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光瀬龍「紐育、宜候」光瀬龍「紐育、宜候」日本で秘密裏に製造された巨大タイムマシンの作動によって、ドイツ・日本が戦勝国となった平行宇宙との間で3人の人間が入れ替わる話。前半は、ドイツがヨーロッパを制圧しインドで日本軍と接触、日本軍が太平洋を制圧し、ニューヨークへの原爆投下を画策するというもうひとつの歴史を、入れ替わった3人の視点から描写。後半は、時間局員3人組が、盗まれたタイムマシンの回収に奔走する時間SFのストーリー。そして最後に「夕ばえ作戦」の冒頭につながるという流れになっている。地味だが、改変歴史&時間SFとして普通に楽しめる作品になっている。
2009.06.27
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多聞寺討伐光瀬龍「多聞寺討伐」時代SF短編集。文体や内容が独特なので、はじめはとっつきにくいが、作品のパターンをいったん把握すると、けっこう面白く読める。SF的なアイデア自体はエイリアンや時間旅行者など、極めてありふれた基本的なものであるが、それを徹底的に古風な時代小説の文体やキャラクター設定で描いている異質感がたまらない。「追う」★★★一読目、よく意味が分からず★1/2評価だったが、1冊通読後に再読して評価が上がった。滝沢馬琴の作品にSF的解釈を施し、同心の視点から時間犯罪者と時間局員の捕り物劇を描いた作品。徹底的に同心の視点から捕り物小説の文体で描かれているのがユニーク。「弘安4年」★★1/2元寇と神風の真相を、放射性物質を含んだ刀の鞘をめぐる武士と時間旅行者の交渉を軸に描いている。一読後、再読したがやはり凡作だと思った。「雑司ケ谷めくらまし」★★★平賀源内の時間犯罪を同心が摘発する話。完全に捕り物帳の文体。「餌鳥夜草子」★★★★時間犯罪者の女が江戸の町に溶け込み、男をたぶらかし、追ってくる時間局員を次々と屠る話。時間を巻き戻す小道具が圧巻で、オチがシュール。集中1,2を争う傑作。「多聞寺討伐」★★★★1/2寺を占拠し地域を陰で操る時間犯罪者と、町人に化けてこれを追う時間局員との派手な戦闘を描いたアクション時代SF。独特の味のある文体と、次々と繰り出される珍妙な兵器(時空を捻じ曲げ、テレパシーで人々の知覚まで惑わす)により繰り広げられる派手でシュールな戦闘が圧巻。時代SF版ワイドスクリーンバロックという感じ。首を切られて自分の首を片付ける男の真相の説明がなかったり、全部の伏線を回収していないのがかえってシュールで怖い。さすが表題作だけあって傑作。「紺屋町御用聞異聞」★★★★時間局員に対する抜き打ち検査の話。叙述トリックを用いた構成、シュールなどんでん返し、エロチックなネタと、つぼを心得た見事な短編。「大江戸打首異聞」★★★1/2単行本初収録。首を切られた罪人が自分の首を抱えて逃げる。その真相とは? オチは予想の範疇だが、普通に面白い。「三浦縦横斎異聞」★★★1/2宿敵に再戦を挑んだ剣士をエイリアンが助ける話。SFオチ抜きで、普通の剣豪小説として読んでも面白い。「瑞聖寺異聞」★★★1/2天竺から返された男、異人から贈られた妻にかかわる古典作品をSF解釈した作品。普通に面白い。「天の空舟忌記」★★★1/2古典に記された未確認飛行物体をSF解釈した作品。「歌麿さま参る」★★★★現代に歌麿の新作を売りに来た男の謎を追って、時間局員3人組が江戸時代に調査に行く。酷い俗物に描写されている喜多川歌麿のくだりが抜群に面白い。その歌麿にヒロインがレイプされちゃうというのがまた斬新でエロイ。なんとも独特の作品。
2009.06.26
