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2008.05.03
XML
カテゴリ: カール・ツァイス

えー、本日はリンクさせていただいているugenさんのブログ「 YASHICA FX-3とMLレンズ 」にあった記事にコメントを付けようとしたら「長すぎです」とエラーになってしまったので、こちらに加筆修正して転記することにしました。

その記事とは、カール・ツァイスのレンズについて「初期玉は高性能だ?」というタイトルで、ugenさんらしい技術者的語り口で、ばっさりと切り落としています。まずは、 その1 その2 を読んでから以下の文章をどうぞ。

ちなみに国語2の銀治が要約すると、「工業生産物であるレンズは設計通りに作られているはずで、ヤシコンレンズの初期玉が良いとか当たりはずれがあるなんて幻想だ」ということを述べられていると思います。>あっています?


以下、書き込みたかったコメント、プラスアルファ。


僕は「夢」が欲しいのでカール・ツァイス初期型高性能レンズ存在支持者です(笑)

理由は、実際に知人の写真家が20本近くの初期型と中期と後期の50ミリF1.4と85ミリF1.4を撮り比べて、「明らかに個体差がある」という結果を出したことによります。>他力本願

ただし、コンタックスが日本で発売になったのは、たしか1975年だと記憶しています。既にん十年経っているレンズが初期型であるので均一的なデータなのかと言われれば疑問な点も十分にあることでしょう。

しかし、実験を財を投げて行った知人が「巷でまことしやかに言われている、ツァイスの初期型に、その手に対する好みに合致する個体が多いという話は、アリだと感じた」と見せていただいた写真を見て、自分もそう思いました。しかしながら、描写には個人の「嗜好」が入る分野なので違う意見の人だっていると思いますし、いましたよ。

んで、ここから銀治流「初期玉神話」と「当たりはずれ」の推測。

まず「初期玉神話」から。

よく言われる「鉛の含有量が多いレンズは高性能」です。京セラ、あるいはツァイスが50ミリF1.4のどのレンズにどんな種類の硝材を使っているかを発表しているのかは、知りません。光学ガラスにさまざまな素材を混ぜることによって屈折率の違いを得ることができ、それらを組み合わせて各種収差を解消していきます。中でも重金属を含有させたレンズは高価で安定しにくい、と言われています。1975年前後の技術は今よりは低いと思いますが、当時にしても最高レベルをカール・ツァイス社は求めたことでしょう。したがって、ツァイスは設計の段階で指定した硝材のレベルが「許容範囲」という基準を考えいたのではないか、とも推測できます。つまり設計基準を上回る、オーバースペックが出る分には「良し」だったのではないでしょうか。

実際に数十個のレンズの重さを計測すると、初期のレンズは後期のレンズに比べて数グラム以上重い固体が多いのです。加えてT*コーティングの色も超初期には無色に近いものもあり、ブルー系が強い、マゼンタ系が強い、イエロー系が強い、と製造時期によってまちまちです。ここで、硝材の不安定さを補っていたのかもしれません。

もしもugenさんの言う「設計と製造が狂ったら製品としておかしい」という製造技術における正論は、事実として異なってしまう部分が多少あります。つまりは推測として、やはり製造初期では技術的に高級硝材の不安定さがあり、後期では安定して設計通りに製造できるようになった、と考えてもおかしくないと思います。

あえてもう1度。「重い固体が良いレンズ」と行っている訳ではありませんので。

次に「当たり玉とはずれ玉」について。

ひとつの例を挙げたいと思います。それは独逸国民性についてです。

独逸人はどうも、「メーカー発表の性能値はクリアして当たり前でむしろ上回っているべき」と考えている風があるようです。

具体的に言うと、同じ独逸製造で有名な、車という分野でもヤシコンと同じようなことが言われていました。

「このゴルフは知人のゴルフよりもパワーがある」

と、ここではフォルクスワーゲンを取り上げましたが、独逸車の性能にばらつきを感じる人が多くおり、それを称して「当たりはずれ」と言っていました。

ここでもugenさんの仰る通り「工業製品でそんな差があるべきではないし、設計同様にならんはずはない」のに感じる人がいるのです。

で、独逸人と車の続き。

独逸人は新車を購入したらパワーチェックをするそうです。これは、自分が購入した車の性能がメーカーカタログ値と比べることを自ら調べ、値が上回って初めて満足し、それ以外はクレームをする、ということのようです。

つまり、独逸人で言うところの「設計性能」とはメーカー発表値が出て当たり前であり、組立や素材の微妙なさじ加減で生まれるであろう設計性能を上回った製品をはなから目指して製造している、とも言えそうです。製品の設計基準も高く、さらに製造してもより高い性能です。

したがって、たまたまさじ加減がよくてなのか先の硝材の不安定さなのか、公差を加味した上での設計と基準がもうけられており、メーカー発表性能を上回った個体が発生したら「当たり」で、カタログ値並が「はずれ」と言われるのではないかと推測しています。

両者合わせた結論として、僕自身は「ツァイス初期玉高性能神話」を捉えています。

再度あえて個人的主観として言えば、後期レンズの性能が悪いのではなく、撮り比べた写真を見たならば、明らかに某国産高級レンズよりも描写が好きだなぁと感じました。とどのつまり、初期玉は若干公称性能を上回っている固体もあるのでないかと邪推しても面白いんじゃないの、夢を持った方が楽しいじゃん、と感じている訳です。

それと基本的に「当たりはずれ」を騒ぐということは、 物欲に対する精神安定剤 みたいなもんでしょう。

「大枚はたいて物欲を満足させるレンズがはずれと言われたらイヤだ」

「某所でツァイスは初期が良いって書いてあったな」

「じゃあ初期を狙おう」

「ほーら言わんこっちゃない。初期玉を選んだ俺のレンズは当たりだ」

「へぇー。君の初期玉は当たりなんだねぇ」

以下連鎖反応が続く


こんな所じゃないですかね。ついでに書くと「某所に書いてあった」に至るまでにも伝言ゲーム的紆余曲折があって、例えば某ツァイス好き写真家のたまたまシリアル番号が一緒に写っていたレンズで撮った写真が好きだった(印刷ベース)人が、「あの人が使っているレンズは初期玉だったから、きっと初期玉は良いのだろう」的感想が1人歩きしているとも言えるでしょう。次に一般論からして、噂から初期玉を手にした人が厳密なる新旧他社比較テストをした上で話をしているとは思えませんので、やはり精神安定言語であるを信じ込んだ方が幸せですもん。

あ、そうそう。ugenさんへのツッコミ所として、「ツァイス社および京セラは、レンズを製造期間中、全く同じ設計で製造し続けていたのかどうかは、不明なのである」という前提が抜けていますよねぇ(笑)。いや、だから、初期は偉いってんじゃないですよ。

話の最後にツァイスの凄さを感じるエピソードをひとつ。

某レンズ製造会社の社長が、「本国チェックではじかれる数が少なければ利益がもっと出て、かつ価格も低く設定できるのに」とボソッと言ったとか言わなかったとか(笑)







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Last updated  2008.05.03 22:07:15
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