作業療法の往き帰りの電車の中で Freyd の随伴関手定理の証明の解読をする.
本に載っている証明が方針と概略のみを示したものなので, これをきちんと完全な証明にする作業である.
定理 (Freyd).$\hspace{0.5em}$ $\mathscr{D}$ を全ての極限が存在する圏とする. このとき, 関手 $R : \mathscr{D} \to \mathscr{C}$ が左随伴関手を持つための必要十分条件は, $R$ が全ての極限を保存し, かつ解集合条件を満たすことである.
ここで, 解集合条件 (solution set condition)は次のように述べられる.
定義 (解集合条件).$\hspace{0.5em}$ 関手 $R : \mathscr{D} \to \mathscr{C}$ と $\mathscr{C}$ の対象 $A$ に対して, $\mathscr{D}$ の対象 $B$ と $\mathscr{C}$ の射 $y : A \to RB$ の組 $(y, B)$ からなる集合 $\mathscr{S}$ が存在して, $\mathscr{C}$ の任意の射 $d : A \to RD$ について, ある $(y, B) \in \mathscr{S}$ と $\mathscr{D}$ の射 $f : B \to D$ で
\begin{equation}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}(#1)}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{Rest}[2]{{#1}|{#2}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
d = Rf \circ y \q (= \Hom_{\Ms{C}}(A, Rf)(y) = [\Hom_{\Ms{C}}(A, R(-))(f)](y))
\end{equation}
が成り立つ, すなわち図式
\begin{equation}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[r]^{y} \ar[rd]_{d} & RB \ar[d]^{Rf} \\
~ & RD
}
\end{xy}
\end{equation}
が可換図式になるようなものがとれるとき, $\mathscr{S}$ を $R$ と $A$ に対する 解集合 (solution set)と呼ぶ. $\mathscr{C}$ の各対象 $A$ について $R$ と $A$ の解集合が存在するとき, $R$ は 解集合条件 (solution set condition)を満たすと言う.
意味が取りにくい定義だが, $R$ が各 $A \in \Ob{\Ms{C}}$ と任意の $d : A \to RD$ に対して, 関手 $\Hom_{\Ms{C}}(A, R(-))$ に対する普遍射のような射 $y : A \to RB$ が少なくとも 1 つ存在することを言っている. このような $y$ を $R$ と $A$ に対する 弱普遍射 (weak universal arrow)と呼ぶ (普遍射の存在条件は満たすが一意性条件は満たすとは限らない).
上記定理の証明の流れは次の通り. $\Ms{S}$ を $R$ と $A \in \Ob{\Ms{C}}$ に対する解集合とする. $R$ が $\Ms{D}$ の極限を保存することより, $A$ に対して $\Ms{D}$ の対象 $WA$ を
\begin{equation}
WA = R\left(\prod_{(y, B) \in \Ms{S}} B \right) = \prod_{(y, B) \in \Ms{S}} RB
\end{equation}
と定義する. この $WA$ は解集合条件により $R$ の左随伴関手のような性質を持ち, 弱普遍射 $\zeta A : A \to RWA$ が導かれる ($(\zeta A, WA) \in \Ms{S}$).
ここから解集合条件を何度か使って左随伴関手 $LA$ (やや技巧的な方法により $WA$ の部分対象として定義する) と普遍射 $\eta A : A \to RLA$ を構成していく.
とりあえず, $LA$ を構成するところまでは何とかわかった.
自分の場合, いつものことで理解するのに時間はかかるが, 少しづつわかってくるのが面白い.
2018年03月01日
2018年02月13日
数学: 随伴関手を対象毎に構成する定理 ── 続き
数学: 随伴関手を対象毎に構成する定理
定理.$\,\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を圏とする.
(a) 関手 $R : \mathscr{D} \rightarrow \mathscr{C}$ と任意の $A \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{C}}(A, R(-))$ が表現可能ならば, $R$ は左随伴関手を持つ.
(b) 関手 $L : \mathscr{C} \rightarrow \mathscr{D}$ と任意の $B \in \mathrm{Ob}(\mathscr{D})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{D}}(L(-), B)$ が表現可能ならば, $L$ は右随伴関手を持つ.
証明はひとまず追うことはできた. けれども, この証明を何も見ずにできるかというと自信が無い.
(a) に関しては証明の流れは次のようなものである.
まず, 仮定より関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{C}}(A, R(-))$ が表現可能だから, これを表現する $A$ に依存して定まる $\mathscr{D}$ の対象 $LA$ と自然同型
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}(#1)}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
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\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
i(A, -) : \Hom_{\Ms{D}}(LA, -) \to \Hom_{\Ms{C}}(A, R(-))
\end{equation*} が存在する.
この対応は $\Ms{C}$ の各対象に対する関数 $L : \Ob{\Ms{C}} \to \Ob{\Ms{D}}$ を与える.
また, $\eta A$ を上記の $LA$ に関する普遍元 (universal element) とする.
すなわち
\begin{equation}
\eta A = i(A, LA)(\Id{LA}).
\end{equation} この $\eta$ が求める随伴の単位 (unit) となる.
$f : D \to A$ を $\Ms{C}$ の任意の射とすると, いくつかの計算によってある $\Ms{D}$ の射 $Lf : LD \to LA$ が存在して
\begin{equation}
i(A, LA)(Lf) = \eta A \circ f
\end{equation} が成立することがわかる.
この対応は $\Ms{C}$ の各射に対する関数 $L : \Ar{\Ms{C}} \to \Ar{\Ms{D}}$ を与える.