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神は沈黙せず(上)神は沈黙せず(下)山本弘「神は沈黙せず」この宇宙が「神」によるシミュレーションの人工知性であり、「サールの悪魔」である個々の人間の活動によって構成される集団ミーム(人類全体あるいはより上位の全体までを含むだろう)全体が一個の巨大な知性として育てられている、という宇宙観に基づく長編。ストーリーといい、アイデアといい、破綻のないディテールいい、ぶち込まれたAI、宗教、超常現象、哲学、生物学、政治経済等に関する情報量といい、欠点がまったくない。圧倒されながらも面白くて一気に読み終えてしまう。ミーム、集合知性、創発の着想自体は昨今流行りのものであって特に新しさは感じないものの、ディテール構築が見事であるし、この世界が上位次元者のシミュレーションであるという「フェッセンデンの宇宙」的着想も、古いアイデアの焼き直しではあるが、ディテールの解像度で格段の違いがあるだけでなく、超常現象や宇宙探査機の減速問題などの科学法則のバグまで根拠に含めて説明してしまう力技には脱帽。文句なく私がこれまでに読んだ国産SFの中ではダントツの最高峰であるし、海外作品を含めてもオールタイムベストの有力候補である。10点満点で20点ぐらいの価値がある。
2009.06.25
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産霊山秘録半村良「産霊山秘録」安土桃山から戦後までの歴史をピンポイントでたどりながら、歴史の陰の立役者=謎のエイリアンの末裔である<ヒ>一族である、という仮説の下に描かれた反戦歴史小説。正直に言うが、つまらなかった。<ヒ>一族の仮説に寄りかかりすぎて、その辻褄あわせと歴史上の事件の要約に筆をとられるあまり、肝心のイマジネーションの広がりが陳腐で凡庸なものにとどまっている。とりあげられている歴史上の事件も、戦国から江戸時代へという人口には膾炙しているがそれだけに情報過多でいまさら興味を引かない時代であったり、鼠小僧に坂本竜馬といった手垢のついた人物のエピソードであったりして、冗長で読み飛ばさずにはいられない。とにかく前半が冗長。ヒ一族の三種の神器を使った超常能力もテレポーテーションで新味に乏しいし、肝心のヒ一族の来歴や位置づけについての肉付けにも乏しい。唯一面白かったのは、前半の終わり近くになって出てくる<オシラサマ>=ヒ一族の女性の怪異な姿のみだが、これも結局単なるホラー要素程度のままで終わってしまい、それ以上のイマジネーションの広がりがない。後半に面白くなると思いきや上記した鼠小僧に坂本龍馬で話に進展のないまま、いきなり話は東京大空襲へ飛び、単なる<タイムスリップした男の焼け痕奮戦記>になってしまい、もはや<ヒ>一族という設定の必然性の全くないただの戦後普通小説に堕してしまう。世界中に産霊山があったという最後の大風呂敷もいかにも「話の収拾がつかなくなってごまかしてみました」という感じのくだらなさで、どっちらけなままに話が無理やり終わってしまう。伝奇SFの嚆矢であるという歴史的意味は認めるが、正直、のちの「妖星伝」に比べると相当落ちる作品だと思った。失敗の原因はやはり雑誌連載作品だったことではなかろうかと思う。
2009.06.23
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広瀬正「ツィス」ある日関東周辺で突然聞こえ始めたツィス音が次第に大きくなり、都民の一斉集団疎開へと至る過程を緻密にシミュレーションした作品。「マイナス・ゼロ」に比べると題材が地味なせいもあり、中高生のころ買ったときには数ページでやめていたのだが、20年以上たった今読むと抜群に面白くて、一気に読み終えた。ストーリーは一貫してほぼ予想通りに進み、ミステリ的なオチも予想の範疇であるのだが、にもかかわらず面白くて止まらないのは、痒いところに手が届くような的確なディテール予測の見事さと、等身大の魅力的なキャラクター描写力のおかげだろう。前半は企業もの、後半は行政もののPFとしても読むことができる。作品構造としては小松左京の「日本沈没」や「首都消失」と同様のものであるが、「たかが音」でこれだけのパニックが引き起こされる大都市の脆さを描き出しているところに本作品特有の面白さがある。社会心理学的なオチ(ただし、それが真相なのかどうかは明確ではない)がついているが、その是非とは関係なく「レベル0」までの展開・叙述の迫真性だけでも本書の価値は保証されている。
