(2018年投稿記事です。)
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平成21年から始まった、海賊対処において護衛艦や哨戒機がジプチに派遣されています。
海賊対処派遣開始当初は、準備がいろいろ大変でした。
海上保安庁と協同で行動する準備もいろいろな難題が続出!
ホントに海賊対処は大変だぜ!
(前回記事):『 艦発隊の自隊警備訓練!空挺レンジャーってSUGEEEE!!! 』
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(1)LRADって武器じゃないんかい!
海賊対処派遣部隊が編成されることになり、護衛艦が派遣されることになりました。
併せて、海上保安庁ソマリア周辺海域派遣捜査隊が同乗することになりました。
このため、派遣に併せて護衛艦に装備の増強工事が行われることになりました。
増強工事の主要なものとして、
・小火器用銃架の増設
・通信能力の向上
・海保用の設備等の増設(通信機器等)
などが行われました。
1.1 LRADを装備せよ!
海幕から指示のあった装備工事の中に、LRADの設置という項目がありました。
図1 LRADの装備状況(左側に増設した銃架)
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/formal/operation/img/pirates/suijyo07.jpg
※LRADについて
音波を投射することにより、人の行動能力・判断能力を奪うことや聴覚器官や脳にダメージを与えたり、物体を破壊することを目的とする兵器である。
ただし、出力を調整すると兵器としてだけでなく音響装置(スピーカー)としても利用可能な物もあり、どこまでが音響兵器に当たるか若干曖昧な場合がある。
(引用:wikiより)
音響兵器として海外で使用されているから、武器の扱いになるだろうと話していました。
造修補給所での所掌は、通信電子科になるとの話をしていました。
1.2 武器の扱いにせず、需品科の所掌?!
しかし、LRADが届いて工事をするときに、
『LRADは武器に該当しないので、需品科で工事をする』
という、寝耳に水の話となりました。
これは、護衛艦が装備する前に、水産庁の調査捕鯨船に装備された為でした。
図2 水産庁調査船
引用URL:http://www.jfa.maff.go.jp/j/senpaku/ships/kaiyo_maru.files/kaiyo_030801.jpg
水産庁が調査捕鯨船を守るためLRADを設置するときに、警察庁に照会した結果、
『LRADは武器に該当しない』
という結論になったためです。
防衛省もお役所ですから前例踏襲主義により、LRADは武器に該当しないということになりました。
(お役所仕事・・・)
そんなこんなで、摩訶不思議な装備品となっています。
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(2)海保:設備や通信費も全部海自で持ってくれ〜(泣)
海賊対処では、海上保安庁の職員が同行して海賊対処法に基づく司法活動を行います。
ソマリア周辺海域派遣捜査隊の8名が、実際の司法権行使を行います。
海賊対処では、海自は海賊対処行動部隊(DSPA)を編成しています。
護衛艦の部隊は、派遣海賊対処水上部隊(DSPE)となります。
この時海上保安官は、自衛隊と協同関係の行動になります。
※協同関係についての解説
・共同関係は、統一指揮下での行動になります。
(海上保安庁法第25条を遵守するため)
しかしまあ、出航までの準備でいろいろドタバタが・・・
2.1 留置施設ってどうやって作るの?
海賊対処派遣が決まったとき、海上保安庁との打ち合わせで留置施設を作ってほしいとの要望が出ました。
図3 巡視船にある留置施設
引用URL:http://fieetno26.web.fc2.com/jcg1977.JPG
巡視船には常設されている被疑者を船内で留置する場合の施設ですが、海上自衛隊では作ったことのない施設でした。
結局海上保安庁の装備技術部から、留置施設の設計図を提供してもらいました。
改装工事は、海保巡視船の建造経験のある造船所が詳細設計と工事をすることになりました。
(結構改装費用が高くつく羽目に・・・)
2.2 通信機器を増設したけど・・・費用は海自持ち(涙)
改装工事は多岐にわたり艦橋の防弾装備追加や、海上保安庁用の衛星通信装備などを増設します。
図4 増設した装備や衛星通信アンテナ
引用URL:http://www.mod.go.jp/js/Activity/Gallery/images/Anti-piracy/pb_29/201803/20180323_06.jpg
しかし、ここにきて海上保安庁から『泣きのお願い』が入ります。
『衛星通信機器整備費用や通信費も海自で持ってくれ〜(泣)』
まさかのお願いが出現します。
通信機器は、派遣終了後に別の艦に移設するので海自側が費用を負担しています。
しかし、通信費まで海自持ちなのは・・・
インド洋派遣の経験則から、1年間で約数億円の衛星通信費用が掛かるはずです。
さすがに、海幕と海保本庁で話し合いが持たれました。
海保側もホントに予算がない状況でしたので、結局海自が通信費も負担することに・・・
インド洋や海賊派遣での衛星通信の問題があり、防衛省独自の通信衛星保有になったきっかけでもありました。
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(3)海上保安庁との信頼関係構築となっている海賊対処
海賊対処では、最初の出航までいろんなドタバタがありました。
しかし、海上保安庁と信頼関係を構築する良い機会となっています。
図5 海自司令および海保隊長(27次隊)
引用URL:http://www.mod.go.jp/js/Activity/Gallery/images/Anti-piracy/pb_27/201705/20170512_01.jpg
本当に、ひと昔前までは海保との協同行動なんて夢物語といわれていました。
海上保安庁とは、海上自衛隊の発足当時の経緯から遺恨が長くありました。
「海自(海保)とは、絶対協同行動なんてしない!」
そんなことが公然と語られる時代があったのも事実です。
しかし海賊対処という共通の任務を共に遂行する中で、信頼関係ができてきました。
これから海保との協同行動が、当たり前になった世代が組織の中核となってきます。
かつての恩讐を乗り越えて、海自と海保は任務にあたるでしょう!
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海上保安庁と海上自衛隊との「遺恨」は、発足当初の経緯を知るとよく分かります。
海上保安庁は1948年に発足して、当初は掃海任務も行っていました。
その後、1952年に海上自衛隊の前身となる「海上警備隊」が海上保安庁の隷下に発足します。
1954年に防衛庁が発足して、海上警備隊が海上自衛隊となって分離独立いたしました。
「われこそは海軍の後継なり」という意気込みであった海上保安庁と、資金や人員を大量に持って行った海上自衛隊との間で結構な意地の張り合いとなっていました。
海上保安庁にとっては、ひさしを貸して母屋を取られたという感じになっっていたのでしょう。