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「鮮血の処女狩り」(1970) COUNTESS DRACULA監督 ピーター・サスディ製作 アレクサンダー・パール原案 アレクサンダー・パール ピーター・サスディ脚本 ジェレミー・ポール撮影 ケン・タルボット音楽 ハリー・ロビンソン出演 イングリッド・ピット、ナイジェル・グリーン レスリー=アン・ダウン、サンダー・エルス、モーリス・デナム パティエンス・コーリアー、ピーター・ジェフリー、ジェシー・エヴァンス 本編92分 総天然色 ビスタサイズ イマジカBSで放送された「鮮血の処女狩り」(1970)を鑑賞。 英国のハマー・プロによる日本劇場未公開作品です。 17世紀のハンガリー。領主だった伯爵が亡くなり、遺言発表の場が設けられる。 伯爵夫人のエリザベス(イングリッド・ピット)、伯爵に長年仕えたドビー大尉(ナイジェル・グリーン)、博士(モーリス・デナム)、伯爵の戦友の息子イムレ(サンダー・エリス)らが集まり、娘のイローナ(レスリー=アン・ダウン)もやがて外国から帰ってくるという。 遺産相続の内容に不満を抱いたエリザベスは、その怒りを侍女に八つ当たり。暴力をふるってしまい、その血がエリザベスの顔に付着した、血を拭きとると、その部分だけお肌つるつるに若返っていた。 思わぬ若返りの方法を発見した伯爵夫人は大喜び。侍女を殺してその血を浴びて若い時の美貌を取り戻して大変身する。 美しく若返った伯爵夫人は娘イロナの名を騙ってイムレを誘惑する。イムレは伯爵夫人をイロナだと信じ込み、その美しさの虜になってしまいます。 娘イロナが帰って来たらバレるので、伯爵夫人は帰途の娘を襲わせて森奥の小屋に監禁させる。 伯爵夫人に愛人として仕えてきたドビー大尉は、若いイムレに入れ込む夫人に面白くない感情を抱きながらも、お肌若返りの時間が限られているために、その血の生け贄の提供に協力することに。 原題「COUNTESS DRACULA(ドラキュラ伯爵夫人)」です。 映画は「ドラキュラ」とは関係がありませんが、元ネタは17世紀ハンガリーの「エルジェベト・バートリー事件」で、19世紀の画家チョクの「若い娘たちを虐待するエルジェベト・バートリー」を描いた絵画がオープニングタイトル画面の背景に使われています。 17世紀の初め、ハンガリーの迷信深い地方で起こった事件。 チェイテ城主夫人エルジェベト・バートリーは若い娘たちを誘拐して、食肉をあつかうように弄んで殺し、その血を浴槽に満たして悦に入っていたそうです。彼女の餌食になった少女の数は300人ともいわれる。 その城はカルパチア山脈近くのハンガリー山岳地帯にある丘の頂上にあり、残虐事件の後に呪われた場所としてうち捨てられた。ゴシック様式をそなえた城で堂々とした城壁と陰気な雰囲気はブラム・ストーカーの小説を思わせるという。 このバートリー事件がジョセフ・シェリダン・レ・ファニュの小説「吸血鬼カーミラ」(1871)となり、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」(1897)を生むきっかけとなったということでは「ドラキュラ伯爵夫人」も宣伝文句の意味もあるのだろうが、あながち間違いではないのかもしれない。 映画はハマー・プロの怪奇映画としては雰囲気不足です。 若返るためには殺人をも厭わない、浅ましい妄執にとりつかれた伯爵夫人に感情移入などできるはずがない、ということでこの映画が面白くないと思うのかもしれません。ちょっと期待もあった、その期待が外れた怪奇映画の一篇といったところか。 主演のイングリッド・ピットさんは「荒鷲の要塞」(68)で、私にはお馴染みの女優さんです。
2016年07月30日
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「俺は銀座の騎兵隊」(1960)監督 野口博志企画 児井英生原作 原健三郎脚本 山崎巌撮影 永塚一栄美術 小池一美音楽 三保敬太郎出演 和田浩治、清水まゆみ 二本柳寛、守屋浩、杉山俊夫、神戸瓢介 初井言栄、岡田真澄、近藤宏、待田京介、刈屋ヒデ子 本編79分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画チャンネルのチャンネルNECOで放送された「俺は銀座の騎兵隊」を鑑賞。 1960年(昭和35年)6月に公開された日活映画です。 仲間と港の廃バスをねぐらにしている不良少年 良坊(杉山俊夫)は、風来坊少年の三郎(和田浩治)と知り合う。喧嘩もドラムもギャンブルも玄人ハダシの三郎は、バーのボーイ守山(守屋浩)や自動車修理工リチャード(神戸瓢介)、花売り娘の久子(刈屋ヒデ子)らハイティーンたちのリーダー格となる。 あるとき、三郎と銀座で遊んでいた良坊が地下鉄の中で少女ユミ子(清水まゆみ)のバッグからフィルムの入った封筒をスリ取ってしまう。それは国際的密輸組織の麻薬売春計画に関する暗号を写したものだった。社長の神山(近藤宏)は手下のチンピラどもを使って、三郎たちからフィルムを取り返そうとする。 他愛のない青春アクションドラマです。少年が掏摸取った封筒が思いがけず怖い犯罪組織に関係していた。 戦後まだ15年しか経っていない東京を舞台にしている。この昭和30年代の映画は当時の風景をそのまま記録していてとても懐かしいですね。東京の都電が走る町並み、行き交う車。 それと主人公たちが戦災を受けていて、孤児だったり、顔を黒く塗ったリチャードなどは母親がクロンボのオンリーだったとかで英語混じりの台詞を云う。三郎は長崎で原爆を体験し、父親は戦死したと。知り合った占い師のお春(初井言栄)というおばさんに馬上の父親が写った写真を「騎兵隊にいたんだ」と云って見せる。 主役の和田浩治さんは1944年生まれだから、この映画では、なんと16才です。 上着を肩にかけて清水まゆみさんと川沿いの道を歩いている場面(写真)など、しっかりと落ち着いた若者ぶり。現代の目では20才以上の年齢に見えるのは、現代の若者たちがそれだけ幼いということだろうか? 悪役で二本柳寛、岡田眞澄、待田京介、近藤宏さんなどが出ていますが、若者たちの演技を支えているといった感じがします。 相手役の清水まゆみさんは20才。映画中では17才だと云っている。 和田浩治さんと清水まゆみさんの共演作は多くあり、名コンビとされたとか。 石原裕次郎さんに似ているとのことでスカウトされ、「やんちゃガイ」のフレーズで売り出された和田浩治さんですが、映画ではあまり成功しなかったそうです。 1967年のテレビドラマ「ある日わたしは」(NECOで再放送されている)で好演しています。
2016年07月29日