以上で圏の間の関数 $L : \Ms{C} \to \Ms{D}$ が定義される.
この $L$ が, 求める $R$ の左随伴関手になる.
圏論に慣れた人には途中の技巧的な計算が当たり前のように感じるのかも知れないが, 自分にとってはまだよく考えないとわからない.
証明をもう少し読み込んでみるつもりだ.
(b) の証明は (a) の証明の双対となる. 本ではその旨のみ記載して証明を省いているが, これもきちんとやってみる.
定理.$\,\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を圏とする.
(a) 関手 $R : \mathscr{D} \rightarrow \mathscr{C}$ と任意の $A \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{C}}(A, R(-))$ が表現可能ならば, $R$ は左随伴関手を持つ.
(b) 関手 $L : \mathscr{C} \rightarrow \mathscr{D}$ と任意の $B \in \mathrm{Ob}(\mathscr{D})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{D}}(L(-), B)$ が表現可能ならば, $L$ は右随伴関手を持つ.
証明はひとまず追うことはできた. けれども, この証明を何も見ずにできるかというと自信が無い.
(a) に関しては証明の流れは次のようなものである.
まず, 仮定より関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{C}}(A, R(-))$ が表現可能だから, これを表現する $A$ に依存して定まる $\mathscr{D}$ の対象 $LA$ と自然同型
\begin{equation*}
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i(A, -) : \Hom_{\Ms{D}}(LA, -) \to \Hom_{\Ms{C}}(A, R(-))
\end{equation*} が存在する.
この対応は $\Ms{C}$ の各対象に対する関数 $L : \Ob{\Ms{C}} \to \Ob{\Ms{D}}$ を与える.
また, $\eta A$ を上記の $LA$ に関する普遍元 (universal element) とする.
すなわち
\begin{equation}
\eta A = i(A, LA)(\Id{LA}).
\end{equation} この $\eta$ が求める随伴の単位 (unit) となる.
$f : D \to A$ を $\Ms{C}$ の任意の射とすると, いくつかの計算によってある $\Ms{D}$ の射 $Lf : LD \to LA$ が存在して
\begin{equation}
i(A, LA)(Lf) = \eta A \circ f
\end{equation} が成立することがわかる.
この対応は $\Ms{C}$ の各射に対する関数 $L : \Ar{\Ms{C}} \to \Ar{\Ms{D}}$ を与える.
以上で圏の間の関数 $L : \Ms{C} \to \Ms{D}$ が定義される.
この $L$ が, 求める $R$ の左随伴関手になる.
圏論に慣れた人には途中の技巧的な計算が当たり前のように感じるのかも知れないが, 自分にとってはまだよく考えないとわからない.
証明をもう少し読み込んでみるつもりだ.
(b) の証明は (a) の証明の双対となる. 本ではその旨のみ記載して証明を省いているが, これもきちんとやってみる.
2018年01月30日
数学: 随伴関手を対象毎に構成する定理
随伴関手の節の続きを読む.
今日読んだのは次のような定理の部分.
$\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を圏とする.
(a) 関手 $R : \mathscr{D} \rightarrow \mathscr{C}$ と任意の $A \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{C}}(A, R(-))$ が表現可能ならば, $R$ は左随伴関手を持つ.
(b) 関手 $L : \mathscr{C} \rightarrow \mathscr{D}$ と任意の $B \in \mathrm{Ob}(\mathscr{D})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{D}}(L(-), B)$ が表現可能ならば, $L$ は右随伴関手を持つ.
証明では, それぞれの関手が各対象に対して表現可能であるという仮定から, 具体的に随伴関手を構成していく.
背景に米田の補題と自然変換の性質がある,
泥臭いが圏論の手法というのはこういうものだと思えるような証明なので何とか理解したい.
今日読んだのは次のような定理の部分.
$\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を圏とする.
(a) 関手 $R : \mathscr{D} \rightarrow \mathscr{C}$ と任意の $A \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{C}}(A, R(-))$ が表現可能ならば, $R$ は左随伴関手を持つ.
(b) 関手 $L : \mathscr{C} \rightarrow \mathscr{D}$ と任意の $B \in \mathrm{Ob}(\mathscr{D})$ に対して, $\mathrm{hom}$ 関手 $\mathrm{Hom}_{\mathscr{D}}(L(-), B)$ が表現可能ならば, $L$ は右随伴関手を持つ.
証明では, それぞれの関手が各対象に対して表現可能であるという仮定から, 具体的に随伴関手を構成していく.
背景に米田の補題と自然変換の性質がある,
泥臭いが圏論の手法というのはこういうものだと思えるような証明なので何とか理解したい.
2018年01月11日
図書館で勉強する
8 時半起床.
今朝は体調が良い.
いつもと気分を変えて図書館で数学の勉強をしようと決めた.
静かに集中できる.
夕方まで数学の本を読んだ.
今日読んだ箇所では随伴関手の具体例がいくつか与えられている.
以下はその最初のもの.
$A$ を集合としたとき, $A$ の部分集合全体を対象とし, 包含関係を射とする圏を $2^A$ と表わす.
$A, B$ を集合とし, $f : A \to B$ を任意の写像とする.
このとき, $f$ から次の 3 種類の関手が導かれる.
$A_0 \subset A$, $B_0 \subset B$ に対して
\begin{align*}
f_!(A_0) &= f(A_0), \\
f^{-1}(B_0) &= \left\{\, x \mid x \in A.\, f(x) \in B_0 \,\right\}, \\
f_*(A_0) &= \left\{\, y \mid y \in B.\, f^{-1}(y) \subset A_0 \,\right\}.
