Laub🍃

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2018.01.15
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カテゴリ: 🌾7種2次表
→1
→2  『わけがわからない』
→3  『話せない』
→4  『置いておけない』
→5  『収拾がつかない』
→6  『違えない』
→7  『誘えない』
→8  『知らない』
→9  『受け止めきれない』
→10
→11  『訊けない』
→12  『救われない』
→13  『そつがない』
・過去にやってきた安居・涼・まつりIF二次創作小説
・安居(過去)を拉致し、夏B村(過去)で暮らす涼(未来)
・涼(過去)を説得し、混合村(過去)で暮らす安居(未来)とまつり(未来)


***********

カイコ      11

***********



「……え?」

 目が覚めるとあたしはどこか知らない場所に居た。


 誰かの家にあたしは居た。

「……どこ、ここ?」

 天井と、その横の窓と、あと見えないけどしっかりしたつくりの、多分新品のベッドはお店に並んでるみたいに綺麗だ。
 何ここ?現代日本?

 ……もしかしてあたしはずっと夢を見てたの?



「……どういうこと?あたしどうなってんの?」

 隕石が落ちる夢、夏のBチームのみんなと生き残る夢、ナッちゃんと親友になる夢、涼くんや安居くんがやってくる夢、二人の船出についていって、嵐に巻き込まれる夢。



「って、んなわけないよねぇ」

「あ……気が付いた?」
「ん?」


 目の前には、小瑠璃ちゃん。


「あっ、こる」
「起きたのか!!」

 小瑠璃ちゃんあなたが助けてくれたの!?

 と言いかけた言葉は変な所で途切れた。
 安居くんが凄い勢いでやってきたからだ。


「安居、どうしたの」
「小瑠璃に聞いていた様子から、今日あたり目を覚ますかもしれないと思ってたんだ」
「安居くん!ねえ、これどういうこと?あたし達の乗ってた船、壊れちゃったの?」
「どうだろうな。乗っている人間だけ放り出されたのかもしれない」
「ウソー!やだー!」
「後で探すから」
「ど、ど、どうしよう。ナッちゃんたちに合わせる顔がない!」
「ひとまず落ち着け。小瑠璃、悪いがこいつになんか飲み物と粥作ってきてくれないか?俺はこいつに色々聞きたいことがある。どこからやってきたのかとか、仲間は何人居るのかとか」
「え?え?え?」
「分かった」

 何でそんなことを訊くんだろう。一緒に旅に出たのに、まるで初めて会う人みたいに。
 でもあたしは一応空気を読んで何も訊かなかった。
 空気を読むのは得意だ。

 小さな背に固い空気を纏った小瑠璃ちゃんが、ドアを開けたまま出て行く。

「……さて、お前の名前は」
「天道…まつり……デスケド」

 同じくおかたい雰囲気の安居くんに自然と背筋が伸びて敬語になってしまう。
 これじゃいつぞやかの蝉ちんみたい。
 何で知らないの。何でこんな他人みたいな尋問されてんの。
 こういうシーン、どっか、デートで行った映画で見たよこんなの。
 子供の時ド〇えもんでも見た気がする。

 タイムリープとかタイムトラベルとかタイムスリップとかいうの。

「どこまで覚えてる」
「……えっ、とぉ……」

 …これ、言っていいのかな。駄目なのかな。
 もしかしてあたし、タイムスリップってやつ、しちゃったんじゃないのかな。
 未来に来たばっかりの安居くんと涼くん達は気が立ってたっていうし、おかしなこと言うと変なやつって思われて追い出されないかな。

「……えっと、仲間二人と船に乗ってたんだけど、放り出されちゃったかな?って感じ」
「……」

 沈黙が!!痛いよぉ!!

「その仲間は、『安居と涼』で合ってるか」
「……え?」
「俺もだ」
「ええ?」
「ここには今いないが涼も、何故か知らないが過去の混合村にやってきてしまったみたいだ。
 時期としては、俺達が追放されて夏Bの村に来る一か月前くらいだ」
「えええ!?」
「だが、それを過去の俺と過去の涼以外には秘密にしている。お前も秘密にしてくれ」
「秘密……」
「頼む」
「……分かった」
「お前は、どこかから流されてきて、この村の近くの沼に流れ着いた。
 俺と涼に発見された。その時は辛うじて意識があったから俺と涼の名前は分かるが、他の面々の名前は分からない。そういう設定にしたから、今だけでもその振りをしてくれ」
「……わ、わかった」