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「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第8号は「荒野の大活劇」(69)と「復讐のガンマン」(67)です。「復讐のガンマン」はすでにソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントから正規盤DVDが安く発売されているので、今号の収録は画質も字幕翻訳も同じものであり、それほど価値のあるものではありません。でもDVDジャケットのデザインが異なっているのでマニアなら持っていてもいいかもしれない?「復讐のガンマン」(1966) LA RESA DEI CONTI 英題 THE BIG GUNDOWN監督 セルジオ・ソリーマ製作 アルベルト・グリマルディ原作 フランコ・ソリナス フェルナンド・モランディ脚本 セルジオ・ソリーマ セルジオ・ドナティ撮影 カルロ・カルリーニ音楽 エンニオ・モリコーネ出演 リー・ヴァン・クリーフ、トーマス・ミリアン ウォルター・バーンズ、ニエヴェス・ナヴァロ フェルナンド・サンチョ、ジェラルド・ハーター 本編90分 総天然色 シネマスコープサイズ この作品に関してはすでに今年の1月30日に書いているので、とくに書き加えることはありません。 原題の「LA RESA DEI CONTI」は「復讐(報復)」という意味だそうです。英題は「THE BIG GUNDOWN」。「復讐」という伊題は本作の内容に適さないのでは?邦題の「復讐のガンマン」は伊題をもとにしているようですが、主人公のクチーヨ(トーマス・ミリアン)も彼を追うコーベット(リー・ヴァン・クリーフ)も仇討ちするわけではないし。 英題の「BIG GUNDOWN」を直訳すると「大きい銃撃」となり、邦題としてはこちらの方がふさわしいのでは? 「大いなる銃撃」「巨大なる銃撃」か意訳して「大いなる決闘」か?「大いなる決闘」はすでに同名のアメリカ映画があって、それにマカロニウエスタンらしくないけれど。 映画の邦題を付けるのは難しいもののようです。 マカロニウエスタン大ブームのきっかけとなった「荒野の用心棒」(1965年12月公開)と「夕陽のガンマン」(1967年1月公開)。この2本のタイトルでマカロニウエスタンの邦題らしさというイメージが決まってしまった。「荒野」「用心棒」「夕陽」「ガンマン」。それに「復讐」「さすらいの」「無頼」「一匹狼」など、これらを組み合わせて適当に邦題をでっち上げられる。「復讐のガンマン」「復讐の用心棒」。ジュリアーノ・ジェンマ主演の劇場未公開作「夕陽の用心棒」(65)など、安直そのものですね。
2016年07月24日
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「荒野の大活劇」(1969) VIVI, O PREFERIBILMENTE MORTI監督 ドゥッチオ・テッサリ脚本 ジョルジオ・サルヴィオーニ ドゥッチオ・テッサリ撮影 チェザーレ・アルリオーネ音楽 ジャンニ・フェリオ 出演 ジュリアーノ・ジェンマ、ニーノ・ベンヴェヌーティ シドニー・ローム、アントニオ・カサス、クリス・ヒュエルタ 本編102分 総天然色 DVDはスタンダードサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第8号(7月21日発売。地方は22日)に収録されている「荒野の大活劇」を鑑賞しました。 1969年作品で、日本公開は1970年8月。 マカロニウエスタンのプリンスといわれて日本では女性ファンが多かったジュリアーノ・ジェンマが当時のプロボクシングWBA・WBC世界ミドル級世界王者のニーノ・ベンヴェヌーティ(ボクサーとしての表記はニノ・ベンベヌチ)と共演した作品です。 女性がマカロニウエスタン上映館に見に来るということで、マカロニ西部劇の観客層を広げることに貢献したジュリアーノ・ジェンマさん(だと私は思っています)ですが、この1969年あたりになると西部劇出演ばかりではない別な方向を目指していたようで、この「荒野の大活劇」は同じマカロニウエスタンでもそれまでにはないコメディ仕立てになっている。 マカロニウエスタン全体がブームの終末期にさしかかっていて、復讐や暴力ばかりではない新しい趣向を模索していたのではないか? 本作のあとジェンマさんは「特攻大戦線」(70)「ザ・ビッグマン」(72)「ゴールデン・ボーイ危機また危機」(73)「ミラノの恋人」(74))など、西部劇から離れてゆきます。 20年間音信不通で別々に暮らしていた兄弟 モンティ・マリガン(ジュリアーノ・ジェンマ)とテッド(ニーノ・ベンヴェヌーティ)が祖父の遺産30万ドルを相続することになる。 相続の条件は兄弟2人が6ヶ月間いっしょに暮らすこと。そこで東部の町で高利貸しから返済を迫られて脅されていたモンティは、弟テッドに会うために西部へと自動車に乗って旅立ちます。途中でバーンズという男(アントニオ・カサス)と知りあったモンティは彼にポーカーに負けて車を取られてしまう。 西部の町でようやくテッドと会ったモンティだが、テッドは今の貧しい生活に満足しているので遺産なんかいらない、と云う。モンティは懸命にテッドを説得するが、その時、ならず者のジム(クリス・ヒュエルタ)一味が襲ってきて、テッドの小屋が焼き払われてしまう。 焼け出されたモンティとテッドは銀行強盗や駅馬車強盗をするが、ことごとくうまくいかない。銀行で盗んだのは1セント貨幣ばかりが入った袋でせいぜいが数十ドルほど。再会したバーンズも加わった駅馬車強盗では乗客の銀行頭取の令嬢スカーレット(シドニー・ローム)を誘拐して身代金を取ろうとするが、彼女の父親は身代金の支払いを拒否する。彼女は大変なジャジャ馬娘で、持てあましていた父親は娘が誘拐されたのを幸い、しばらくあずかっておいてくれと云う。 彼女の父親の銀行が金塊を輸送するという情報を得たモンティ、テッドとバーンズは列車輸送襲撃を計画するが、乗り込んだ輸送列車をジム一味が大挙して襲って来たために、彼らは金塊を守って護衛たちといっしょに戦うハメになってしまう。 賭博好きで道楽者の都会育ちの兄と、西部育ちの堅実で木訥な弟。遺産相続のためにいっしょに暮らすことになった、性格がまったくちがう凸凹兄弟が繰り広げるコメディ西部劇です。 銀行強盗、駅馬車強盗、令嬢誘拐、金塊輸送の列車強盗を計画するがどれも思ったようにはいかず失敗してしまう。そんな2人を翻弄するかのような脳天気なヒロイン、彼らに誘拐された銀行家の令嬢役で、当時は映画誌のグラビアなんかに載って美人女優として話題にもなったシドニー・ロームさんが出ています。 全体にスマートとはいえない垢抜けないコメディ西部劇ですが、クライマックスでの列車アクションはよくできている。 走る列車の屋根上に乗っての危険なアクションシーンは、ふつうならスタントマンが使われるけれど、ジュリアーノ・ジェンマさんは自分でやっています。 襲ってくるならず者集団との銃撃戦では、走る馬から落ちる者、転倒する馬、すごいのは崖から人馬ともに落ちる場面がありますが、これなんか人も馬も大変に危険なのではないか。動物愛護団体から抗議がきそうなシーンです。 マカロニウエスタンでは珍しいコメディ作品です。ジェンマの身軽なスタントアクション。弟テッド役の世界ミドル級チャンピオン ニーノ・ベンヴェヌーティも好演している。 ヒロイン役のシドニー・ロームさんも可愛らしいですね。
2016年07月23日