\end{align*} これらは次の随伴関係を満たす.
$f_! : 2^A \to 2^B$ は $f^{-1} : 2^B \to 2^A$ の左随伴関手である.
また, $f_* : 2^A \to 2^B$ は $f^{-1}$ の右随伴関手である.
この単純な例でもしばらく考えてようやくイメージが掴めた. 意味が理解できてくるととても面白い.
今朝は体調が良い.
いつもと気分を変えて図書館で数学の勉強をしようと決めた.
静かに集中できる.
夕方まで数学の本を読んだ.
今日読んだ箇所では随伴関手の具体例がいくつか与えられている.
以下はその最初のもの.
$A$ を集合としたとき, $A$ の部分集合全体を対象とし, 包含関係を射とする圏を $2^A$ と表わす.
$A, B$ を集合とし, $f : A \to B$ を任意の写像とする.
このとき, $f$ から次の 3 種類の関手が導かれる.
$A_0 \subset A$, $B_0 \subset B$ に対して
\begin{align*}
f_!(A_0) &= f(A_0), \\
f^{-1}(B_0) &= \left\{\, x \mid x \in A.\, f(x) \in B_0 \,\right\}, \\
f_*(A_0) &= \left\{\, y \mid y \in B.\, f^{-1}(y) \subset A_0 \,\right\}.
\end{align*} これらは次の随伴関係を満たす.
$f_! : 2^A \to 2^B$ は $f^{-1} : 2^B \to 2^A$ の左随伴関手である.
また, $f_* : 2^A \to 2^B$ は $f^{-1}$ の右随伴関手である.
この単純な例でもしばらく考えてようやくイメージが掴めた. 意味が理解できてくるととても面白い.
2017年12月20日
終日数学の勉強をする
4 時起床.
今朝は気分よく起きることができた.
数学のノートを読み直す.
時間を置いて自分の書いた文章を読むといろいろとわかってくることがある.
記述が冗長になっているところなどは理解したことの細かい部分や難しかった部分を書き残そうとしているのだろう.
本に自明と書いてある部分も逐一証明を付けながら読んでいる.
そういう読み方しかできない.
昼前に図書館から戻って LaTeX で練習問題の解を入力する.
夕方になってへばってしまったので区切りをつける.
今日は鬱の波の中で比較的良く思考を行うことができたと思う.
スーパーに行ったら, 島豆腐という沖縄の豆腐があったので買ってきた.
一般的な木綿豆腐よりもしっかりした硬さのある豆腐で好物である. ちょっとだけ高い.
夕食は冷奴と納豆とご飯.
今朝は気分よく起きることができた.
数学のノートを読み直す.
時間を置いて自分の書いた文章を読むといろいろとわかってくることがある.
記述が冗長になっているところなどは理解したことの細かい部分や難しかった部分を書き残そうとしているのだろう.
本に自明と書いてある部分も逐一証明を付けながら読んでいる.
そういう読み方しかできない.
昼前に図書館から戻って LaTeX で練習問題の解を入力する.
夕方になってへばってしまったので区切りをつける.
今日は鬱の波の中で比較的良く思考を行うことができたと思う.
スーパーに行ったら, 島豆腐という沖縄の豆腐があったので買ってきた.
一般的な木綿豆腐よりもしっかりした硬さのある豆腐で好物である. ちょっとだけ高い.
夕食は冷奴と納豆とご飯.
2017年10月30日
数学: ホモトピーと自然変換の類似性
圏論の勉強に使っている教科書『Toposes, Triples and Theories』の自然変換の節に次のような記述がある.
自然変換はホモトピーからの類似であり, ある関手を別の関手に変形する仕組みである.
これまで何となくわかった気になっていたのをきちんと考えてみた.
● ホモトピー
$\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を弧状連結な位相空間, $F : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$, $G : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$ を連続写像とする.
単位閉区間 $[0, 1]$ を $I$ とし, $\mathscr{C}$ の点 $C$ から点 $C'$ への任意の道 $g : I \to C$ を考える.
道 $g$ は連続写像であり
\begin{equation*}
g(0) = C, \quad g(1) = C'
\end{equation*} が成り立つ.
連続写像 $h : \mathscr{C} \times I \to \mathscr{D}$ を $F$ から $G$ へのホモトピーとする. すなわち, $\lambda X(t) = h(X, t)$ とおくとき
\begin{alignat*}{2}
\lambda C(0) &= F(C) = F(g(0)), & \qquad \lambda C(1) &= G(C) = G(g(0)), \\
\lambda C'(0) &= F(C') = F(g(1)), & \lambda C'(1) &= G(C') = G(g(1))
\end{alignat*} である. これをグラフで表わすと
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
F(C) \ar[d]_{F \circ g} \ar[r]^{\lambda C} & G(C) \ar[d]^{G \circ g} \\
F(C') \ar[r]_{\lambda C'} & G(C')
}
\end{equation*} となる.
このグラフにおける矢印は写像ではなく位相空間 $\mathscr{D}$ 上の道を表わしている.
・ $\lambda C$ は $\mathscr{D}$ の点 $F(C)$ から $G(C)$ への道;
・ $\lambda C'$ は $\mathscr{D}$ の点 $F(C')$ から $G(C')$ への道;
・ $F \circ g$ は $\mathscr{D}$ の点 $F(C)$ から $F(C')$ への道;
・ $G \circ g$ は $\mathscr{D}$ の点 $G(C)$ から $G(C')$ への道.
この 4 つの道で囲まれる領域は位相空間 $\mathscr{D}$ 上の向き付けられた面をなす.
