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「川柳作家・岸本水府とその時代」という副題がついた、田辺聖子、渾身の大評論。岸本水府という人の名と、その川柳について初めて知ったのは、やはり“おせいさん”の「田辺写真館が見た“昭和”」を読んだ時のことでした。*「田辺写真館が見た“昭和”」過去ブログはこちら「大阪はよいところなり橋の雨」…情緒を簡潔なことばに凝縮させた、短詩形文学としての川柳。川柳といえば、落語のマクラ、あるいは新聞や週刊誌の「時事川柳」とか、よく話題になる「サラリーマン川柳」しか知らなかった私にとっては、恥ずかしながら初めて知る世界が、そこにありました。大阪の生んだ岸本水府という川柳作家と、同時代の川柳界を綿密に描くという仕事を通して(本作には、水府のほか数十人の作家による、千句以上の川柳が掲載されています)、水府の遺した「川柳は日本人の言葉のリズムに合った十七音字を日常語で行く人間諷詠であり、よろこび、かなしみ、笑い、矛盾、皮肉、軽快、あこがれ、理想が存分に奏でられる街頭録音である」という思いを現代に伝え、正しく文学作品としての地位を確立させたいという決意の力作。「新時代の文学として見直してもらいたかったから、この作品を書いた」という、著者の思い入れが伝わる作品です。読む人を皆、川柳のファンにさせてしまう、この本は著者の願いどおりの“偉業”です。そして、私はそれ以外にももう一つ、水府や同人の作家たちが青春時代を過ごした、大正期の大阪の魅力的な描写に魅せられました。「骨の髄まで浪速町人は遊蕩の毒に冒されている。人生に感興尽きず、どんなことからでも明るさを生もうとする。笑いはそんな人生から滴り落ちる漿液であり、旨いもんを(ただし、安くて)たべるたのしみ、芝居や落語、音曲を愛する道楽は、浪花の素っ町人の血を粘っこくしている。」そういえば、もうすぐ閉店する「くいだおれ」の女将さんが、記者会見で「大阪の街も芝居小屋がどんどん減って、昔とは変わってしまって…」という意のことをおっしゃっていましたが。芝居小屋の太鼓の音が響く道頓堀界隈の風情は、田辺聖子の筆にかかるとまるで、地上の極楽というイメージでした。その、良き時代の良き日々が、昭和の戦争の荒廃にすべてを失い、そこに生きる川柳作家達も、同時代の人々と共に過酷な運命をくぐるわけで…でも、その状況すら、川柳という作品に昇華した実例が数多く出てきます。創作、というエネルギー源を持つ人の、精神の強靭さを思ったのでした。長大な作品ではありますが、味わいながら楽しんで読みました。さて、数多く紹介されている岸本水府の作品の中で、私が一番印象に残ったのが「あるようでないようで不平あるのなり」という一句です。家族をはじめ、様々な人間関係の中で、自分や、あるいは自分の周囲の人々が抱いた思い、見せた顔のあれこれが思い出され、「本当にいいとこついてる!」と、笑って唸らされました。道頓堀の雨に別れて以来なり
2008.06.28
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「類は友を呼ぶ」というけれど、私の友達には無類のパン好きが多いのです。地元の店からデパ地下の有名店まで、パンに関してはいつも豊富な情報が集まってきます。先日も、ある友達から「名古屋で美味しいベーグルの店を見つけた!」という話を教えてもらいました。その名は「ベーグル心粋(しんすい)」。天然酵母を使った低温発酵のベーグルだそうで、今年オープンしてから非常に人気が高まっているのだとか…私はベーグルには目がないので、お取り寄せを頼むという彼女の好意に甘え、便乗させてもらっちゃいました。さすがは人気店、地方発送も順番待ち状態のようで、3週間近く待ってやっと到着しました。冷凍便でお願いしたので、袋に入ってちょっとわかりにくいですが…手前にある、妙に茶色い一品。これ、なんと八丁味噌のベーグルなのです。さすがはなごや!いくつか頼んだフレーバーのうち、私はキャラメルチョコチップが特に気に入ったのですが、八丁味噌も、甘辛い味噌だれが生地にジュワっとしみこんでいて、とても美味しかったです。熱々の焼きたてにバターをちょっとのせたら、意外と良い組み合わせでした。外資系チェーンなどのよくあるベーグルに比べて、もっちり感がすごいというか、外側のパリっとした皮と、中のしっとり感のコントラストが感動的。小麦の高騰などで、志あるパン屋さんに時代の風向きはキビシイと思うのですが(実際、オープン後から価格改定を余儀なくされた模様)、応援したくなるお店が一つ増えました。◎SHOP DATA◎「ベーグル心粋」TEL&FAX 052-732-5505地下鉄東山線池下駅1番出口より徒歩10分。地方発送は電話で注文を受け付けてくれます。