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「影狩り ほえろ大砲」(1972)監督 舛田利雄製作 石原裕次郎、奥田喜久丸、小林正彦原作 さいとう・たかを(リイド社刊)脚本 池上金男撮影 金宇満司美術 小林正義編集 渡辺士郎音楽 石原裕次郎、玉木宏樹出演 石原裕次郎、内田良平、成田三樹夫 夏純子、青木義朗、加藤嘉 佐原健二、白木万理、カルーセル麻紀、丹波哲郎 本編89分 総天然色 シネマスコープサイズ 石原プロが東宝と提携して製作した時代劇映画「影狩り」の第2作です。 公開は1972年(昭和47年)10月。 この1972年は、同じく石原プロと東宝による「太陽にほえろ!」のテレビ放送が7月21日(金曜夜8時)から始まった年。「太陽にほえろ!」が始まって約2ヶ月後に公開された「大砲にほえろ」ではなく「ほえろ大砲」です。 大名取りつぶしのために公儀隠密「影」が暗躍する。幕府に目を付けられた大名家に雇われて、潜入して来る「影」を始末する3人の浪人者「影狩り」の活躍を描いた娯楽時代劇。 豊後 佐伯藩。「大砲の伊勢守」との異名を持つ佐伯藩は、大坂の陣のおりに功績を立てたとのことで特別に大砲「四海波(しかいなみ」の所蔵を許されていた。ところが、製造から150年が経ち、時代遅れ、使いものにならなくなった四海波を、砲術方の別所某(佐原健二)が鋳潰して、それを地金として大砲職人 芝辻道斎(加藤嘉)を招いて新式大砲を作り出した。 しかし公儀に許された四海波をかってに潰すことはもちろん、ご禁制の大砲製造が幕府に知られればたちどころに藩は取り潰されてしまうだろう。 折しも、公儀より大砲改めの査察が入るという知らせがあり、時を同じくして「影」が暗躍し始める。 城代家老 星野修理(青木義朗)は、こうなれば新型大砲を「四界波」であるとして、そのように言い張るしか手はないとし、影に対抗すべく「影狩り三人衆」の室戸十兵衛、日光、月光を雇う。 完成した新型大砲だが、それを山中の製造所から城まで運ばなければならない。二百貫もの重さの大きな大砲を牛に引かせた荷車で、野を越え山越え川を越えて、遠路を運送する藩士と影狩りたち。その行く手に待ちかまえる「影」。 影狩り三人衆の室戸十兵衛、日光、月光を石原裕次郎、内田良平、成田三樹夫の3人が演じます。 影の元締めである影目付に丹波哲郎。 大砲職人 芝辻道斎の娘役に夏純子。 影のくノ一にカルーセル麻紀。 テレビで「太陽にほえろ!」が始まった1972年の6月に第1作が、10月に第2作が公開された「影狩り」ですが、人気がそれほどでもなかったのか?、「太陽にほえろ!」で裕次郎さんが忙しかったのか?はわからないけれど、この2作のみで終わった劇場映画「影狩り」です。 大砲職人の娘役で夏純子さんがメインヒロインとして出ていて、裕次郎さんの十兵衛に芝辻家の血筋を絶やさないために「子種をください」と云って着物を脱ぐシーンがあるのですが、脱ぎっぷりがわるくて中途半端。どうせなら思いっきりよく脱がんかい。 くノ一役のカルーセル麻紀さんが胸を見せているけれど、こんなのを見てもなーと。 同じように宮下順子さんや伊佐山ひろ子さんも影狩り三人衆の命を狙う女忍者役で、ちょい役として出演しているけど、せっかくの出演なのに物足りない扱いでした。 宮下順子さんと伊佐山ひろ子さんは、この1972年当時、日活ロマンポルノで話題性のある女優さんですね。 この映画、よく考えてみるとちょっと変な展開になっています。 公儀の影目付(丹波哲郎)が藩の城代家老に「大砲を公儀に渡せば、藩をそのままにしてやる」と取引を申し出て、城代家老がその提案を受け入れ、影狩り三人衆に事件から手を引かせようとする。 放っておいても影狩り三人衆は大砲を城まで運んでくるのに、途中でそれを襲って大砲を奪う必要などないはずではないか? 大砲が城まで運ばれて、それを公儀に渡せば、事を荒立てることなく万事解決するのでは。
2016年07月19日
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「影狩り」(1972)監督 舛田利雄 製作 石原裕次郎、奥田喜久丸、小林正彦 原作 さいとう・たかを (リイド社刊)脚本 池上金男 撮影 金宇満司 美術 小林正義 編集 渡辺士郎 音楽 石原裕次郎、広瀬健次郎出演 石原裕次郎、浅丘ルリ子 内田良平、成田三樹夫、江原真二郎 本田みちこ、丹波哲郎、辰巳柳太郎 本編90分 総天然色 シネマスコープサイズ 7月17日に「チャンネルNECO」で放送された映画「影狩り」を録画して鑑賞しました。 さいとう・たかをさんの劇画「影狩り」(小学館 週刊ポスト連載)の劇場用映画化で、公開は1972年6月。石原プロ・東宝の作品です。 徳川封建時代。財政難におちいった幕府は、その解決策として大名を改易させてその領地を取り上げる方針をとった。幕府は「影」と呼ばれる公儀お庭番を大名領に派遣して、落度を捜させ、それがない場合は作り上げては、そのわずかな落度を理由に大名を取り潰していった。 幕府に目を付けられた大名は対抗策として、潜入して来る影を抹殺して口を封ずるために「影狩り」を生業とする3人組の浪人者を雇った。 3人の名は室戸十兵衛、日光こと乾武之進、月光こと日下弦之助。彼らは主家を影の暗躍によって取り潰され、流浪の身となった怨念を「影」抹殺へと命を賭ける男たちである。 石原裕次郎さんが室戸十兵衛、内田良平さんが日光、成田三樹夫さんが月光を演じています。 胆馬国出石藩は5万8千石の小藩。幼少の藩主を補佐する家老 牧野図書(辰巳柳太郎)は、藩の財政を建て直すために金山の開発をおこない品質の良い金を掘りあてていた。 影に探索させた情報により田沼意次(丹波哲郎)は出石藩を改易させて金山を取り上げようと画策する。しかし、それには二つの障害があった。ひとつは牧野図書の先祖が東照神君家康公から「永代本領安堵」のお墨付を拝領していること、それと「影狩り」を雇ったことである。 出石藩に潜入して暗躍する影たち。それを防ぐ影狩りの3人だが、藩随一の切れ者である大目付 高坂蔵人(江原真二郎)はなぜか三人に冷たい態度をとった。 影狩り三人衆の妨害にあって苛立った田沼意次は、出石藩のお国替えの内示を下す。そのことで出石藩は「永代本領安堵」のお墨付を江戸藩邸に運ぶだろう、胆馬から江戸までの道中150里、その道中で影にお墨付を奪わせるという計画を立てる。 家老の牧野図書はお墨付を江戸まで運ぶ大役を高坂蔵人に命じ、その護衛を影狩り三人衆に依頼する。 馬で江戸へと向う高坂蔵人と藩士。その一行を狙う影の組頭 陣馬仙十郎と、くノ一を含む配下の忍者たち。そして藩士たちを影から守る十兵衛、日光、月光。 その道中にもう一人、十兵衛を仇と狙う鳥追い姿の女 千登世(浅丘ルリ子)がいた。 言いがかりをつけて大名家を取り潰す政策というのは、あまり現実的とは思えないが、娯楽時代劇としては、忍者と対決する浪人三人衆というのはアクション的で面白い設定です。 石原裕次郎さんの「影狩り」の中心的人物 室戸十兵衛役はミスキャストとはいわないけれど、やはり時代劇の主役としては斬合いシーンでの腰が据わっていない感じがする。それをバックアップし、カバーする位置付けとしての内田良平さんと成田三樹夫さんの存在なのか。 内田良平さんの日光は大の女好きの陽気な男で、剣を取っても腕利き。月光は暗い過去を背負った陰のあるキャラクターで、成田三樹夫さんは、演ずるのはこの人しかいない。 この映画が成功しているとすれば、さいとう・たかをさん原作の劇画によるものでしょう。 影狩り三人衆のキャラクターが、それぞれの個性、知・動・静の三タイプの男たちがうまく作られていることによるのではないだろうか。 娯楽時代劇として、影のくノ一が月光を誘惑するお色気シーンもあって、なかなか楽しめます。 いつも冷静な月光に誘いをかけても乗ってこない。ここはやはり女好きの日光をターゲットにするべきではでは?