● 自然変換
$\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を圏, $F : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$, $G : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$ を関手とする.
$\mathscr{C}$ の各元に対して射 $\lambda C : F(C) \to G(C)$ が割り当てられていて, 任意の射 $g : C \to C'$ に対して図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
F(C) \ar[d]_{Fg} \ar[r]^{\lambda C} & G(C) \ar[d]^{Gg} \\
F(C') \ar[r]_{\lambda C'} & G(C')
}
\end{equation*} が可換となるとき, $\lambda$ を $F$ から $G$ への自然変換と呼び $\lambda : F \to G$ と書く.
実際に書き下してみると確かに自然変換という概念はホモトピーの類似と考えることができるとわかる.
自然変換はホモトピーからの類似であり, ある関手を別の関手に変形する仕組みである.
これまで何となくわかった気になっていたのをきちんと考えてみた.
● ホモトピー
$\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を弧状連結な位相空間, $F : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$, $G : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$ を連続写像とする.
単位閉区間 $[0, 1]$ を $I$ とし, $\mathscr{C}$ の点 $C$ から点 $C'$ への任意の道 $g : I \to C$ を考える.
道 $g$ は連続写像であり
\begin{equation*}
g(0) = C, \quad g(1) = C'
\end{equation*} が成り立つ.
連続写像 $h : \mathscr{C} \times I \to \mathscr{D}$ を $F$ から $G$ へのホモトピーとする. すなわち, $\lambda X(t) = h(X, t)$ とおくとき
\begin{alignat*}{2}
\lambda C(0) &= F(C) = F(g(0)), & \qquad \lambda C(1) &= G(C) = G(g(0)), \\
\lambda C'(0) &= F(C') = F(g(1)), & \lambda C'(1) &= G(C') = G(g(1))
\end{alignat*} である. これをグラフで表わすと
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
F(C) \ar[d]_{F \circ g} \ar[r]^{\lambda C} & G(C) \ar[d]^{G \circ g} \\
F(C') \ar[r]_{\lambda C'} & G(C')
}
\end{equation*} となる.
このグラフにおける矢印は写像ではなく位相空間 $\mathscr{D}$ 上の道を表わしている.
・ $\lambda C$ は $\mathscr{D}$ の点 $F(C)$ から $G(C)$ への道;
・ $\lambda C'$ は $\mathscr{D}$ の点 $F(C')$ から $G(C')$ への道;
・ $F \circ g$ は $\mathscr{D}$ の点 $F(C)$ から $F(C')$ への道;
・ $G \circ g$ は $\mathscr{D}$ の点 $G(C)$ から $G(C')$ への道.
この 4 つの道で囲まれる領域は位相空間 $\mathscr{D}$ 上の向き付けられた面をなす.
● 自然変換
$\mathscr{C}$, $\mathscr{D}$ を圏, $F : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$, $G : \mathscr{C} \to \mathscr{D}$ を関手とする.
$\mathscr{C}$ の各元に対して射 $\lambda C : F(C) \to G(C)$ が割り当てられていて, 任意の射 $g : C \to C'$ に対して図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
F(C) \ar[d]_{Fg} \ar[r]^{\lambda C} & G(C) \ar[d]^{Gg} \\
F(C') \ar[r]_{\lambda C'} & G(C')
}
\end{equation*} が可換となるとき, $\lambda$ を $F$ から $G$ への自然変換と呼び $\lambda : F \to G$ と書く.
実際に書き下してみると確かに自然変換という概念はホモトピーの類似と考えることができるとわかる.
2017年10月22日
数学: 商圏 (quotient category) ── 射の合同 (arrow congruence) の構成
数学: 射の合同関係
,
数学: 射の合同 (続き)
数学: 同値関係の生成
の続き.
昨日どの箇所がわかっていなくて証明が進まないのかわかった.
現在進めている議論は次のようなものである.
圏 $\mathscr{\mathscr{C}}$ の射の全体 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ を $A$ とおく. $R$ を $A$ 上の任意の関係とする.
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}{#1}}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
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\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
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\newcommand{\Quot}[2]{{#1}\,/\,{#2}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{Rest}[2]{{#1}|{#2}}
\newcommand{\Src}[1]{\mathrm{source}(#1)}
\newcommand{\Tgt}[1]{\mathrm{target}(#1)}
R_0 = \bigcup_{(f_1, f_2) \in R} \left\{\, (\Src{f_1}, \Src{f_2}) , (\Tgt{f_1}, \Tgt{f_2}) \,\right\}
\end{equation*} とおく.
これより $\mathscr{C}$ の対象 $O = \Ob{\Mr{C}}$ 上の $R_0$ を含む一意的な同値関係 $E_0$ が生成される.
$A$ に属する射からなる形式列の集合 $A^e$ を次のように定義する.
まず
\begin{equation*}
A^e_n = \left\{\, f_1 \cdots f_n \mid f_1,..., f_n \in A.\,\, \Src{f_i}\, E_0 \,\Tgt{f_{i+1}}\, (i = 1,..., n - 1 \,\right\}
\end{equation*} とおき, $A^e_n \, (n = 0, 1,...)$ を用いて $A^e$ を $A^e_n \, (n = 0, 1,...)$ の非交和として
\begin{equation*}
A^e = \coprod_{n=0}^{\infty} A^e_n
\end{equation*} と定義する.
$A$ において合成可能な射の対の集合 $P$ を
\begin{equation*}
P = \left\{\, (f, g) \mid f, g \in A.\,\Src{f} = \Tgt{g} \,\right\}
\end{equation*} とおき, $A^e$ 上の関係 $R_1$ を
\begin{equation*}
R_1 = \left\{\, (fg, f \circ g) \mid (f, g) \in P \,\right\}
\end{equation*} で定め, $R_1$ が生成する $A^e$ 上の同値関係を $E_1$ とする.
