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イワチュウはクラリオタックスの前にひざまずきました。「わかりました、必ず伝えます。他には」「第三地下層までロボットたちが上手く操縦しているのを確かめたら、お前は宮殿に戻りクリサーラたちの動きを探り、何か異変があればすぐに知らせろ」「承知しました。それでは失礼します」 岩ネズミが立ち去るのを見ていたブッチャーがつぶやきます。「ネズミにしては、かなり賢いな。グラシオラズも生き物を見る目がある。あいつはこれからも使えるぞ」「ブッチャーさま、兄者のことですから法外なほうびを与えているのでしょう。しかし臭いがきついから隠密行動には不向きです」「動物には、それぞれ一長一短があるのだ。よし、俺はここで少しばかり寝るぞ。最近、寝不足で頭がフラフラする」 言い終わるや否や、比較的平らな岩盤のところに行き、そのままうつ伏せになるブッチャー。近くに腰を降ろしたクラリオタックスとサラリンバーラは細い目を見開き警備体制をときません。40秒足らずで「ガーガーーグォーー」すさまじいイビキが辺り一面にとどろきます。 ドールたちと合流したイワチュウの第一声は、「なんでこんなところまで来ているのだ。ブッチャーたちに見つかる恐れがあるだろう。ドールちゃん、これからはボクの命令に従ってもらうよ」 神妙な顔をしたドールがぶつぶつと応えます。「だってだって、心配だったよ~ん、いいじゃんいいじゃんじゃん、みんな無事で」「今回だけはボクを心配するあまりにということで、忘れましょう。それではブッチャー側の指令を説明しますから」 赤膚族の工場に行ってロボットを動かし、道端に転がる巨石をどけないとブッチャーたちがスムーズに宮殿に戻れない実情をテキパキと話しました。 リンゾウが思わず声をだします。「工場なんか行かなくて、このまま後から来る本隊と合流したほうが得策だ。ブッチャーを早く宮殿に戻す必要はないよ」 急にお供の立場を忘れイニシアチブを発揮するリンゾウにドールは面食らいますが、そのふるまいは嫌いではありません。「リンゾウのいうとおりやん、わざわざあいつらに協力しなくても、うっちゃらかしていればいいよ、一緒に戻ろうねイワチューーウー」 イワチュウが沈着冷静な声で応えます。「たとえロボットを動かして落石を取り除いても、第三地下層の深層部にいるブッチャーたちが宮殿に戻るには、時間がかかります。ボクは奴らの命令をきいているふりをして近づき動向を探っている方が、みんなの役に立つでしょう。あなた方は、ここから引き返し本隊と合流してください」「しびれを切らしたブッチャーが岩石を蹴散らし強引に戻ってきたらどうするの~ん」「精一杯、引き留めるための嘘を並べるよ。落石場所が多すぎて巨体の赤膚族では進行不可能だとか、天井の岩盤が崩れ他の通路を作らないとダメとかね」「もう、あんたってガンコンコン、いいわ、アタイとリンゾウは戻るよ」「仲間たちにブッチャーの居るところがわかるよう、通路のポイントへ光ゴケをなすりつけるから伝えて」「イワチューーーウ、絶対生きて会うんだからね・・・」 ドールの言葉を最後まで聞かずにイワチュウは、第二地下層にある赤膚族の工場跡に向かって走りだしました。 つづく 💛「カメぱっぱ」ブッチャーとの死闘編は358話を迎えました。 これからも楽しく、たまには考えさせる物語にしたいと、未熟な頭を ひねり執筆しますので宜しくでーす。 359話は1月5日(日)に更新します。 2020年が貴方と世界も平和に満ち溢れる年になるよう祈ります。💛💛💛
2019/12/29