2016年07月18日
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「ガンマン大連合」(1970) VAMOS A MATAR, COMPANEROS監督 セルジオ・コルブッチ原案・脚本セルジオ・コルブッチ共同脚本 ディノ・マイウリ、マッシモ・デ・リタ フリッツ・エバート撮影 アレサンドロ・ウロア音楽 エンニオ・モリコーネ出演 フランコ・ネロ、トーマス・ミリアン ジャック・パランス、フェルナンド・レイ、アイリス・バーベン 本編119分 総天然色 シネマスコープサイズ マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション第7号に収録の「ガンマン大連合」(1970)を鑑賞しました。 監督はセルジオ・コルブッチで、マカロニ西部劇作品は以下の順です。「ミネソタ無頼」(1965)「続 荒野の用心棒」(1966)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第2号「リンゴ・キッド」(1966)「さすらいのガンマン」(1966)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第3号「黄金の棺」(1966)「豹/ジャガー」(1968) 「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第4号「殺しが静かにやって来る」(1968)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第5号「スペシャリスト」(1969)「ガンマン大連合」(1970)「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第7号「ガンマン大連合」の日本公開は1972年4月です。 この映画は、これまでに見たことがないと思っていたのですが、登場人物のバスコ(トーマス・ミリアン)が拷問でモグラ責めにされるシーンに記憶があって、もしかしたら忘れただけで、映画館で見たのかもしれない。 メキシコ革命の頃。ディアス大統領の再選がどうのと云ってるので1910年くらいだろうか? スウェーデン人の武器商人ヨドラフ・ペテルセン(フランコ・ネロ)が革命軍のモンゴ将軍(フランシスコ・ボダロ)に会いにやって来る。ところが武器を購入する資金は占拠した銀行の頑丈な金庫に入っていて開けることができない。それを開けるキーワードを知っているのはアメリカで監禁されているサントス教授だけだという。 そこでペテルセンは金庫内にある資金の3分の2を報酬とする条件で、アメリカからサントス教授を連れてくることを請け負います。ペテルセンはモンゴ将軍の部下バスコ(トーマス・ミリアン)とともに国境を越えて、サントス教授が捕らえられているユマ砦へと向かう。 サントス教授から非暴力主義の教えを受けた学生たちが革命に立ち上がっており、メキシコでの石油採掘利権を革命後も望むアメリカの資本家に雇われたペテルセンの宿敵ジョン(ジャック・パランス)一味も加わって政府軍とともに三つどもえの戦いになる。 金目当てで教授奪還を引き受けたスウェーデン人の武器商人ペテルセンと、粗野で陽気なお調子者バスコが革命の動乱の中で、サントス教授や教え子の若者たちの感化を受けて、しだいに人間的に成長して変化を見せてゆく。「豹/ジャガー」(68)とともにセルジオ・コルブッチ監督の「メキシコ革命もの」です。 先の「豹/ジャガー」の時にも書きましたが、マカロニウエスタンとしてはアメリカらしさを装うよりもメキシコが舞台という設定にしたほうが作りやすかったということでしょうか。撮影地スペインの乾燥した土地風俗とメキシコの類似性、現地の俳優やエキストラを使う上でメキシコという設定にしたほうがやりやすい。 メキシコ革命ものが目立つようになった1968年以降のマカロニウエスタンです。 当時、私はこのような作品をマカロニウエスタンだという意識を持って見ていたわけではありません。同じメキシコ革命ものの「五人の軍隊」(69年、日本公開69年11月)や「七人の特命隊」(68年、日本公開70年3月)などアメリカ映画だと思っていたほどだから。 メキシコの政府軍、革命軍が入り乱れて銃火を交えて戦うアクションシーン。 多数の馬が駆け回り、機関銃がうなり、自動車や飛行機が登場し、機関車が走る。 スケールが大きくなったのは、それだけ製作費が増えたということだろうけれど、同じセルジオ・コルブッチ監督の「続 荒野の用心棒」(66)ではゴーストタウンのような町に悪党が巣くって、その殺され役の悪党たちのエキストラを使い回したという人員不足だったことを思えば、このようなメキシコ革命ものの、なんとにぎやかなことか。 政府軍に追われるペテルセンが橋に爆薬を仕掛けて点火する。爆発して、追ってくる政府軍の兵隊たちが馬ごと川に落ちるシーンがあり、これなどはサム・ペキンパー監督のアメリカ映画「ワイルドバンチ」(69)の同様なシーンのいただきだろうか? サム・ペキンパーがマカロニウエスタンを意識して撮った「ワイルドバンチ」を、マカロニウエスタンが意識して、そのアクションシーンを参考にするとは。
2016年07月16日
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「ミスター・ノーボディ」(1974) IL MIO NOME E NESSUNO 英題 MY NAME IS NOBODY監督 トニーノ・ヴァレリ製作 セルジオ・レオーネ クラウディオ・マンシーニ原案 セルジオ・レオーネ フルヴィオ・モルセラ、エルネスト・ガスタルディ脚本 エルネスト・ガスタルディ撮影 ジュゼッペ・ルッツォリーニ、アルマンド・ナンヌッツィ音楽 エンニオ・モリコーネ 出演 ヘンリー・フォンダ、テレンス・ヒル ジャン・マルタン、レオ・ゴードン、ジェフリー・ルイス 本編116分 総天然色 シネマスコープサイズ「マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション」第7号に収録の「ミスター・ノーボディ」(1974)を鑑賞しました。「荒野の用心棒」(64)「夕陽のガンマン」(65)「続 夕陽のガンマン」(66)「ウエスタン」(68)と、西部劇を撮り続けてきた監督セルジオ・レオーネが製作・原案のマカロニウエスタン後期の傑作です。監督はセルジオ・レオーネの愛弟子トニーノ・ヴァレリ。 日本公開は1975年11月。配給はユニヴァーサル映画/CIC。 この映画が公開された時の宣伝チラシには、「靴下は破れ 靴底は穴があき 名前もなければ金もなし 住む家なく親もなし ホレる女もいなければ 好いてくれる女もいない 何処から来て…何処へ行くのか 知っている者は誰れもいない ないないづくしの-ぶらりひょうたん 人呼んで彼の名を ミスター・ノーボディ!!」 と宣伝文句が書かれています。名無しの、ないないづくしの風来坊が主人公であるかのような売り方がされているのはなぜだろうか? 確かに「風来坊」(70年、日本公開72年11月)のテレンス・ヒルが出演しているけれども、主人公は明らかにヘンリー・フォンダでしょう。ヘンリー・フォンダ扮する「初老ガンマンの引退」の話です。 西部に名をとどろかせる腕利きのガンマン ジャック・ボーレガード(ヘンリー・フォンダ)。 有名なガンマンの宿命ともいえるのは、彼を倒して名を上げようとする者にたえず命を狙われること。 