2008.06.25
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この映画の脚本・監督を手がけた、内田けんじ氏のデビュー作「運命じゃない人」を観終わった時の、爽快感を鮮やかに覚えています。観客として、こんなにも小気味良く、作り手に弄ばれてしまいました…♪という、満足感がありました。実際の人生で人に騙されるのは不快なことですが、良く出来ただまし絵の謎解きは、いっそ気持ち良い(笑)繰り返し見てその都度面白いというのは、やはり脚本の「出来の良さ」なのでしょう。(ちなみに、その時書いた映画の感想はこちら)。その内田監督の新作が、前作とは比べ物にならぬほどのメジャー興行として、近くのシネコンでも観られるということで、楽しみに観てきました。そして、その期待はありがたいことに裏切られず、満面の笑みで映画館を後にしました。今作でも、「○だな」と見えていた物語が、実は「△×■」とその様相を変えていく…その鮮やかなどんでん返しテイストは健在でした。大泉洋や堺雅人をはじめ、キャストそれぞれの「俳優としての持ち味」すら、観る者の錯覚を誘うトリックの一端になっているような。人間の持つ「印象」が、時にどれほど、物事の真実から遠いところへわが身を誘うか。そんなことを考えさせられました。正直なところを言えば、人物像や、設定の粗探しをした場合、細かいツッコミどころは色々あると思うのですが(笑)恐らくこの監督さん、そういうリアルの追求は、端から放棄しているのかも。100分強の映画の中で、どれだけ観る人をあっと言わせられるか、それだけが勝負だ!という、潔さを感じます。登場人物同士の優勢と劣勢が、目まぐるしく反転するこの映画において、描かれる「ある種の人間の勝利」と「ある種の人間が叩きのめされる様」は、何とも気分の良い、後味の爽やかなものでした。リメイクや人気ドラマの映画化もいいけれど、こういうオリジナル脚本で勝負する日本映画が、コンスタントに観客を動員出来るようになってほしいと思うので、ぜひ多くの方に劇場でご覧いただきたいと、お奨めします。出来れば、なるべく予備知識を持たずにスクリーンの前に座って、この小気味いい映画に翻弄されるのが良いかと…
2008.06.22
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1500円が990円にプライスダウンされているのを見て、もう後先顧みず、誘惑に負けて買ってしまいました…ユニクロの下駄。ちなみに、今夏のユニクロ、中原淳一さんのデザインをモチーフにした浴衣のシリーズが出ていて、この下駄もそのラインのものです。他に、やはり刺繍をあしらったかごバックなどもありまして。こちらは何とか自制心を発揮して、買わずに帰りました。別珍とちりめん風の、二種類の素材が使われた鼻緒の色合いが好みだし、何より、刺繍がかわいくて一目惚れしてしまいました…来月の夏祭りでデビューさせようかな。浴衣の新調は見送ったんだからこれくらいの買い物はいいかな、と、衝動買いの言い訳をしてる私です。さて、私の住む地域では雨の夏至となりました。今夜は「100万人のキャンドルナイト」イベントですね。わが家は電気を消して、キャンドルを灯す…間もなく、夜中のEURO中継に向けて早寝してしまうかも…*100万人のキャンドルナイト、公式サイトはこちら*http://www.candle-night.org/jp/
2008.06.21
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入梅前から夏日のような暑さが続いたせいか、この頃、夫婦そろってちょっとお疲れ気味のわが家。そんなところへ、お友達から教わったのが、ものすごく簡単に出来るという、韓国料理の定番、参鶏湯(サムゲタン)のレシピ。でもサムゲタンといえば、丸鶏を使って、確か高麗人参とかもち米とか入れるんじゃ…?と逃げ腰の私でしたが、レシピの中身を聞いて、それなら私にも出来る!と、早速作ってみました。このレシピ、テレビ番組(おそらく「おネエ☆MANS」?)で、フードコーディネーターのマロンさんが紹介していたものなのだそうです。