 こくこくと頷いた時、キュルキュルとおなかがなった。

「わわっ」
「安居、出来たよー」
「……丁度よかった」

 ドアからやってきた小瑠璃ちゃんが、あたしに水とお粥を渡してくれる。その手際は良い。

「小瑠璃ちゃん、ありがとう」

 さっき名前を呼んでた筈だから、不自然じゃないよね。

「安居、まだ訊きたいことや話したいことがあるの?出来たらこの子の体調に異常がないか検診したいんだけど…」
「……いや。ここにやってくる経緯は訊いたし、この村に居るメンバーの名前は教えた」

 あたしの方は、まだ訊きたいことがある。
 過去にあたし達がやってきたなら、過去のあたし達はどうなったのか。
 あたし達は、あの時代に戻れるのか。

 それを読み取ったかのように、安居くんはちらりとこちらを見て、言った。

「……ああ、それと涼だが……今は別件で外している。後で涼と一緒に話を訊きにくる。その時にここの事や、俺達の事を詳しく話す。それまで待っていろ」
「……うん…」

 さっきから混乱してばかりの頭に、涼くんが思い浮かぶ。

 涼くん、どうしてるかな。
 涼くんも無事でよかった。
 お粥をふうふう言いながら啜って、安居くんの背中を見送る。

「ごちそうさま!おいしかったー!」
「そう。それならよかった」

 ほんとにおいしかった。おかげで二分も経たないうちに野菜入りのお粥を完食しちゃった。器をベッドサイドの机に置いて、待ってくれていた小瑠璃ちゃんに向き直る。

「小瑠璃ちゃん、お待たせ」
「ううん。ちょっと脈と体温見させてね」
「う、うん」

 そういえば、このしっかりしたベッドは誰のなんだろう。

「……そういえば、このベッド、誰の?」
「ああ、あたしのだよ」
「え!?ごめんなさい、ずっと寝こけてて」
「仕方ないよ、一人でなんとか生きようとしてたんだから、疲れてて当然。
 あたしは別のベッド作ったし」
「えっ!?すごい!!」
「慣れてるから」

 やっぱり小瑠璃ちゃんは優しい。
 …早く、元の時代に戻りたい。
 元の時代に戻ったら早く、くりくり同盟同士集まりたいなあ。

「……異常はないみたいね」
「うん……あの、あのね、小瑠璃ちゃん」
「何?」
「ここであたし、なんか手伝えることない!?
 助けてもらってばっかりで申し訳ない……」

 小瑠璃ちゃんは無表情のまま瞬きをして、言った。

「……そうだね、体調回復したら、簡単な事から手伝ってもらおうかな。
 あなたの得意な事は何?」
「えっとねー、畑!うち、農家だったから、植物の育てるとか、食べられる物探すのとか、ちょっと出来るよ!あと美容師目指してたから髪切るの得意!あとね」
「…そっか。じゃあ、あゆちゃんと話合うかもね」
「そうなんだ!話すの楽しみー!」

 ハイテンションでバンザイするあたしに、小瑠璃ちゃんが初めて、少しだけ笑った。
 うわ、美少女だなぁ……。
 涼くんが小瑠璃ちゃんの事気にしてたのを思い出して、ちょっとジェラシー。

「また具合悪くなるかもしれないから、もう少し休んでてほしい所だけど……結構長くあなたは眠ってたから、筋肉固まらないように、軽いストレッチはしとく?一応、眠ってる間あたしもあなたの手足動かしたりしてたんだけど」
「うわ、何から何までほんとごめんなさい……」
「いいよ。私は医療クラスだから、当たり前のことをしただけ。……今は夕方だから、明日の朝もし大丈夫そうなら、他の夏Aや、混合チームの所に顔合わせに行く?」
「うん!」

 あゆさん。
 そういえば、あんまり話した事ないや。
 ナッちゃんや蝉ちん達は同じ植物チームに振り分けられたから、話してるのかもしれないけど……どんな人なんだろう。

 涼くんは他の所に行ってるって言ってたけど、朝会えるかなあ。


 ……船、ほんとにどうしよう。ナッちゃん達が見付けたのに。牡丹さんに安居くんと涼くんが頼み込んで借りてたのに。

 ……元の世界に戻れるのかなあ。

 もし、涼くんと安居くんが仲間に追放される前なら……二人は、未来に帰りたいと思うのかな。


 どきどきとわくわくと、ちょっと不安を抱えながらあたしは、小瑠璃ちゃんに手伝ってもらいながらストレッチを始めた。








【続】





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最終更新日  2018.11.24 21:16:15
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