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リンゾウは以前、体力で他の動物に劣るから喧嘩になったときにどうすればよいのかを沙祐里さんに相談しました。2日後に豆粒程度のクルミを渡されます。「これを敵の顔めがけてぶつけなさい。割れて粉が飛び散るわ、これが目に入ると5時間は失明状態になるからね。味方には目を閉じるようにいうのを忘れないで」 小袋に入れていた5つの粒を思い出し、リンゾウはとっさに投げつけたのです。七転八倒する2匹の岩ネズミを尻目にドールが猫なで声をだしました。「もうリンゾウちゃんたらたら、あんたもやるときはやるのよね~、もう隅に置けないんだから」「私の使命はドールちゃんを守るだけだから、ところでイワチュウさん、こいつらが現れないと奴らはどうするだろう」「どうもこの2匹を配下にしたのは、地上にいるブッチャーの側近らしいので、地下にいる者とは直接会っていないようです。たとえ会ったとしても岩ネズミのツラなんかいちいち覚えていないでしょう。ボクが行って様子を探ります」 がまんできずにドールが口をだします。「大丈夫なのイワチュウ、あいつらの敵側だとバレたら殺されるのよ。だいたい居る場所はわかったからから、一緒に戻ろよ~ん、これからは後から来る仲間に任せばいいじゃーんじゃん」「ブッチャーが動き出しヒスイ宮殿に戻ると今回の計画は失敗するので、少しでも第三地下層に留めておく必要があるのです。これが役に立つかどうかはまだ分からないが、やる価値はありますよ。それでは、あなたがたは岩場の陰に隠れていてください」 ドールが止める暇もなくイワチュウは走り去りました。その後ろ姿を見つめているドールにリンゾウが声をかけます。「地下にも一本筋がとおっている男気のある奴がいるな。ここで大人しく待っているなんてしないよね」「当たりきしゃりき尺取り虫、イワチュウの後をつけるよ」 2匹のホンドリスも一目散に走り出します。 クラリオタックスから2m離れたところに1匹の岩ネズミが前を見ています。「2匹と聞いていたが、もう1匹はどうしたのだ」「走っている途中、落石で絶命しました」「ヒスイ宮殿の動向を知らせろ」「生き物たちは宮殿の地下室で、地震の揺れが収まるのをまっています」 ブッチャーがイワチュウに尋ねます。「クリサーラは生きているのか」「私めが地下室から逃げ出したときは、無事なようでした」「お前だけか外に出たのは、他にはいないのだな」「はい、私が外に出た後はわかりませんが」 クラリオタックスがブッチャーに黙礼しながら声を発します。「よし、お前はこのまま第二地下層にある工場跡に戻り、N4号の倉庫に行ってA1ロボット4体のスイッチを入れる。そして通路拡張機<オシノケ>を作動させこの辺まで、赤膚族が通行できる道幅と高さを大至急、造るように伝えるのだ」 つづく
2019/12/26
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「ロボットにスイッチを入れて、命令を伝える小動物はどこにいるのだ」「それも兄者が仕込んで、もうすぐここに到着する予定です」「クラリオタックス、お前ら兄弟が羨ましい、2人とも俺に仕え命をかけている。兄は頭で弟は体を張ってな。俺の兄は下等動物の人間族なんかと手を組み元の世界に戻そうと無駄なエネルギーを使っている。その上、クリサーラなんかに心酔し多分一緒に行動しているのだろう。見つけ次第、殺すのだが、つくづくお前ら兄弟のように手をたずさえたかった」「以前、兄者が私にいったのは心底、尊敬できる人に会い、その方に命をも捧げるほど惚れ込んだら最高の幸せを感じるだろう、そのお方こそブッチャーさまだと。私めも同じ考えです」「地球全体を統治し、もう少しで絶対君主になる俺についてくればお前らは地球管理局のトップだ。先ほどいっていた小動物はいつ到着するのだ」「はい、遠くからでもジャスミンの匂いがするので近くまで来ているようです」 ブッチャーたちがいる厚い岩盤の高台まで約30m近くに来たドールとリンゾウ、先に進んでいた岩ネズミ2匹がイワチュウだけを呼び寄せました。 ボソボソと小さな声で話すのでドールたちには聞こえませんが、急にイワチュウが怒りだします。