2009.06.22
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闇が落ちる前に、もう一度短編集「審判の日」文庫版、5編収録。読みやすくて面白い奇想小説集。「闇が落ちる前に、もう一度」★★★1/2この世界がでたらめに配列を変える宇宙の物質が偶然規則的な配列を取ることにより8日前に突然できたものだったら? という奇想SF。私も考えたことのあるアイデアだが、すでにあったか、という感じ。短めで軽く仕上がっているが、このアイデアでもっと重厚な長編を読んでみたいなあ。「屋上にいるもの」★★★★鈴木幸司のアレを始めホラーでは定番の「マンション屋上もの」。途中で怪異の正体はすぐに分かるが、それでも十分怖い。怪物の正体にやや理詰めの説明をしているところが、作者らしくてオリジナル。「時分割の地獄」★★★VRもの。AIアイドルが自分を否定するニュースキャスターに行った復讐とは? という話。オチがベタで、まあ標準作。「夜の顔」★★★1/2世界の意味を疑った人間に、巨大な顔が見え始めるという話。認識論的なネタと、描写の怖さで読ませるが、オチが尻切れトンボでもったいない。これで長編を書いたらすごいのになあ。「審判の日」★★★★★これはすごい。もう最高です。ある日突然周りの人間が消えてしまう・・・昔から繰り返し使われるシチュエーションだけど、いいものは何度使ってもいい。そのあとのサバイバル話の面白さはもう保証されているし、オチのつけ方も素敵。これだけでもこの本読んだ甲斐あった。
2009.06.21
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虐殺器官伊藤計劃「虐殺器官」人の良心中枢を停止させ、殺戮衝動の優先順位を高めるトリガーとなる深層言語を各国語に紛れ込ませ、米国へのテロを行いそうな後進国に撒き散らして内戦を引き起こすことで米国の平和を守ろうとする言語学者と、これを追う殺し屋の話。正直、本筋と直接結びつかない紛争地域での死体の描写や母親を安楽死させたトラウマのエピソードなどがだらだらと続く序盤はかなり冗長である。ようやく本筋であるジョン・ポールが登場するのは第2部中盤に入ってからだ。デビュー長編ということもあり、あまりストーリーテリングがうまいとはいえない。だが、中核にある「進化上のひとつの器官に過ぎない言語」という観点から案出された、虐殺を引き起こす深層言語というアイデアは非常に強固でthought-provokingなものだ。それ自体は広告などで使われるサブリミナル効果を言語学的な疑似科学説明で掘り下げたにすぎないようなものであるにせよ、ここまで徹底的な破壊兵器と結びつけた力技はすばらしい。物語自体もジョン・ポールとその愛人が本筋に深くかかわってくる中盤以降は急激に面白くなり、殺伐として悲劇的で衝撃的なエンディングまで突っ走る。軍事諜報SFとしてもなかなかのものだろうが、中核にあるSF的な洞察力、思考力、問題意識は間違いなく本物だ。
2009.06.21
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ハーモニー先ごろ亡くなった新鋭SF作家の第2長編にして最後の長編、なおかつ代表作。ユートピア/ディストピア小説であるが、この作品で示された進化ヴィジョンに対して作者がいずれに与するかは必ずしも明確ではない。本作の結末においては、人類は個の意識を放棄し、蟻やミツバチのような集合知性(社会全体)の完全な部分となることを選択させられている。そして、すでにそのような存在となってしまった人類の視点から語られる第4章においては、「人類は、とても幸福だ」と結ばれている。