比類なき早撃ちのガンマンとして誰一人知らぬ者のないボーレガードも寄る年波、引退を考えるようになっていた。彼はニューオーリンズから船でヨーロッパへ渡り、静かな余生を送ることを望むようになっている。 ある村でボーレガードはヒゲを剃ってもらいに床屋に入ります。 彼の命を狙う殺し屋が床屋の主人に化けていて、外にも仲間が2人待ち伏せている。 ヒゲを剃らせながら、ボーレガードは床屋の正体を見破り、あっという間に3人を射殺する。 縛られて閉じ込められていた床屋の主人と幼い息子。 息子が「銃声が一発しか聞こえなかったのに3人も倒したよ!」とビックリ。 父親が「それほど早いってことさ」。息子が「彼より早い人っているのかな?」と問うと、父親が「彼より早い者?、ノーボディ(そんな者はいない)」と云う。 旅の途中でボーレガードは川で魚を素手でつかまえている変な男(テレンス・ヒル)と出会います。 彼は氏名不詳で、自称ノーボディ。ボーレガードに対して尊敬と憧れの気持ちを持ちながらも、ボーレガードを倒して名を上げたいという野心を持っている。彼は150人のワイルドバンチ(無法者集団)にボーレガードが1人で立ち向かうようにお膳立てをして、その名を伝説化し、不滅のものとして歴史に刻み、しかる後に倒して自分が取って代わってやろうと考えています。 すでにマカロニウエスタンのブームが終わった1975年に公開された作品。 ここにはマカロニの特徴である残酷も暴力も復讐もありません。初老ガンマン ボーレガードは弟が悪党に殺されたことを知るが、復讐をする気はない。弟も札付きの悪党だったのだからと。 ボーレガードが望むのは唯一、ヨーロッパでの静かな隠退生活のみです。 そして、そんな彼につきまとって150人のワイルドバンチと戦わせようとするミスター・ノーボディ。 腕利きガンマンに最後の花道を飾らせてやろうとする、そして自分がその後継者になろうと。 カメラワークと構図の見事さは必見です。製作・原案は「ウエスタン」のセルジオ・レオーネ。なぜ自分で監督しなかったのだろう? 殺伐とした殺しと暴力の世界ではなく、マカロニらしくない、やさしい視線で老ガンマンを見守る作品です。 こうなるとマカロニウエスタンではないだろうし、冒頭の床屋の対決シーンなどアメリカ映画の趣が濃厚です。 製作されたのは1974年、日本公開された1975年。すでにマカロニウエスタンのブームはとっくに終わり、アメリカの西部劇も極度に本数が減っていた。いまから思えば、世の中が明らかに変わろうとしていたようです。 ノーボディが爺さんから聞いたという寓話。過って巣から落ちた小鳥が寒さでピーピー鳴く。牛が通りがかって、哀れに思って小鳥の上に湯気が立つ糞をした。小鳥は糞の熱で暖まったが、なおもピーピー鳴いた。そこへコヨーテが現れて小鳥の汚れをはらってきれいにしてやってから、パクッと喰ってしまった。 これは、「世間」の比喩であり、一見、悪に見える善もあれば、善に見える悪もある。肝心なことは、ヘタに騒ぐなということだ、という教訓話。 西部開拓時代が終わって20世紀になろうとしている。これからは、そんな複雑な時代になるぞ、というのですが、表面上からでは判断できない、裏がある。複雑な時代がやってくるぞ、と。
2016年07月15日
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「ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX」第1号創刊号には劇場公開時の半裁ポスターやパンフレットなどが付いています。 その他にプレスシートがあり、これはなかなか貴重な資料ではないかと思います。 プレスシートとは映画の試写会などでマスコミや上映する映画館に配られる宣伝用文書のこと。東宝本社宣伝部がプレス(新聞社、報道機関)、系列映画館に向けて配布した新作映画の宣伝資料です。 新作映画のスタッフ、キャスト、解説、物語を載せてあり、ほかに宣伝のさいにこのような文案で、このような宣伝ポイントでとか、出演スタアを載せるさいの順位(これ重要)など。映画会社が新聞社や劇場に向けて、このような文案で、このようなポイントで宣伝してほしいと指定するんですね。 付属のプレスシートは表がポスターになっていて、映画館正面のショーウィンドーや劇場ロビーなどに貼られたものだそうです。 裏面に宣伝ポイントが書かれていて、「ゴジラ」という不可思議な題名を説明する意味において、「水爆大怪獣空想映画」と云う文句を必ずサブタイトルの如く使用して下さい、となっている。 他に、本篇の主人公は飽く迄も怪獣ゴジラであるから、奇想天外なスペクタクル巨篇で売ることは勿論だが、これと共に科学者の苦悩、父娘の美しい愛情、更に若い人々の恋愛等絡ませてメロドラマ的な面を織り込んで売ることも一案かと思います、と。 さらにキャストが非常に弱いと思うので、特に新人(宝田、河内、平田) の売り出しを工夫すると共に、ネームバリューをカバーする意味において特殊技術を担当した円谷英二が本多猪四郎監督と協力してアメリカ映画をも圧倒する成果をあげていること、さらに東宝が全機能を結集して贈る映画史上始まって以来の(莫大な製作費や延人員等を並べる)スペクタクル怪獣映画であることを売って下さい、となっています。 スタア順位は 宝田明、河内桃子、平田昭彦の順で並べ、行をあけて志村喬。 東宝が当時、新作映画「ゴジラ」をどのように売り出そうとしたかがわかる貴重な資料である、この「東宝プレスシート」のような宣材を「DVDコレクション」の付録とするのは、ファン心理をうまくついた心憎い販売方法ではないでしょうか。 実物大のポスターと実物大の復刻パンフレット。パンフレットはこの当時はまだB5版サイズで、東宝本社宣伝部の協力を得た映画パンフレットの専売業者が発売していたそうです。 東宝が自社のA4版サイズのパンフレットを出すようになるのは、まだ後年のこと。 日本映画初の怪獣映画である「ゴジラ」。製作・配給:東宝株式会社。 モノクロ、スタンダード 97分(10巻2663メートル) 公開されたのは1954年(昭和29年)11月3日(祝)全国東宝系 観客動員数961万人
2016年07月14日
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「ゴジラ映画」ファンの方はすでにご存じだと思いますが、昨日7月12日(火)に講談社から「ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX」というシリーズの第1号創刊号が発売されました。 創刊号は「ゴジラ」(1954年公開)です。 創刊号のみ特別価格で890円(税別)。 映画「ゴジラ」本編のDVD 復刻 劇場公開時の半裁(B2)ポスター パンフレット(大きさはB5版で、表紙含めて8頁) 「怪獣絵物語ゴジラ」「ぼくら」昭和30年3月号付録 東宝写真ニュース、東宝プレスシート、スピードポスター など。 東宝のゴジラ映画のDVDは、2009~2012年に「東宝特撮映画DVDコレクション」としてディアゴスティーニ社が出しましたが、今回の講談社のものは「ゴジラ映画」を中心にしていて、他に「海底軍艦」「モスラ」「地球防衛軍」「空の大怪獣ラドン」「フランケンシュタイン対地底怪獣」「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」などがラインナップされている。その他に東宝チャンピオンまつり版、海外版などが加えられて、全51号。 隔週火曜日の発売で、第2号からは定価1850円(税別)になります。 この講談社版の目玉は「復刻版パンフレット」と「半裁のポスター」が付いていることではないでしょうか。 映画本編のDVDは、東宝の正規盤が同程度の価格2000余円で買えるので、DVDのみに限れば価格が少し高い感じがしないでもない。 第2号からはともかく、創刊号は890円(+税)なので、「ゴジラ」が好きな人は買っても損ではないと思います。書店の店頭で手に取ってみてはいかがかと(箱入りで封がしてあるので中身は見えないけど)。
