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個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効であることにより,購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となるか(最判平成23年10月25日) 「事案の概要」信販会社Yの加盟店Aとの間で,Aの女性販売員による思わせぶりな言動を交えた勧誘に応じて,指輪等の宝飾品をその本来の価値を大きく上回る代金額で購入する売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,Yとの間で,その購入代金立替払契約(以下「本件立替払契約」という。)を締結したXが,Yから事業譲渡を受けたZに対し,<1>(ア)本件売買契約は公序良俗に反し無効であるから,これと一体の関係にある本件立替払契約も無効である(イ)退去妨害による困惑又は不実告知による誤認の下に本件立替払契約の申し込みをしたから,消費者契約法の規定によりその意思表示を取り消したと主張して,不当利得に基づき,既払割賦金の返還を求めるとともに,<2>Yが加盟店の行為につき調査する義務を怠ったためにAの行為による被害が発生したと主張して,不法行為に基づく損害賠償を求め,他方,ZがXに対し,本件立替払契約に基づく未払割賦金の支払いを求めた。「判旨」個品割賦購入あっせんにおいて,購入者と販売業者との間の売買契約が公序良俗に反し無効とされる場合であっても,販売業者とあっせん業者との関係,販売業者の立替払契約締結手続への関与の内容及び程度,販売業者の公序良俗に反する行為についてのあっせん業者の認識の有無及び程度等に照らし,販売業者による公序良俗に反する行為の結果をあっせん業者に帰せしめ,売買契約と一体的に立替払契約についてもその効力を否定することを信義則上相当とする特段の事情があるときでない限り,売買契約と別個の契約である購入者とあっせん業者との間の立替払契約が無効となる余地はない。 本判決が信義則を根拠として,個品割賦購入あっせんにつき,売買契約が公序良俗に反し無効である場合にこれと一体的に立替払契約についてもその効力を否定すべき場合がありうるとの解釈を示すとともに,そのような場合に該当するか否かの判断にあたり考慮すべき事情を例示していることは注目に値する。 なお判決は,本件について,上記特段の事情があるということはできず,本件売買契約が公序良俗に反し無効であることにより本件立替払契約が無効になると解すべきではないと判示し,消費者契約法の規定による取消し及び不法行為の主張についても理由が無いと判断して,Xの請求をいずれも棄却すべきものとした。判例タイムズ1360号88頁
2012.02.21
広告代理店の社員が子会社及び支店での過重な業務によりうつ病を発症し自殺したとして、遺族の広告代理店及び子会社に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が一部認容された事例(大阪地裁 平成22年9月29日判決) 「事案の概要」A(昭和38年生)は、平成14年4月、印刷及び広告代理店業務等を主たる業務とするY1に再雇用され、その子会社であるY2又はY1の支店において、クリエイティブ・ディレクターの肩書で広告物の作成の業務に従事していたが、平成17年12月、赴任先の住居近くのマンションの11階から飛び降り自殺した。そこで、Aの遺族であるXらは、Aは、長時間労働によりうつ病を発症して自殺するに至ったと主張し、Yらに対し、不法行為又は債務不履行に基づき損害賠償請求した。 「判旨」亡Aの業務は、時間外労働が多く、休日出勤も少なくないものであり、かつその内容も業務量が多く、心理的負担もかかるものであったと認められるから、加重なものであったと認められる。Yらは、亡Aの業務量は、丙と比べて少なく、亡Aの業務量の少なさを心配する声さえあったから、その業務は過重ではない旨主張する。なるほど、丙は、職場における最終施錠者であることが多く、その労働時間・時間外労働時間も長時間に及んでいること及び担当案件の数自体は、亡Aよりも多かったことが認められる。しかしながら、前記認定の亡Aの労働時間、業務量、業務内容に照らせば、丙の業務時間や、手持ち案件の数が亡Aのそれよりも多いからといって、同人の業務が過重でなかったとはいえない。したがって、Yらの上記主張は採用できない。ところで、労働者が過重な業務を継続することにより、精神疾患を発症し、これにより自殺を招来することがあることは、周知の事実である。そして、亡Aは、前記認定のとおり、過重な業務に従事していたものであるところ、本件全証拠に照らしても業務以外に、同人がうつ病を発症する原因となるような事情はうかがえない。そうすると、亡Aは、過重な業務により、前記認定のとおりうつ病を発症し、これによって本件自殺に至ったものであると認められる。以上によれば、Yらは、亡Aの労働時間を適切に管理せず、同人の労働時間、休憩時間、休日等を適正に確保することなく、長時間労働に従事させ、作業内容の軽減等適切な措置を採らなかったものであるから、安全配慮義務違反が認められる。そして、被告らの上記安全配慮義務違反と本件死亡との間には、因果関係が認められる。したがって、Yらは、本件死亡について安全配慮義務違反の債務不履行責任あるいは不法行為責任を負うと認められる。判例時報2133号131頁
2012.02.14
無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合における当該物の所有者の追認の効果(平成23年10月18日 最高裁第三小法廷判決) 「事案の概要」Xは、Aの代表取締役であるBから、その所有する工場を賃借し、同工場でブナシメジを生産していたところ、Bは、賃貸借契約の解除等をめぐる紛争に関連して同工場を実力で占拠し、その間、AはYとの間でブナシメジの販売委託契約を締結した。Aは、Xの所有する同工場内のブナシメジをYに出荷し、Yは、本件販売委託契約に基づき、そのブナシメジを第三者に売却して代金を受領した。Xは、Yに対し、XとYとの間に本件販売委託契約に基づく債権債務を発生させる趣旨で、本件販売委託契約を追認した上で、Yに対し、販売代金の引渡請求権が自己に帰属すると主張して、その支払いを請求した。 「判旨」無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合に、当該物の所有者が、自己と同契約の受託者との間に同契約に基づく債権債務を発生させる趣旨でこれを追認したとしても、その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない。なぜならば、この場合においても、販売委託契約は、無権利者と受託者との間に有効に成立しているのであり、当該者の所有者が同契約を事後的に追認したとしても、同契約に基づく契約当事者の地位が所有者に移転し、同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解する理由はないからである。仮に、上記の追認により、同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解するならば、上記受託者が無権利者に対して有していた抗弁を主張することができなくなるなど、受託者に不測の不利益を与えることになり、相当ではない。判例タイムズ1360号93頁
2012.02.02
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