、カンボジアの悲惨な内戦を描いた社会派名作「キリング・フィールド」で、演出家としての力量のすごさを世界に伝えましたが、'86年に撮ったイギリス映画「ミッション」も、スケールや感動の大きさでは負けていません。[DVDソフト] ミッション スペシャル・エディション18世紀半ば、南米を流れるイグアス川上流のインディオの村に、キリストの福音を伝えに来たイエズス会のガブリエル神父（ジェレミー・アイアンズ）。神父は、村人をさらっては売り飛ばす奴隷商人メンドーサ（ロバート･デ･ニーロ）の存在に、心を痛めていた。そのメンドーサはある日、三角関係から実弟を殺し、監獄に入れられた。ガブリエル神父は、メンドーサに罪の償いをさせるため、彼を獄舎から出し、神の働き手となるように言った。イエズス会の目標は、巨大なイグアスの滝の上に教会を建てること。メンドーサはくる日もくる日も重い荷物を背負い、轟々と落ちる滝の横の険しい岩場を登った。メンドーサを悪魔のように恐れていた村人たちも、黙々と神の働き手として重荷を背負う彼に、心を開くようになった。数年後、滝の上に教会が完成。メンドーサは見習い神父となっていた。インディオたちも次々と信徒となり、この地に楽園が誕生したかの様相を見せた。ところが‥‥南米を植民地とするスペイン、ポルトガル両国は、イエズス会の勢力拡大を恐れ、会の神父たちを南米から追放させようとするのだった。そしてついに、両国は軍隊まで差し向け‥‥！「アメイジング・グレイス」という、日本でも知られた賛美歌がありますが、これはアメリカの奴隷商人だった男が、自分の罪を悔い改め、神に感謝する歌です。この「ミッション」は、まんま「アメイジング・グレイス」の世界なんですよね。強欲で残酷な奴隷商人だった男が、犯した罪を悔い改めながら、重荷を負って険しい岩場を一歩一歩踏みしめる姿は、感動的でした！撮影のスケールも半端じゃない！よくまああんなすさまじい大滝を、スクリーン一杯に撮ったものです！本来なら死刑になってもおかしくない殺人犯なのに、神の大きな愛によって救われ、神のよき働き手とされる‥‥これぞ福音ですね！初めはインディオたちに受け入れられないキリスト教が、やがて広まり、幼い男の子が美しい歌声で賛美歌を歌います。でも為政者は、「オウムの口まね」と鼻であしらい、彼らを野蛮人としか見ず、植民地支配をますます強化し、私服を肥やすことばかり考えます。そんな為政者に怒りをあらわにするメンドーサと、いさめるガブリエル神父。二人の性格の対比が、よく描かれていましたね。メンドーサ役のデ・ニーロも名演でしたが、「神から遣わされた愛の人」でありながら、岩のような厳しさも持ち合わせているガブリエル神父役のジェレミー・アイアンズが、迫真の演技をしていましたね。神の愛と人の愛、そして人の残酷さを、冷静に、しかし壮大に描いた叙事詩です！
2007.05.13
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ハリウッド大作に負けてないっす！★「妖星ゴラス」
謎の星が地球に接近し、近く衝突の危機あり‥‥！と聞くと、'98年のハリウッドＳＦ大作「アルマゲドン」を、真っ先に思い浮かべる映画ファンが多いことでしょう。でも、ちょっと待ったあ～～!!実は「アルマゲドン」よりも実に４０年近くも前に、同じ題材のＳＦ大作が、わが国で作られているのですぞ！その名も‥‥「妖星ゴラス」！1962年の東宝作品です！妖星ゴラス(DVD) ◆20%OFF！園田艇長（田崎潤）率いる土製探検宇宙船隼号が火星軌道を通過した時、地球から一報が来た。「新しい星を発見！」宇宙学者の田沢（池部良）、河野（上原謙）たちが急いで調査に乗り出した結果、そのゴラスと名づけられた新星は、地球の六千倍もの大きさで、ゴラスは徐々に地球に接近し、やがて衝突する恐れがあることがわかった。巨大な妖星ゴラスを、爆破させる手立てはない。となると‥‥地球そのものがゴラスから逃げるために、軌道を変えさせるほかない！国連の要請で、南極大陸に原子力ジェットパイプが建てられ、とてつもなくすさまじい原子力で、地球は自らその軌道を変えることに成功した！ところが‥‥むりやり軌道を変えたために、はるか昔に滅亡したはずの恐竜が現れるという天変地異が起こってしまった！追い討ちをかけるように、暴風と大洪水が地球全土を襲い、地球は危機にさらされるのだった‥‥この作品で目を見張るのが、原子力パイプが作られる南極の特撮セット！よくまあここまで緻密なセットを作ったものだと、ため息が出ました。さすがです、円谷英二大先生‥‥「謎の星が接近して地球と衝突の危機、それを回避するために地球そのものの動きを変えてしまおう」という発想がまた、当時としてはかなり思い切ったというか、斬新ですよね！その結果、天変地異が次々起こり、東京が大洪水に見舞われ、東京の象徴である東京タワーまでが水没しかけるシーンは、ド迫力でした。志村喬、田崎潤、平田昭彦、水野久美、白川由美といった東宝特撮ではおなじみの顔や、西村晃、天本英世といった個性派俳優が顔を出しているのが、映画ファンにはうれしい作品です。ただちょっと不満だったのは、主役の池部良。この人、顔はいいけど、演技力がイマイチなんですよね。大作映画「蒼き狼」で主役をおろされたのも、俳優としては一度も賞をとったことがなかったのも、頷けます。彼が初めて賞をとったのは、漫画家の父親について書いたエッセイ「そよ風、時にはつむじ風」でだそうです（日本エッセイストクラブ賞）。文才には恵まれていたんですね。この映画、ハリウッドのＳＦ大作には負けていませんよ～！本多猪四郎監督の演出と、木村武の脚本、小泉一の撮影、そして何より、円谷英二大先生の特撮の勝利です！★東宝特撮万歳！★《送料無料》（サントラ） 大怪獣伝説 東宝特撮映画メインテーマ大全集(CD)ゴジラ（東京SOSモデル）いぶし東宝チャンピオンまつり ゴジラ ソフビフィギュア(取り寄せ)
2007.05.12
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友人に陥れられた男の悲劇★「フレンジー」