「お前ら、クリサーラさまの恩を忘れたのか、ボクは力ずくでも止めてみせる」 一発即発の険難なムードにリンゾウがネズミたちのそばに走ります。「どうした、こんなところで仲間割れはやめてくれ」 イワチュウが2匹を睨んだままつぶやきます。「こいつら、ブッチャーの手先に懐柔され、奴らの手助けをするからボクにも仲間になれとぬかした。宮殿からやって来る本隊には合流せず、このままブッチャーの配下になるそうだ」 リンゾウの隣に駆けつけたドールが口を開きます。「そりゃーないよねよね~食い物にでも目がくらんだのかい、それともネズミ族の王様にでも取り立ててもらう腹かい、アホアホーあんな奴らの約束なんか空気よりも軽いのよ~ん」 イワチュウと対峙していた2匹のネズミは、小さなリスなんか完全に無視して、じりじりと間合いをつめイワチュウに襲い掛かろうとします。体の大きさは3匹ともほぼ同じですから殺し合いになれば2対1でイワチュウが不利です。 突然、リンゾウが2匹のネズミに近づくと右手から小さなクルミを投げつけました。クルミが割れ白い粉が霧のように飛び散ります。イワチュウとドールに向かって怒鳴ります。「目をつぶって!」 つづく
2019/12/23
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ヒスイ宮殿を出たドールとリンゾウは、赤膚族が住んでいたドーム群やテント村がある第二地下層まで、落下している岩石の隙間を走っています。 クリサーラの予想したとおり、巨大洞窟はところどころ地震のため岩盤が陥落し直線の通路はありません。それでも前を走るイワチュウとその仲間2匹が的確な判断で転がっている岩石の間を進むので、その後を追いかければよかったのです。現在、地上侵略をはたしたブッチャーの配下たちは、人間を管理するため世界の主要都市に分散して住んでいるから、地下はもぬけの空状態でした。地上に進出した当時、兵器やクローンロボットの製造工場と食品生産工場は第二地下層で稼働していましたが、今ではすべて地上で作られているのです。その訳は安価でいくらでも手に入る人間族の労働力を最大限に利用しているからです。デルフミュームを慕う僅かな赤膚族はまだ地下で生活していましたが、ヒスイ宮殿からはかなり離れた場所にいました。 無人のドーム群を走り抜けてたリスとネズミたちは、第三地下層の入口へと向かいます。地下に生息している多くの生物は約54年ぶりに起きた大きな地震にびっくり仰天し、頑丈な岩盤がある狭い空間に避難しているのでしょう。 進行通路や洞窟にはほとんど見当たりません。ゴロゴロ転がっている岩石のちょっとした隙間を見つけ、チョロチョロ走るネズミとリスの5匹は、ようやくアップダウンのはげしい第三地下層にたどり着きました。 その頃、岩牢から320m離れた急斜面の高台にブッチャーと部下の2人が腰を降ろし休んでいます。ナンバーワンの側近、グラシオラズの弟クラリオタックスとその配下、サラリンバーラがブッチャーの前後を固め警戒をおこたりません。「もっと大きな揺れがきて、ヒスイ宮殿が崩壊するのを期待していたのだが、外れたな。よし、戻るぞ」 クラリオタックスはひざまずいたままの姿勢を崩しません。「ブッチャーさま、ここに着いてからも通路や洞窟のいたるとこに落石があり、帰り道は来た時よりも時間がかかります。我々だけで巨石を動かすのは困難ですので、しばらくお待ちください」「この近くに俺の部下はいないぞ」「いえ、飼い慣らしている小動物を伝令として使い、第二地下層の工場跡から通路拡張機<オシノケ>で通路の岩石を左右に押し分け、進路を確保します」「誰がそれを運転するのだ」「災害用の予備ロボット4体を倉庫に隠しています。A1型ですのでスイッチを入れれば命令に従いますから」「地上にいて俺の警備をしていたお前が、そこまで準備していたとは感心だな」「いえ、兄貴のグラシオラズがすべて手配していたおかげです。私は兄者がいないとなにもできませんので」 つづく
