Laub🍃

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2018.01.18
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カテゴリ: 🌾7種2次表
→1
→2  『わけがわからない』
→3  『話せない』
→4  『置いておけない』
→5  『収拾がつかない』
→6  『違えない』
→7  『誘えない』
→8  『知らない』
→9  『受け止めきれない』
→10
→11  『訊けない』
→12  『救われない』
→13  『そつがない』
あらすじ:
・過去にやってきた安居・涼・まつりIF二次創作小説
・過去にやってきた安居・涼・まつり
・安居(過去)を拉致し、夏B村(過去)で暮らす涼(未来)
・涼(過去)を説得し、混合村(過去)で暮らす安居(未来)とまつり(未来)


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カイコ        13

*************







 だが少し見ない間に人との距離感がおかしくなっていた。小瑠璃の頭を撫でることもなくなったし、あゆを筆頭に、俺以外の夏Aにどこか遠慮しているような素振りを見せている。
 他のチームに対しては比較的やんわりとした態度を取ってはいるものの、花やハルに対しては無視に近い形で接している。

 気味が悪い、大人げない、あれだったら睨まれた方がまし、などと言われているが、実のところは。


「……目を合わせたら攻撃してしまうかもしれないだろう。
 極力接しないのが最善策だ」

「この先色々あって埋めようもない溝が出来たってのはもう話したよな。
 ……当然、向こうから思い切り距離を取られたし、そもそも生活圏が重ならないよう互いに注意していた」
「……」
「俺達が船に乗ったのは、俺があそこに居るままだとあいつらも暮らしづらいと思ったからだ。……俺を庇ってくれた夏Bの立場も悪くなるし」
「……でも、今はまだそこまでの溝はねえだろう。十六夜の件は……今の所そこまで言われてないし」
「言わないだけだ。あいつらの中では燻ってる、他に俺が罪を犯した時、まとめて裁かれる」
「何が裁かれるだ。俺達がここの法だろ、保護者だろ。あいつらに裁く権限はない」
「……秋のチームだけなら、裁くとかは言い出さなかったろうな。だが、あの時は混合チーム全員に加え、俺達以外の夏Aが全員裁く立場に回った。大人しく判決に従うしかないだろう」
「……殊勝なこった」
「それに、最近気付いたんだが、暴力を振るったり見殺しにしかけた相手に普通に接されている違和感が気持ち悪い」
「こっちの世界じゃあまだやってねえだろ」
「……それでも、いつ怒りと苛立ちが暴発するか分からない。花は、周囲に親の事を知られてもいないんだぞ。知られた上で認められているならまだ納得はできるが」
「そんなの言っちまえばいいだろう。そうすれば勝手に孤立してくれるさ」
「……いや、そうすると今度は花がここの共同体から一人で逃げようとする。責任を放棄して、体のいい理屈をこじつけて、コネで選ばれた恋人の所に行って、一人楽に生きる。
 そんな様子を見たら俺は憎悪を抑えきる自信がない」
「……」

 あいつなりの冷静でいる為の方法なのだが、それを伝える手立てはない。

 ただ「あいつもお前らも無駄に気が強いから、まともに接してたら喧嘩に発展すると思ったんだろう」とだけ言っておいたが、二人は釈然としない様子だった。

 仕方がないから、あまり近付くなという警告の意味も含めて銃とナイフをちらつかせたら何故か安居が真っ青な顔で止めに来た。

「……お前……いい加減にしろよ……」
「お前こそいい加減にしろ。ここまで消極的な手段を取るなんてらしくねえぞ。
 先生達のテストで学んだだろうが、諍いの種は無視して放置しておくと大きな問題に発展するってよ」
「……分かった、それなりに対処はするから、頼むからお前は手を出すな」




 そんな会話をした数日後、何故か源五郎がサブリーダーになっていた。

「分からないことがあったら源五郎に訊け。俺に訊くな」
「他の人に指示や指導してるのは貴方じゃないですか。何であたし達だけ…」
「役割分担だ。お前達だって、俺に教わりたくはないだろう……行くぞ涼」
「別にそんな、子供みたいなこと言いませんよ!…無視しないで下さい!」
「……涼、やめろ」
「こうした方が手っ取り早いのによ」
「いいから」

 ポケットに突っ込んだ手を抑えられた。

 人のいいことで。

 そつがなく、棘が少なく、大人げない『安居』。
 その目は色々なものを諦めていて、妙に澄んでいる。
 夜中に哨戒している時も、以前のように焦点が合わない目などしていない。
 満ちる途中の月の光と、意志をはっきり宿している。

 奴等と顔を合わせる度に顔を真っ赤に、あるいはどす黒くして怒鳴っていたあいつはどこへ行ってしまったんだ。
 深夜徘徊しては俺達に心配されていたあいつはどこへ行ってしまったんだ。
 何があって、ここまで達観できるようになったんだ。

 未来から来たと言う『俺』に誘拐された我らがリーダーは、これを見たら何と言うんだろうか。
 そもそも、『俺』は我らがリーダーを何と説得して連れまわしているのやら。

 ああ、安居に会いたい。

「……涼!」
「安居!?」

 噂をすれば影。
 花を避けて山を登り川を越えて洞窟を抜けて歩いてきた俺達は、ちょうどこちらに向かってくる奴等二人と出くわした。



【続】





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最終更新日  2018.11.24 21:18:24
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