もちろんそうなった人類にとってはそういう状態が幸福なのだから、この言葉は真実だ。しかし、幸か不幸かまだそのような状態でないわれわれ不完全な「ヒト」の視点から見ればそれは幸福であるとも不幸であるとも即断できかねる。従前の同種作品群の基本パターンに当てはめるなら、本作のラストは「全体主義に同化することで個の意思決定の自由を放棄するという不幸」を皮肉に表現したものであり、バッドエンドの婉曲的表現であるということになる。が、作者の視点を最も共有すると思われる主人公トァンは、そのような単純な個人主義、自由主義の視点には(感情レベルでは与しつつも、思考のレベルにおいては)必ずしも立たない。二つの立場の間を揺れ動き、きわめてリアルで哲学的な思考を展開しながらも、最終的には「平然と状況に流される」。この主人公の揺れ動きの果ての諦観は、作者の心的状況をそのまま反映したものだろう。そしてこの点が、過去の同種のディストピア小説群と本書を明確に分けるものだろう。おそらく作者は感情レベルにおいては、こういった共同体全体による福祉主義、共同体主義の押し付けの空気によって個人が束縛される新しい形のきわめて現代的な管理社会に対して、本能的な不快を感じている。この側面を反映するのが、「生命主義社会」に順応できず自殺を選択する人々の存在だろう(序盤の基本構造は、タニス・リーの「バイティング・ザ・サン」とよく似ている)。そして、本作前半の叙述は、まさに彼らに対する共感を主要な基盤としてなされている。しかし、過去の同種作品と違い、本作はこの序盤で提示される基調感情がラストまで貫かれはしない。本作中で再三議論されるとおり、作者は「意識など進化上の気まぐれな一時的必要性からでっち上げられた一機能、肉体が環境に適応して自らを存続させるための一手段に過ぎない」という視点に基づく「意識消滅を甘受しての個人の脳機能の全体的合理性への完全一致」の理論を、悩みながらも完全には否定しきれずにいる。というよりも、両者は全く違った相容れない観点から導かれる異なった結論に過ぎず、前提たる立場を止揚した「神の視点」からその優劣を判別し得ないということを、作者はいやおうなく了解させられているようであり、その結果としてこのラストがあるように思われる。小松左京の作品において、不完全な人類と、より完全なる新人類という二つの存在が対置されつつも、小松が個への固執と、より完全なものに譲るべきであるという諦観とをあえて止揚しなかったのと同様の、「不完全なるものが完全なるものを語るときの限界の否応ない受容」がそこにはある。本書で語られる脳メカニズムに対する理論ディテール(とりわけ中脳の意識のめぐる報酬理論や、現在する報酬を双曲線的に過剰に高評価する傾向の指摘)は、非常に興味深く面白いものだ。作者にはもっと長生きして、より突っ込んだ考察をしてもらいたかった気もするが、逆に余命が短いことを作者が自覚していたからこそここまでの深い考察が可能となったものかもしれない。本作は物語としてみれば、ご都合主義的な展開や、キャラクター設定の動揺、ディテールの微妙な破綻など、欠点が少ないとはいえない。しかしながらそういった欠点を勘定に入れたとしても、上記したような極めて深刻な「究極の選択問題」に関する議論を、誰にも容易に理解できる分かりやすい言葉で展開した末に、極めて究極的でかつ両義的なエンディングに至っている稀有な作品ということで、歴史に残るだろうと思う。私個人はといえば、「拙速な進歩は進歩ではない。万物は与えられた条件の下でそれらしく振舞っていれば、ブレイクスルーに達するべきときは勝手に達するものだ」と思っている。現状の人類社会が個と全体、cordとchaosの中間でバランスを取りながら漸進的で環境適合的な弁証法的運動を行っている以上、こういったバランスをとろうという視点から行動決定を行うべく努めるのが最も人類にあってあると考えている。環境との関係において自己の統合性を持続させるべく運動を続けるのが人類を含む生物の実態であり、そして人類が依然として個を基盤とした運動をしかなしえない(ミラーニューロンを介した間接的・擬似的な集団行動も結局は個人運動の集合にしか過ぎず、これを超えるメタな意識は少なくとも私がこれを語っている次元における意識レベルにおいては、存在を確認できない)以上、個の意識次元においては個の環境即応的な生存をできるだけ持続させるためのコードとchaosのバランシング機構のあり方しか追求する意味はないと考えている。この観点からすると、正解は、二つの極論の中間にしかない。
