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《ソル》の子供たちマール&エーヴェルス「<ソル>の子供たち」ハヤカワ文庫SFペリーローダンシリーズ357。「ロボットは嘘をつかない」「ソルの子供たち」の中篇2本を収録。クルト・マール「ロボットは嘘をつかない」★★★1/2惑星<ラストストップ>に不時着したソル号が、<赤い芋虫の谷>で異星種族が残したと思しき機械類(ガジェット)や、《ロミオとジュリエット》と名づけられる2体のロボットを発見する。一部のガジェットを船内に運んだことから、ケロスカー人が<ソル>を司るコンピュータ知性、セネカと結託。ソル乗員に対するテロ行為が相次ぐという話。セネカ視点とソル号乗員視点で交互に描写しながら謎を小出しに解いてゆくミステリ仕立ての作品に仕上がっていて、スミス風の古典的なスペオペとは一味違う知的エンタテインメントになっている。H・G・エーヴェルス「ソルの子供たち」★★★★<ロミオとジュリエット>エピソードの続き。ケロスカーによるソル乗っ取りを撃退したローダンらは、<ロミオとジュリエット>を仲介としてケロスカー人との交渉を企図する。いっぽう、次元歩行能力を持つソル生まれのミュータント兄弟の関与で、ソル乗員たちが異次元空間への転移を経験する事件が相次ぎ、交渉のためソルを離れたプレシア号も、ミュータント兄弟の力で異次元空間に閉じ込められてしまう。前作よりもスケールアップした話で、いっそう面白い。このエピソードは完全には完結せず、未回収の伏線を残したまま次作へ持ち越しとなっている。このシリーズは本書で初めて読んだのだが、抽象的な超科学のハッタリとミステリ仕立てのストーリーがうまく融合していて、ドイツで何十年も続いている理由がなんとなくうなずけると思った。今後も他に読むものがなく、100円ショップで見つけたときにはまた買って読んでみたいと思う。少なくとも昨今、大量に出ているアメ製ミリタリSFよりはずっと読む気がする。総合8/10点
2009.10.21
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パトリック・ジュースキント「香水」文春文庫ドイツの小説なのに、翻訳がアメリカの世界幻想文学大賞を受賞、全世界1500万部の大ベストセラーだそうだ。日本でもそこそこ売れたようで(映画化のおかげもあるが)、在庫過剰のためブックオフでは100円コーナーに頻繁に見かける。とりあえず読まねば語れないから、買って読んでみた。そして、さすがに面白いと思った。人間のなりをしていながら人間になりきれない、超人的に鋭敏な嗅覚をもち、その嗅覚によって世界観と己の欲望体系を構築して行く男の一代記である。彼に翻弄され、かかわった欲深い人間たちは、次々と滑稽な最期を遂げて行く。一貫した嗅覚の論理によって生き、成長にするにつれ、次第に彼の欲望と生活様式はグロテスクなまでに人間離れしてゆく。究極の理想の匂いを手に入れるため、遂には連続殺人事件に手を染め、あっさりと逮捕されながらも、作り上げた究極の香水の力によって処刑をたやすく逃れる。しかし、人間界ですべてを実現できる力を手に入れながらも、自分は人間たちに憎悪しか覚えないし、人間たちも自分ではなく匂いを愛しているに過ぎないことを痛感した彼は、さいごのその香水の力を使って、あっけない最期を遂げる。まずその一貫した人間に対するシニカルな視線に基づいた、淡々とポイントを突く、ユーモラスな語り口がすばらしい。この見事な文体を用いながら、超人的な嗅覚という一種の「超能力」を異化要素として導入し、そこから極めて首尾一貫した論理によって人間世界を異化し、客体化する(異質な論理によってセカンダリー・ユニバースを外挿する)その手管は、(幻想小説の衣を綢っているにもかかわらず)SF的なセンスオブワンダーすら感じさせるほどに強靭であり、とてもこれが処女長編であるとは思えないほど巧みさである。とりわけ、「人間の感情や愛情など、嗅覚による化学的な記号操作によって簡単に左右される条件反射のようなものに過ぎない」という、そのシニカルな人間観と、カミュの「異邦人」を思わせる主人公のピカレスクを貫いた最期がたまらなく素敵。これは紛れもなく傑作。10/10点
2009.10.18