そのアイデアがとにかく、目からウロコのお手軽さなのでした。※これは一人用の土鍋に盛り付けたところ。でも本格的にこういう韓国食器が欲しくなりました(笑)材料: 骨付きの鶏肉 (もも肉と手羽先、合わせて500g強) にんにく 3かけ (包丁で叩いてつぶしておく) 赤飯のおにぎり 1個 むき甘栗 1~2袋 塩、ごま油 小さじ1 こしょう 少々 薬味として…青ネギ、しょうが、松の実<レシピ> 材料と水3カップを鍋に入れ、中~弱火で1~2時間煮込み、仕上げに刻んだ青ネギ・針しょうが・炒めた松の実をかける。韓国料理のお店で食べるサムゲタンとはちょっと違うものですが、これはこれで、鶏のスープの旨みをがっつり味わえる!という感じで、とても美味しかったです。夫にも大好評でした。体がこういうものを欲しがっていた、といいましょうか?手羽先からコラーゲンがたっぷり出ているし、にんにくで元気も出そう。何より簡単で、手に入りやすい材料ばかり…というのが素晴らしいですよね。オリジナルのレシピでは、なんと材料を炊飯器に入れて、二時間炊飯モードで煮込むだけという、さらにお手軽な方法が紹介されていたとか。さすがは「辻調」首席卒業!マロン(板井典夫)さんのアイディアに敬服です。体が中から温まるので、夏バテにも、それから風邪の季節にも良さそう??1年を通じて楽しめそうな、新しい我が家の定番メニューが増えました。
2008.06.19
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私が着付けを習っている先生は、ご自分の教室とは別に、講師として招かれて「一日着物講座」のようなクラスを時折受け持たれています。(私も以前、お誘いを受けて聴講したことがあります。その時の様子はこちら。)この度、「夏に楽しむ着物のおしゃれ」と題した講座を開かれることになり、そこで私を含めた教室の仲間3人が、モデルとしてお手伝いをすることになりました。講座の内容のメインは、タイトルどおり単衣や薄物の素材合わせや、涼しく見せる着こなしのポイントについてです。会場には、先生が持参された様々な夏の着物(絹芭蕉や小千谷縮、夏大島etc.)や夏の帯が飾られ、素材の名称や季節を先取りした文様のことなど、レクチャーに受講生の方々はもちろん、お手伝いの私たちも(フムフム、なるほど)と聞き入ってしまいました。【会場内に飾られた着物の一部。蚊絣と蜻蛉絣の単衣】【蜻蛉絣の着物に合わせた絽縮緬の帯は、前が花火、後ろに美味しそうなスイカ!】この他、暑い季節に、気軽に楽しめる和装のおしゃれということで、当然ゆかたの話も取り上げられました。そこで、皆さんの前でゆかたの着付けや帯結びの実演コーナーがあり、いよいよモデルの登場…だったわけです。といっても、聴衆の皆さんは、私の背中で帯を結ぶ先生の手元に目が釘付けだったので、モデルというよりマネキンのボディに等しい存在でした(笑)【半幅帯で、かるた結びと文庫の二種類をご披露させてもらいました。】この日のために、いつか教わりたいと思っていたかるた結びを自分でもマスター出来たし、講座の内容も、拝見できた美しい着物・帯の数々も、素晴らしかったです。特に印象に残ったのが、「夏の着物は引き算」というフレーズでした。先生曰く、暑い季節の装いは、見る人にも涼やかな印象を与えることが大切(自分が暑いからといって、キャミソール姿で、露出した素肌に玉の汗を浮かべている様子などは、見る人に暑さを伝染させるでしょう?と…)。だから色使いを抑えて、トーンを合わせた寒色系や淡い色使いの、すっきりした着こなしをおすすめします、と。その先生の当日の装いは、高麗屋格子のモノトーンのお召し物に、グレーの、どくだみの花が描かれた染め帯でした。自分にはとても手が出せなさそうな、上布の高級品ばかりを見せていただいたので、そのお着物もさぞや…と思いましたが、講座が終わった後、先生がニッコリおっしゃるには“これ、実はポリエステルなのよ♪着心地はあんまり涼しくないの”…「涼しい」と「涼しげ」は、別のことなんですねぇ。先生に一本取られました、という感じでした(笑)※私のゆかたは楽天の「ゆかた屋つゆくさ」さんで購入した絞りです。アイロン不要で着心地が軽く、「涼しげ」と「涼しい」が両立できるスグレものです。※有松絞り浴衣 ゆかた屋つゆくさ
2008.06.18