2009.06.20
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壊れた少女を拾ったので第2短編集「弁頭屋」の文庫版。5編を収録。駄洒落からイメージを発展させて、ギャグと怪奇がない交ぜになった特異な言語空間を構築する作風。一言で表すなら「言語実験馬鹿ギャグホラー」といった感じ。「弁頭屋」★★★★1/2最初に読んでインパクトが新鮮だったせいもあり、抜群に笑った。「弁当」→「弁頭」の駄洒落を発展させたギャグホラーだが、プロット自体は普通の青春恋愛小説だから余計に可笑しい。プロット自体は普通の恋愛小説であっても、「弁当」→「弁頭」という駄洒落が異化要素として侵入することにより、プロット自体が侵食されて、最終的にはホラーなオチになってしまうのが秀逸。またこのメインネタのみならず、淡々としたまじめぶった文体の中に突発的にさしはさまれるギャグが強烈ですばらしい。「安村靖之」という人名からしてふざけているし、自衛隊員が発狂して機関銃を撃ちまくる場面といい首相が国会で野党議員を射殺する場面といい、可笑しすぎてにやけてくる顔を抑えるのに苦労した。「赤ヒ月」★★★★1/2これもめちゃくちゃ面白かった。ストーリー自体は学園ポルノ小説+ミステリだが、セックスにあたる部分に「腹を割いて内臓を食らう」という行為が代入されることによって、爆笑を誘う怪作に仕上がっている。終盤の乱交パーティ場面の異化ぶりが最高に笑える。「カデンツァ」★★★★1/2これも面白かった。イタリア語の音楽用語「カデンツァ」と「家電」の駄洒落から思いついた話だろう。夫婦が家電と浮気をして子供をもうけるという馬鹿ギャグ・ファンタジー。本書収録作中最もギャグの方向に傾いた作品。オチがやや弱いが、たくさん笑わせてもらったのでOKです。「壊れた少女を拾ったので」★★★1/2推理作家協会賞短編部門候補作だそうだが、ぶっちゃけこの本に入っている中でいちばんイマイチに感じるのはギャグ要素が少ないためだろう。とはいえ、サディスト全開の「おねえさま」のキャラ設定が最強に笑える。「壊れた少女を拾って修理するが、自分の部品を使ったため自分がブサイクになってしまい、逆に少女によって自分が修理されて憧れの<おねえさま>になる」というメインストーリー自体は、言うほど面白くない。「桃色遊戯」★★★★桃色のダニが降ってきて世界中を多い尽くすという終末小説。「桃色遊戯」という言葉から真逆の方向へ連想を走らせて言語化するという天邪鬼ぶりが最高に良い。題名と内容のギャップと、ダニが降ってくるという荒唐無稽な設定以外にギャグ要素が殆どない分、真っ当な終末小説としての仕上がりもなかなかのものになっている。「ああーくだらね~」と思いながらも、読みながらにやけてしまい、気がついたら読み終わってしまう、そういう作品群である。他書もチェックせずばなるまい。
2009.06.19