2019/12/20
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ポンポンチッチも小さな声を上げました。 「二本足では、クリサーラさんやビッグのように策をめぐらすものを策士というが、相手を気持ちよくさせた上に結果が上手くいけば、いうことないよポンポン」 ビッグも小さい声で相槌を打ちます。「策士策に溺れるというが、クリサーラさんの考えは冷静に計算しているから、まず失敗はないだろうゲロゲロ、ワシなんかよりも数段上のお方じゃゲロゲログァグァ」 それから1時間後、クリサーラが予想した通り、2回の大きな余震がありましたが、宮殿の地下室が崩れるのは免れました。さっそくドールとリンゾウが出発の準備に入ります。準備といってもドールが生田緑地仲間の一匹ずつと鼻をこすりつけ別れの挨拶をするだけです。たとえばカメぱっぱとは、「アンタとは<可愛い動物コンテスト>があれば、当然アタイが優勝で2位はアンタでいいかんね、もしアタイが戻らなくても・・悲しむのよ、エーン、エーン」「だいじょうぶパッパ、ドールちゃんはどんなことがあっても戻れるからね、それに」「それに、なになによ~ん」「みんなのアイドルだから、死んではダメぱっぱ」「も~う、カメぱっぱたらたら・・・」 さすがにあきれたポンポンチッチが大声を発します。「もう、いいチッチ、早く出発しないとブッチャーがこっちに戻る恐れがあるよ。ドールちゃん、急いで」 ようやく青年ネズミのイワチュウに誘導されたドールは、出口に向かいますが、足を止めると立ち上がり仲間たちに顔を向けました。「みんな、アタイが戻らなくても泣かないでね、アタイと会って幸せになったことだけを思い出にして生きていくのよ、それではサラバラバラーーバーラが咲いた」 地下室の片隅に集まっていた緑地仲間たち、一瞬、出口の方に顔を向けましたが、なにもなかったように隣のものと、雑談を続けています。 つづく
2019/12/17
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喜色満面を浮かべながらクリサーラが語ります。「ドールちゃんの言葉ってテンポが良くて聞いている方も気持ちが昂ぶります。それは敏捷な動きだけでなく頭の回転も速い証拠ですからね。その上、あなたのような可愛いリスは地下に存在しません。もし地下に住んだら、あらゆる動物が羨望の眼差しで見つめるでしょう」「ちょっとちょっとチョコレート、それは褒め殺しって技で、相手をおだてれば、なんでも自分の思う通りになるって初心者クラスのあざとい方法なんよ。そんな手口にアタイが簡単に引っかかると思ったら大間違いよんよ~ん、よんさま~古っ、なに~にやついてんのよ~、みんなしてアタイの顔見て、ずるいずるいるい、ったく、もう、いいわよ、行けばいいんでしょう。そしてマントルの高熱で焼け死ぬのね、リンゾウ、アンタも一緒だからね」 リンゾウが急いで前に出ます。「ドールちゃんとボクは一心同体、どこへでも行くから、たとえ地獄の底でも」「アホ、リンゾウ、誰がお前と地獄なんか行くもんか、それよりクリサーラちゃん、道案内する岩ネズミを紹介してくれない」 クリサーラが軽く手を叩くと天井の梁から太めのネズミ3匹が駆け降りて来ました。真中にいるネズミはドールの2倍の大きさがあり、まだ若く端正な顔つきをしています。そのネズミを見つめていたドールは心境の変化をきたします。「なになになに、地下にこんな綺麗なネズミがいるなんて、アタシはドール、あなたのお名前は」「ようこそ、むさくるしい地底までお出で下され感謝します。私の名前は、イワシミズガンチュウロウ、通称、イワチュウです。第三地下層だけでなく広範囲で動いているから道案内のガイドにはピッタリですよ」 デレデレ顔になったドールちゃん、これからの打ち合わせと称し生田緑地の仲間たちと離れた場所にイワチュウを連れて行きます。