サスペンス・ホラーの巨匠と言えば‥‥ジャ～～ン、この方ですね！アルフレッド・ヒッチコックを楽しむロンドン生まれのアルフレッド・ヒッチコックは、サイレント時代のイギリス映画界でデビュー。監督３作目のサスペンス映画「下宿人」（'27年）が高い評価を得て、'29年にはイギリス初のトーキー映画「ゆすり」を撮り、'38年の「バルカン超特急」で、映画界の頂点ハリウッドの目にとまり、'39年からは主にハリウッドで活躍し、「レベッカ」（'40年）、「見知らぬ乗客」（'51年）、「めまい」('58年）、「サイコ」（'60年）などの傑作を次々に発表、「サスペンスの帝王」の名をほしいままにし、'80年、亡くなる少し前に、母国イギリス王室から、映画での功績を称えられ、サーの称号を賜りました。きょうはそんなヒッチコックの晩年の作品で、彼の生まれ故郷ロンドンを舞台にした秀作「フレンジー」('72年）をとりあげます！フレンジー（期間限定）(DVD) ◆20%OFF！白昼のロンドン、人々が集うテームズ河の岸辺に、全裸の若い女の死体があがった。女の首に巻かれたネクタイ‥‥女はネクタイで絞殺された模様だった。捜査にとりかかるスコットランド・ヤードのオックスフォード警部（アレック・マッコーエン）たち。そのころ、パブを解雇されたブラニー（ジョン・フィンチ）は、友人のラスク（バリー・フォスター）や、別れた妻で結婚相談所を経営するブレンダに助けを求めていた。ブレンダに冷たくあしらわれ、腹を立てながらも立ち去るほかないブラニー。その翌日、ラスクがブレンダの結婚相談所を訪れ、彼女を犯し、ネクタイで首を絞めて無惨に殺した！ラスクが犯行を終えて立ち去った少し後に、ブラニーが再び訪れるが、オフィスに鍵がかかっているので、やむなく引き返した。ところが、ブレンダの秘書に姿を見られたことから、ブラニーはネクタイ絞殺犯に間違えられ、逃亡するはめに‥‥！そんな時、今度はブラニーと関係のあった女バブスが、ラスクの手にかかって惨殺され、ブラニーの立場はますます危うくなった。彼は逃げ場を失い、友人ラスクのもとに駆け込むが、ラスクは密かに彼を警察に売る。ブラニーは最初から、友人と思っていた男に、まんまとはめられていたのだった‥‥！解雇された挙句に、友人にはめられ、猟奇殺人犯の汚名を着せられる不運すぎる男を、ジョン･フィンチが熱演していました。迫力があったのは、猟奇殺人犯役のバリー・フォスター。女を陵辱し、"Lovely!Lovely!"と、あえぐように叫びながら、ネクタイで首を絞めて殺す時の鬼気迫る表情‥‥！観ていて背筋に冷たいものが走りましたね。バブスを殺し、死体をじゃがいもの袋に詰めて、野菜運搬のトラックの荷台に乗せたもののネクタイピンをもぎとられたことに気づいて、あわてて発車したトラックの荷台に飛び乗り、硬直した死体の指の骨を、ボキッ、ベシッと一本一本へし折って、ネクタイピンを取り戻すシーンも、ぞ～っとしました。指の骨をへし折る時の、なんとも不気味な音が、今でもモイラの耳にこびりついて離れません。しかし、身の毛もよだつような場面が続く一方で、ほのぼのとした一幕も見せてくれます。それは、オックスフォード警部の妻が、ウズラのブドウ煮といった、変わった料理を次々作っては、夫に食べさせる場面。連日の捜査で疲れて帰ってきた警部は、妻が得意げに出す料理を、実にイヤそうに食べていましたね。（モイラはウズラのブドウ煮、なんかちょっと食べてみたいような気がしますが‥‥）ヒッチコック一流の、英国人らしいちょっと意地悪なジョークのサービス、といったところでしょうか。ラストは‥‥「う～む、さすがヒッチコック！」とうならせるような、素晴らしい幕切れです！★サスペンスの巨匠ヒッチコック！★ 見知らぬ乗客グレース・ケリー／ダイヤルMを廻せ！ 特別版 ロープ
2007.05.11
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喜八流ブラック･コメディの決定版！★「殺人狂時代」
「殺人狂時代」と聞いて、真っ先にチャップリンのあの名作を思い浮かべる映画ファンは、正統派。一方、岡本喜八監督の作品を思い浮かべる映画ファンは、マニアックでカルト趣味入ってる人でしょうね。40年も前の作品にもかかわらず、いまだにカルト映画マニアの間で人気が高く、日本のカルト映画ベスト10の上位を占めるこの作品は、モイラもめっちゃ好きです！【中古】 殺人狂時代 ／岡本喜八（監督、脚本）,都筑道夫（原作）,仲代達矢,団令子 【中古】afbさえない大学講師・桔梗信治（仲代達矢）はある晩、「大日本人口調節審議会」のメンバーを名乗る男の訪問を受け、危うく殺されそうになる。この「大日本人口調節審議会」の会長は、ヒトラーに心酔する精神病院の院長（天本英世）。ナチスの残党を幹部とし、人口を抑制するために、不要な人間を抹殺するのが、審議会の目的。その審議会によって、信治は電話帳から無差別に選ばれ、抹殺の標的とされたのだった！信治はわけのわからぬうちに、単身審議会と闘うはめに‥‥そんな彼を、スクープを狙う記者・啓子（団令子）と、泥棒のビルが助ける。次々と信治に凄腕の刺客を差し向ける審議会。さて、信治、啓子、ビルの運命やいかに‥‥?!オープニングの精神病院のシーンから、度肝を抜かれましたね。さまざまな狂人たちの狂乱のオンパレード！テレビの地上波では絶対流せません。院長役の天本英世がナチスの残党とドイツ語で会話するところも、すごい！そのあとのタイトルバックがまた秀逸！トリスで有名な柳原良平氏のアニメーションが、コミカルでちょっとシニカルなのです。彫りの深い美男子の仲代達矢が、貧乏臭くてさえない大学講師を演じているのも見もの。やっとこさ走っているようなボロ車に乗り、狭いアパートで当時出始めのインスタントラーメンを食べる様子が、おかしかったです。啓子役の団令子もお色気ムンムン。審議会の刺客たちも、義眼に毒針を仕込んでいる女、松葉杖からメスを発射させる男等、非常に個性豊かでした。しかし一番個性的で、観客の目をひきつけるのは、やはり岡本喜八監督の独自の演出ですね。信治のボロ車が走る時などの効果音、次々と信治たちに返り討ちにあう刺客たちの死に様が、なんともユーモラス！他の監督には絶対真似のできない演出‥‥まさに喜八流ですね！最もむずかしい分野であるブラック･コメディのツボを見事に押さえていて、ここぞという部分で、ユニークなカメラワーク、笑える効果音、観客をあっと驚かせる展開など、才能あふれる演出力を発揮する‥‥う～ん、名監督です‥‥！岡本喜八監督は、デビュー作「結婚のすべて」（'58年 東宝）から、「助太刀屋助六」（'01）まで、のべ３９本の映画を撮り、2005年２月１９日、食道がんで亡くなりました。映画にすべてをかけた、81年の生涯でした。★爆発！喜八流★【中古】 独立愚連隊 ／岡本喜八（監督、脚本）,佐藤允,雪村いづみ 【中古】afbああ爆弾(DVD) ◆20%OFF！ダイナマイトどんどん [DVD]にほんブログ村