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天使の蝶プリーモ・レーヴィ「天使の蝶」光文社古典文庫イタリアの化学者作家の短編集。15編を収録。「ビテュニアの検閲制度」★★★検閲システムに関する技術変遷を描いたギャク小説。検閲機械の話は普通に面白いが、動物を使うオチはもう一つか。「記憶喚起剤」★★1/2匂いによって記憶・気分を喚起するというアイデアはコロンブスの卵で面白い(私の場合は匂いよりも音楽だが)が、オチらしいオチがなく残念。「詩歌作成機」★★★★1/2いやあこれは面白かった。シンプソン氏の新製品シリーズの一つ。戯曲スタイルが新鮮。詩歌作成機の作る詩作品の内容がいちいち面白くて感心する。オチはややベタだが。「天使の蝶」★★★1/2人間が幼形成熟だという奇想が何と言っても面白い。ナチスが行う実験の描写も不気味。ただ、オチらしいオチがないのが残念。「猛成苔」★★★★自動車に生える苔という奇想から出発して自動車の性別にまで及ぶ話の展開が異常で素敵。カーSFアンソロジーの冒頭に最適な作品だろう。「低コストの秩序」★★★シンプソン氏のシリーズ。物質複製機を扱っているが、オチがない。ちなみにこの作品の続きが「ミメーシンの使用例」。「人間の友」★★★★1/2サナダムシの細胞配列が言語を発信しているという奇想が凄い。ルグィンの蟻に関する同様の着想の短編を思い出した。解釈されるサナダムシの「詩」の一つ一つの内容も面白く、特にオチはお見事。「ミメーシンの使用例」★★★1/2物質複製機で妻を複製する男の話。着想自体はそれほど独創的ではないが、オチがうまい。「転換剤」★★★1/2もろもろの感覚を反転させてしまう(辛いと甘い、暑いと寒いなど)薬剤の話。イーガンの「しあわせの理由」を思わせる題材。内容はシンプルだがよくまとまっている。「眠れる冷蔵庫の美女」★★★★1/2「眠れる森の美女」をイメージした冷凍睡眠ものの戯曲。ブラックでピカレスクなオチが見事に決まっていて、クールで面白い。「美の尺度」★★★1/2一定のモデルを基準に顔の美醜を判定する機械の話。シンプソン氏のシリーズ。これはチャンの「顔の美醜について」を思わせるネタ。皮肉のきいたオチがいい。「ケンタウロス論」イタリア小説集にて既読。本書で読み直すと、違った意味が浮かび上がってきて(人間と動物のあいのこであるケンタウロスが人間の隠喩であり、作者の自己像でもあるなど)、評価が★★★1/2にあがった。「完全雇用」★★★★1/2これまた傑作。シンプソン氏ものは尻上がりにレベルが上がっている。「人間の友」につづく動物とのコミュニケーションものだが、本編では蜂や蟻などの社会性昆虫との会話に始まり、彼らを労働者として工場で雇うことで人間の工員が失業してしまうというすさまじいトンデモ展開に至る。昆虫言語に関する考察も楽しい。「創世記 第6日」★★★★地球の生物の創造を行っている神のようなエイリアンたちの議論を描いた戯曲。動物設計の手法に関するディテールも結構詳しく論じられるし、何より論じられる<ヒト>の形態に関するもろもろの奇想天外な提案が笑える。そして<鳥類>にすると決定されたにもかかわらずなぜか哺乳類にされてしまったというオチも人を食っている。「退職扱い」★★★★1/2シンプソン氏もののシメもこれまたヴァーチャル・リアリティものの大傑作。さまざまな人間や動物の体験を感情や記憶とセットでリアルに記録し追体験させる機械の話。一つ一つの体験ソフトの内容も楽しいし(とくにグラビアアイドルのセックスソフトのくだりは笑った)、いまどきの<ゲーム脳>を思わせるシンプソン氏の末路に関するオチのつけ方も的確。*****予想以上にすばらしい本だった。特に後半のクオリティの高さは異常。プリーモ・レーヴィの略歴と著作1919 トリノ生まれ(ユダヤ人)1937-1941 トリノ大学で化学専攻1942 製薬会社に入社1944 アウシュヴィッツに送られる1945 ソ連軍により解放される1947 「アウシュヴィッツは終わらない」(朝日新聞社)1963 「休戦」(早川・朝日)*カンピエッロ賞受賞。1966 本書1971 Vizio di forma(形の欠陥)短編集1975 「周期律」(工作舍)1978 La chiave a stella(星型レンチ)*ストレーガ賞受賞。1981 La ricerca delle radici(ルーツの探求)、Lilit e altri racconti(リリトその他の物語)短編集1982 「今でなければ いつ」(朝日)*ヴィアレッジョ賞、カンピエッロ賞受賞。1984 Ad ora incerta(不確かな時間に)詩集1985 L'altrui mestiere(他人の仕事)エッセイ1986 「溺れるものと 救われるもの」(朝日)評論1987 トリノ自宅で投身自殺。1997 「プリーモ・レーヴィは語る」(青土社)
