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金属工作機械部分品の製造等を業とするX会社を退職後の競業避止義務に関する特約等の定めなく退職した従業員において,別会社を事業主体として,X会社と同種の事業を営み,その取引先から継続的に仕事を受注した行為が,X会社に対する不法行為にあたらないとされた事例(最判平成22年3月25日)「事案の概要」 X会社の従業員であったY1,Y2が,X社を退職後,有限会社Y3を事業主体として競業行為を行ったため,Xが,損害を被ったとして,Yらに対し,不法行為または雇用契約に付随する信義則上の競業避止義務違反に基づく損害賠償を請求した。「判旨」 金属工作機械部分品の製造等を業とするX会社を退職後の競業避止義務に関する特約等の定めなく退職した従業員において,別会社を事業主体として,X会社と同種の事業を営み,その取引先から継続的に仕事を受注した行為は,それが上記取引先の営業担当であったことに基づく人的関係等を利用して行われたものであり,上記取引先に対する売上高が別会社の売上高の8~9割を占めるようになり,X会社における上記取引先からの受注額が減少したとしても,次の(1),(2)など判示の事情の下では,社会通念上自由競争の範囲を逸脱するものではなく,X会社に対する不法行為に当らない。(1)上記従業員は,X会社の営業秘密に係る情報を用いたり,その信用をおとしめたりするなどの不当な方法で営業活動を行ったものではない。(2)上記取引先のうち3社との取引は退職から5か月ほど経過した後に始まったものであり,残りの1社についてはX会社が営業に消極的な面もあったのであって,X会社と上記取引先との自由な取引が阻害された事情はうかがわれず,上記従業員においてその退職直後にX会社の営業が弱体化した状況を殊更利用したともいえない。判例タイムズ1327号71頁
2012.10.19
いわゆる管理監督者に該当する労働者が深夜割増賃金を請求することの可否最高裁平成21年12月18日判決 「事案の概要」 Yは理髪店チェーンのXに入社し,入社5年目(平成13年)ころからは「総店長」という地位に就任して,理美容業務を行いつつ,Xの5つの店舗の改善策や従業員の配置等についてX代表者に助言する立場にあった。また,平成16年11月以降,通常業務終了後に開かれていた店長会議に毎月出席していたが,この会議は長い時は2時間に及ぶことがあった。Yの給与は,同年3月当時,月額43万4000円で,これとは別に,店長手当として月額3万円を支給されており,その給与等の額はその他の店長の約1.5倍に達していた。 Yは退社した後,引抜き行為等をとがめられて損害賠償訴訟を提起された際,反訴として時間外賃金の支払を請求した。「判旨」 労働基準法41条2号所定のいわゆる管理監督者に該当する労働者も,同法37条3項に基づく深夜割増賃金を請求することができる。 労働基準法37条3項は午後10時から午前5時までの間において労働させた場合には,その時間の労働については,使用者は通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない旨規定している。他方,同法41条2号は,労働時間,休憩及び休日に関する規定は「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理に地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」については適用しない旨規定していることから,両者の関係が問題になる。 最高裁は,次のように判示した。労働基準法における労働時間に関する規定の多くは,その長さに関する規制について定めているが,同法37条3項は労働が1日のうちどのような時間帯に行われるかに着目して深夜労働に関し一定の規制をする点で,労働時間に関する同法中の他の規定とはその趣旨目的を異にする。また,管理監督者と同じく労働時間等の規定が適用されない労働者として,同法41条1号は牧畜業等に従事する者を定めているが,同法61条4項は,牧畜業等に深夜業の規制に関する規定を適用しない旨を別途規定していることからも,同法41条にいう「労働時間,休憩及び休日に関する規定」には深夜業の規制に関する規定は含まれていないと解される。したがって,管理監督者に該当する労働者であっても,同法37条3項に基づく深夜割増賃金を請求することができるものと解するのが相当である。 なお,本判決は,管理監督者の所定賃金が労働協約等によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には,その限度で深夜割増賃金の支払を受けることを認める必要はないとも判示した。 判例タイムズ1316号129頁
2012.10.10
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