異論・極論・直言――マスコミが言わない解説、提言
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(金融機関の貯蓄証明書が義務付け) 筆者の知人が住まいを探していて、UR(都市再生機構)の住宅に入ろうと考え、入居条件を調べて、あまりの異常さにびっくりして、筆者に連絡をよこした。言われてチェックしてみて、その通りだったので、筆者も驚いた。 ホームページやそれぞれの住宅への入居資格を読むと、確かに、月額33万円以上の年収というのはよいとして、基準貯蓄額という条件があり、月額家賃の100倍以上の貯蓄が必要で、金融機関の証明書を提出することと明記されている。 ここ10年くらいの間にURが建てた住居は、東京では、ファミリータイプだと、月額の家賃は15万円から25万円くらいする。その100倍ということは、2千万円ほどの貯金がないと、URの建物に入居できないということである。 毎年、国から何千億円という巨額の資金を受けて運営している半官半民の組織で、こんな馬鹿げた入居条件をつけているのを、監督官庁の国土交通省も、マスコミもおかしいと言わない。それこそ、クレイジーである。(国民に安く良い住宅を供給したのはいつの話か) UR(都市再生機構)は元々は昭和30年、1955年に設立された日本住宅公団だった。住宅に困窮していた戦後の日本人の勤労者のために、安価に大量の住宅を建設し、供給してきて、戦後の日本人の住を支えた。 しかし、役所の殿様商売で、非効率な経営をする内に、膨大な借金がかさんできた上、これも殿様商売で、安く土地を手に入れることができず、割高な条件で土地を購入してきたために、出来上がった住宅の価格が高騰し、今では、民間の賃貸マンションより割高といわれるものがいくつも出てきた。 また、土地建物からみの公社公団がいくつもあったことから、合併や再編を繰り返し、住宅都市整備公団なとの名前を経て、今のUR(都市再生機構)となった。 URはここ10年くらいの間に、旧住宅公団が作った古い住宅を建て替え、少し洒落た建物を作り直し、カタカナの名前をつけて、結構よい価格で賃貸募集をしている。東京だと、ファミリータイプでは、家賃が17万円くらいから、20数万円と、民間並である。それでも、結構人気があったのは、単にビルを作るだけでなく、町並みを作るという仕事をしてきたからである。(保証人不要という謳い文句はインチキ) 最近のURのセールスポイントは保証人が不要だということと、礼金はとりませんということである。しかし、保証人は不要だが、8年分の家賃分、2千万円の貯蓄が必要だというなら、それは保証人が不要だということにはならないし、虚偽広告である。 今、民間では、保証人を友人、知人に頼みたくないという人のために、保証人は不要な代わりに、保証協会を使うという方式が広まっている。2年間で、2万円くらいの保証料を払えば、保証人になる人を探す苦労をしないので、大助かりということで、多くの人が利用している。 利用者の負担も大きくないし、これなら、無理なく誰でも利用できる。これに対して、URが求めるのは、家賃の8年分の貯金(東京だと2千万円程)と、金融機関からのその証明書である。でも、考えて欲しい。そんな貯金がある人が賃貸でURの建物を借りるであろうか。(2千万円あれば、マンションを買う) マンションなどを買う時、価格が高い東京でも、通常頭金はせいぜい1千万円までで、4、5百万円の頭金でマンションを買うという人も少なくない。貯蓄が2千万円もあれば、普通の感覚なら、それを頭金にして、マンションを買ってしまう。 URがつけている条件は、それをクリアして、なおかつ、URの建物に入居を希望する人を求めるというものである。入居者はいなくて結構ですと言っているようなものである。だから、URの住宅は空き家が多いのかと、変なところで納得してします。 ただ、現実には多くの人はその条件を形だけは作って入居している。実際にはそんな人はほとんどいないので、入居者に嘘で固めた資料を作るように強要しているに過ぎない。こんな馬鹿げたことをさせる意味が理解できない。 筆者は2、3年前にURの建物を結構見て回ったので、色々話を聞いたことがある。資料ももらった。その時には、こんな月額家賃の100倍分の貯蓄という条件はついていなかったと記憶する。 民間で、会社が事務所を借りる時、保証料として、1年分、2年分の家賃を入れるということは珍しくない。しかし、それでも、1年分か、高々2年分である。今、URが条件につけている月額家賃の100倍というのは、年数にすると、8年余りである。誰が考えても異常である。 URに好意的に、この理由を考えてみて、思いつくのは、入居者の家賃滞納があるかもしれない。しかし、入居の時点で、貯蓄を見せることを義務付けても、滞納した時に、URが貯蓄を差し押さえることが出来る訳ではない。そうして点では、まったく意味のない条件である。(管理をしないURの住宅管理) URの住宅に行ってみると、わかるのは、URの管理の悪さである。東京都の住宅供給公社などでは、各住宅ごとに管理人が常駐していて、掃除はもとより、入居者間のトラブルなどでも、解決しようと対応の努力をしてくれる。 これに対して、URの住宅では、「管理は住民同士で話し合ってしてください」という原則にしている。管理事務所にはパートの女性がいるだけである。それもいるのは、午前9時半から午後1時半までの4時間で、水曜日と日曜日は休みで誰もいない。 掃除は業者に丸投げである。この業者がURの系列の会社に丸投げされ、その会社が更に業者に丸投げする。筆者の知人がURに入居してみて、不具合が多く、入居早々に文句を言って、問題点を直してもらった。 その時、エアコンを修繕にきた業者の人は、「URは、1回来て、我々がもらえるのは、5百円なのです。普通、業者を頼むと、1回1万円の時代にですよ」と話していた。住民のために安く抑えているのではない。関連会社が搾取するために、業者を叩いているのだ。 こんなURはなくせという話は何回かあったが、旧建設省の有力な天下り先ということもあって、名称を何回か変えながら、しぶとく生き残っている。筆者はURが所有する物件を民間の業者に丸ごと売却して、管理させたら、利用者の利便は大きく向上すると考える。少なくても、家賃の8年分の貯蓄の義務付けというバカな条件はなくなるだろう。
2010.12.15
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