2007.05.10
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異星人、デビルス・タワーに現る！★「未知との遭遇」
この世に映画が誕生して間もない1902年に、ジョルジュ・メリエスが「月世界旅行」を製作して以来、世界各国で数多くのＳＦ映画が作られましたが、特にＳＦのファンでもない人たちまでが、大傑作と絶賛してやまないのは、'77年のスティーブン・スピルバーグ監督のこの映画でしょう。【新品】 DVD洋画 未知との遭遇(ファイナルカット版)砂漠の中‥‥第二次大戦の時に行方不明となった戦闘機が、消失当時と同じ姿で発見されるという、不思議な出来事が起こった。それを皮切りに、インディアナ州の航空交信センターのモニターに、謎の飛行物体が映ったり、夜中、州内に母親と住む幼い男の子バリーが、何かに引き寄せられるように家の外に出たり‥‥また電気技師のロイ（リチャード・ドレイファス）は、踏切の手前で空を飛ぶ不思議な光を目撃。その光を追うと‥‥UFOらしい物体が！一方、発見された戦闘機の調査団の団長ラコーム（フランソワ・トリュフォー）は、ロイたちが目撃したUFOらしい飛行体と戦闘機消失の関連性を推測し、UFOとの交信方法を探り出そうとした。そしてUFO目撃後のロイの頭の中には、なぜか「山」のイメージが浮かび、バリーの母・ジリアン（メリンダ・ディロン）も、頭に浮かんで離れぬ「山」のイメージをスケッチし始めた。その山は、ワイオミング州の砂漠地帯にそびえるデビルス・タワー‥‥夜、ロイとジリアンがデビルス･タワーに近づくと‥‥昼と見まごうほどの明るい光とともに、巨大な円形の飛行物体が‥‥!!「ＳＦ映画なんて、子どもだましな‥‥」と、ふだんＳＦをバカにしていた亡き父が、この「未知との遭遇」を、半分バカにしながら観に行ったものの、映画館で大感激して帰宅するや、「いやあ～、あの映画は良かった！すごかった！」と、モイラと母にまくしたてたものです。で、モイラと母は次の土曜日、早速観に行きました。（母もＳＦ食わず嫌いで、「どうせタコみたいな宇宙人が出てくる映画でしょ」、な～んてほざいてましたね）で‥‥映画を観終わって大きく頷きました。「なるほど‥‥パパが言った通りだ」冒頭、砂塵舞う中で戦闘機が見つかるシーンで、もうスクリーンに目が釘付け。UFO出現のシーンで息を呑み、インドの山奥で大勢の行者（？）たちが、「円盤はどこから来た？」という質問に、一斉に天を指差すシーンで、心の中で拍手喝さい。そして‥‥デビルス･タワーに巨大宇宙船が降りたち、中からエイリアンが現れるクライマックスでは、もう口開けっ放しでした！あの巨大宇宙船の凝りに凝った造りといったら‥‥！わが日本が誇る円谷英二先生がご存命で、観ておられたら、きっとびっくりなさったことでしょうね。音楽も実に効果的に使われていました。スピルバーグ自らが書いたシナリオがまた、素晴らしい！消失した戦闘機、山のイメージなどの伏線の張り方が、実に巧みです。UFOを扱っているけれども、まったくマニアックでない、格調高い第一級の娯楽作品に仕上がっているのは、この優れたシナリオの賜物でしょう。主演のドレイファスは言うに及ばず、俳優陣はメリンダ･ディロン、テリー・ガーなど、当時のアメリカ映画界の演技派揃い。バリー坊や役のケイリー・グッフィーがまた、普通の人には見えないエイリアンと会話するなど、いい演技をしていましたね。フランス映画界の名監督トリュフォーが、俳優として出演していたことでも話題を呼びました。スピルバーグの監督としての、またシナリオライターとしての力量に乾杯です！★モイラが選ぶ傑作ＳＦ映画★キア・デュリア／2001年宇宙の旅惑星ソラリス(DVD) ◆20%OFF！エイリアン／ディレクターズ・カット 新生アルティメット・エディション【070330DVD】
2007.05.09
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「キル･ビル」の原点！★「修羅雪姫」
タランティーノ監督の話題作「キル・ビル vol1」で最も印象に残るのは、やはり、雪の庭園で、ブライドが白無垢のオーレン・イシイと白熱した真剣勝負を繰り広げる、あの名場面‥‥その原点が、'73年のこの日本映画であることは、映画ファンの方々ならすでにご存知でしょう。東宝 修羅雪姫明治中期、しんしんと降る雪の中、薄紫の小袖に朱のかんざし、紫の蛇の目傘をさして歩く、目元涼しげな美しい、しかしどこか翳のある若い女。女はある男に近づくや、宙を舞い、一瞬のうちに傘の柄に仕込んだ白刃で男を斬り殺した！この女こそ、生まれながらに復讐の道を生きることを運命づけられた修羅の娘・鹿島雪（梶芽衣子）、人呼んで修羅雪姫！明治６年、小学校教師の鹿島剛と息子の司郎は、日本初の徴兵制度に便乗した大掛かりな詐欺事件に巻き込まれ、詐欺グループの３人の男と１人の女に惨殺され、剛の妻・小夜（赤座美代子）は強姦された。復讐に燃えた小夜は、一味の男１人を殺すが、逮捕され、無期懲役刑をうたれた。「自分はもう監獄から出られない‥‥夫と息子の仇を討つには、もう１人子どもを生んで、その子に復讐を果たしてもらわなければ‥‥！」