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アイの物語山本弘「アイの物語」AIもの、仮想現実ものの中短編をまとめたオムニバス長編。アンドロイドが地球を支配し、数少ない人間はロボットが人間を戦いで破ったという歴史を信じ、ロボットから略奪行為を行って生計を立てている。そんな若者の一人が、アイと名乗る女性ロボットにとらえられ、いくつもの物語を聞かせられる、という設定の下で、人間とAIやヴァーチャル・リアリティの関係、そこから浮かび上がる人間の不合理さや欠陥と、愛や夢という功罪の両面を描いた7つの物語が語られる。6話までがフィクション、7話が現実の歴史という設定になっている。「宇宙をぼくの手の上に」★★★ネット上でのSFリレー小説を趣味とするグループ。そのメンバーが殺人事件を起こし逃走。彼の自殺を食い止めようと、グループリーダーの女性がリレー小説のシナリオを考えながら、彼にメッセージを送ろうとする話。ポール・アンダースン「土星ゲーム」+電車男といった感じ。ベタな感動話ではあるが、読みやすく普通に面白い。「ときめきの仮想空間」★★★これもVRもの。VR世界で男性と知り合ったおくての少女がVR世界内での体験で勇気をつかみ、リアル世界で男性と会う話。ベタもベタだが、語り手の属性についてのあるオチがつくことでオリジナリティを出している。「ミラーガール」★★★ある少女と鏡に映るAI人格の少女との交流を軸に、少女の成長と、AI技術の発展を描いている。特にオチにひねりがなく物語的な面白さは強くないが、本書のメインテーマを伝えるうえで効果的なつなぎになっている話。「ブラックホール・ダイバー」★★★作中唯一の宇宙SF。回転するブラックホールを見守るAIと、ワームホールを抜けて向こうの宇宙へ行こうとする女性との交流を描く。第3話と同様特にオチにひねりがなく淡々とした話だが、つなぎとしては良好。「正義が正義である世界」★★★★これは傑作。VR世界のAI人格の視点から、リアル世界でのウイルスによる破滅の進行を描述しており、視点の逆転が実に斬新で印象に残る。その中で、正義の名の下に残虐行為を行う人類の愚行への批判が強い説得力をもつという皮肉さがいい。自らが鼻で笑っている「ファンタジー」「妄想」世界の人物から欠点を図星で指摘されてるようじゃ、人類だめじゃん、ってのがすごくいい。この後2編が本書のための書き下ろし。そしていずれも100ページ超過の中篇。「詩音が来た日」★★★★★これはすばらしい。名作。高齢化と老人介護問題という現代的な問題を材にとり、アンドロイド介護士の誕生と成長の過程をじっくり描きこみながら、反射的に人間の本質をあぶりだしているのが秀逸。サブキャラもことごとく生き生きしているし、個々のエピソードも良く考えられていて説得力がある。「アイの物語」★★★1/2しめくくりの本編では、AIと人類の間に起こった真の歴史が語られる。VR空間でのバトル目的で作られたAIたちに実体を与えようとする動きに対して、反対派のテロ活動が起こり、相互の憎悪がしだいにエスカレート。これを食い止めようとAIたちがやむなく立ち上がる話。AIのバトルシーンなどがやや無駄に多く感じられるのと、直前の「詩音」の出来が良すぎるのとで、ちょっと落ちる印象だが、人類の愚かさを効果的に皮肉っているという点だけで見るなら、集中で一番だろう。全体的な印象としては、「決して完全になりえない人類を継ぐのは誰か?」という小松左京の問題意識をそのまま引き継ぎつつも、ラノベやアニメのわかりやすさ、面白さを注入して幅広い読者層にアピールする読み物に仕上げている作品だと思う。作中人物がオタクばっかりなのが気になるところだが、オタク王道を歩んできた作者のささやかな自己主張ということで許せる。
2009.06.18
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西のはての年代記3部作第3部。今年のネビュラ賞受賞作。1,2作目は読んでいないが各巻独立した話のようなのでいきなりこの3作目を読んだ。ギリシャの都市国家をイメージさせる奴隷制のある都市国家群が舞台。しかし主人公が黒人の奴隷少年であったり、近現代の社会情勢を反映させるようなもろもろのアレンジが設定上施されている。話の大筋は、幼いころ奴隷狩りにあってつれ去られた少年が、主人の方針によって高い教育を受けながらも、横暴な主人の息子によって姉を殺され、逃亡の途上、さまざまな人々と出会いながら成長し、やがてかつて予見した憧れの詩人と出会い、自分の道を切り開くまでのさまざまな冒険を描いている。