これにより $A^e$ の $E_1$ による商空間
\begin{equation*}
\hat{A} = \Quot{A^e}{E_1}
\end{equation*} と商写像
\begin{equation*}
q_1 : A^e \to \hat{A}
\end{equation*} が構成される.
わかっていなかったのは $\hat{A}$ がどのような構造を持つ集合か, $q_1$ が写像としてどのような性質を持つかという点だった.
$\hat{A}$ の構造を明らかにして, それに対する商写像 $q_1 : A^e \to \hat{A}$ の性質を明らかにしておくことで議論が一つ次の段階に進むのである.
論理の進め方を始めから 1 つずつ正しいかどうかチェックし, 必要ならば証明を与えるようにしていったらわかった.
まるで print デバッグのようで楽しかった. ちょっとでも進むことができると嬉しい.
数学: 射の合同 (続き)
数学: 同値関係の生成
の続き.
昨日どの箇所がわかっていなくて証明が進まないのかわかった.
現在進めている議論は次のようなものである.
圏 $\mathscr{\mathscr{C}}$ の射の全体 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ を $A$ とおく. $R$ を $A$ 上の任意の関係とする.
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}{#1}}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\Quot}[2]{{#1}\,/\,{#2}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{Rest}[2]{{#1}|{#2}}
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R_0 = \bigcup_{(f_1, f_2) \in R} \left\{\, (\Src{f_1}, \Src{f_2}) , (\Tgt{f_1}, \Tgt{f_2}) \,\right\}
\end{equation*} とおく.
これより $\mathscr{C}$ の対象 $O = \Ob{\Mr{C}}$ 上の $R_0$ を含む一意的な同値関係 $E_0$ が生成される.
$A$ に属する射からなる形式列の集合 $A^e$ を次のように定義する.
まず
\begin{equation*}
A^e_n = \left\{\, f_1 \cdots f_n \mid f_1,..., f_n \in A.\,\, \Src{f_i}\, E_0 \,\Tgt{f_{i+1}}\, (i = 1,..., n - 1 \,\right\}
\end{equation*} とおき, $A^e_n \, (n = 0, 1,...)$ を用いて $A^e$ を $A^e_n \, (n = 0, 1,...)$ の非交和として
\begin{equation*}
A^e = \coprod_{n=0}^{\infty} A^e_n
\end{equation*} と定義する.
$A$ において合成可能な射の対の集合 $P$ を
\begin{equation*}
P = \left\{\, (f, g) \mid f, g \in A.\,\Src{f} = \Tgt{g} \,\right\}
\end{equation*} とおき, $A^e$ 上の関係 $R_1$ を
\begin{equation*}
R_1 = \left\{\, (fg, f \circ g) \mid (f, g) \in P \,\right\}
\end{equation*} で定め, $R_1$ が生成する $A^e$ 上の同値関係を $E_1$ とする.
これにより $A^e$ の $E_1$ による商空間
\begin{equation*}
\hat{A} = \Quot{A^e}{E_1}
\end{equation*} と商写像
\begin{equation*}
q_1 : A^e \to \hat{A}
\end{equation*} が構成される.
わかっていなかったのは $\hat{A}$ がどのような構造を持つ集合か, $q_1$ が写像としてどのような性質を持つかという点だった.
$\hat{A}$ の構造を明らかにして, それに対する商写像 $q_1 : A^e \to \hat{A}$ の性質を明らかにしておくことで議論が一つ次の段階に進むのである.
論理の進め方を始めから 1 つずつ正しいかどうかチェックし, 必要ならば証明を与えるようにしていったらわかった.
まるで print デバッグのようで楽しかった. ちょっとでも進むことができると嬉しい.
2017年10月12日
数学: 同値関係の生成
$S$ を任意の集合とし, $R \subset S \times S$ を $S$ 上の任意の関係とする.
このとき, $R$ を含む同値関係 $E$ で, $R$ を含む任意の同値関係 $E'$ に対して $E \subset E'$ を満たすものが一意的に存在する.
このような $E$ を, $R$ によって生成された $S$ 上の同値関係と呼ぶ.
言い換えれば, $R$ を含む $S$ 上の同値関係全体の集合を $\mathrm{er}(R)$ とおいたとき, $R$ によって生成される一意的な同値関係 $E$ は
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}{#1}}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{Rest}[2]{{#1}|{#2}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
E = \bigcap_{E' \in \Mr{er}(R)} E'
\end{equation*} によって定まる.
この右辺:
\begin{equation*}
\bigcap_{E' \in \Mr{er}(R)} E'
\end{equation*} が $R$ を含む $S$ 上の同値関係として, 空集合 $\varnothing$ などにならずに定まることは自明ではないので証明が必要である.
$E$ は次のように構成する.
まず
\begin{equation*}
S_1 = S \times S, \quad S_2 = S \times S, \quad S_3 = S \times S \times S
\end{equation*}
とおき, 関数 $r : S_1 + S_2 + S_3 \to S \times S$ ($+$ は集合の非交和を表わす) を
\begin{align*}
\Rest{r}{S_1} &= (p_1, p_2) = \Id{S_1}, \\
\Rest{r}{S_2} &= (p_2, p_1), \\
\Rest{r}{S_3} &= (p_1, p_3)
\end{align*} と定義する.