小夜は復讐の一念から、看守や教戒師と肉体関係を持ち、やがて女の子を生んだ。それが雪である‥‥！小夜はまもなく死に、雪は幼少の頃から道海和尚（西村晃）のもとで、厳しい剣の修行を受けた。亡き両親と兄、母の遺志を継ぎ、あたら娘時代を修羅に生きる雪。きょうも降りしきる雪の中、仕込みの白刃がきらりと光る‥‥！「修羅雪姫」というタイトルが、まず秀逸ですね。復讐にのみ生きる若い娘の壮絶な生きざまを、この「修羅雪姫」の一言で表現しています。梶芽衣子がまた美しく、凄みすら感じさせます。蛇の目傘を手にひらりと宙に舞い、仕込みの白刃を一振りする華麗な動き！思わずため息が出ましたね‥‥東映の「さそり」の時もそうでしたが、この映画でも彼女はまったく笑わず（ご本人は大変な笑い上戸だそうですが）、厳しい表情の中にも、時折寂しさやむなしさを、ふっと見せていて、そこがまた観客の心をひきつけるのです。仇役の岡田英次、仲谷昇、中原早苗も、悪役の定番といえば定番ですが、いかにも根っからのワルを感じさせる演技をしていました。特に中原早苗は、ふてぶてしい悪女を演じたら天下一品ですね。復讐の一念で、好きでもない男たちに身をまかせる小夜役の赤座美代子（この頃は藤田敏八監督夫人）は、大変な熱演でした。２時間ドラマのバイプレイヤー（ちょっと意地悪な、どちらかというと貧乏くさいオバサン役）として、しょっちゅう起用されるの、わかります。華族や名士たちがドレスやタキシードで着飾ってダンスをする鹿鳴館に、雪が変装して乗り込むラスト･シーンも、忘れられませんね。あの血しぶきのすごさ！西洋文化と日本古来の文化がミックスした明治中期という時代設定、華麗な剣のアクション、修羅に生きるヒロインの凄絶なまでの美しさと哀しさ‥‥タランティーノ監督が絶賛するわけですよ！'67年、「非行少年 陽の出の叫び」で監督デビューした藤田敏八は、「野良猫ロック」シリーズを手がけ、「帰らざる日々」「天使を誘惑」などの青春映画を数多く撮り、青春時代、「帰らざる日々」を観て泣きに泣いたモイラなどは、どちらかというと「青春路線」の監督だと思っていました。ところがある時、名画座でこの「修羅雪姫」を観て仰天！「え～ッ、藤田監督って、こういうアクションものも撮っていたんだあ～?!」モイラが学生の頃は、藤田敏八特集を名画座やオールナイトで組んでも、上映されるのは、定番の秋吉久美子三部作（「赤ちょうちん」「妹」「バージンブルース」）や、「陽の出の叫び」「帰らざる日々」といった青春ものばかり（だったような気がします‥‥）。だから「修羅雪姫」を観た時は、とても新鮮な気分でしたね。あ、ついでに、梶芽衣子歌う主題歌「修羅の花」（「キル・ビル」でもサビの部分が流れていました）も、「怨み節」同様、モイラのカラオケ十八番です。★もっと藤田敏八監督！★八月の濡れた砂(DVD) ◆20%OFF！帰らざる日々(DVD) ◆20%OFF！ダイアモンドは傷つかない(DVD) ◆20%OFF！
2007.05.08
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哀しくもやるせない不倫の恋‥‥★「ヘッドライト」
きのう、フランスの新しい大統領がサルコジ氏に決まりました。そのフランスの映画界、否、ヨーロッパ映画界の大統領クラスだった役者といえば‥‥やはり、ジャン・ギャバン（1904－76）でしょうね。きょうはギャバンの初老期の傑作、アンリ・ヴェルヌイユ監督の「ヘッドライト」（'56年 フランス）について語らせていただきます！【中古】 ヘッドライト HDリマスター版 ／ジャン・ギャバン 【中古】afb50歳にさしかかろうとする長距離トラックの運転手ジャン（ジャン･ギャバン）は、運転手たちが仮眠するボルドーに近い国道沿いの宿「キャラバン」で、若い女中のクロチルド（フランソワーズ・アルヌール）と出会う。疲れたジャンを気遣う心優しいクロチルド。長距離運転でくたくたになり、パリ下町のアパルトマンにあるわが家帰っても、妻は冷たく、娘は生意気盛りで反抗的。一方クロチルドも、母親に若い男ができたことから、家で居場所をなくし、この宿に住み込みで勤めていた。ジャンとクロチルドは、似たような身の上から、次第に惹かれあい、年齢差を越えて結ばれる。ところがジャンは、些細なことで雇い主ともめ、職を失ってしまう。追い討ちをかけるように、クロチルドがジャンにあてた手紙を娘が読んでしまったことで、不倫が妻子にばれ、ジャンは自暴自棄になってアパルトマンを出る。そして、クロチルドのお腹の中には、ジャンの子が‥‥妻と３人の子のために、長距離ドライバーという苛酷な仕事を50歳近くにもなって続けてきたのに、気がつけば、家族は自分に背を向けていた。そんな時に出会った心優しい若い女と、深い関係に‥‥なんだかとても日本的なストーリー展開だなあと、思いました。何十年間も黙々と働いてきた無骨な運転手を、ギャバンが好演していました。この人、悪役も上手だけど、パリ下町に住む庶民の役もうまいなあと、舌を巻きましたね。F・アルヌールも、若いのに苦労を重ねた翳のある女クロチルドを、上手に演じていました。悲しげに眼を伏せてうつむいた時の表情などは、薄幸の女そのものでしたね。また、当時のフランスは日本のように病院で堕胎ができず、望まない妊娠をした女性は、すべてヤミ堕胎に頼るしかなかったのです。そのやり方も、先の曲がった針金で胎児をかき出すといったひどいもので、もちろんろくな処置もせず、何人もの女性が命を落としたそうです。クロチルドもそんなヤミ堕胎に頼って、命を縮めてしまいます。救いのない話の中で、ジャンの下の子ども（小学生の男の子）が、なかなか可愛らしいところを見せていましたね。不倫がばれて憤然と家を出たジャンが、ばったり下と会って、「パパ、テストでいい点とったよ！」と弾んだ声で答案を見せられると、「偉いぞ」とにっこり笑って頭を撫でるシーンが、非常に印象的でした。ギャバンは代表作の「望郷」「シシリアン」でもそうでしたが、やるせなさや哀しみを表現するのが、本当に上手だなあと、痛感しました。★もっとジャン・ギャバン！★大いなる幻影 ジャン・ギャバン/ピエール・フレネー【中古DVD/レンタル落ち/送料無料】IVCベストセレクション::愛情の瞬間 [ ジャン・ギャバン ]望郷 / ジャン・ギャバン【字幕・吹き替え】【中古】【洋画】中古DVDにほんブログ村
