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2008.02.03
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テーマ: いい言葉(574)
カテゴリ: 文学・芸術
▼フランスの薔薇10(マラルメ10)


タイトルはボードレールの『悪の華』に出てくる「不運」をそのまま取ったようです。そのボードレールの「不運」も、詩人の孤独と苦悩を描いた詩ですが、大部分は「芸術は長く、人生は短い」と謳ったアメリカの詩人ヘンリー・ワーズワース・ロングフェローの「人生賛歌」を仏訳して借用したものです。

第一節
人間という途方に暮れた家畜の群れの上を
青空を希求するものたちは、野生のたてがみを輝かせながら
私たちの道を踏みしめながら、飛び跳ねていた。

人間を家畜にたとえ、詩人は凡人たちの上を駆け巡る駿馬でべきだとマラルメは言っていますね。「青空」はマラルメが求めて止まなかった、美を表現する完璧な手段としての「詩」にほかなりません。「私たちの道」とは、その理想の詩への道ということになります。

第二節
彼らの行く手には暗黒の風が、はためく戦旗のように広がる。

肉には苛立ちの轍(わだち)が刻まれる。

ロングフェローの「人生賛歌」もそうですが、人生を戦場にたとえ、詩人をその戦場を行進する兵隊のように描いていますね。ムチのモチーフは、その後も同じ流れで出てきます。

第三節
海を見たいとの希望を常に抱いて、
パンも、杖も、壷もなく、彼らは旅を続けた。
苦い理想が詰まった黄金のレモンをかみ締めながら。

フランス語で「海」というと、必ず想起されるのは「母」なんですね。スペルは違いますが、まったく同じ発音です。ここで言う「海」とは、詩を生み出す母たるミューズのことではないかと思います。

第四節
彼らの多くは、夜の行進の最中にあえぎだした。
滴り落ちる血を見る幸福に酔いながら、
おお、死よ、沈黙した唇に最後の接吻を!



第五節
敗北したのは、それは、抜き身の剣となって
地平線に立ちはだかる金剛力の天使のせいだ。
その存在を知って、胸に深紅の血が凝結する。

「金剛力の天使」とは、ボードレールの書いた次のような文章に由来しています。

この天使とは、「不運」の化身なのでしょうね。詩人にとっては、血も凍るような存在です。
第六節
彼らは夢を吸ったように、苦痛を吸い取る。
彼らが情感豊かな涙のリズムで進むとき、
群集はひざまずき、彼らの母は立ち上がる。

ボードレール『悪の華』の「白鳥」にも、「苦悩の乳房を吸う」という表現が出てきます。どうやらここでは、創作の苦しみに打ち勝ち、詩を書き上げた詩人たちのことを言っているようです。それは次の節で一層明らかになります。

第七節
彼らは慰められ、確信と威厳に満ちている。
だが彼らは足下に、人々に愚弄された無数の兄弟、
移り気の運命に翻弄された、哀れな殉教者を引き連れている。

詩を書き上げた詩人は幸せです。一方、彼らの足下には、「移り気の運命」のために、創作途上で挫折した詩人の屍が横たわっています。

第八節
涙のような塩辛さが彼らの優しい頬を蝕み、
彼らは同じ愛情をもって、遺灰を食べる。
しかし、運命が彼らを八つ裂きの刑に処するとは、
俗悪な、もしくは道化の芝居だ。

この辺りから詩はさらに難解になってきます。まずこの「彼ら」とは誰のことを言っているのかですが、運命によって八つ裂きの刑に処されたとされていますから、挫折した詩人たちのことでしょう。灰の苦さも、涙の辛さも、生みの苦しみのシンボルであるように思います。

第九節
彼らはまた、かすれた声で、弔いの太鼓のように、
民衆の自主性のない哀れみを誘うことができたはずだ。
ハゲタカに肝臓を食われることもなく、たださらし者になって生き恥を晒しているプロメテウスのような者たちよ。

不運の神である「金剛力の天使」に鞭打たれ倒れた詩人たちは、弔いの鐘がなる葬式の行列の中を元気なく進みます。その哀れな姿を見れば、誰もが憐憫の情を禁じえないのでしょう。ボードレールの同名詩「不運」にも弔いの太鼓が出てきます。その詩の中でボードレールは、高名な墓には見向きもせず、人里はなれた寂しい墓地へ、低音で体に響く太鼓のように葬送曲を打ち鳴らしながら心が進むのだ、と表現しています。第九節のイメージと重なりますね。「高名な墓」とは成功した詩人たちの碑でもあるのでしょうか。

ご存知かもしれませんが、ボードレールの『悪の華』は、今でこそ世界の詩の流れを決定付けた金字塔のように扱われていますが、それが発表された当時(1857,61年)はマラルメら一部の芸術家には熱烈に評価されたものの、一般の大衆にはほとんど理解されていませんでした。ボードレールの「不運」では、「つるはしも届かない地中深くに、忘れられて闇に埋もれた多くの財宝が眠っている」と表現されています。マラルメが「ほろ苦き停滞に倦み疲れて」で、脳みそに掘ろうとしていた「穴」は、その財宝を掘り起こすためだったのかもしれませんね。

第十節
いや、卑屈に、オアシスのない砂漠に足繁く通いながら、
彼らは、「不運」という名の短気な帝王のムチに打たれて逃げまどう。
そして、かつてない嘲笑の前にひれ伏すのだ。

ここも前節同様に、「金剛力の天使」の言い換えである「不運という名の短気な帝王」に鞭打たれる詩人のことが描かれています。「オアシスのない砂漠」とは、誰にも理解されず、癒されることもない、ボードレールやマラルメが喘いでいたフランス文学界そのものであったような気がします。

ボードレールは死ぬ前年の1866年に、ある出版社から「『悪の華』? あんなものは忘れられた詩集だ」と嘲られたそうです。嘲笑とは、批評家や出版社からの冷たい言葉だったのではないでしょうか。

さらに難解になる後半の解説はまた明日。
(続く)

写真は後でアップします。





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最終更新日  2008.02.03 12:56:41
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