2009.10.13
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ガルシア・マルケス「百年の孤独」を読み終える。今まで毛嫌いしていた「マジック・リアリズム」だが、単に駄作ばかり読んでいたからつまらなく感じていただけということが、本書を読んで分かった。最初に本書を読んでいたら全く印象は違っていただろう。俺が「マジック・リアリズム」に関してどうしても理解できなかったのは、なぜ執拗な「リアリズム」の手法を持ち込む必要があるのかということだった。文学におけるマジック的要素、幻想というのは、ロマン派的な自己解放であり、因襲的コードから自己を解放することによるカタルシスが主眼である。それなのになぜ、因襲の最たるものである「リアリズム」に縛られなければならないのか。多くのマジックリアリズムに分類される駄作群(例、カルペンティエール、名前は忘れたが「戦時生活」を書いたSF作家など)を読むたびに、せっかくの幻想事象が執拗な写実描写によって退屈なものに変わっているようにしか見えず、「俺にはあわねーな」としか思えなかった。しかしそれは「俺がマジックリアリズムに合わない」のではなく、単に、「幻想事象自体がつまらない」「魅力的な写実的描写力がない」「幻想と写実の混合の仕方が下手糞である」など、もっぱら作者の力量不足に原因があったらしいことが本書との比較で明らかになった。ちなみに、その駄作の中には、マルケス本人の「族長の秋」が真っ先に入る。他のマジックリアリズムの駄作群とは見違えるように、本書はぐいぐい引き込む魅力を持っている。やはり、発売されてすぐ大反響を呼び世界中に翻訳され、一気に作者をスターダムにのし上げた作品だけに明確な質の違いがある。本書の実質的な主人公と言っていいマコンドという町は、完全な架空の存在であるにもかかわらず、その町での出来事や、登場する人々もどことなく現実離れしている(寓意的設定をされている)にもかかわらず、南米独特の空気感を伴ってリアルに描写されることで、読んでいる最中にはもしかしてこれは実在した町の話ではないかと錯覚してしまうような現実感を生んでいる。そして、読者が脳内でこの町の住人になりきったあたりで、次第に滅びの声が聞こえ始め、住人たちが次々と死に、マコンドという町と最後の登場人物に、衝撃的な終末が訪れると、やっぱりこれは架空の町だったのだという事実に、愕然としてしまうという仕掛けになっている。とにかく、このある意味ボルヘス的な結末は、あまりにも見事であり、そしてその衝撃ゆえに、マコンドという町の持つ魅力や価値が反射的に高まるという効果を生んでいる。そしてその衝撃を高める上で、あくまでも中途の描写にはリアリズムの文体を用いる必要があったのだということが、俺の鈍い頭にもようやく飲み込めた。幻想が幻想でないようななりをしていながらやっぱり幻想だったという事実を見るときの衝撃、これを与えるためにこそ、マジックリアリズムは「リアリズム」を採用せざるを得ないのだ。しかしその課題があまりにも困難でハイレベルでありすぎるがゆえに、マルケス本人を含め大半の作家がほとんどの作品で失敗をしているということなのだろう。本書は、その稀有な成功例であり、何度でも読み直すたびにその不思議な世界に否応なく没入させられるような不思議な空気感を持っている。これを読んだからと言ってマルケスの他の作品まで読もうという気にはならないが、少なくともこの作品だけは特別扱いされていい、そのことだけは素直に認めたいと思う。9.5/10点。
2009.10.11