2007.05.07
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野望の果てに‥‥★「蜘蛛巣城」
黒澤明監督は、「白痴」「どん底」など、海外の名作小説や戯曲を翻案した映画をいくつか作りましたが、かのシェイクスピア３大悲劇のひとつ「マクベス」を日本の戦国時代に舞台を置き換え、見事なまでの様式美をこらして作ったのが、1957年の「蜘蛛巣城」（くものすじょう）です！蜘蛛巣城(DVD) ◆20%OFF！蜘蛛巣城の城主・都築国春に仕える鷲津武時（三船敏郎）は、親友の三木義明（千秋実）と共に、謀反を企てた北の館の軍勢を破った。その帰り、城下に広がる鬱蒼とした蜘蛛手の森の中で迷い、物の怪の老婆（浪花千栄子）に出会った。「鷲津武時様、あなた様は今宵から北の館の御殿様。やがては蜘蛛巣城の御城主様‥‥」老婆の予言通り、武時は武功により北の館の主となり、義明は一の砦の主となった。武時は喜んだが、自分は北の館の主で十分、蜘蛛巣城の城主になるなどと大それた夢は持つまいと思ったが、異常なまでに強欲で腹黒い妻の浅茅（山田五十鈴）は、武時をそそのかした。「もし義明様が殿に物の怪の予言のことを漏らせば、あなたもこのままでは済みますまい。殿に斬られるか、殿を殺して城主になるか、ふたつにひとつです‥‥」口では否定しながらも、妻のそそのかしに次第にのせられてしまう武時。そして、城主国春が北の館に逗留した夜、ついに主君に刃を‥‥！しかし、同時に武時は、自らを滅ぼす道へ一歩踏み出してしまったのだ‥‥！さしたる野望も持たない、どちらかというと気弱で小心者の武時が、妻の悪魔のささやきにのせられて、次第に悪鬼へと変貌し、屍の山を築き、血しぶきを全身に浴びる‥‥そんな武時の心のざわめきが、昼間でも変に薄暗い北の館の広間、そこに飛び込むおびただしい怪鳥の群れ、墨のように黒い夜空、動く蜘蛛手の森の木々などで、不気味に表現されています。中でも際立っているのが、腹黒い妻・浅茅の表情と動き！能面のようなメイクをし、ほとんど表情を動かさず、手足の動きも能役者のように、静かにゆっくりと‥‥それゆえに、この浅茅という女が、ひどく恐ろしく眼に映ります。撮影ではおびただしい数の鳥を使っていますが、渋谷の二軒のペットショップで、鷹、カラス、野鳩などをなんと千羽も借りてきたそうな‥‥（でも半分くらいどこかに飛んでいってしまって、半分くらいしかお店に返せなかったとか）さすが、こだわりを見せる黒澤監督です。もし今、監督がご存命で、この映画を撮影するとなっても、ＣＧなど自らの誇りにかけて使わなかったと思います。監督のもうひとつのすごいこだわりは、ラスト･シーン、武時が悲鳴をあげ、取り乱して逃げ惑いながら、弓矢の雨あられを受けるところで、なんと本物の矢を使ったことです！監督からその話を聞いた三船敏郎はビビりまくって、「それなら俺は役を下りる！」と言ったそうですが、スタッフに説得されて、本物の矢を受けることを承諾し、弓矢の名手たちが扮する兵士たちの的となったのです。さすがは世界のミフネですね！役者魂、入ってます！独特の様式美とリアリティにこだわった時代劇の大傑作‥‥もうこんな映画、作られることはないかなと思います。★世界のミフネ！★レッド・サン ニューマスター版【GNBF-5054】=＞レッド・サン ニューマスター版太平洋の鷲(DVD) ◆20%OFF！ミッドウェイ 特別版 / 洋画
2007.05.06
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下劣な天才と品格ある凡人★「アマデウス」
「天才とキ○○イは紙一重」ということわざがありますが、とかく天才と呼ばれる人は、常識というものを守らない（正確には「守れない」）、破天荒な輩が大多数、生まれついての生活破綻者も少なくないようです。音楽一家に生まれ、幼い頃から音楽の才能を発揮して神童と呼ばれ、数々の名曲を世に残したヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト（1756－91）など、その典型なのではないでしょうか‥‥きょうはそのモーツァルトに関連する1984年の名作映画をとりあげます！アマデウス [ F.マーリー・エイブラハム ]価格：1320円（税込、送料無料) (2022/7/17時点)楽天で購入1823年晩秋の夜、古びた屋敷に住む老人アントニオ・サリエリ（F・マーリー・エイブラハム）が、「モーツァルト、許してくれ！君を殺したのは私だ！」と叫び、首に刃物を突き立て、自殺をはかるが、精神病院に運ばれ、一命をとりとめた。サリエリは見舞いに訪れた神父に、今まで胸に封じ込めておいた過去を出来事を告白。かつてサリエリは皇帝ヨゼフ２世（ジェフリー・ジョーンズ）に仕えた宮廷楽長。少年の頃から音楽を志し、「もし音楽の才を与えられるのならば、神の下僕となり、一生童貞を守る」と神に祈り、大変な努力の末に宮廷楽長という、オーストリア音楽界の最高権威にまでのぼりつめた。ところが‥‥一人の男の登場が、オーストリア音楽界の最高権威サリエリのプライドを、完膚なきまでにうちのめした。その男の名はモーツァルト！（トム・ハルス）モーツァルトは女好きで、振る舞いも下品そのもの。しかし、そんな下品な男が作る音楽は、まるで神の声のように、サリエリには聞こえたのだ！天才モーツァルトに比べたら、自分など凡庸な音楽家に過ぎない！サリエリはモーツァルトに激しく嫉妬し、その嫉妬はついに殺意にまで発展するのだった‥‥！監督は「カッコーの巣の上で」のミロシュ･フォアマン。かつて栄華を誇ったハプスブルグ王家の豪奢な宮廷、華麗な劇場などのセット、当時の女性の衣装などが、素晴らしく美しかったです。当時のウイーンの暗く、不気味な路地裏なども、上手に撮っていましたね。