初日は、いったい何をしに、どこにいくのかもわからず(おそらく他の人は説明されていたのだと思うけど、
私は聞き取れなかったのだと思う)細い山道を車で揺られ30分ぐらいドライブしていたと思う。小さな家(トレーラーハウスのような)に到着した。
5歳の女の子がいるおうちで、太っちょリーダーがお母さんらしき人に挨拶をしてから、家の修理を始めた。ボランティアとは家の修繕だったのだ。「えーーーーー」と思ったが、数日たってその理由がわかりはじめた。
私は主にコーキングの仕事をしていた。指定された場所をひたすらグルーガンのようなもので隙間をうめていく。冬に寒い風が入って来ないように、全ての板と板の間の隙間を埋めていった。リーダーといえば、雨漏りがするとのことで、屋根に上ってひたすらトントンと屋根を打ち付けていた。リクエストからウッドデッキをつくっているチームもいたし、裏庭の積みあがったタイヤを移動させている人たちもいた。
トイレ用の穴を掘っているグループもいた。そう、トイレは家の中になく、家から一番遠い場所の地面に穴をあけ、板を三辺にたて、簡単な板をその上に乗せた野外トイレしかない。今のトイレの穴がいっぱいになったら、そこを土で埋めて、新しいトイレに移るためだ。野外のトイレは何か事情があったからじゃないかと思っていたが、そうではなかったわけだ。下水道が整備されていない場所に住んでいたわけだ。確かに山の中だからそういうこともあるのかと後から考えたが。
5歳の女の子の顔はいつも何となく汚れていてお風呂にも入ってないような気がした。髪の毛もぼさぼさだし服もなんとなく汚らしい。でも彼女は自分の宝物を私たちに見せては、お話をしてくれる。初日に私たちが昼食用に持ってきたサンドイッチを食べ終わった時、5歳の女の子が、使わなかった白い紙ナプキンを自分にくれないかといい始めた。私は「いいよ」といって彼女に渡した。他の子にも聞いて使っていないナプキンをもらってその子にあげた。すごく喜んでいた。絵でも描くのかな?と思っていたが、ある時聞いてみたら、トイレットペーパーにしたいということだった。なんとトイレットペーパーが買えないというのだ。その後、サンドイッチを入れていっている茶色の紙袋も欲しいといったので、近くの他のボランティアにも声をかけて集めて渡してあげた。あまり住人とは話さないようにいわれていたので秘密裏に。リーダーもその様子を見ていたけど、そこは見逃してくれていた。子どもだったからかな。
四日目あたりでは、自分たちがサンドイッチを食べているとき、5歳の子どもは食べるものがない。何をたべられない彼女を目の前にして自分がサンドイッチを食べることができない。だからグループの子と相談してサンドイッチを作るときに、少し多めに作るようにして彼女の分を持っていくことにした。本人にも内緒だよと言って渡した。最後の日は、彼女と別れるのが淋しかった。この子はこの後どんな人生を送るんだろうとか、ちゃんと学校に行って仕事に就けるのかななど、彼女の人生がどうなるのか心配し、涙した。
その女の子が「お父さんがお酒を飲むから、ごはんが食べられない」とか「たばこはすっちゃいけないのに、やめないんだ」など家庭内の話をしてくることがあった。何とも言えないやるせない気持ちになった。5日間つづいたボランティアだったが、生活保護で就労していない地域の家の修繕をしていたということが、最後のほうになってわかってきた。確かにウエストバージニア州は貧しい州だし、ケンタッキー、オハイオ州あたりはRusty beltと呼ばれている地域で、ちゃんとした就労ができない人の多い地域も抱えている州であることは、最近知った。30年以上前から、そういった地域への支援を、教会がボランティアキャンプを企画し、全米から教会単位でのチームを募り、人助けをしていたわけだ。
アメリカにおける教会の役割が、地域における(町の中での)ボランティア活動、コミュニティーの形成(寝たきりの老人への支援 ランチサポートなどは当番を決めて教会単位で手助や教会の後のケーキやコーヒーでの茶話会など)子どもへの道徳教育(バイブルスタディーとか日曜学校とか)など多岐にわたり地域の中で役割を担っているのをそこで生活して目の当たりにしたが、町を超えて別の州でも慈善活動もするんだということを知った。それも移動のガソリン代、ボランティアへの参加費を捻出するために、自分たちで不用品を販売したり、冷凍ピザを売ったりしてお金を貯めていく。そして参加者は自分の時間と肉体を提供する。ボランティアの神髄に触れたきがした。
あれから34年、あの5歳の女の子は40歳ぐらいだろうか。ちゃんと幸せなんだろうかと ふと心によぎるときがある。
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