この少年の持つ絶対記憶能力と、未来の記憶を幻としてみる能力という2種の能力がSF的な要素として組み込まれてはいるが、この能力はSF的な道具立てというよりも、少年が未来を切り開いていく指針のようなものとして機能している。設定こそ架空でありファンタジイ的ではあるが、実質的な内容は普通小説に近い。少年が姉を殺され、屋敷を逃げ出すに至るまでの生活描写がかなり長く、最初の50ページぐらいはやや冗長に感じられる。このスロースターターぶりはルグィンの作品全般に見られる特徴だ。しかし、姉を殺されるというショッキングな事件を境に、物語が急激に動き始めると俄然面白くなる。魅力的で生き生きとしたサブキャラが次々と登場し、次々と追っ手に追われるサスペンスフルな展開も手伝って、奴隷制と奴隷解放の問題のみならず、暴力的な革命理論の功罪、男女差別や性的暴力、児童虐待、戦争、妄信的な信仰、都市と農村の対立、力による支配と相互信頼による平和の優劣、ドラッグによる精神開放、歴史学や文学の効用、などなどの様々な論点について考えさせながらぐいぐいと読ませ、感動的なラストへと至る。思想的な面で作者の旧作で展開されたものに付け加えている部分はないものの、それらの集大成的な内容になっている。正直、この作者の90年代以降の作品の大半は、70,80年代の作品群に比べると切れ味が鈍っている印象が強く、さすがのルグィンも寄る年波に勝てずぼけてきたかと思っていたが、80歳にもなるのにまだまだ健在どころか、かえってレベル上がってねえ?と思った。これならシリーズの他の2作品も読んでみたいと思う。
2009.06.16
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継ぐのは誰か?小松左京「継ぐのは誰か?」(同上)超能力?を用いた予告殺人の犯人探しという完全なSFミステリとして進行する前半から、新人類との接触に至る後半、そしてほろ苦い結末へと一気に読ませる本格人類SF。ヴァーリイの「プレス・エンター」と同じオチかと予想しつつ読み進んだが、半分違っていて、しかもその違っている部分こそが重要だった。もっとも、その違っている部分は、予想外というよりも、あまりにもベタ過ぎるというだけだが。小説としての完成度という点で見れば、前半のミステリとしてのひねりも素直すぎるし、後半の展開もあまりにも性急なご都合主義で、登場人物の説明で全部ネタを割って済ましてしまうという荒っぽさだし、人物の行動の合理性や辻褄も今ひとつあっていない。このあたりは解説の石川喬司も指摘している通りだ。しかし本書にはそういった欠点を補って余りある人類の行く末への強い切羽詰った関心と、これに裏打ちされた真摯な文明考察がある。この魅力でもって一気に読ませてしまう作者の情熱と知力はやはり只者ではないと思った。特に単独で長編のテーマになりそうな魅力的なアイデア、理論、着想が随所にちりばめられ、かなり詳しくディテールまで考究されているところがいい。サーリネンの犯罪人類学の理論(下記抜粋)とか、そのまま刑事政策の教科書に載せたいぐらいだ。「・・・犯罪的傾向および、犯罪的行為の起源には程度の差はあれ、万人が所有し、生物集団としての社会が、常に再生産している、ある種のきわめて本質的な要素があることをも、知る必要がある。犯罪社会の中には時代によって地下の世界においやられてしまった、古い組織文化、古い価値体系の一部が、いきいきと保存されている。・・・いかなる人為的、道徳的教育も、この本質的要素を、完全に除去することはできないだろう。犯罪的傾向をもった人間の、幼時段階あるいは、それ以下の段階における早期発見と除去は、もし達成されるとしても、そういった社会は、長期的に見て、はなはだ偏った社会になるだろう。なぜなら、そういった傾向の中には、あきらかに、人類社会に対して、いきいきとした刺激をもたらすような、行動型の天才の種も、ふくまれているからである。