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友人4名の海外旅行資金等の積立を主たる目的とし、そのうちの1名を代表者とする銀行預金が、団体の預金ではなく代表者の預金であるとされた上、信託財産であるとされた事例(東京地裁 平成24年6月15日判決) 「事案の概要」X5とX2ないしX4は、親しい友人同士であり、定期的に旅行に出かけていたが、平成12年頃、その費用を積み立てるために、X5がY2銀行との間で、口座名義を「A会 代表者X5」とする普通預金口座を開設し、その通帳及びカードはX5が保管し、Xら4名は、毎月5000円から1万円を本件口座に積み立てていた。Y1は、平成21年8月、公正証書の執行力ある正本に基づき、X5に対する債権を請求債権、X5のY2銀行に対する普通預金債権等を差押債権とする債権差押命令を得て、本件預金債権を差し押さえ、本件口座から全額に当たる241万7648円を取り立てた。そこで、X1(A会)が、X1は民法上の組合であって、本件預金債権はX1に帰属するとして、Y1に対して不当利得返還を求め(第1事件)、Y2銀行に対し、預金の支払いを求め(第3事件)、X2ないしX4が、本件預金債権はXら4名に4分の1ずつ帰属するなどとして、Y1に対し、それぞれ上記取立相当額の4分の1の返還を求め(第2事件)、X5が、本件預金債権はのうち4分の3はX2ないしX4を委託者兼受益者、X5を受託者であるとする信託財産であるとして、Y1に対し、右取立相当額の4分の3の不当利得返還を求めた(第4事件) 「判旨」X1は、権利能力なき社団には該当せず、民事訴訟法29条に基づき当事者能力を有するものとは認められないし、また、民法上の組合にも該当しないから、X1の請求はいずれも不適法なものとして却下を免れない。本件預金債権の預金者はX5と解すべきであるから、X2ないしX4の返還請求は理由がない。X2ないしX4は、X5との間で、それぞれ前記3名を委託者兼受益者、X5を受託者とする信託契約を締結したものであり、本件預金債権の内181万3236円は信託財産と認めることができるから、X5の債務名義に基づいてこれを差し押さえることは許されず、Y1は、法律上の原因に基づかずに利得したものとしてX5に返還すべきこととなる。 判例時報2166号73頁
2012.12.28
非上場会社における自己株式の処分について、著しく不公正な価額によって行われたものではないとして、取締役らの損害賠償責任等が否定された事例 非上場会社における第三者割当による新株発行について、旧商法280条の2第2項所定の有利発行に関する株主総会の特別決議を経ないで行われた法令違反があるとして、取締役らに公正な価額と発行価額との差額を賠償する責任があるとされた事例(東京地裁 平成24年3月15日判決) 「事案の概要」補助参加人の株主である原告が、<1>補助参加人が平成15年11月に被告Aに対して自己株式を1株1500円で譲渡したこと(本件自己株式処分)及び<2>補助参加人が平成16年3月に被告らを割当先に含む第三者割当の方法により1株1500円の発行価額で新株発行を行ったこと(本件新株発行)に関して、著しく不公正な価額により行われたものであり、取締役である被告らには「特に有利な価額」による発行に必要な手続を経ていない法令違反等があると主張して、被告らに対し、旧商法280条の11に基づく通謀引受人の責任ないし同法266条1項5号に基づく損害賠償として、公正な価額であると主張する金額(1株3万2254円)から上記金額(1株1500円)を控除して算出した22億5171万5618円等を支払うよう求めた株主代表訴訟である。 「判旨」本件自己株式処分について補助参加人の株式は、役員や社員持株等の関係者の間で、1株当たり1500円で取引されていたものである上、本件自己株式処分は、実質的には、補助参加人が同族会社認定を受けることを回避するために被告Aから取得した株式の買い戻しにすぎず、取得から処分まで僅か1年程度しか経過していないこと等に照らすと、本件自己株式処分における公正な価額としては、過去の類似取引における取引価格ともいい得る、補助参加人の取得時における取得価額と同額の1株当たり1500円とするのが相当であり、本件自己株式処分が著しく不公正な価額によって行われたものであるということはできない。本件新株発行について本件新株発行に当たっては、専門家による株式価値の算定は行われていないが、補助参加人は、補助参加人は、平成12年5月、監査法人が類似業種比準方式、純資産方式、配当還元方式を基礎に算定した株式価値の算定結果基づき、行使価格を1万円とする新株引受権付社債を発行し、平成18年3月には、時価純資産額を基礎として、発行価額及び行使価格を1株当たり900円(株式分割前の9000円相当)とする新株及び新株予約権を発行したことからすると、補助参加人の株式は、少なくとも、平成12年5月時点では1株当たり1万円程度、平成18年3月時点では1株当たり9000円程度の株式価値を有していたというべきである。補助参加人の財務状況は、平成12年度以降悪化し、平成13年度を底として平成14年度にはやや上向き、平成15年度以降、順調に改善していくという経過をたどったものであり、本件新株発行が行われた平成16年3月当時の株式価値は平成12年5月当時の株式価値を大きく下回ることはないとみるのが相当である。補助参加人から提出されたDCF法による平成14年度の実績値を基礎とする株価算定結果について、本来加算すべき遊休資産の価値を加算し、平成14年度の有利子負債ではなく、平成15年度の有利子負債を控除するという修正を施すと、平成16年3月時点の株式価値は7987円と算定されること等を考慮すると、本件新株発行における公正な価格は、少なくとも1株当たり7000円を下らないというべきであり、本件新株発行は、著しく不公正な発行価額であるというべきである。判例タイムズ1380号170頁
2012.12.27
契約の一方当事者が契約の締結に先立ち信義則上の説明義務に違反して契約の締結に関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合の債務不履行責任の有無最判平成23年4月22日判決 「事案の概要」Y信用協同組合が自らの経営破たんの危険を説明せずに出資を勧誘し,これに応じた出資者Xが,その後の同信用協同組合の経営破たんにより出資金の払戻しを受けられなくなったことから,出資勧誘時の説明義務違反を理由としてY協同組合に対し損害賠償を請求した。 本件のほかにも同種の損害賠償請求事件が最高裁に係属していたが,いずれも原審までの段階では,不法行為による損害賠償請求については訴え提起に先立ち3年の消滅時効が完成したのではないかが問題となり,債務不履行による損害賠償請求については,出資契約の成立に先立つ交渉段階の説明義務違反につき,契約責任としての債務不履行責任を問うことができるのかが問題となっていた。「判旨」契約の一方当事者が,当該契約の締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には,上記一方当事者は,相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき,不法行為よる賠償責任を負うことがあるのは格別,当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはない。 本判決は,説明義務違反があったため,相手方において,契約を締結するか否かに関する判断を誤って契約の締結に至り,それにより損害を被ったという場合に限定して,このような場合には,契約を締結したことは説明義務違反により生じた結果なのであって,この説明義務をもって契約に基づいて生じた義務であるということは一種の背理であるとして,契約責任を否定したものである。 本判決は,その射程は限定されており,契約締結上の過失といわれているもの一般についての責任の法的性質につき最高裁の判断が示されたものではないが,契約準備段階の説明義務違反の法的性質について,その一場面ながらも最高裁が初めて正面から判断を示したものとして,実務上も理論上も重要な意義を有する。金融法務事情1928号106頁,1953号75頁
2012.12.04
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