この映画はピーター・シェーファーの戯曲が原作で、原作者シェーファー自身が映画用にシナリオを書き換えています。シナリオも見事でしたね！老サリエリが過去を回想するという形で、物語は展開するのですが、サリエリのモーツァルトへの嫉妬心と、どれほど憧れ、努力しても手の届かない「天才」の座への渇望が、全篇に表現されていました。主人公サリエリを演じたエイブラハムも上手でしたが、それよりもっと光っていたのは、モーツァルトを演じたトム・ハルス！「あの『トルコ行進曲』や『ジュピター』の美しい旋律を作ったのは、こんな下品な若造なのか！」と、最初モイラはびっくり、やや幻滅もしましたが、天才の天衣無縫で破天荒なさまを、のびのびと演じていましたね。クラシックの天才モーツァルトが、まるでパンク少年みたいに見えました。皇帝役のジェフリー･ジョーンズにもびっくり。まるで肖像画から抜け出してきたみたいに、クラシックな雰囲気を全身から漂わせていました。「金使いの荒い悪妻」の名の高いモーツァルトの妻コンスタンツェが、ちょっとかわいらしすぎるのが、やや気になりましたが‥‥まあいいでしょう。この映画はなんと、作品賞、主演男優賞、監督賞をはじめ、アカデミー賞を13部門も受賞しています！あの超大作「ベン・ハー」だって、11部門なのに‥‥すごすぎます！残酷なまでに天才と凡人を比較した、人間観察の鋭い名作です！実はモイラは、テレビの音楽番組で、サリエリが作曲した曲を聴いたことがあるのですが、天才モーツァルトに比べたらもう全然‥‥サリエリはかわいそうだけど、忘れられてもしょうがない★天才モーツァルトの仕事★ベスト・オブ・ベスト・モーツアルト[CD] / クラシックオムニバス価格：2096円（税込、送料別) (2022/7/17時点)楽天で購入癒しのモーツァルト★新品CD6枚組価格：1510円（税込、送料別) (2022/7/17時点)楽天で購入モーツァルトと民衆の音楽2 モーツアルト:ガヴォット 第2&3番、アリア集～≪魔笛≫より、メヌエットとトリオ K・1、メヌエット 第7番 K・568、コントルタンツ 第5番 K・609、第1番 K・2 [ トビアス・ライザー・アンサンブル ]価格：1555円（税込、送料無料) (2022/7/17時点)楽天で購入
2007.05.05
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今も聞こえる「怨み節」‥‥★「女囚701号 さそり」
女子刑務所の内部を描いた、いわゆる「女囚もの」は、かつて新東宝などでも製作されましたが、1972年のこの東映映画ほど、観る側にインパクトを与えた作品はないでしょう！その映画とは‥‥「女囚701号 さそり」！女囚701号 さそり（期間限定） ※再発売 [DVD]女子刑務所で、ひたすら脱走の機会をうかがう女囚701号こと、松島ナミ（梶芽衣子）‥‥彼女は操を捧げた恋人の刑事・杉見（夏八木勲）に麻薬取引の囮捜査に利用されたあげく、ヤクザに輪姦され、ぼろキレのように捨てられた。逆上したナミは、杉見を殺しかけて刑務所に送られたのだ。憎んでも憎みきれぬ杉見への復讐心に燃えるナミだが、脱走に失敗し、両手を後ろで縛られ、芋虫のような格好で懲罰房に入れられる。やっと懲罰を解かれた頃、殺人罪で入ってきた進藤梨絵（扇ひろ子）という女囚が、ナミと同様、ほかの女囚と肌が合わず、筋金入りの女たちから罠をかけられるが、ナミがそれを見破り、梨絵を助ける。その騒動で、豊満な肢体と凄みのある美貌で、刑務所内で幅をきかせていた政木（三原葉子）が、鬼のような刑務所長（渡辺文雄）の片目をガラス片で刺す事件が勃発！所長は女囚たちに「閻魔落とし」という、穴を掘ってまた埋め、また掘るという、まったく生産性のない拷問のような懲罰を下す。疲れきった女囚たちは、日ごろの鬱憤が一気に爆発し、暴動を起こす。その時、ナミを襲う銃弾！杉見はナミを殺すべく、刑務所にまで刺客を送り込んだのだ！女囚たちの暴動の混乱に乗じて、ナミは脱走に成功。平凡な女だった自分を囚人にまで落とした憎い杉見を追いつめていくのだった‥‥！原作は篠原とおるの人気漫画。日活の「野良猫ロック」でズベ公を演じた梶芽衣子が、自分を利用し、裏切った男への復讐心に燃える女囚を、上手に演じていましたね。セリフは少ないのですが、持ち前のクールな美貌と、ミステリアスな雰囲気を最大限に使って、松島ナミになりきっていました。この映画、まるで梶芽衣子のために作られたのかと思うくらいです。歌手の扇ひろ子も、他の女囚たちとの喧嘩で、ド迫力の演技を見せていましたね。「本物の殺しってもんを見せてやろうじゃねえか！」のドスのきいたセリフ、今でもよく覚えてます。渡辺文雄もさすがベテラン、残忍な刑務所長役がなかなか堂に入っていました。冒頭、刑務所長が表彰を受けた矢先、脱走を知らせるサイレンが鳴り響き、刑務官たちが日の丸の旗を踏みつけて走り、日の丸が泥だらけになるところなどは、権力の象徴への抗議なんでしょうね。なかなか皮肉が効いています。ナミが杉見に操を捧げ、利用され、裏切られる場面で、小劇場の演劇のようなセットを使っているのもユニーク。女囚ものにありがちなキワモノめいた部分がないわけではありませんが、それを埋めてあり余るエンターティメント性、シナリオの展開の面白さ、的確なキャスティングを見せてくれる秀作です！監督は伊藤俊也。まだご覧になっていない方は、ぜひご覧あれ！★もっと梶芽衣子★新品北米版DVD！＜『修羅雪姫』『修羅雪姫 怨み恋歌』セット＞ 梶芽衣子主演, 藤田敏八監督作品女囚さそり 第41雑居房 [DVD]【中古】 劇場版 女囚さそり けもの部屋 ／梶芽衣子,成田三樹夫,李礼仙,渡辺やよい,南原宏治,篠原とおる,伊藤俊也,松田寛夫 【中古】afbにほんブログ村
2007.05.04
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災難、災難、また災難！★「クワイエット・ファミリー」