次に $S$ の対角集合 $D$ を
\begin{equation*}
D = \left\{\, (x, x) \mid x \in S \,\right\}
\end{equation*} とおき,
\begin{align*}
E_0 &= D \cup R,\quad E_{0,1} = E_0 = E_{0,2}, \\
T_0 &= \left\{\, (x, y, z) \mid (x, y), (y, z) \in E_0 \,\right\}, \\
B_0 &= E_{0,1} + E_{0,2} + T_0
\end{align*} と定義する. ここで $B_0$ は $E_{0,1} = E_0$, $E_{0,2} = E_0$, $T_0$ の非交和である.
ある正の整数 $n$ に対して
\begin{align*}
& E_{n-1},\quad E_{n-1,1} = E_{n-1} = E_{n-1,2}, \\
& T_{n-1}, \\
& B_{n-1} = E_{n-1,1} + E_{n-1,2} + T_{n-1},
\end{align*} がそれぞれ定義されているとき, $E_n, T_n, B_n$ を
\begin{align*}
E_n &= r(B_{n-1}),\quad E_{n,1} = E_n = E_{n,2}, \\
T_n &= \left\{\, (x, y, z) \mid (x, y), (y, z) \in E_n \,\right\}, \\
B_n &= E_{n,1} + E_{n,2} + T_n,
\end{align*} のように定義する. これによって $S$ 上の $R$ を含む関係の列
\begin{equation*}
E_0, E_1,...
\end{equation*} が構成される.
このとき,
\begin{equation*}
E_n \subset E_{n+1} \quad (n = 0, 1,\ldots)
\end{equation*} が成り立つ.
$S$ 上の関係 $E$ を
\begin{equation*}
E = \bigcup_{n=0}^{\infty} E_n
\end{equation*} により定義する.
この $E$ が $R$ を含む $S$ 上の同値関係であって
\begin{equation*}
E = \bigcap_{E' \in \Mr{er}(R)} E'
\end{equation*} を満たすことがわかる. つまり $R$ によって一意的に生成される $S$ 上の同値関係となっている.
この構成は数学的帰納法によるもので, プログラミングをしているようだった.
証明がそれ自身プログラムのようなものになっている. 面白い.
※: 構成的プログラミングという理論がこのようなことを扱う分野だったと思うが詳しいことはわからない.
このとき, $R$ を含む同値関係 $E$ で, $R$ を含む任意の同値関係 $E'$ に対して $E \subset E'$ を満たすものが一意的に存在する.
このような $E$ を, $R$ によって生成された $S$ 上の同値関係と呼ぶ.
言い換えれば, $R$ を含む $S$ 上の同値関係全体の集合を $\mathrm{er}(R)$ とおいたとき, $R$ によって生成される一意的な同値関係 $E$ は
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}{#1}}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{Rest}[2]{{#1}|{#2}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
E = \bigcap_{E' \in \Mr{er}(R)} E'
\end{equation*} によって定まる.
この右辺:
\begin{equation*}
\bigcap_{E' \in \Mr{er}(R)} E'
\end{equation*} が $R$ を含む $S$ 上の同値関係として, 空集合 $\varnothing$ などにならずに定まることは自明ではないので証明が必要である.
$E$ は次のように構成する.
まず
\begin{equation*}
S_1 = S \times S, \quad S_2 = S \times S, \quad S_3 = S \times S \times S
\end{equation*}
とおき, 関数 $r : S_1 + S_2 + S_3 \to S \times S$ ($+$ は集合の非交和を表わす) を
\begin{align*}
\Rest{r}{S_1} &= (p_1, p_2) = \Id{S_1}, \\
\Rest{r}{S_2} &= (p_2, p_1), \\
\Rest{r}{S_3} &= (p_1, p_3)
\end{align*} と定義する.
次に $S$ の対角集合 $D$ を
\begin{equation*}
D = \left\{\, (x, x) \mid x \in S \,\right\}
\end{equation*} とおき,
\begin{align*}
E_0 &= D \cup R,\quad E_{0,1} = E_0 = E_{0,2}, \\
T_0 &= \left\{\, (x, y, z) \mid (x, y), (y, z) \in E_0 \,\right\}, \\
B_0 &= E_{0,1} + E_{0,2} + T_0
\end{align*} と定義する. ここで $B_0$ は $E_{0,1} = E_0$, $E_{0,2} = E_0$, $T_0$ の非交和である.
ある正の整数 $n$ に対して
\begin{align*}
& E_{n-1},\quad E_{n-1,1} = E_{n-1} = E_{n-1,2}, \\
& T_{n-1}, \\
& B_{n-1} = E_{n-1,1} + E_{n-1,2} + T_{n-1},
\end{align*} がそれぞれ定義されているとき, $E_n, T_n, B_n$ を
\begin{align*}
E_n &= r(B_{n-1}),\quad E_{n,1} = E_n = E_{n,2}, \\
T_n &= \left\{\, (x, y, z) \mid (x, y), (y, z) \in E_n \,\right\}, \\
B_n &= E_{n,1} + E_{n,2} + T_n,
\end{align*} のように定義する. これによって $S$ 上の $R$ を含む関係の列
\begin{equation*}
E_0, E_1,...
\end{equation*} が構成される.
このとき,
\begin{equation*}
E_n \subset E_{n+1} \quad (n = 0, 1,\ldots)
\end{equation*} が成り立つ.
$S$ 上の関係 $E$ を
\begin{equation*}
E = \bigcup_{n=0}^{\infty} E_n
\end{equation*} により定義する.
