本日はこちら「Are you looking for the summer」のレビューです。
XboxのKemcoゲーではイハナシの魔女以来となるテキストゲームですね。元号が平成から令和に変わるタイミングで、時代の移ろいを感じさせるようなノスタルジックな雰囲気を演出しようとした作品です。別ジャンルですが僕なつみたいな気持ちでプレイすることを想定しているような気がします。
タイトルBGMに「ラムネ」の開栓音みたいな音が入っていたり、ゲーム中では蝉しぐれや鈴虫の鳴き声を取り入れたり、雰囲気作りはかなり気合入ってました。十分楽しめると思います。
お祭りのガヤもなんか良かったですね。
裏でガヤガヤしている様子を表すんですが、通常このガヤはその様子を表すもので決して特定の聞き取れる音声を入れたりしないのが通例なんですが、本作にはいくつか聞き取れるフレーズが入っていて、これがお祭りの雰囲気ととてもよく合っていて素晴らしかったと思います。なんだったかな、「イカ食べる?」とか「花火見に行こう」とか、すごいそれっぽいまったく他人の会話がふっと聞き取れる感じが、めっちゃ良かったです。
お話は……あっ、短ぇっ!?
イハナシの魔女もテンポが良い分十分短いと感じたのですが、まさか一日でコンプできるレベルで短いとは想定外でした。スキップせずに、ちゃんと音声も流して聞きながら、インデックスの機能でセーブロードを使わずともすぐに選択肢の直前に戻ることもできるので、10時間もあればコンプできてしまいます。
お話の舞台がとても小さい街の中の小さな関係性の中での、たった10日間でのお話なので序盤からそんなに長くはかからないだろうと予想できるのですが、インディー特有の引き延ばさないテンポ重視のスタイルなので驚くほどサックサクでした。
大抵は食事での団らんとか、むふふなお風呂のシーンとか茶番が入ってもよさそうなところでも、物語には関係が無いのでカットですよ。
このスタイルは個人的には大歓迎ですけどね。
でも、終盤の、詳しくは言えないのですが主人公が色々と遠回りしてめっちゃ頑張るシーンですらカットなのはちょっと急ぎすぎというか、そこは見せてもいいんじゃないかと思いました。というか見せてくれよっていう(笑)
このシーンは別として、全体的に本作は雰囲気作りはかなり良かったんですが、登場人物の葛藤や心理描写についてはイマイチ説明不足、描写の技術力が足りない部分がちょいちょいあって、なぜ彼らがこんなにも焦っているのか、なぜ切迫しているのか、なぜ不安を抱いているのか、なんていうところに感情移入しづらい部分が見受けられました。
なんていうのかな、まぁそういう気持ちになるのもわかるけどさ、こうしたらなんか変わるんじゃないの?とか、まだアレは試してないよね、とか、その状況から一気に焦って慌てるまでにはまだもう1ステップ、2ステップ残ってるような気がしてモヤモヤが残ったんですよね。
状況的な囲い込みが足りないというか、テンポが良すぎて描写が足りずにまだ逃げ道や別ルートが残ってる感覚があるのに、すでに主人公たちは絶体絶命の状況を悟って右往左往したり諦めかけてるのが残念なところ。
今回はそのテンポの良さ、小規模さ、シンプルさがいろいろな方面で悪さしていると思います。
登場人物たちのテンション、特にヒロインの会話のテンションがころころ変わって不自然な印象を受けるのもそうだし、伏線も初見で見破れるレベルで浮いてるのもそうです。
物語全体として見れば解像度が低くて輪郭がギザギザしている印象で、お話の肝にも驚きがありませんでした。もうわかってるし、みたいな。
やっぱりテンポが良すぎて遊びやすい反面、テキストの物量的メタ的な心理からも時間の流れを意識できるようなスケール感がないし、舞台や登場人物の相関関係的なものもやっぱり超コンパクトでお話のスケール感を感じにくいし、なんだったら作中の時の流れとしてのスケールも、たかだか10年20年程度の振れ幅なのでやっぱり変化や時という存在のロマンを感じにくかったです。
まぁまぁまぁ。プレイヤー側の正直な感想としては、「インディーゲームとして」見れば、全然、楽しめました。
下に見る感じがあるよね。インディーの強みはこの偏見の力を逆転できるところにあるので、それが私には働かなかった分ちょっと期待外れでした。
すっごく個人的な感想として二つほど言いたいこと。
言うべきかとても迷うけど、現在の年月日がすぐに確かめられないのはマイナスだと思います。
もう一つ。本当に個人的なことで申し訳ないんですけど、私は「モノマネ」というコンテンツに価値を見出せない人間なんです。あの芸能人に似てる、あの人の喋り方の真似をする、あの人みたいな歌い方をするなどなど。
好きな人もいるでしょうし、本作では「っぽさ」が出ていて、それが雰囲気にもマッチしてるので悪い感じではないのですが……ね、個人的にはね、あなた、誰かの代わりでいいんですかって思っちゃうんだよね。
ネガティブが押してきたけど話を戻すと決して悪くはなかったです。そこはテンポの良さがフォローしてると思います。冗長にならずストーリーがさくさく進んで、ボロが出る前にきっぱり終わる。その中でセンチメンタルでノスタルジックな、ひと夏の思い出みたいな切なさは演出出来てると思うし。
プレイする時期、ちょっと外れちゃったかもね、今寒いし(笑)
Kemcoゲーカウントダウン、残り12本!