・・・(そういった人間を)除去してしまえば、そういった社会は、長期の間に、きわめて美しいが、きわめて脆弱な社会になってしま(う)・・・問題は、いかにして、犯罪そのものにふくまれている、文明にとって有効な成分・・・をそこなわずに、・・・その暗黒なはげしい力を、われわれの文明に対して、一定の役割を果たしうるように統御しつつ組み込みうるか、ということである」作者が「果しなき流れの果に」でより本格的に追求することになる、異質なる物の相克と弁証法的総合の反復による文明や意識や知性の高次化・高度化運動への強い希求が顕著に表れた考え方だと思う。
2009.06.15
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小松左京「果しなき流れの果に」果しなき流れの果に小松作品は荒削りで癖の強い読みづらい文体、類型的なのにあくの強いキャラ、やたらと脱線して傾けられる膨大な薀蓄のひけらかし(小説スタイルのメモと揶揄されるほどの)などが苦手で、長編は軽いユーモア/ホラー作品を除いてはほとんど読んでいなかった(復活の日は読んだが、冗長さに閉口し、エピローグ以外ほとんど評価できる部分はなし)。しかし本作は王道の本格SFであり、ミステリタッチの構成といい、主人公的な位置づけにある野々村をめぐるSF的ストーリー(タイムパトロールを行いつつ進化をコントロールしようとする未来人やこれにスカウトされた歴史上の人々の妨害工作に抗いながら、未来の知識を過去にもたらし人類の意識の進化速度を速めようとするあくなき闘争)およびヒューマンストーリー(別れた恋人との長い年月を経た感動的な再会)のもつ説得力や面白さといい、終盤で野々村の意識が超高次元へ突き抜けることによって垣間見る超高次宇宙の精神の生成・更なる高次化という巨大な弁証法的運動とその些細な一過程を占めるに過ぎない微小で低次な人類・地球史のヴィジョンのSF的センスオブワンダーといい、ぐいぐい引き込まれるような面白さを持っていて、一気に読み終えた。中盤のストーリーを占めるタイムパトロールとの戦いの場面こそ、旧作の引用・模倣の色が濃くやや類型的であったり、細かい辻褄あわせが微妙だったりするのだが、結局終盤の強烈なヴィジョンが出現することによってそれらすべてが卑小な次元に格下げされ批判されることとなるという作品全体の構造からすれば、むしろ必然性があったこととなり問題とはならない。10点満点で9・5点ぐらいは与えてよいだろう。
2009.06.15
許慧欣 愛*極限台湾版CD許慧欣/愛*極限【お取寄せ商品】イボンヌ・シューの新作が5月に出ていた。一部のチャートでトップ10入りしている「愛・極限」「幸福的糖e」をネットで聴いてみたが・・・うーん微妙。普通のアイドルポップス。悪くはないが。ジャケット写真もケバ過ぎ。もうちょっと何とかならなかったものか。
2009.06.15
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楽天ポイントを消化しようと思い、光瀬龍の「多聞寺討伐」を注文。多聞寺討伐もともと時代小説は苦手なのだが、最近のSFにやや食傷気味なこともあり、今まで手付かずだった分野に興味が動いている。光瀬は宇宙年代記や「たそがれに還る」以下の3部作、ジュブナイル作品など中学生時代に最も好きな作家だったこともあるし、本書は単行本未収録作品も入っている新編集版のようなので。
2009.06.15
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小松御大の作品は苦手であまり読んでいなかったが、やはり基本は押さえなければということで、現在、果しなき流れの果にを読んでいる。面白い。
2009.06.15
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