これにはリンゾウもあきれかえって呆然と見送っていました。今までのいきさつを見ていたカメぱっぱがポンポンチッチの頭に座っているガマのビッグに尋ねます。「クリサーラさんは、ブッチャーの居場所を探るのに、どうして岩ネズミだけを使わないのパッパ」「ワシも不思議に思いよくよく考えたら、答えがでたのじゃ。多分、岩ネズミは熱に弱いのだろう、それに先ほどから気になっていたのだが、体臭がややきつく、近くにいるとすぐにバレルのじゃ、だからブッチャーを見つけてもそばに行って確認するわけにはいかんのだ。それで臭いがしないドールに白羽の矢がたったと解釈したのだが」 いつの間にかクリサーラがカメぱっぱの隣にいました。「さすが生田緑地の知恵袋といわれているビッグさんですね。その通りです。まず岩ネズミは熱さに弱く、マントルには近づけません。それに全身からラベンダーの匂いを発しているから鼻のよい動物には、すぐに居場所を突き止められるのです。赤膚族も鼻がきくといわれているので用心に用心を重ねたのです。それに、ああ見えてドールちゃんはけっこう機転がきくので不慮の事態になっも慌てないで対応できますよ。だから先ほど私がドールちゃんにいったことは、全て事実です」 つづく
2019/12/14
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デルフミュームが天井近くから返事します。「私が地下に戻ったとき、隠れている反ブッチャー派の仲間に伝令を発しています。地震が収まれば9人は駆けつけるでしょう」「それは心強い援軍ですね。ブッチャーを運ぶには、それだけの人数で十分です。問題は誰が紙を燃やし煙をだすかですが、その前に岩牢の近くではマントルの川が流れ、高熱を発していると思います。熱による空気の流れはいかがですか。なぜなら煙が流れるようだと効果が期待できませんからね」「たしかに地下牢のそばは、かなり高温ですが、空気の流れはなく淀んだ状態です。弟、ブッチャーに短期間とはいえ、そこに幽閉されていた私が断言しますよ。追加すると第三地下層全体は、高さ10m程度の低い岩盤に覆われていますから、煙はそれほど拡散しないでしょう。ついでにいえば今回、紙を燃やす役目は私が行います。弟も私がやれば警戒しないと思いますから」「あなたがブッチャーと共に昏睡するのには反対です。なぜならブッチャーは岩牢までの短い距離を運べばすみますが、あなたをここまで運ぶのは大変な苦労をしなければなりません。煙を焚くのはモグシダにお願いします。ここで最初の話に戻します。まず第三地下層にいるブッチャーの居場所を探る先発隊には・・・」周囲に散らばる動物たちを見回し、あるところで顔を止めました。その目先には、モグンバの長い胸毛にくるまっていたリスのドールがいます。クリサーラの視線を感じたドールは、胸毛の中に隠れようと潜り込みますが、モグンバの右手が伸びて引っ張り出されました。「やーーーーだ、やあだ、やだ、やだ、アタイは地上生物なんよ、こんな地下深くにいるなんて、たまたまタマ川なの、それにこの下にいく道順なんかも全く知らない知らないしらないないない、別な小動物に頼んでお願いがいがい、クリサーラちゃんちゃんちきおけさ」 泣いてむずかる子供をあやすように優しい声をクリサーラはだします。「あなたは小動物の中でも、利発なうえに素早く動けるのも知っています。あなたのお供、リンゾウさんだけでなく、道案内には屈強な岩ネズミ3匹をつけるので安心してください」「なーーに、なに、もう、勝手に決めてめてめて、ひどいどいどい、やい、やいやーい、クリサーラ、女王だか女郎だか、じょうろうだか知らないが、あんたは地下だけの女王さまで地上生物には、関係ないないな~~い」 つづく
2019/12/11