この $E$ が $R$ を含む $S$ 上の同値関係であって
\begin{equation*}
E = \bigcap_{E' \in \Mr{er}(R)} E'
\end{equation*} を満たすことがわかる. つまり $R$ によって一意的に生成される $S$ 上の同値関係となっている.
この構成は数学的帰納法によるもので, プログラミングをしているようだった.
証明がそれ自身プログラムのようなものになっている. 面白い.
※: 構成的プログラミングという理論がこのようなことを扱う分野だったと思うが詳しいことはわからない.
2017年09月24日
数学: 射の合同 (続き)
数学: 射の合同関係
の続き.
考えている問題は以下の通り.
(i) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が成り立つならば $f$ と $f'$ は同じソースとターゲットを持つ;
(ii) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が, $g, g' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $g E g'$ が成り立ち, かつ射の合成 $f \circ g$ が定義されるとき $(f \circ g) E (f' \circ g')$ が成り立つ.
を満足するとき, 関係 $E$ は圏 $\mathscr{C}$ 上における 射の合同 (arrow congruence)であると呼ぶ.
より一般に, 射だけでなく対象も同一視するような合同の概念が考えられる. そのような合同関係では, 上記の条件 (ii) に相当する性質を与える際に, ある射のターゲットと他の射のソースを矛盾無く同一視できるような新しい射の合成を考える必要があるため手順は非常に複雑になる.
射の合同 $E$ に対して次を証明せよ.
(a) $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R \subset \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \times \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ は $\mathscr{C}$ における射の合同を一意的に生成することを示せ.
(b) 圏 $\mathscr{C}$ における射の合同 $E$ が与えられたとき, 射の集合 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ を $E$ で割ることにより 商圏 (quotient category)$\mathscr{C}/E$ が自然に定義され, しかも実際に圏になっていることを示せ.
問題の (a) で与えられている $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R$ から $\mathscr{C}$ における射の合同を生成する方法として少なくとも二つの場合を考えて, それぞれに応じた解答を与える必要があると思う.
第一に $R$ の部分集合
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}{#1}}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
R_0 = \left\{\, (f_1, f_2) \mid (f_1, f_2) \in R.\, d^0(f_1) = d^0(f_2), d^1(f_1) = d^1(f_2) \,\right\}
\end{equation*} を定めて, この $R_0$ を含む最小の射の合同を生成する場合.
第二に $R$ を含む最小の射の合同を生成する場合.
第一の場合は $R_0$ の元自体が射の合同の条件 (i) を満足する ($R$ の任意の元がこれを満足することは仮定されていない) ので, 射の合同の定義に沿って議論を進めることができる.
第二の場合には, 射の合同を構築する前に対象間の同値関係についても併せて考えなければならない. 任意の $(f_1, f_2) \in R$ が必ずしも射の合同の必要条件 (i) ── $f_1$ と $f_2$ が同一のソース, 同一のターゲットを持つ ($d^0(f_1) = d^0(f_2),\, d^1(f_1) = d^1(f_2)$) ── を満足しているとは限らないためである.
たとえば $f_1 : X_1 \to Y_1$, $f_2 : X_2 \to Y_2$ とすると $X_1 = X_2$, $Y_1 = Y_2$ は保証されない.
そこで $\mathscr{C}$ の対象の集合 $\Ob{\mathscr{C}}$ にも同値関係を導入する. 各 $(f_1, f_2) = ((f_1 : X_1 \to Y_1), (f_2 : X_2 \to Y_2)) \in R$ に対して $X_1 \,S\, X_2$, $Y_1 \,S\, Y_2$ となるような同値関係 $S$ を定義する.
これにより, 問題文の中に記されている通り議論はかなり複雑になる.
特に射の合成の定義を拡張する必要が生じるが, これをどのようにすれば良いのかは自分自身わかっていない.
考えている問題は以下の通り.
(i) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が成り立つならば $f$ と $f'$ は同じソースとターゲットを持つ;
(ii) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が, $g, g' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $g E g'$ が成り立ち, かつ射の合成 $f \circ g$ が定義されるとき $(f \circ g) E (f' \circ g')$ が成り立つ.
を満足するとき, 関係 $E$ は圏 $\mathscr{C}$ 上における 射の合同 (arrow congruence)であると呼ぶ.
より一般に, 射だけでなく対象も同一視するような合同の概念が考えられる. そのような合同関係では, 上記の条件 (ii) に相当する性質を与える際に, ある射のターゲットと他の射のソースを矛盾無く同一視できるような新しい射の合成を考える必要があるため手順は非常に複雑になる.
射の合同 $E$ に対して次を証明せよ.
(a) $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R \subset \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \times \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ は $\mathscr{C}$ における射の合同を一意的に生成することを示せ.
(b) 圏 $\mathscr{C}$ における射の合同 $E$ が与えられたとき, 射の集合 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ を $E$ で割ることにより 商圏 (quotient category)$\mathscr{C}/E$ が自然に定義され, しかも実際に圏になっていることを示せ.
問題の (a) で与えられている $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R$ から $\mathscr{C}$ における射の合同を生成する方法として少なくとも二つの場合を考えて, それぞれに応じた解答を与える必要があると思う.
第一に $R$ の部分集合
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}{#1}}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
R_0 = \left\{\, (f_1, f_2) \mid (f_1, f_2) \in R.\, d^0(f_1) = d^0(f_2), d^1(f_1) = d^1(f_2) \,\right\}
\end{equation*} を定めて, この $R_0$ を含む最小の射の合同を生成する場合.
第二に $R$ を含む最小の射の合同を生成する場合.