映画人だったモイラの亡父いわく、さまざまなジャンルの映画の中で、コメディがもっとも作るのがむずかしく、ひとつ間違えば、目もあてられない駄作、というか、映画にもならないカスになってしまうようです。そのコメディの中でも、さらにむずかしいのがブラック･コメディ。モイラも今まで、「ブラック･コメディ」と称する映画を何本も観てきましたが、つまらない、一人よがりのバカ騒ぎみたいな駄作も、多数ありました。しかーし‥‥！この映画は違います！その映画とは‥‥1998年の韓国映画「クワイエット・ファミリー」！クワイエット・ファミリー / コ・ホギョン会社をリストラされた初老の男が、田舎の山の中にペンションを建てるけど、待てど暮らせど客が来ない。男の妻、息子、娘、弟は、ため息をつく毎日‥‥そんな時、やっと一人のお客が来てくれた！でもなんだか、妙にくら～い雰囲気の男性。そして翌朝、その男性客の自殺死体がペンションの室内で発見‥‥！「せっかく開業したペンションにケチがついてはまずい！」と、家族は死体を裏山のふもとに埋める。その日、若いカップルの客が泊まるけど、そのカップルも翌朝、部屋で心中死体に‥‥！二日連続の客の自殺に、一家は頭を抱えるが、仕方ない‥‥！また死体を裏山のふもとに埋める。けれども‥‥それは一家が体験する災難の、ほんの序幕にすぎなかったのだ！６年前の秋でしたか、ソウルを旅行中のモイラは、夕刻、新村（シンチョン）の映画館の前を通りかかり、ちょっと不気味でユーモラスな看板と、「静かな家族」というハングルの題名と、「し～ッ！うるさくすると大変だ！」というサブタイトル（？）に惹かれて、「へえ、どんな映画だろう‥‥？」と、吸い込まれるように館内に入りました。チケット売り場で発券された座席は、一番後ろの右端（韓国の映画館はすべて座席指定）。あまり良い席ではない上に、もちろん日本語字幕もありませんでしたが、「おおッ、これは面白い！」と、ず～っとスクリーンに目が釘付けでした。まず、開業したてのペンションに次々災難がふりかかるという設定が、実に面白い！ブラック･コメディによくある設定といえばそれまでですが、そのブラック･コメディの王道中の王道を行っているのが、またいいんです！役者たちも良かったですね！会社をお払い箱になったオヤジが実にリアルな上、ソン・ガンホ、チェ・ミンシクといった韓国映画界の演技派が、脇役ながらいい味を出しているんです！その頃モイラは、お二方の名前も知りませんでしたが、のちに「シュリ」を観た時、「あッ、あの二人が出ている！」と思いましたね。当時、韓国映画は不況で、この映画、かなりの低予算で撮られたそうです。なるほど、観直してみると、随所に「ああ、お金かけてないな～」と頷けるシーンが結構あります。しかし‥‥お金をかければ良い映画ができるものでもありませんからね。監督のキム・ジウンが脚本も担当していますが、この脚本が良くできているんですね。ただ、いい加減なおじさん役のチェ･ミンシクがもうちょっと光っていて、演出にももう少しひねりというか、こだわりを入れていれば、もっと良かったんですけど‥‥正直言うと、モイラは最初映画館に入った時、それほど期待していなかったんです。今まで現地・韓国で韓国映画を結構観てきたけど、その８割までがひどい映画で、途中で何度も寝ましたから。でも、この時ばかりは良い意味で期待を裏切られましたね！１年後、またもソウルを訪れたモイラは、弘益大学近くの中古ビデオショップで、この映画のビデオを迷わず買っちゃいました（日本円でなんと300円！）。ちなみにこの映画、モイラは日本語字幕入りでは観たことありません‥‥観る機会がなくて‥‥★韓国コメディ映画、目白押し！★●ネットバンキング決済・コンビニ後払いも可能！英語完全征服 特別版反則王非日常的な彼女
2007.05.03
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機械文明への警鐘！★「モダン・タイムス」
喜劇王チャールズ･チャップリンは、ただおもしろおかしいだけではなく、ペーソス、風刺、そして何より痛烈な世相批判を織り込んだ映画を数多く世に出しました。そのひとつが、1936年の大傑作「モダン・タイムス」です！[DVDソフト] モダン・タイムス コレクターズ・エディション完全オートメーション化の大工場で働くチャーリーは、機械に翻弄された挙句、精神を壊し、入院。退院しても職がなく、とぼとぼ歩いているうちに、何気なく拾った赤旗を振ってしまい、失業者たちのデモのリーダーと勘違いされ、今度は刑務所送りに。服役中、ひょんなことから囚人たちの脱走を食い止め、刑務所で特別待遇を受け、シャバよりもいい生活を送るが、模範囚としてすぐ出されてしまう。職もなく、食えないシャバにいるよりは、刑務所のほうがましと、チャーリーは今度はレストランで無銭飲食をはかるが、それもだめ。そんな時、一人の少女（ポーレット・ゴダード）と知り合う。少女は父をなくし、幼い妹たちとも生き別れになりながらも、健気に生きていた。職も頼る人もない者同士、意気投合するチャーリーと少女。やがて少女は、レストランの踊り子、チャーリーはボーイとして雇われる。ところがチャーリーは失敗の連続‥‥オープニングからして、風刺が効いていましたね。黙々と歩く羊の大群が、巨大工場の門を通過する、無表情な疲れきった労働者たちの群れに変わる‥‥「資本家は工場労働者など家畜ほどにしか見ていない」と、冒頭から言いたかったんでしょうね。機械に振り回されるチャーリーの仕草のおかしさに、子どものころ観た時は映画館の座席から転げ落ちそうになるほど爆笑しましたが、大人になった今ではあまり笑えません。'30年代のアメリカは大恐慌真っ只中。機械化が恐ろしい勢いで進む一方、人手がいらなくなり、街には溢れんばかりの失業者。「どうにかならないのか?!経済は効率一本やりでいいのか?!」というチャーリーの怒りが、スクリーンの奥から聞こえてきました。機械文明の発展、それ自体は良いけれど、反面、人手を必要としなくなる。また機械ばかりを相手にしていると、人間も機械のようになってしまう‥‥その恐ろしさを、皮肉を効かせた風刺と、痛烈な批判をこめて、第一級の喜劇に仕立てているのだから、チャップリンという人は本当にすごい！