2016年07月13日
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「殺して祈れ」(1967) REQUIESCANT監督 カルロ・リッツァーニ脚本 アドリアーノ・ボルツォーニ アルマンド・クリスピーノ ルチオ・バティストラーダ音楽 リズ・オルトラーニ 出演 ルー・カステル、マーク・ダモン、ピエル・パオロ・パゾリーニ バーバラ・フレイ、ルイーズ・バレット、ロザンナ・クリスマン 本編102分 総天然色 ビスタサイズ 1968年11月に日本公開されたマカロニウエスタンです。 先日7月6日に発売された3枚のマカロニウエスタンDVD「キラー・キッド」「荒野のお尋ね者」、そしてこの「殺して祈れ」。このような作品があるのを知らず、今回初めて見るものばかりです。 これまでマカロニウエスタンをいくつも見てきたつもりですが、まだまだ知らない、見たことがない作品がいくつもあるのを思い知らされました。 舞台はミズーリ州サンアントニオ(という設定)。アメリカ人とメキシコ人の間で土地を分配する取り決めが成立するが、アメリカ人たちはメキシコ人を騙して油断させて機関銃で虐殺してしまう。 ただ一人生き残った少年は、通りかかった旅の牧師に保護され、その家族の一員として育てられます。 成長した主人公(ルー・カステル)は牧師夫妻、その娘プリンシー(バーバラ・フレイ)と一緒に旅をつづけている。 ある時、ダンサーに憧れるプリンシーが町に興行に来ていた旅芸人一座についていってしまう。 そこで主人公が彼女を連れ戻すために牧師夫妻と別れて追いかけます。 サンアントニオの町で、酒場の二階にはたいていの場合売春婦が置かれているのだが、そこで主人公はプリンシーを見つけます。彼女は悪い男にだまされて、自業自得とはいえ転落の悲惨な生活を送っていた。 サンアントニオの町を支配するのはファーガソンという男(マーク・ダモン)で、プリンシーを娼婦として監禁しているのはその用心棒のディーンライトという男だった。 主人公はファーガソンに交渉してしてプリンシーを解放してもらおうと、その邸へと向かうが。「聖人」と呼ばれる主人公(ルー・カステル)は親を殺された孤児で、牧師夫妻に育てられた男です。牧師のような格好をして、牧師から渡された聖書を持っている。そして生まれつきの拳銃の名手。彼を狙ってくる男たちを返り討ちに射殺して、聖書を開いて冥福の言葉をつぶやく。 牧師の服装に、腰にはガンベルトではなくホルスターを荒縄で吊っている。フライパンで馬の尻を叩いて走らせる、こんな奇妙で珍妙なマカロニウエスタンの主人公を初めて見ました。 主人公は凄みのあるガンマンではなく、どこか頼りなげな若者。その仇敵であるファーガソンという男は偏執的な貴族で、どこかイカレていて、怪奇映画のドラキュラを思わせるような異常な感じがする。 主人公に協力する革命運動のリーダー役で映画監督のピエル・パオロ・パゾリーニ(「アポロンの地獄」「テオレマ」など有名だが、まだ作品を見たことがない)が出ていて、なぜか印象に残ります(真正面から顔を大きく目立つように撮るなど、意図的な撮影なのか)。 メキシコとの国境近くの町が舞台となっていて、虐げられているメキシコ人たちが最後には白人の支配に抵抗して立ち上がります。このような所はマカロニウエスタンの定番ストーリーではあるが、全体を覆う暗鬱で異様な雰囲気など、異色なマカロニウエスタンではないだろうか。「キラー・キッド」「荒野のお尋ね者」「殺して祈れ」の3作品では、本作がいちばん構成もしっかりしていて楽しめます。
2016年07月11日
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「荒野のお尋ね者」(1966) SETTE WINCHESTER PER UN MASSACRO監督 エンツィオ・G・カステラッリ(E・G・ローランド名義)脚本 マリノ・ジローラミ撮影 アルド・ピネリ音楽 フランチェスコ・デ・マージ出演 エド・バーンズ、ガイ・マディソン ルイーズ・バレット、トーマス・ムーア、リック・ボイド 本編94分 総天然色 シネマスコープサイズ 南北戦争が終わって2年後1867年のテキサスとメキシコ国境付近。 群盗と化した南軍のブレイク大佐(ガイ・マディソン)がチャマコ(エンニオ・ジローラミ)やメサ、ディオス、ゼブなど元部下やならず者たちを率いて略奪、殺人、放火、婦女暴行など、悪の限りを尽くして暴れ回っていて、彼らに高額の賞金がかけられていた。 ある町で軍隊に逮捕されたブレイク大佐の手下チャマコが銃殺されそうになった時、スチュワートという男(エド・バーンズ)が現れて彼を救い出して、国境を越えたメキシコにあるブレイク大佐のアジトへと案内させます。 ブレイク大佐は用心深い男だったが、スチュワートが自分は元南軍の大尉であり、戦争中に南軍のポーレガード将軍が隠した軍用金20万ドルの在り処を知っているので掘り出して山分けしようと持ちかけた話を信じて仲間に入れる。 ブレイク大佐はスチュアートを疑いながらも、手下と共に軍用金が埋めてあるというデュランゴという町の外れにあるインディアン墓地へと向かう。 その道中で、野営中に彼らを崖の上からライフルで銃撃した者がいた。スチュワートが崖に登って捕まえるとそれはマヌエラ(ルイーズ・バレット)という女で、彼らを北軍だと思って撃ったと云う。だが、この女も怪しく、彼女は敵か味方か? そしてスチュワートの真の狙いは何なのか? 主演はエド・バーンズ。 エド・バーンズはアメリカのテレビ映画「サンセット77」に出ていた俳優で、「ローハイド」のクリント・イーストウッドのように成功しなかったけれど、マカロニウエスタンへの出稼ぎ出演です。「サンセット77」はエフレム・ジンバリスト・ジュニアとロジャー・スミス主演の探偵ドラマで、エド・バーンズはその助手の若者役。いつも櫛で髪を手入れしているおしゃれな若者役で人気があった、ということですが、実のところ、私は「サンセット77」をまともに見たことがありません。 でも、日曜の10時だったかに放送されていて、兄が毎週見ていたのは覚えているし、テーマ曲やナレーションの芥川隆行さんや、エフレム・ジンバリスト・ジュニアの黒沢良さんの声などは記憶にあります。 いつも髪を整えていた若者の役だったということからか、このマカロニウエスタン「荒野のお尋ね者」では、西部劇なのに帽子を被っていない。砂塵舞う西部の荒野(スペインだけど)で、いくら髪形が崩れるからとはいえ、それでは頭が砂だらけになってしまうではないか。 そういう批判は野暮なのだろうけれども、とくに見所のないマカロニウエスタンの一編でした。 ただ、悪役のブレイク大佐の5人の手下どもが、5人衆といった感じで、ナイフや鞭、靴に付けた拍車を武器にしたり、それぞれが得意技を持っているのが珍しい。 それと、女賞金稼ぎが登場するのも、こんなのは初めてではないか?