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クリサーラは笑みの眉開いたまま口を開きます。「人間族の言葉に鳩が豆鉄砲を食ったようの表現がありますが、まさに今の顔がそれに近いかもしれませんね」 ザビエスが小さな声で応えました。「こんな緊急時に、なぜクリサーラさまは、のどかにガマとお話などできるのですか、先ほどより揺れは小さくなりましたが、まだ岩がパラパラ落ちてきていますよ」「自然の力はコントロールが効きません。コントロールが出来るときは懸命にエネルギーを使いますが、今は、この状況を静観するしかないのです。体は小さいけれどビッグさんは、かなりの博学家で話すのが楽しくなります。ところで皆さんは次の展開を相談していたのでしょう。それを聞く前に澤登サユリさんから嬉しい発表があります」 それまでリスのドールと遊んでいた沙祐里さん、突然の指名に驚くこともなくほほ笑みながら口を開きます。「ゴロータが偶然に足の指、爪の間に入っていた臭いゴケを持ち帰り、その抽出と培養に成功したのは前にお知らせしましたね。地下宮殿に来る直前にその培養液を和紙に吸収させて乾燥させ燃やすと、それを吸い込んだ赤膚族は最大24時間昏睡状態になります。この煙は他の生物には無害でなんの影響も与えません。なおこの実験は、ニューヨークを立つ前にザビエスが率先して協力してくれたおかげで実証されました」 天井の方からぶつぶつ、つぶやく声がします。「サユリに呼ばれて小さな部屋に腰を屈めて入ると、煙が充満していて私は、ドテッと倒れて眠り込んだだけです。だから強制的に協力させられのです」「ま、結果良ければ全て良し、ザビエスは丸一日、気持ちよく寝ていたからね、そこでいかにブッチャーへ、この煙を吸わせるのかが重要なポイントになります。それではクリサーラさん、あとはよろしく」 沙祐里さんよりも一回り以上小柄なクリサーラが30cmほど宙に浮かびます。「まず第三地下層に向かったブッチャーの居場所を確認するのが、第一優先です。もし岩牢の近くにいれば、それほど苦労しないで運べますが、そこから遠いところにいると、デルフミュームのお仲間と共同して運ばなければなりません。それでは、これからのタイム・スケジュールを発表します。この地震はまだ大きな余震が2回あるのでそれが収まってから、ブッチャーがどこに居るのかを探る先発隊がここを出発します。第二と第三地下層に行く通路には大きな石が落ちているだけでなく岩が崩れ進行の妨げになっているから、大型動物はなかなか進めません。小さく身軽な小動物が第三地下層まで行き、ブッチャーの居場所を見つけます。見つけたらすぐに引き返し第二地下層まで進んでいる本隊と合流して第三地下層まで案内し、ブッチャーを眠らせるのです。本隊にはデルフミュームとザビエス、それに岩牢までブッチャーを運び込むのにはお仲間の赤膚族5人は必要ですね、デルフミューム、すぐに手配できますか」 つづく
2019/12/08
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ブッチャーが第三地下層に向かって走っているとき、ヒスイ宮殿にいる動物たちは、クリサーラの避難命令のおかげでパニックにならずに済みました。 宮殿の地下室は頑丈な天井でおおわれているので、ガタガタと揺れがきても仲間同士でのんきに雑談をしています。人間族の4人、木村のトメさんや澤登夫婦、桐山さんはデルフミュームやザビエスと車座になって固まっていました。 生田緑地仲間もその隣でグラグラ揺れる天井を心配そうに見つめています。 ザビエスが思いつめた表情で声をだします。「この異変は天がくれたチャンスかもしれませんよ。クリサーラさまがどのような計画でブッチャーを最深部にある岩牢に閉じ込めるのか知りませんが、眠らせてからそこに運ぶのには、我々だけで10人も必要で、とんでもない労力を使うのに今回、奴は自分の足でその近くまで向かっているのです。