当時の彼の妻・ポーレット・ゴダード演じる少女も、大変な名演でした。幼い妹たちを飢えさせまいと、波止場の船からバナナを盗む時の勇ましい姿は、忘れられません。またこの映画は、「チャップリンの声が聞ける！」ということで、公開当時、大層な話題になったのです。その当時、トーキーにとってかわって無声映画は徐々に姿を消しつつあったのですが、チャップリンは、「世界中の人に自分の映画を理解してもらうには、セリフに頼るトーキーではダメ。演技が勝負のサイレントでなければ！」と、トーキーを嫌っていたのですが、ついに「モダン・タイムス」で一部トーキーを採用したのです！といっても歌声、それも「無国籍語」の「ティティナ」という歌で、ですが‥‥この奇妙な無国籍後の歌を、巧みな身振り手振りをまじえて歌うチャップリンには、「う～む、さすが芸人！」と、うなりました。レストランのボーイになったチャップリンが、肉料理を運ぼうとしたら、ダンスの渦に巻き込まれ、ぐるぐる振り回された挙句、肉がシャンデリアに刺さってしまうシーンにも、大笑いしました。そして、あの感動のラスト･シーン‥‥もう何も言うことありません。「スマイル」という音楽も素晴らしかった！「どんな逆境にあっても、決して希望を捨ててはいけない！」ということを、モイラはこの映画で教わりましたね。今、人生に絶望しかけている人たちへ。この「モダン・タイムス」をぜひ一度、ご覧あれ！★もっとチャップリン！★[DVDソフト] サーカス コレクターズ・エディションチャールズ・チャップリン／ラヴ・チャップリン！ 短篇集 コレクターズ・エディショチャップリン(大人用:ハロウィン:コスチューム)Charleston Chap - Royal Adult Collection☆ギ...キッド/THE KID-ポスター
2007.05.02
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破滅への疾走★「青春残酷物語」
松竹ヌーベルバーグと呼ばれる映画が誕生したのは、1960年頃。それまで松竹は、人情の機微を丹念に描いた作品を売り物にしてきましたが、松竹ヌーベルバーグはそれとは180度異なり、人間の醜悪な側面をクローズアップし、時にギラギラとリアルに、時に乾いたタッチで描き、救いのないストーリー展開を繰り広げています。大島渚、篠田正浩、吉田喜重のお三方が、松竹ヌベールバーグの旗手ですが、きょうは大島渚監督の初期代表作で、松竹ヌーベルバーグの傑作として名高い、「青春残酷物語」（'60年）について書きますね！【中古】 青春残酷物語 デジタル修復版（Blu−ray Disc） ／桑野みゆき,川津祐介,久我美子,大島渚（監督、脚本）,眞鍋理一郎（音楽） 【中古】afb女子高生・真琴（桑野みゆき）は、友だちと一緒に男の車に乗せてもらうのを、スリルとして楽しんでいたが、ある夜、運転していた男にホテルにむりやり連れ込まれかけた。そんな真琴を、通りがかりの大学生の清（川津祐介）が助けた。翌日、真琴は清に隅田川の畔に誘われ、レイプされるように抱かれた。虚無的で皮肉っぽく、乱暴な清だが、真琴は彼の野性的なところに惹かれ、二人はほどなく同棲。清は家庭教師のアルバイト先のブルジョア夫人とも関係を持ち、彼女から金を受け取っていたが、若さと青春の無鉄砲さが、清と真琴を暴走に導いた。二人は金ほしさと面白半分から、美人局を始めたのだ！真琴が高級車に乗る男を誘惑し、ホテルの前まで誘導し、待ち構えていた清が男を脅し、金をゆすりとる‥‥しかし‥‥若い二人に待ち受けていたのは、完膚なきまでの挫折、そして‥‥破滅だった！時は日米安保闘争たけなわの頃。高度経済成長の幕開けを迎えたものの、それとは裏腹に、若者は未来に希望を持てず、持て余す若さとエネルギーを、デモ行進等にぶっつけていた時代。しかし、もっと虚無的で現実的な若者は、清のような行動をとっていたんでしょうね。ニヒルでシニカルな大学生・清を、川津祐介は見事に演じていました。事実、川津氏はこの映画に出演した頃は、清のように世の中を斜めに見ていたところがあったそうです。桑野みゆきは、ちょっと女子高生にしては老けて見えましたね、悪いけど‥‥。演技力はいまひとつでしたが、下着姿で濡れ場を大胆に披露していました。当時18歳で、大学生と寝て、妊娠し、中絶手術を受けるような「すごい役」を演じた女優は、あまりいなかったんじゃないでしょうかね‥‥中絶手術を受けて昏々と眠る桑野みゆきの枕元で、川津祐介が悲しげに、悔しげにリンゴをガリガリ齧るシーンは、秀逸でした！当時の良識派からは、大ブーイングのシーンだったそうですが‥‥出番は少ないですが、ヤクザを演じた佐藤慶も、この頃から名優の匂いを発しています。久我美子もそれまでの「大船調」とは違って、ちょっと男にだらしない役を演じていたのが新鮮でした。渡辺文雄も、敗北者の匂いのする投げやりな町医者を、上手に演じていましたね。大島渚がオリジナル･シナリオを監督した秀作で、青春の負のエネルギーによって破滅に向かう若い男女が、悲しいほどにリアルです！世間ではよく、「青春は美しく、さわやかで、明るいもの」などと言われますが、大島監督はそれに真っ向から「ノー！」をつきつけ、青春の暗さ、薄汚さ、そして徹底的な救いのなさを、冷たいくらい突き放した視線で描いています。登場人物のリアリティ溢れたすぐれたシナリオを、大島渚という映像の魔術師は、一分の隙もなく見事に演出しています。長回しを多用した撮影も素晴らしい！真琴や清に深い思い入れを抱いた若者が、大勢いたことと思います。当時、まだ庶民には高嶺の花だった自動車を小道具に使ったのも、時代ですね。松竹退社後、その活動の場をATGに移し、その秀逸な演出と独特の映像美で、名監督の名をほしいままにした大島渚。彼の傑作はたくさんありますが、モイラはこの「青春残酷物語」が一番好きですね。★もっと大島渚！★白昼の通り魔 【DVD】日本春歌考/荒木一郎[DVD]【返品種別A】帰って来たヨッパライ
2007.05.01
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