第一の場合は $R_0$ の元自体が射の合同の条件 (i) を満足する ($R$ の任意の元がこれを満足することは仮定されていない) ので, 射の合同の定義に沿って議論を進めることができる.
第二の場合には, 射の合同を構築する前に対象間の同値関係についても併せて考えなければならない. 任意の $(f_1, f_2) \in R$ が必ずしも射の合同の必要条件 (i) ── $f_1$ と $f_2$ が同一のソース, 同一のターゲットを持つ ($d^0(f_1) = d^0(f_2),\, d^1(f_1) = d^1(f_2)$) ── を満足しているとは限らないためである.
たとえば $f_1 : X_1 \to Y_1$, $f_2 : X_2 \to Y_2$ とすると $X_1 = X_2$, $Y_1 = Y_2$ は保証されない.
そこで $\mathscr{C}$ の対象の集合 $\Ob{\mathscr{C}}$ にも同値関係を導入する. 各 $(f_1, f_2) = ((f_1 : X_1 \to Y_1), (f_2 : X_2 \to Y_2)) \in R$ に対して $X_1 \,S\, X_2$, $Y_1 \,S\, Y_2$ となるような同値関係 $S$ を定義する.
これにより, 問題文の中に記されている通り議論はかなり複雑になる.
特に射の合成の定義を拡張する必要が生じるが, これをどのようにすれば良いのかは自分自身わかっていない.
2017年09月15日
数学: 射の合同関係
数学をやる.
現在考えている問題は同値関係に関する極めて基本的な問題なのできちんと解きたい.
基本的だが, おそらく自分にとっては易しくはない.
$\mathscr{C}$ を圏とする. 射の集合 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の同値関係 $E$ が条件
(i) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が成り立つならば $f$ と $f'$ は同じソースとターゲットを持つ;
(ii) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が, $g, g' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $g E g'$ が成り立ち, かつ射の合成 $f \circ g$ が定義されるとき $(f \circ g) E (f' \circ g')$ が成り立つ.
を満足するとき, 関係 $E$ は圏 $\mathscr{C}$ 上における 射の合同 (arrow congruence)であると呼ぶ.
より一般に, 射だけでなく対象も同一視するような合同の概念が考えられる. そのような合同関係では, 上記の条件 (ii) に相当する性質を与える際に, ある射のターゲットと他の射のソースを矛盾無く同一視できるような新しい射の合成を考える必要があるため手順は非常に複雑になる.
射の合同 $E$ に対して次を証明せよ.
(a) $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R \subset \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \times \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ は $\mathscr{C}$ における射の合同を一意的に生成することを示せ.
(b) 圏 $\mathscr{C}$ における射の合同 $E$ が与えられたとき, 射の集合 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ を $E$ で割ることにより 商圏 (quotient category)$\mathscr{C}/E$ が自然に定義され, しかも実際に圏になっていることを示せ.
商圏として, (a) で導いた $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R$ によって生成される射の合同によるものを考える.
定義によりこの商圏上では $R$ が与える任意の射の関係 ($(f \circ g, f' \circ g) \in R$ や $(f \circ g, h) \in R$ に対応する図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
\ar[r]^{g} \ar[d]_{g'} & \ar[d]^{f} & \ar[r]^{g} \ar[dr]_{h} & \ar[d]^{f} \\
\ar[r]_{f'} & ~ & ~ & ~
}
\end{equation*}
など) がすべて可換になるような最大の圏である.
問題 (a) の意味について少し考えた末, 2 通りの異なる解を与えることにした.
この項続く.
現在考えている問題は同値関係に関する極めて基本的な問題なのできちんと解きたい.
基本的だが, おそらく自分にとっては易しくはない.
$\mathscr{C}$ を圏とする. 射の集合 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の同値関係 $E$ が条件
(i) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が成り立つならば $f$ と $f'$ は同じソースとターゲットを持つ;
(ii) 射 $f, f' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $f E f'$ が, $g, g' \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ に対して $g E g'$ が成り立ち, かつ射の合成 $f \circ g$ が定義されるとき $(f \circ g) E (f' \circ g')$ が成り立つ.
を満足するとき, 関係 $E$ は圏 $\mathscr{C}$ 上における 射の合同 (arrow congruence)であると呼ぶ.
より一般に, 射だけでなく対象も同一視するような合同の概念が考えられる. そのような合同関係では, 上記の条件 (ii) に相当する性質を与える際に, ある射のターゲットと他の射のソースを矛盾無く同一視できるような新しい射の合成を考える必要があるため手順は非常に複雑になる.
射の合同 $E$ に対して次を証明せよ.
(a) $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R \subset \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \times \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ は $\mathscr{C}$ における射の合同を一意的に生成することを示せ.
(b) 圏 $\mathscr{C}$ における射の合同 $E$ が与えられたとき, 射の集合 $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ を $E$ で割ることにより 商圏 (quotient category)$\mathscr{C}/E$ が自然に定義され, しかも実際に圏になっていることを示せ.
商圏として, (a) で導いた $\mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の任意の関係 $R$ によって生成される射の合同によるものを考える.
定義によりこの商圏上では $R$ が与える任意の射の関係 ($(f \circ g, f' \circ g) \in R$ や $(f \circ g, h) \in R$ に対応する図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
\ar[r]^{g} \ar[d]_{g'} & \ar[d]^{f} & \ar[r]^{g} \ar[dr]_{h} & \ar[d]^{f} \\
\ar[r]_{f'} & ~ & ~ & ~
}
\end{equation*}
など) がすべて可換になるような最大の圏である.
問題 (a) の意味について少し考えた末, 2 通りの異なる解を与えることにした.
この項続く.