2016年07月10日
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「キラー・キッド」(1967) KILLER KID監督 レオポルド・サヴォーナ 製作 セルジオ・ガローネ 脚本 レオポルド・サヴォーナ セルジオ・ガローネ 音楽 ベルト・ピサーノ出演 アンソニー・ステファン、ルイーズ・バレット フェルナンド・サンチョ、ケン・ウッド 本編98分 総天然色 シネマスコープサイズ アンソニー・ステファン主演のマカロニウエスタンです。日本では劇場未公開でTV放映のみの作品。 メキシコ国境に近い陸軍の砦に収監されていた男が何者かの手引きで脱獄します。彼は通称キラー・キッドと呼ばれる殺し屋(アンソニー・ステファン)。彼はメキシコに逃げ込み、革命派のリーダー エル・サント(ハワード・ネルソン・ルビアン)に出会う。エル・サントの信用を得たキラー・キッドは手厚くもてなされますが、手下のビラール(フェルナンド・サンチョ)は彼を疑ってかかる。 エル・サントたち革命派はアメリカの武器密売人から多量の銃器を入手しようとしていて、行動を共にするうちにキッドはエル・サントの姪メルセデス(ルイーズ・バレット)と親しくなってゆく。 キッドには隠された目的があり、彼の正体はアメリカ陸軍の特命を受けたモリソン大尉。アメリカ製の武器がメキシコ革命派に渡っていのをメキシコ政府に知られれば両国の関係悪化に影響する、それを回避するために武器の密輸商人を潰し、密輸された武器を爆破して始末するのが彼の任務だった。 ある夜、キッドは隙を見て、革命派が入手した武器弾薬を積んだ荷車を崖から落下させて爆発炎上させる。ビラールはキッドを疑うが、あくまで彼を信頼するエル・サント。 キッドを信用するしないをめぐってエル・サントとビラールが対立し、キッドがいない隙を見て反逆したビラールがエル・サントを襲って軟禁、革命派の実権を奪います。 アンソニー・ステファン主演のマカロニウエスタンはこれまでに、「地獄から来たプロガンマン」(66)「荒野の棺桶」(66)「嵐を呼ぶプロ・ファイター」(67)の3本を見て、今回の「キラー・キッド」(67)で4本目。 アンソニー・ステファンはマカロニウエスタンでは最高の27本に出演した、云ってみればクリント・イーストウッドやジュリアーノ・ジェンマ、フランコ・ネロより圧倒的に多くの主演作があるわけで、マカロニウエスタンでは一番のスター俳優なのかもしれない。しかしながら、日本ではそれほど人気が出なかった俳優です。 確かに颯爽とした格好良さがない、というか逞しい感じがなくて、殴り合いではあまり強くなく、相手を倒すのにもたついたりして頼りなさを感じる。 それなのに撃ち合いの場面では拳銃を持つよりライフル銃の連射をするシーンが似合っている。この「キラー・キッド」など特にライフル銃で敵を倒す場面はカッコ良い。 マカロニウエスタンが当時、世界的にあれほどの人気があり、ブームになった根底にはアンソニー・ステファンさんのような縁の下での活躍があったからこそなのかもしれません。 颯爽としない俳優だけれど、なぜか好ましくて、もっと主演作を見たいな、と思わせる不思議な魅力があります。 メキシコの革命派リーダー エル・サントの仲間ビラールを演じるのはマカロニ悪役でおなじみのフェルナンド・サンチョ。いつもは極悪な山賊の親分役で冷酷非情な悪人役が多いけれども、今作では意外に根は良い奴です。エル・サントスを裏切ったりするが、最後には戻って来てキラー・キッドに手を貸す。 戦いで撃たれて死んでしまうけれども、生かしておいてほしかったキャラクターです。
2016年07月08日
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1970年度外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位「続 猿の惑星」 1億6千500万円2位「サウンド・オブ・ミュージック」 1億5千万円3位「クリスマス・ツリー」 1億4千万円4位「女王陛下の007」 1億3千万円5位「ひまわり」 1億2千万円6位「ネレトバの戦い」 1億1千万円6位「シシリアン」 1億1千万円8位「シェーン」 1億円8位「チップス先生さようなら」 1億円8位「さらば夏の日」 1億円 第6位の「ネレトバの戦い」はユーゴスラビア(イタリア・西ドイツ・アメリカ合作)の戦争映画です。 日本公開は1969年12月。このような地味な映画は、現在ではとても商業性がなくて客が入らないのでは?それ以前に輸入されないだろうし、日本で劇場公開されないのではないかと思われますが、当時はそうでもなく、英国の「007」映画に引けを取らない健闘をしている。「ネレトバの戦い」(1969) BITKA NA NERETVI THE BATTLE OF NERETVA監督 ヴェリコ・ブライーチ脚本 ウーゴ・ピロ ラトコ・デュロヴィッチ ステバン・ブライーチ ヴェリコ・ブライーチ 撮影 トミスラフ・ピンター 音楽 バーナード・ハーマン出演 バタ・ジボイノビッチ、ロイゼ・ローズマン シルヴァ・コシナ、セルゲイ・ボンダルチュク ユル・ブリンナー、フランコ・ネロ、ミレナ・ドラヴィッチ クルト・ユルゲンス、ハーディー・クリューガー 本編144分 総天然色 シネマスコープサイズ この映画を劇場公開時に見たのですが(金沢ロキシー劇場)、家に帰ってからストーリーを思い出そうとしても、さっぱり覚えていなくて、翌日もう一度見に行きました。 あれから約46年ぶりにDVDでの鑑賞です。 高校2年生の3学期だった当時、この映画を見ても理解できなかった、というかストーリーがよくわからず戦闘場面だけしか記憶に残らないのは当然だったようです。 第二次大戦時のユーゴスラビアの歴史を予備知識としてある程度は持っていないと、この映画を見てもさっぱり面白くないだろうし、物語について行けないのではないか? 1943年1月のユーゴスラビア、ドイツ軍は頑強に抵抗するパルチザンの掃討を目的とした「ワイス作戦」を開始した。 作戦の指揮を執るのはドイツ軍のローリング将軍(クルト・ユルゲンス)で、モレリ将軍(アンソニー・ドーソン)のイタリア軍や王党派のチェトニックも加わった約15万人の大軍。 対するパルチザン側は約3万人。兵力で劣るパルチザン軍は東方へ撤退することとなる。「病人や負傷者を見捨てない」という方針で戦傷病者と大量の避難民を抱えているため、撤退は難渋を極め、多くの犠牲を出しながらも、ようやくネレトバ川へたどり着きます。 映画は、パルチザンがドイツ軍やイタリア軍と戦いながらの、この撤退行の成功を描いたものです。要するにユーゴスラビアが第二次大戦において圧倒的な敵から祖国を守り抜いたということを宣伝したい、誇りたいというプロバガンダ映画です。 たくさんのエキストラ人員を使い、多量の火薬を使った戦闘場面。 これだけではソ連の退屈な国策映画と大差がないのですが、異なるのはイタリア女優のシルヴァ・コシナさんがパルチザンの女性兵士役で出演、アメリカからユル・ブリンナーやオーソン・ウェルズ、イギリスのアンソニー・ドーソン。西ドイツのクルト・ユルゲンスとハーディー・クリューガーが出演していて、オールスター映画のような趣がある。 46年ぶりの鑑賞ということで懐かしく、ちょっと期待もあったけれども、現在の目で見るとそれほど価値のない映画でした。DVDはデジタルマスター版としているが、画質はお世辞にも褒められないもの。 1970年度アカデミー外国語映画賞にノミネートされたそうだが、こんな作品がなぜ?と不思議な感じがする。政治的な思惑があったのだろうか?