10/9世界幻想文学大系41「現代イタリア幻想短編集」返されなかった青春 ジョヴァンニ・パピーニ ★★★ある男の娘に1年の年齢を貸した女が、年をとってから逆に「借年齢生活」に入ってしまう話。アイデアは面白いが特にひねりもなく、普通のショートショートになっている。自分を失った男 ジョヴァンニ・パピーニ ★★★仮面舞踏会に行き、倒れて「自分を失った」男が自分を捜し求める話。なくした「自分」というのが何なのか明記されないまま話が進み、最後に遺失物取扱所に届けられた自分を取り戻す。アイデアはシュールで面白いが、オチにひねりが足りない。禁じられた音楽 アルド・パラッツェスキ ★★あるアパートの住人が夜毎奇妙な音楽を奏でるというだけの話で、なぜこれが「幻想」短編として紹介されているのかいまいち不明。話もつまらない。「人生」という名の家 アルベルト・サヴィニオ ★★★★これは凄いです。母親と二人暮しの20歳の男が家の中を歩きながら現実と妄想が渾然とした心象風景が描かれる。そして最後に男が鏡を見ると60歳になっているというオチなのだが、このオチが癖のあるやや読みにくい文体によるはったりとあいまって、勁いインパクトを持っている。作者はキリコの実弟だそうだが、さすがである。巡礼 マッシモ・ボンテンペッリ ★★★1/2ある孤独な男がいきなり現れた巡礼の一団に加わり、一夜の幻想を見る話。日常と幻想との自然な融和ぶりが見事。オチにはもうひとひねりほしかったところ。ゴキブリの海 トンマーゾ・ランドルフィ ★★★★「月ノ石」などの邦訳がある作者の作品で、前から読みたいと思っていた。奇想度ではダントツ。父と子の確執が一応のメインテーマだが、それを素材に展開される妄想世界の徹底した強烈さがすさまじい。ゴキブリの海へ向かって航海する船上で女を奪い合う息子と蛆虫の闘争劇、といちおう要約は出来るものの、要約することに意味はあまりない。とにかく次々と繰り出されるシュールでグロテスクな言語遊戯世界のイメージの強烈さが凄すぎる。これは俄然、「月ノ石」ほかも読みたくなってきた。コロンブレ ディーノ・ブッツァーティ 既読、省略。魔法の上着 ディーノ・ブッツァーティ ★★★ブッツァーティの短編の大半は、シンプルな奇想に常套的な物語展開を持った、ショートショートのお手本といえる。その分、個人的にはやや物足りないのだが。本編もその例に漏れず、ポケットから大金が出てくると同じ金額の犯罪が起こる衣服を買った男の話で、無難にきれいにまとまったショートショート。壮麗館 アルベルト・モラヴィア ★★★★1/2リアリズム作家という印象だったモラヴィアが本編のようなシュールなホラーを書いていたのがまずは驚き。しかも出来がいい。婚礼式典で客が吊り上げられ料理されてしまうというブラックな奇想が、抜群のリアルな文体で描かれるのだからたまらない。傑作。パパーロ アルベルト・モラヴィア ★★★1/2正体不明の「パパーロ」という商品をめぐるブラックな風刺小説。一種の経済SFとしても読める。途中までは抜群に面白いのだが、オチがやや投げやりなのが残念。アルゼンチン蟻 イタロ・カルヴィーノ ★★1/2カルヴィーノがリアリズムからアンチリアリズムに転向する前後の作品だそうだが、つまらなかった。阿根廷蟻という蟻が引っ越し先の村で大量に発生し跋扈しているという話だが、人物設定などが平凡で興味をもてないし、基本的にリアリズムの文体で書かれているため、物語に抑揚がなく、退屈で、オチらしいオチもない。せっかくの面白くなりそうな着想が、リアリズムによって台無しになっている。この作者はリアリズムを捨てて正解だったといえるだろう。猿の女房 ジョヴァンニ・アルピーノ ★★★1/23人目の妻に猿を娶るという大馬鹿設定を普通に淡々と描写しているのが面白い。奇抜な設定以外は基本的にリアリズム文体で書かれているのだが、カルヴィーノと違って簡潔だから退屈せず、あっさりしたオチが逆に新しく感じる。娘は魔女 ジョヴァンニ・アルピーノ ★★★1/2「言ったことを本当にする」能力をもつ娘に手を焼く母親の話。かっちりまとまった秀作。娘が自らの妊娠を語るオチが怖い。ケンタウロスの探究 プリーモ・レーヴィ ★★★ケンタウロスの生態(性態)をインチキ生物学交えて語る話で、そこそこ面白いが、馬をレイプして回るオチがやや漫画っぽ過ぎるか。この作者は短編集を借りてきたので本書のあとに読む予定。