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所用で名古屋へ出かけてきたのですが、その道中、特急列車の中での出来事。私は通路側の席に座っていました。平日の朝早い時間帯で、ビジネスマンらしき人で車内はほぼ、満席です。気持ちよく眠り込んでいた私、終着駅の名古屋が近いとアナウンスで知り、目を覚ましたのですが…ふと脇を見ると、通路にデン、と置かれたキャリーバッグ。到着に備えて、降車口に向かう人々にとっては、明らかに通行の妨げになっています。そんなに大きなものではないけれど、通り抜ける人たちはいかにも邪魔そうに、体を横にして歩いていきます。大きな荷物を持った人も多いのでなおさら。そのサイズなら、持ち手をしまえば、網棚に収まるんじゃ?せめて自分の足の前に置けないのかしら?…なんて、私の方があれこれ考えてしまったのですが…当のバッグの持ち主は、我関せずという感じの態度です。なんてマナーが悪いのかしら、と、思わずその顔を盗み見してしまった私。おや、どこかで会ったことがある人だ…と思って、よくよく考えてみましたら、上方の、中堅どころの某落語家でした。去年から落語の面白さ、奥深さに目覚めた私、その方の高座もテレビその他で目にしていて、上手いなぁ~と好感度大だっただけに、もうガッカリ、ガッカリ!!夫にこの件を報告したところ「オレは前から、あの人いかにも性格悪そうだと思ってたんだ」と、妙に自慢気に言われてしまったのですが…そういう問題じゃないんだけど…“公”と“私”は別物、落語家の仕事は芸で人を楽しませることだけ、とわかってはいても、何だかこの先、あの人の噺で心から笑うことが出来なさそうな気がする…自分でも(単純だなぁ)と思うのですが。どうも私には、無作法の中でも特に“尊大な態度”というのには、アレルギーにも似た拒否反応があるようです。とにかく残念な出来事でありました。
2008.06.15
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所用でしばらくの間、実家に帰っていました。銀座に出かけた時のこと。数寄屋橋の交差点で信号待ちをしながら、何気なくお向かいのソニービルを見上げたら…目に飛び込んで来たのが、こちらの光景。この写真ではあまりわからないと思いますが…某ホテルのプロモーション。実は、↓ココでパジャマを着て手をふっていたのが、なんと生きたヒト。一体、高度は何十メートルなのでしょう?休憩したくなったらどうするのかしら??…でも、思わずポカーンと口をあけて(本物のヒトだよね、人形じゃないよね??)と凝視してしまった私に引き換え、忙しい東京の人々は、とてもクールで無関心(笑)そんな訳で、携帯を取り出すのも勇気がいったのですけど、野次馬根性を発揮して、すばやくパチリ、としてしまいました。一方こちらは、過日出かけた大阪・なんばの街角で見かけた、とあるビル。関西方面ではよく知られていると思いますが…なんと、くりぬかれたビルの中央を行き来しているのは、フリーフォール…いろんな意味で、大阪ならでは、な感じがいたしました。(ちなみにここでは、何人もの人が携帯を取り出していて、撮影しやすかったです・笑)
2008.06.11
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工事現場を避けようと思ったことがきっかけで、家から駅まで歩く道のり、新しいルートを発見しました。古い住宅が立ち並ぶ、狭い路地を抜けていくのですが、その途中で、思わず目と足を止めてしまったのがこの場所です。花壇や植え込みに咲いているなら、どこにでも見かける、ありふれたツツジの花。…ですが、何ゆえにこんなところに?少し前、アスファルトを突き破って芽を出した植物が、「ド根性○○」と呼ばれて話題になっていたことがありましたが。このツツジも、まさかその類?思わず近寄って、しげしげと観察しましたが(思わず携帯で撮影もしてしまった)、ツツジではなくお宅の方が、枝の周りだけ塀のブロックをくり抜かれたようでした。外から見ると、大きな木がたくさん植わった広いお庭に見えるのですが、このツツジ、中には枝を伸ばしていけなかったのでしょうか。そして、そんなツツジの花を不憫に思われたのか…?庭の持ち主の心情をいろいろと思い浮かべながら、通りがかるたび、きれいな花を楽しませていただいております。きっと、心やさしい方なんだろうなぁ、と思います。「壁の花」というのは聞いたことがありますが、「塀の花」というのはちょっと、珍しいですよね(笑)
2008.06.02
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