Laub🍃

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2018.01.07
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カテゴリ: 🌾7種2次表
→1
→2  『わけがわからない』
→3  『話せない』
→4  『置いておけない』
→5  『収拾がつかない』
→6  『違えない』
→7  『誘えない』
→8  『知らない』
→9  『受け止めきれない』
→10
→11  『訊けない』
→12  『救われない』
→13  『そつがない』
あらすじ:
・外伝後安居・涼・まつりタイムスリップIF二次創作小説
・取っ組み合いの喧嘩をして逆さ吊りにされる安居(未来)と涼(過去)


******

カイコ  6

******


「小瑠璃。…ハルもだ。そいつを介抱してやってくれ」
「うん」


 小瑠璃は当然のように、ハルはひねくれた口調で返す。

「まつりって言うらしいんだが、洪水で流されてきたらしい。
 ……さっきは少し意識があったんだが、今はもう滾々と眠り続けてる」

 不自然さがないように、もしまつりが目を覚まして何か不自然な事を言っても大丈夫なように設定を作る。幸いそれに小瑠璃達が引っ掛かる様子はないようだ。

「うーん…熱はないみたいね。怪我も、そんなに大きいのはない。擦過傷や打撲痕はあるけど、頭部に目立ったものはないし…ここに来る時に体力を使い果たしたのかな…」

「…一旦、あたしのベッドを貸すよ。体拭いて、服洗濯して、後で目が覚めるハーブ系のペーストを塗ってみる」
「頼む」

 ハーブ系のペースト。ワサビを少し弱い刺激にしたようなものだ。
 昔俺もワサビで小瑠璃達に悪戯されたことがある。まつりが少し気の毒になる。

「……小瑠璃、俺が運ぶよ。大変だろ」
「ううん、大丈夫。あたし結構力持ちなんだよ。ハルは、採ってきた木材と、あたしの荷物持ってくれる?」
「……分かった」

 小柄だが、小瑠璃も夏Aだ。
 大荷物の運搬には慣れている。

「……お前、よくそんな状態で落ち着いて指示できるな」
「……うん。二人とも、罠外さなくていいの?一人じゃとりづらいよね」

 先程から逆さづりになっている俺と涼に、小瑠璃は言う。

「いい。こいつと落ち着いて話したいからな」
「頭に血が上るよ」
「心配するな」

 反動をつけて、足を縛る紐を握る。よじ登る。
 横で同じように涼がよじ登っていた。

「すご…」

 サルみたい、とハルが言っていたのは聞いていないことにする。
 涼と離れた枝に腰掛け、見守っていた小瑠璃に声をかける。

「そいつが居たら余計に話がこじれる。早く連れて行ってくれ、小瑠璃」
「……安居」
「何だ」

 じっと見詰められてたじろぐ。
 なんだ。何か不自然なことでも言ったか。

「何か…変わった?」
「……何がだ」

 他のチームへの敵愾心は確かに大きく減ったが、夏Aへの接し方はそんなに変わってない筈だ。

「……そうかな。……じゃあ、行くね」
「ああ」

 ざくざくと、まつりを背負い、罠のない場所を通って歩く小瑠璃。
 その足跡を踏んで、小瑠璃の荷物も持って歩くハル。
 まつりは未だに眠っている。

「……これからどうすんだお前」
「どうするも何も、未来のお前と過去の俺が戻ってくるまで、夏Aと混合チームと問題なくやっていくしかないだろう」
「……」

 涼が、足に絡んだ紐を解く。ほぼ同時にこちらも解き終わる。

「……異常気象の予見や、食用・非食用の植物の判別、動物への効果的な捕獲方法、飼育方法。シェルターや重要拠点の場所。……これが、黙っている条件だ」
「……ああ」

 渋面の涼がこちらを見る。
 そんな事は言われずとも伝えるのに。
 ……いや、こいつは素直じゃないから、こう言っているだけだろうな。

「任せろ」


 途端、大きな風が吹く。
 木々が揺れる。緑がざわめく。

 茂がどこかで笑っているような、そんな気がした。





【続】





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最終更新日  2018.11.24 21:24:21
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