虚偽の王国 ジョルジョ・マンガネッリ ★★★★母親の死に直面し、さまざまな妄想を打ち立てて抵抗する男の一人語りが次第にエスカレートして、ある王朝の国王と反逆者を兼ねる自己を妄想するにいたり、ついにはすべての登場人物と展開を思いのままに操る神として君臨し、最後は胡蝶の夢の不安に陥る話。要約するとこうなるが、この作品に関しては、題名に表れているとおり、「主観圧勝」を主張するメタフィクション的フィクション論となっている作品スタイルそのものが重要であり、ストーリー自体はどうでもよい。中で出てくる刑事裁判の全当事者を自己が兼ねる話は俺がちょうど思いついて書こうと思っていたネタ。似たようなことを考えるやつがいるなあと思った。ある鰯の自伝 ルイージ・マレルバ ★★★1/2ある男が鰯になる夢をとことん理詰めにリアルに追求した結果、缶詰になった自己=鰯が現実の商店に並んでいると主張するに至る話。リアリスティックな文体で語られる「およげたいやきくん」のような話だが、簡潔でしまった文体と明快なオチがなかなかいい。リゲーア ジュセッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ ★★★ある古代ギリシア学者がセイレーンとの過去の恋物語を打ち明け、海に消える話。ストレートなファンタジーをリアリズムのスタイルで語っているのが新鮮だが、やや冗長なのと、オチがストレートすぎる気がする。***以上、他の作品も読んでみたいと思ったのはアルベルト・サヴィニオ、トンマーゾ・ランドルフィ、アルベルト・モラヴィア、ジョルジョ・マンガネッリの4名。<イタリア幻想文学史 抜粋>1861 イタリア国家統一。スカピリアトゥーラ派の作家たちが幻想小説を試みる。タルケッティが幻想短編を書く。20世紀。1908 ヴォーチェ創刊。パピーニが幻想的短編を多数書く。1909 マリネッティが「未来派運動」を提唱。機械文明を礼賛し、帝国主義的拡張主義を支持。未来派の詩人たちがシンタクス破壊、動詞を原型で使い、擬声語を導入。パラッツェスキが未来派に同調し、ユーモア・風刺作品を書く。のち離反。1915以後、キリコの弟アルベルト・サヴィニオが形而上学派の影響を受けた超現実短編をヴォーチェに発表。1926 ボンテンペッリが「900」創刊、前衛運動を試みる。魔術的リアリズムを提唱。1930年代 反ファシズム運動とともにネオリアリズムが若手作家に広まる。ランドルフィ、モラヴィア、ブッツァーティら。モラヴィアはリアリストだが、風刺作品は幻想的。「ロボット」「パラダイス」など。ランドルフィはヴィットーニ、パヴェーゼのようなリアリストと交流しつつも、意識下の世界へ下降するような作品を書き、イタリア最大の幻想作家と呼ばれる。ブッツァーティは新聞連載のショートショートが多数。人生の不条理をペシミスティックに描く。「タタール人の砂漠」など。戦後、ファシズム終了によりネオリアリズムも終了。カルヴィーノ、アルピーノ、レーヴィは幻想作家に転換。アルピーノはリアルな作風を維持しつつ、60年代に風刺幻想小説を発表。レーヴィは記録文学から出発し60年代に幻想作家に。カルヴィーノも普通小説から転向。1963以後、ネオリアリズムの死を宣言し、新前衛派が起こる。雑誌「ヴェッリ」中心に活動。ガッダをリスペクト。ヌーヴォーロマンの影響。マレルバは穏健派でンガネッリはマンガネッリはより前衛的。以上は北イタリアの動向。南イタリアではランペドゥーザらがいる。ランペドゥーザは南イタリアの地中海的風土に立脚して独自の幻想小説をいくつか書いた。他に注目すべき幻想小説家として。デルフィーニ、ボナヴィーリも必読。
2009.10.10
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スタニスワフ・レム「泰平ヨンの航星日記」第7回の旅★★★1/2時間テーマ特殊な空域に入り込んだために過去や未来の自分が大量に出現するドタバタ喜劇。子供の自分が宇宙船を修理するというオチが笑える。第8回★★★★エイリアン・人類(進化)テーマ惑星連合の役員に人類を推薦しに行き、人類を糞味噌に言われる話。レムらしくて面白い。第11回★★★★★ロボットテーマ反人間のロボットが支配する惑星にスパイに行くと、驚くべき真相が・・・・・・という話。