2016年07月07日
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「東部戦線1944」(2002) THE STAR監督 ニコライ・レベデフ製作 カレン・シャフナザーロフ脚本 ニコライ・レベデフ アレクサンドル・ボロジャンスキー エフゲニー・グレゴーリェフ撮影 ユーリー・ネフスキー出演 イゴーリ・ペトレンコ、アレクセイ・パーニン エカテリーナ・ヴリチェンコ、アレクセイ・クラフチェンコ 本編94分 総天然色 ビスタサイズ 3枚で500円のDVDです。 2002年製作のロシア映画で、日本未公開作品。 第二次大戦末期の東部戦線。ソ連赤軍とドイツ軍が対峙している最前線。 ソ連軍は、トラフキン中尉(イゴーリ・ペトレンコ)率いる7名の兵士を選抜。敵陣深く潜入してドイツ軍の情報を収集するよう命令をくだします。偵察隊のコード名は「スター」。 任務に出発する前にトラフキン中尉は女性通信兵カーチャ(エカテリーナ・ヴリチェンコ)と出会います。短時間の交流の後、トラフキンたちは出発してゆく。トラフキンの偵察隊とソ連軍本部と結ぶのは無線機のみで、本部で彼らとの通信を担当するのがカーチャです。 トラフキン中尉は偵察隊を率いて、ドイツ軍の内情を偵察するために敵陣奥深くへと潜入していく。彼らは、そのカムフラージュ装束からドイツ軍に「緑の幽霊」と呼ばれて不気味がられている。最初は身を隠しながらも偵察行動は順調だったが、やがて事態を察知したドイツ軍が彼らを追い詰めてゆく。 敵に追われ、無線機が故障する。仲間も一人、また一人と倒れていく絶望的な状況下、トラフキン中尉は最後まで任務を果たそうとする。 本部で彼の無事な帰還を願っている女性通信兵カーチャは「こちらスター、アース応答せよ」とのトラフキンからの連絡を受けていたが、その通信が途切れてしまう。 ラストでの、応答がなくなった無線機で呼びかけるカーチャは、悲痛です。 3枚で500円、1枚166円余で買ったDVDですが、これは掘り出し物でした。 手抜きの感じられない丁寧な描写。ストーリーも面白く、戦争映画としては正統派です。 ただ、この「東部戦線1944」という無粋な邦題はいただけない。 東部戦線というのはドイツ側から見たもので、ソ連側からだと西部戦線のはず。 独ソ戦の東部戦線を売りにしなくてもいいだろうに。 英題の「ザ・スター」だと誰も見ないだろうけれど、昔だったら「偵察隊応答なし」とか「乙女の祈り 嗚呼!偵察隊」とか、名付けるかも? しかし娯楽要素を採り入れた点で、かつてのソ連映画とは大きく変化しましたね。「戦争と平和」「ヨーロッパの解放」「カラマーゾフの兄弟」「チャイコフスキー」などの1960年代後半から1970年頃の、ソ連映画は国威発揚と芸術性が目的の退屈な長時間大作映画ばかりだった。 イタリアとの合作では「ひまわり」や「赤いテント」など、イタリアの俳優を主演にして娯楽要素を採り入れた作品があるが、これは海外へ売るのが目的だから商業性を必要としたものだろう。 近年は本作と同じようなロシア映画の日本未公開作が500円以下の格安DVDとして発売されていて、「限界戦線」「ソビエト侵攻 バルバロッサ作戦1941」「対独爆撃部隊ナイトウィッチ」など、かなり面白い。
2016年07月06日
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「コードネーム U.N.C.L.E.」(2015) THE MAN FROM U.N.C.L.E.監督 ガイ・リッチー製作 ジョン・デイヴィス スティーヴ・クラーク=ホール ライオネル・ウィグラム ガイ・リッチー原案 ジェフ・クリーマン デヴィッド・キャンベル・ウィルソン ガイ・リッチー ライオネル・ウィグラム脚本 ガイ・リッチー ライオネル・ウィグラム撮影 ジョン・マシソン衣装デザイン ジョアンナ・ジョンストン音楽 ダニエル・ペンバートン出演 ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー アリシア・ヴィカンダー、エリザベス・デビッキ、ジャレッド・ハリス ヒュー・グラント 本編116分 総天然色 シネマスコープサイズ 昨年(2015)11月に日本公開された作品。 現在の60才以上の年齢の人なら、皆さんご存じのテレビ映画「0011ナポレオン・ソロ」のリメイク映画です。 邦題は「コードネーム U.N.C.L.E.」ですが、原題の「The Man from U.N.C.L.E.」、「アンクルから来た男」はテレビ版と同じなので、海外ではすぐに意味が通じるのだろう、と思われます。 大戦中に核兵器を研究開発していたナチスの科学者テラー博士が戦後アメリカで保護されていたが、2年前に行方不明となった。 それが最近になってローマで姿を見かけられたと。 イタリアの海運会社を隠れ蓑にしている犯罪組織が、そのテラー博士を擁して原爆を製造しナチスの残党に渡そうとしている。 CIA諜報員ナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)は命令を受けて東ベルリンの自動車整備工場で働いている博士の娘ギャビー(アリシア・ヴィカンダー)に接触し、KGBの追跡を逃れて西ベルリンへと連れ出す。 テラー博士は核兵器製造でのウラン濃縮過程を短縮する研究をしていた。その研究が悪用されれば東西陣営の勢力バランスを越えた国際的危機になる。そこでアメリカとソ連は協力を余儀なくされ、ナポレオン・ソロはKGB諜報員イリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)とコンビを組んで活動することを命令される。 ソロとイリヤ、博士の娘ギャビーの3人は身分を偽ってローマへ。組織に接触して博士と研究データの奪還をめざすことに。 テレビ映画「ナポレオン・ソロ」の映画化というより、「ナポレオン・ソロ」を題材にしたという程度で、ファンの期待に添えるものではありません。 主人公のコンビがソロとイリヤというだけで、ヘンリー・カヴィルのソロは雰囲気を出していて良い感じだけれど、イリヤのほうは力持ちの大男で、キャラクターとしてはオリジナル版のデヴィッド・マッカラムのような優男ではない。終盤でウェイバリー(ヒュー・グラント)が出てきて、ちょっとポイントアップだが。 この米ソ諜報員のコンビは継続されることとなり、次の任務へと向かうところでジ・エンドとなるが、そもそも「アンクル」とは「コードネーム」ではなく「組織名」のはず。続編が作られるとしたら、そこの所はどうなるのか?、期待したい。 物語の背景となるのは東西冷戦真っ盛りの1963年。しかも冒頭では東ベルリンへ潜入したソロと、それを追うイリヤの活劇が見られ、ここは高得点です。スパイ映画として成功したのは、この冷戦の象徴である東西ドイツの描写があったからこそ。 スパイ映画として失敗した「新007」は、この東西冷戦がない現代を舞台にしたのが大きな原因で、テロリスト相手にいくらがんばっても、東西冷戦時代を知らないスパイではスパイ映画らしさを出せないのではないか。「カジノ・ロワイヤル」(2006)で「007シリーズ」を新しくやり直した時に、第二次大戦後のヨーロッパ、東西に分割されたヨーロッパを背景にすべきだった。1950年代後半、1960年あたりを時代設定に「007」物語を始めればスパイ映画として最も効果的だったのではないか?「コードネームU.N.C.L.E.」。ソロとイリヤに不満はなく、元気なヒロインも可愛らしくて良かった。ただ惜しむらくはテレビ版の、あのワクワクするテーマ曲がまったく聴かれなかったことです。内容をテレビ版と同じにすることを望むわけではないが、せめてあのテーマ曲をここ一番というシーンで流してくれたら、ファンは喜んだだろうに。
2016年07月02日
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