あとは奴を静かに眠らせる手段を考えれば、すべてが解決ですよ」 桐山清十郎も口を挟みました。「クリサーラさまはブッチャーを眠らす方法を、すでに考えていたに違いありませぬ。だからこそニューヨークからこの宮殿まで、おびき寄せたのでござるよ」 人間4人と巨人2人は広い地下室にいる様々な動物たちを見回し、クリサーラがどこにいるのか目で追いかけます。・・・灯台下暗し、なんと隣にいる緑地仲間のポンポンチッチの頭に足を投げ出し座っているガマのビッグと楽しそうにおしゃべりをしているのです。ビッグはクリサーラと会って、まだそれほど時間は経っていないのに、完全にファンとなっていました。「すると地下生物も種類によって寿命の長短があるということですな、その辺は地上動物と変わらないなゲロゲロ」「人間族の寿命が100歳で長寿といわれるのに、白肌族や赤膚族は400歳から500歳が平均寿命です」「生き物が生存する環境は地下の方が適しているのかもしれませんよグァグァ」「それに長い間つちかわれた遺伝子が各種族に組み込まれているからでしょうね。先ほどからお隣にいる人間たちとザビエスが私の方を見て、あきれかえった表情をしています。ビッグ、あなたとお話ができて楽しかったです。また時間を作るのでお話しましょう」「こちらこそ、貴重な時間を作ってくだされ感謝しますぞゲロゲロゲーロ」 クリサーラはゆっくりとザビエスの方に歩いて移動しました。 つづく
2019/12/04
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クリサーラが天井近くまで浮き上がると同時に大広間にいた動物たちは、モグンバやババローナの誘導で地下へ通じる階段に並びます。大中小、様々な動物たち、一匹たりとも大声を上げることもなく静かに進みました。 それよりも前にヒスイ宮殿の東側から脱兎のごとく大巨人が5人、第二地下層の入口を目指して駆け出しています。しんがりにはブッチャーがいます。大きな横揺れが始まるとすぐさま部下たちを呼び寄せました。「この揺れは上にある軟弱な岩石が崩れ、大きな洞窟がつぶされるくらいの地震だ。俺は第二地下層からその下にある第三地下層まで退避する。お前たちは俺の前を走って通路を確保しろ、進路をさまたげる岩石を蹴散らかせ。手に余る石があれば脇道を作って、もし走れなくなったら、そこに留まれ。護衛のクローンロボットはここに置いていく、行くぞ」 クリサーラが宮殿内の動物たちに避難の言葉をかけている最中、すでにブッチャーは外に出ていたのです。文字通り変わり身の早さは、天下一品ですが、この素早い判断力が赤膚族の帝王にのし上がった理由かもしれません。 雨あられと落ちてくる岩石を手で払いのけ第三地下層に避難しようと必死になって走るブッチャー。どでかい石は身をかわし、ぶつかるのを避けています。過去に2回、大きな地震を体験しその都度、地下洞窟にある巨大空間を逃げ回った記憶がよみがえりました。巨体を誇る赤膚族でも落ちてくる岩石に直撃すればひとたまりもありませんから、できるだけ上にある岩盤が頑丈で落下する確率が低いところにと移動したのです。 マントルが急激に膨張して噴き出し、普通の流れを逆流させ細い川を数倍も広くさせました。そのため周辺の地層を崩して雪崩現象を起こし、それが地底地震の主な要因でした。 地球表面でひんぱんに生じる断層のゆがみと亀裂から起こる地震発生とは違い、短時間で収束する場合が多いからブッチャーも今回の揺れをそれほど深刻に考えていなかったのです。第三地下層まであと30分ほどになって振り返りと、クラリオタックスの他に1名の部下が懸命に走っていました。他の者が遅れようが岩石の下敷きになろうが、知ったことではない。休むのを許さず前を見つめて走りだしました。 つづく
2019/12/01
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