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2008.03.09
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カテゴリ: 文学・芸術
▼白鳥の詩2(マラルメ44)


第一節
純潔の、生気に満ちた、美しい今日という今日は、
私たちのために、陶酔の羽ばたきの一撃で打ち砕いてくれるだろうか、
飛び立てなかった飛翔が宿る透明の氷河が
霧氷の下に現れる、あの忘れ去られた試練の湖を

ここにあるのは、マラルメの純粋な希望です。心機一転、何か新しいことを始めようとしているようです。「美しい今日」というぐらいですから、マラルメが畏怖する「青空」が広がっていたんでしょう。「青空」は、詩の理想の世界の象徴でしたね。

「羽ばたき」という言葉から、早くも白鳥が想起されます。打ち砕きたいものとは、厚く氷の張った湖。その氷を打ち砕いて欲しいと言っています。氷の中には「飛翔」が閉じ込められています。飛翔はもちろん「青空」へと向かうことであり、マラルメにとってそれは、理想の詩を書くことです。氷はそれを阻むものだったんですね。「忘れ去られた」とありますから、過去においてそのような試練があったことを示唆していますね。

第二節

姿こそ華やかだが、希望なき自由に身を置いたのは、
不毛の冬に芽生える倦怠が輝いたときに
自分が生きる土地のことを歌わなかったためなのだ、と。

昨日言ったように、「白鳥」はマラルメです。第二節では過去の自分を振り返っています。
英語教師という社会的(華やか)な地位はありますが、詩人としての希望がなかった時代のことを言っているのでしょうね。南仏の田舎町トゥルノンでの若き教師の時代、「エロディアード」を書いていたころ、マラルメは詩が書けないことに絶望して発狂寸前にまでなったことは以前、紹介しました。その苦渋の時代を「不毛の冬」と言っているようです。「倦怠が輝いた」とは、マラルメ流の皮肉な表現でしょうか。

ここで難解なのは、「自分が生きる土地のことを歌わなかった」の解釈ですね。抽象的には、できたのにやらなかったと悔いているようにも聞こえます。トゥルノンでの逆境を、逆に利用して詩を書かなかったことに対する後悔があるように思われます。後から当時を振り返ると、詩を書く時間も力も十分にあったと思えるんでしょうね。

第三節
白鳥は頸を激しく揺すって振り落とすだろう、
空間を否定する鳥がその空間によって科せられる、この白い苦悩を、
しかしそれは、翼が囚われている土地に対する恐怖ではない。

「空間」とはおそらく「青空」のことだと思われます。詩の理想を恐れ拒みつつも、その理想のために、白紙の原稿用紙に向かって詩を書き続けなければならない詩人の苦悩(白い苦悩)のことを言っているのでしょう。羽根を氷に囚われた白鳥(手足を日常生活に囚われたマラルメ)は、唯一動かせる頸を揺すって、苦悩(生みの苦しみ)から逃れようとしています。でも詩人が感じる恐れとは、教師として生きる日常生活(土地)に対してではなく、詩の理想に対する畏怖なんですよね。


その純粋な輝きがこの場所に割り当てる幻は、
不要な追放の最中に「白鳥」が身にまとう
軽蔑の冷やかな夢の中で動かなくなる。

この第四節は、今でも論争が続いているほど多岐に解釈されています。私は訳すときに「白鳥」とあえてカッコで括りましたが、第二節で出てくる「白鳥」と異なり「le Cygne」とCが大文字になっているんですね。なぜ急に大文字になったのか、その意味を探らなければなりません。

その一つの解釈が、「昔の白鳥」と「今の白鳥」を区別するために、あえて大文字にしたというものです。私にはカッコで括られた「白鳥」は「昔の白鳥」のことではないかと思われます。



「白鳥」がすべて同一であると解釈すると、「今の白鳥」も同様に軽蔑の夢の中で眠ってしまうことになってしまいます。すると、今でもマラルメは、かつての自分のように「青空」からの軽蔑や強迫観念に囚われていることになりますが、この詩が1885年、詩人としての円熟期ともいえる43歳のときに書かれたことを考えると、その解釈には無理があるように思われます。私には、過去との決別、もしくは純粋な詩人としての「独立宣言」のような詩であるように思えるんですよね。

マラルメは1895年、ポール・ヴェルレーヌの後を受けて「詩王」に選出されます。しかしその二年後、突然の喉頭痙攣に襲われ、帰らぬ人となりました。56歳でした。詩人の魂はようやく、あの「青空」へと飛び立っていったのでしょうか。

さあ、これでようやく私も、マラルメから解放され飛び立てます(笑)。
次はエドガー・アラン・ポーの薔薇(今のところ一編しか見つかっていませんが)でしょうか。ボードレールやネルヴァル、グルモンの薔薇も取り上げたいと思っています。

逆光

昨日の写真を拡大したものです。ワンちゃんの散歩中でしたね。





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最終更新日  2008.03.09 11:46:37
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