イカレタ社会の描写が最高に面白いし、度重なるどんでん返しもお見事で、既読のレムの短編の中で間違いなく最高傑作。第12回★★★★エイリアン・進化テーマ不時着した惑星で文明の進化速度を速めたり逆転させたりしながら、文明の盛衰の縮図を見る話。レムらしい文明風刺物で面白い。ドラえもんの道具のような安易なガジェット類が笑える。第13回★★★1/2エイリアン・文明風刺テーマ個が徹底的に軽視されるエイリアン社会にとらわれ翻弄される話で普通に面白い。第14回★★★★エイリアン・クローン・存在論テーマ人間をリアルタイムでコピーし、死んでも次々とクローンでよみがえらせる社会。結果として人の命がとっても軽い存在に成り下がっている・・・・・・という怖い話。傑作。第18回★★★★宇宙創造論・素粒子論テーマ宇宙は「法則に違反した借金によるインフレ宇宙である」という事実を発見し、借金返済のため時間逆行する陽電子に必要な情報を載せて宇宙の起源へむけて発射するのだが、助手のいたずらによってその計画が狂ってしまう、という超絶バカSF。短い中に壮大なほら話が詰まっている。カルヴィーノのクフウフクシリーズに近い。第20回★★★★時間・創造・歴史改変テーマ未来の時間移動文明の機関で働く自分にスカウトされ、未来へ行き、地球上の文明や人類史の改良作業を行うが、その失敗により重要な歴史上の事実の大部分が形成されてしまうという人を食った話。歴史上の重要人物のほとんどが未来から「時転車」に乗ってやってきた不良たちであり、重要な著作のほとんどが未来からの盗作であったというくだりなどは最高に笑える。やや長すぎる感じもするがそれを割り引いてもすごい作品。第21回★★★★1/2宗教・神学・身体改変・エイリアンテーマ好き勝手に身体を改変しまくるエイリアンの生態と、この星における宗教のありようを緻密に書き込んだ集中最長の力作。「家畜人ヤプー」を思わせる珍妙な身体改変を施した生物が大量に登場する。奇想度では、集中でもダントツにすごい。宗教論議がややくどすぎるようにも感じるものの、この1作を読めば、なぜレムが世界最高のSF作家だとされるのかが分かる。第22回★★★★1/2宗教・エイリアンテーマ様々な星へのキリスト教の布教がたどる悲惨な末路を描き、宗教の不完全性や文明の相対性などをあぶりだした傑作。特に様々な殉教者の処刑される様を熱弁したがゆえに、その通りに処刑されて祝福される話は凄い。第23回★★★★人格コピー・存在論テーマ身体の素粒子の配列を保存・再生する技術を持った文明の話。イーガンだと深刻に追究されるアイデンティティテーマも、レムの手にかかると軽妙なユーモア小説に仕上がってしまうのがなんとも凄い。第24回★★★1/2ロボット・機械技術・エイリアン・ディストピアテーマ幸福増進のために作り出されたロボットが神のように振る舞い、人間たちを幸福実現のために円盤状の形態に変えてしまう話。面白いが、他の作品に比べるとやや一本調子だし、オチも弱い。第25回★★★★生物学・エイリアンテーマ前半は、宇宙で野生化し肉食化したジャガイモと、それを分析しようとして間抜けな議論を繰り広げる各界碩学たちの話。後半は匂いを音楽として聴くエイリアンや、高温で生活する5性をもつエイリアンの話。前半と後半は完全に別の話になっていてまとまりが悪いが、奇想度と諧謔性は集中でもかなりハイレベル。第28回★★★1/2メタフィクション・テーマ最後は、ヨンが宇宙船で飛びながら先祖の伝記を語り、父親の航宙日記(親戚が次々と消えていくという奇怪な内容)を読むうちに、何が現実で何がフィクションなのか次第に分からなくなってくるという典型的なメタフィクションオチになっている。本編単独ではそれほど面白いものではないが、全体と一つの長編と見てそのエピローグととらえると、本書全体の性格を浮き彫りにする巧妙なオチになっている。全体評価 9/10点。「ソラリス」もよいが、本当にレムのすごい奇想・思弁の数かずを楽しめるのは「娯楽小説の文法」にとらわれずに思いついたことを片っ端から書いている印象のこの本のような作品なのではないかと思った。続編が数冊あるので復刊され次第(あるいは古本屋で手ごろな値段で見つけ次第)全巻そろえて行きたいと思っている。
2009.10.08
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